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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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33:問題児と優等生(天然モノ)

ナッティーが水上に浮上すると同時に、師匠は私たちを結界で包む。

勢いと共に、水上へ打ち出された私たちは無傷で再び地上へ戻ることになった。


「アリア、ベリア、ヴェル。君たちはピニャの元へ!」

「主ぃ〜こちらですよ〜」

「ピニャ君…!わかりました!行こう、二人とも!」

「私たち、あいつに受け止めて貰うんだよね?大丈夫なの?」

「大丈夫だ。逸れたとしても問題は無い。痛覚がないからな、この身体。アリアをしっかり守るぞ」

「…もぐ」


絶句するヴェルはベリアに手を引かれ、アリアと三人でデブ鳥をクッションにして着陸を行う。


「パシフィカ!ミリアだけなら浮けるよね!?」

「勿論です。ミリア、今度は私に掴まっていてくださいね」

「あばばばばばばばばばばば…!」

「…色々と、大丈夫ですか?」


ふむ、どうやらミリアは高所が苦手らしい。

羽を展開したパシフィカはしっかりと抱きついてくるミリアを支えつつ、ゆっくりと下降していく。

そして私たちは———。


「はぁ…箒が使えてよかった…」

「さて、ノワ。飛翔魔法は使えたね?」

「もちのろん。だけど私移動は…どうにかするかぁ…」

「…さ、先程から貴方たちは何を言っているんですか。魔法使いの飛行は箒がしゅっ…」

「なんだい?何が主流だって?」


エミリーが言葉に詰まる理由もわかる。

…杖は魔法使いの相棒。必需品だ

今の師匠は、それを思いっきり足場にして空中浮遊を成していた。


「つ、杖を足場にするだなんて…!は、恥を知ってください!相棒を踏みつけているようなものですよ!?杖だって自我があることはご存じでしょう!?」

「そうだね。けれど僕のリュミエールはそんなことで怒らない。君の杖は心が狭いね」

「杖に心なんてないんですけど!?無機物ですよ!?」

「…やだなぁ。万物には心が宿るんだよ」

「迷信ですよ」


「それ、ぬいぐるみの前でも言えるのかい?」

「ええ。言えますよ。無機物ですもの」


ふむ、この女…とんでもない地雷を踏んだな。

エミリーは師匠のことを知らない。私の師匠だというぐらいの情報しか得ていないのだ。

しかし彼は違う。

エミリーと初対面ではあるけれど、彼はエミリーの情報を握っている。

だって本に書いてあったから!設定資料が存在するのだから!


心を読まなくても、師匠と私にはわかるのだ。

エミリーのありとあらゆる秘密の数々が…わかってしまうのだ。

もちろん、エミリーの「無機物」に関する秘密だって知っている。

最も、この情報を今出せば「なぜ知っているんだ?」という反応は避けられないだろうけど…どうするつもりなのかな。


「では君が毎夜毎夜日々のことを語る手作りのトカゲぬいぐるみこと「おししょー」には心が宿っていないんだね…」

「にゃっ!?」

「おししょーは間違いなくぬいぐるみを抱かないと眠れない君のことを心配しているのに…君ときたらそんな大事な!手作りの!家族のような存在を!無機物呼ばわりとは!人の心ないないした?」

「なんで初対面の貴方がおししょーのことを知っているんですかぁ!?後、子供に聞くような口調はやめてください!なんですか、ないないって!」

「君の精神年齢にはぴったりかなって。だって今もマントの後ろに隠してわからないようにしているけど、おししょーとおてて繋いでいるんだから」

「〜〜〜〜〜〜〜!」

「…」


うわー…人でなしが「人の心ないの?」とか問いかけてくる〜…。

エミリーもエミリーだ。なんで師匠に餌を与えるんだ。

飛翔魔法をこっそり展開して、遠目で二人の様子を眺める。

そういえば二人は「天然モノ」という共通点がある。

天然モノの問題児である師匠と、天然モノの優等生であるエミリー。

…組み合わせたら、最悪だなこれ。


「ふ、ふん!私がおししょーをどう扱おうが勝手ではないですか!本当に、ノワの師匠と言うだけあってろくでなしですね!」

「褒め言葉として受け取っておこうか。けれど、君はそんなろくでなしどころか、その弟子の足下にすら及ばない。だからこそ、君は卒業試験をクリアできないのではないかい?」

