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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第5章上:聖教都市「メサティス(東部)」/運命の綻びに爆破魔法を

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6:回復魔法のよろしくない実戦訓練

地下から一階へ。

澄んだ空気が漂うその空間に苛立ちを覚えながら、僕らは前に進む。


「くうきうまー」

「そうですね、ヴェル。本来であればこれが当然の代物です。しかし、本当にむかつきますね、あの悪魔」

「…そうですね。空の女神像の下にあんな部屋を作っていたとは」


僕たちが出た先は礼拝堂———空の女神像の真下に作られた隠し通路らしい。

設定を読み解く限り、空の女神の信仰者が最も多い。

判別こそできないが、彼女たちが信じていた神は…この三女神の中にいるのだろう。


「信じていた神の足下で、救いを求めても救われずにいて…」

「たとえ救われたとしても、信じていた神は救いを与えなかった…その現実はきっと、辛うじて助かっていた彼女たちの心を壊すことになったでしょう。悪趣味極まりない話です」


「…残酷な事を、よくここまで平気でできるね」

「どーいするが、おまえにはいわれたくねーな」

「だろうね。君は文句を言う資格があるよ」


ぽかぽかと僕の足に向かって抗議をしてくるベリアの力は若干弱々しい。

これは抗い難いあの現象だろうな。


「ベリア、おねむ?」

「じゃねーし…うぅ…」

「おねむだね。ほら、抱っこしておくからねんねしておきな」

「んー…」


精神が元通りとはいえ、子供の身体ではここまでの道のりはきついものだったはずだ。

ヴェルみたいにずっとコアラというわけではない。

僕の手を引いて、前を歩いてくれていたから。

抱き上げると彼女はすぐに眠りについた。

全く。素直になればいいのに。


「これが…「身体は子供、精神は大人」というものですかね?」

「そうだけど、それはどこで聞いたんだい、エミリーさん」

「昔ノワが言っていました。「私、身体は子供でも精神は大人だから!」…と」

「身体は大人、精神は子供の間違いではなくて?」

「右に同じだと思います」

「奇遇ですね。私もそう思います。聞き間違いであってほしいのですが…」

「「「非常に、残念…」」」


頭の中でノワが「てへっ!」とウインクをした気がした。

非常にむかつく笑顔だ。

しかし、あの子らしい表情とも言える。

…重苦しい空気さえも、あの子が晴らしてくれたような気がした。


「しかし、ここは悪魔が多いねぇ。一階に多く配置をされていたのかな」

「侵入がバレただけでしょう。まあ、黙らせるだけですが」


一歩進むだけで三人ぐらいの悪魔が現れるこの現象は一体何なんだ。

まるでGだな。どれほど潜んでいるのやら。


「嫌ですね、パシフィカ。乱暴な考えがすぎますよ。しかし、ベリアとヴェルは寝ていますし、血で倒すのは難しいですよね」

「甘いですね、エミリー。その辺に転がっているのも、また悪魔ですよ?」


パシフィカは僕が攻撃を与えた悪魔に追加で攻撃し、腕を略奪しておく。

そして間髪入れず次の標的を捉え、傷口へ「奪い取った腕の断面」をこすりつける。

その繰り返しを行うことで、悪魔を殺せない僕らもきちんと討伐が果たすことができた。

こういう素早い動きができる上、頭の開店が早い前衛がいてくれるからこそできる戦法だ。


「時間経過で消失するという点はありますが、どくは回収し放題ではないですか」

「そ、そうといえばそうですけど…これではどちらが悪魔かわかりません」

「何を言っているのかな?向こうが悪魔だよ?」

「性分に関しては!貴方たちも!どっこいだと思うのですが!?」


エミリーさんが「人でなし!精霊でなしぃ!」と叫ぶ横で、僕は悪魔に魔弾を撃ち込み、パシフィカさんは血でトドメを刺してくれる。


「…ふう」

「おつかれ、パシフィカさん」

「いえ。ここは私の腕を見せどころですからね。しっかりやらせていただきます」

「「本当に頼りがいがある…」」


僕とエミリーさんは攻撃魔法特化の魔法使いではあるが、魔法使いという性質上、一人で戦ったりするのは向いていない。

ノワのようにアリア…攻撃ができる前衛と一緒に戦うのが基本戦法。

今回、パシフィカさんが無事だったのは不幸中の幸いだろう。

僕ら魔法使いコンビでは…一応乗り切れるとはいえ、エミリーさんの為にはならなかった。

彼女にはできるだけスタンダードな戦法で成長してほしいから。