「…なぜそれを」

「これでも、僕だって魔法使いの師匠をしているわけだ。同類が考えそうなことは手に取るようにわかるし…」


設定にそう書いてあったもんね。

エミリーは師匠に卒業試験を与えられている状態だって。

その内容は最後まで判明しなかったが、とにかく彼女は今「師匠が与えた卒業試験」に挑んでいる状態のはずだ。


「君の試験に興味がある」

「ノワの今後の為に、ですか?」

「そうだね。なんせそれは君が「枠外」に踏み出すための鍵なのだから」

「鍵、ですか」


「さて、話の続きはこれが終わった後に。まずは君の冤罪を晴らしに行こう」

「そうですね。しかしまず杖から降りてください。心が宿る存在を踏みつける行為は残酷だと思いますので」

「…言うねぇ」

「貴方が言ったのですよ。万物には心が宿るとね。もしかして人の心、ないのですか?」

「どうかなぁ」


師匠は杖から降りて、飛翔魔法で宙に立つ。

それから相変わらず胡散臭い笑みを浮かべながら、エミリーと見つめ合う。

もちろん彼女もにっこり笑顔だ。


「…」

「ところでノワ。どうして君はぐるぐる回っているんだい?」

「私は飛翔魔法が使えても、バランス感覚が壊滅しているから飛び回れない話はしたじゃないですか」

「練習すらしていなかったのか…」

「…せめて回るのだけは停止させましょうか?」

「お願いしまーす…うぷっ」

「吐かないでくださいね!絶対ですよ!絶対なんですから!」


正直、間に挟まれている人間としては生きた心地がしなかったことを先に述べておこう。

二人揃って笑顔だが、内心は何を考えているのやら…。

まあ、一言言うのなら二人揃ってろくでもないことを考えていることは間違いないだろう。

この地獄のような光景に嫉妬心を抱くバカなんて時雨さんぐらいだろうな。


「さて、貴方が蘇らせたナッティーが管理局を潰したようですし、そろそろ行きましょうか」

「そうだね。君の冤罪を晴らして話の続きをしようじゃあないか」

「勿論です。有意義なもので無ければ、即刻爆発魔法をぶち込んでやります」


…なんだかんだで、息は合っている、のかな?

しかしなんだろう。この出会いは最悪レベルにろくでもない代物だと直感で感じてしまう。

この寒気、どうやったら消えるんだろうな。アリアに後で暖めて貰うか…。

師匠に紐を用意して貰い、彼に引かれるように宙を移動する。

私は背後で管理局の方へ移動する二人の背を眺めつつ、のんびり空の旅を楽しんだ。

おまけ1:それぞれの落ち方


・アリアとベリアとヴェルの場合

ピニャ「大丈夫ですか、アリア」

アリア「あ、ありがとうピニャ君…けれど二人は」

ヴェル「うわ本当に痛くないよ。なんか大事なものを失った気がする」

ベリア「だろ」

アリア「どうなっているの…」

ヴェル「痛くもなければ、壊れてもない。自分の身体のこと、心配しなくていいとか強すぎでは?」

ベリア「だよなぁ。身体の無事とか一切考えなくていいのは楽すぎる」

ヴェル「自爆もし放題だね」

ベリア「今度試してみるかぁ」

アリア「何が何だかわからないけれど、二人とも自分の身体は大事にしてね…?」


・パシフィカとミリアの場合

パシフィカ「ふぬ!ふぬ!ふぬん!」(パタパタパタパタ)