「しかしパシフィカ、怪我はありませんか?疲れも、ずっと戦い通しですし」

「大丈夫です。元々巡回騎士でしたし、体力には自信があります。怪我は多少ありますけど、かすり傷ですから」

「こういう場だし、かすり傷は放置してほしくない。簡単なものだけど、僕が回復魔法をかけるよ」

「…ごめんなさい。私、回復魔法は全然ですから」

「いつもなら「ミリアがいるから大丈夫」というところですが…」


パシフィカさんの目線が僕の方へ向けられる。

やはり彼女もこのままではいけないことを理解してくれているらしい。

事情を把握しているパシフィカさんには、この旅に僕が同行している理由も目的も話している。

全員を育てる目的があること。優先的に面倒を見るのは、エミリーさんであることを。

話の中で「きっかけ」を見つけることができれば、少しでも僕に話題を振ってくれるのは非常に助かる話だ。


「そうだね。回復魔法はミリアさんやノワほどは求めないけれど、初歩の回復魔法は使用できた方がいい。詠唱分は「傷を癒やせ」だけだから」

「けれど、癒やすイメージがわかなくて…使っても癒やせないのです」


なるほど。イメージがしにくい…想像力が足りない影響で魔法が使えないと来たか。

しかしエミリーさんは物覚えがいい。その長所を利用して回復魔法を教えるのは可能だろう。

けれど、僕の心象は人でなし一直線だろうね。間違いない。


「んー…じゃあ実際の治療光景を覚えようか。ちょうどいい。あいつを使おう」

「「え」」

「ひっ…!」


ちょうど現れた悪魔を魔弾で攻撃し、拘束魔法で捕獲しておく。

それから短時間で「必要となりそうな症例」を用意しつつ、エミリーに回復魔法を三段階、今後必要になりそうな解毒魔法を実際に使って見せた。

僕も回復魔法は苦手な部類だけど、使えないわけではない。これでも死亡時点で医大生だ。知識も持ち合わせている。

腹を割かれた状態までなら問題なく通常状態まで戻すことができる。流石に欠損は専門いよりに任せていたけれど。


「シイナさん」

「なにかな」

「人でなし…!まさか私に回復魔法を実演する為だけに悪魔を実験台にするだなんて思いませんでした」

「うん。こればかりは言われると思ったよ。だから彼女には温情をかける予定。協力してくれたお礼に、逃がしてあげるよ」

「へ…」

「本陣に帰るのも良し。家に帰るのも良し…好きにして」

「ひっ…ひぃ!」


無理矢理協力させた悪魔は怯えた声で叫びつつ、廊下を駆けていく。

…遠くで「もけっ」と音がした気がした。

うん。僕は手を出していない。僕はちゃんと逃がした。

その後のことは保証してない。逃げた先に偶然モケケがいた。彼女の不運が招いた結果だろう。僕は何も知らない。


「あの、さっき「もけっ」て…聞こえたのですが?」

「絶対あの先にあいつがいますよね!?あの森の大妖精がいますよね!?」

「僕はちゃんと義務を果たしたさ。その先で何かあったかなんて知った話ではないよ」

「退路を想定してモケケを配置したわけではないですよね、人でなし」

「決してないね。不幸な偶然だよ」

「そういうことにしておきます」


そういうこともなにも、そういうことなんだよ…と、言いたかったが、これ以上は流石に揉めるので何を言わないでおく。

しかし、彼女の協力で得られた事がある。


「…悪魔、血無しでも殺せそうだな」

「「ろくでもないことを覚えてきましたね。人でなし!」」


「パシフィカさん。後で試してほしいことがある。次は積極的にこめかみを狙ってくれるかな」

「構いませんが…剣は刺さりますかね」

「刀身に強化魔法ぐらいかけるからさ」

「わ、わかりました。しかしなぜこめかみを…?」

「それは結果が出てからさ。さて、一階はあらかた探し終えたし…二階へ移動しようか」


しっかし、さっきの悪魔は露出が無駄に激しかったな。

おかげで実験がやりやすかったけど…あんなの、普通の状態で見ていたら吐くところだった。

貴重な実験材料に吐瀉物をかけるのは申し訳がないからね。無事に済んでよかった。


「…んぅ」

「あ、ベリア。起きたかな。おはよう。ぐっすりだったね」

「…うるさかった」

「ごめん」

「だからおきた。ところでしいな」

「何かな」

「おまえ、ナアマっぽいあくまをあたしのみてねーところでころすなよ。ほんとにナアマかわかんねーじゃん」

「「「…はい?」」」


起き抜けに不機嫌な顔を浮かべた彼女から、想定外の発言。

僕らはベリアが何を言っているのかわからず、三人揃って首をかしげた。

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