ミリア「あばば」

パシフィカ「ミリア、あばばしか言えなくなって…高所が怖いのは知っていましたが」

ミリア「あばば」

パシフィカ「しかし、こうして抱きつかれていると飛びにくいというか…後、動かれると困るというか」

ミリア「あばば」

パシフィカ「ぐぬぬ…けれど、落ちたら私が大変な目に。泳げない私とほぼ気絶状態のミリア」

パシフィカ「落ちた後の事なんて明白…」

パシフィカ「頑張りますね、ミリア。私が地上へ運びます…!んうぅ!」(バタバタバタバタ)

ミリア「パシフィカ。飛んで貰って悪いのだけれど、私、もう下半身が水に浸かっているわ…」

アリア「ピニャ君!」

ピニャ「お安い御用です!」

この後、二人揃ってピニャに救助された


おまけ2:魔法使いの箒


エミリー「そもそも、魔法使いなのに箒を持っていないなんて…貴方たち、どうなっているのですか」

譲「僕はリュミエールがあるから…」

ノワ「私、箒あんまり好きじゃないんだよね」

エミリー「なぜ」

ノワ「ケツと股が痛いから」

エミリー「た、確かに痛いですけど。たまに変な感じもしますけど…」

ノワ「そのあたり、エミリーはどうしてんの?」

エミリー「我慢していますが」

譲「原始的だねぇ。ではここで、他の界隈の箒乗りにどうしているか聞いてみましょう。はいVTR。頼んだよ」

エミリー「!?」


・・


カルル『え?箒の乗り方?』

カルル『まあ確かに長時間は痛いよな。俺は立ち乗りとかするし…』

カルル『俺は箒に負担軽減とか、落下防止とかあらかじめ魔法をかけているぞ。むしろそれをかけずに箒に乗る奴とかいるのか?』

カルル『俺はエリちゃん(エリシア:12才(羊族のオス))にもかけてるんだが!?同乗者に対策も何もしてない!?そいつ最低だな!もっと他人の尻いたわ(ここから先は譲の独断で削除されている)』


シルヴィア『…箒の乗り方?なんで今更』

シルヴィア『そもそも俺が箒を使わないのは知っての通りだろ』

シルヴィア『なんせ天才な俺はお前と同じでリュミエール飛行だからな。リュミエールを知ったら、箒には戻れない…』

時子『しーさん。子孫のゆーくんは間違いなく、貴方の出身であるパスカル魔法帝国の、ごく普通の箒乗りに関して聞いているんだと思います。それを答えてあげた方がいいかと』

シルヴィア『そうなの?』

譲『そうなの』

時子『むしろそれ以外に何があると…』

シルヴィア『ごめん。昔のことほぼ忘れた。箒とか高いし多分買ってないわ』

譲『…』


陽雪『箒の乗り方ですか?確かに僕は箒を使用していますが…司令、箒乗りに興味があるんですか?』

陽雪『僕の場合は防御と支援以外はだめだめなので、飛翔魔法が使えないから仕方なくという側面がありますからね。あんな旧世代の遺物…好き好んで乗っているわけではないんですよ』

陽雪『と、一身上の事情もあり…箒に細工をすることも叶いません。僕の場合は箒にクッションとか椅子をつけて、快適な空の旅を確立しました』

陽雪『どうでしょう、司令。参考になりましたか?』

陽雪『…司令は箒なんて乗らないでしょうし。きっとあの子の為だよね』

陽雪『二番弟子なあの子は本当に司令から過保護な扱いを…僕も過保護な扱いを受けたい…ぐぬぬ…』


・・


ノワ(陽雪さん、おまけで初登場かぁ…)

譲「我慢はよくないよ。痛いのなら参考にしてみては?」

エミリー「余計なお世話です!」

後日、エミリーの箒にクッションが装着されていたのは別の話。


おまけおしまい

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