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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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32:掟破り

「がぼぼぼぼぼぼ(これはまた立派な代物だねぇ!骨格標本だ!)」

「がもごがもご(美味しそうなお肉がない!)」

『お前ら…ここ水中だからな?普段のノリで喋るなよ』


興奮する私とヴェルを冷めた目線で見るベリアの後ろで、エミリーが慌てて骨に飛び込んでいく。


「がぼぼぼっ!(私の箒!)」

「がぼっ!?」


その際、近くにいたパシフィカに腕が当たったらしい。

怯えながら水中で意識を保っていた彼女にとって、それは予想外の事態。

溺れないのに、動揺しているせいか溺れたように振る舞う姿は見ていて可哀想に思えた。


『パシフィカ、大丈夫だから。まずは落ち着いて?』

「がぼぼ…がぼぼ…」

『大丈夫。慌てないで…私が側にいるわ』

「がぼっ…」

『そう。そうね。落ち着いてきたわね。そのまま私の声に耳を傾けていて』

「…」

『パシフィカ。魔法のおかげで問題なく呼吸はできるわ…ゆっくり、肩の力を抜いて?私が貴方を支えているから、怖い事なんて何も起こらないわ』

『ええ…そうですね。ありがとうございます、ミリア』

『いいのよ。今は大丈夫?』

『ええ。多少は…』

『じゃあ、そろそろ離れてみる?』

『やです。水怖い』


ミリアにぎゅっとしがみついたパシフィカ。

そうすることで、彼女が安心するのならと、ミリアは何も言わずパシフィカについてナッティーの方に歩いて行く。

しかし、師匠とアリアは動かない。

通信魔法を聞く限り、骨に対して関心がないというわけではないようだ。


『…椎名さん』

『ああ。これを管理局に見せることができれば問題なくエミリーさんの冤罪は晴らせるよ。アリア』

『そっかぁ…』


そりゃあ骨だもの。一ヶ月そこらでなれる代物じゃない。

だからといって焼いたとしたら、骨にも影響があるだろう。

けれど、この湖底に沈んでいるナッティーの骨にはそれらしい形跡が残されていない。


『でも、他にも可能性はありますよ。例えば魔法で時を進めて…とか』

『ふむ。いい発想だね。アリア。確かにその可能性もないとは言えない。着眼点が素晴らしいよ』

『あ、ありがとうございます…?』


『…お二人とも、何を言っているんですか?』

『エミリー』

『ふむ。君も意見があるみたいだね。言ってみて』

『貴方だって魔法使いであるのならわかっていますよね。時間や空間、そして命に関わる魔法は魔法使いの禁忌だと!』

『そんなの僕には関係ないよ…使う必要があるのなら容赦なく使う。掟とかそんな窮屈な代物に縛られていたのなら、君はノワに置いて行かれるよ』

『へ』


素っ頓狂な声を出したエミリーを、師匠はどうでもいいものを見るような目で眺める。

興味の無い目を向けられた彼女はぽかんと口を開けて、放心状態へ。


『ちなみにだけどアリア。ナッティーが時間を進められて骨になった可能性はないんだ』

『そうなんですか?でも、どうしてそれがわかるのですか?』

『それを成せる魔法はね、膨大な魔力を要する。基準として教えておくと…ノワにも使用できない』

『そうなんですか』

『うん。だからと言って、魔力を保有する人間を集めたところで完成する魔法でもない。時を操る魔法というのは膨大な魔力を要する上に。操作が難しい魔法だからね』


アリアの心配はわかる。

この世界には魔法がある。

つい最近ナッティーを殺し、魔法を使って「骨になるまで」時を進める。

発想としては悪くない。けれどこの世界にそれを成そうとする「規格外の思考」を持ち合わせる魔法使いはいない。

同時に、それを発動できる魔力と技量を保持した魔法使いも「この世界には」存在しないのだ。


師匠の解説が終わったのを見計らって、私は彼の側に向かう。

どうせろくでもないことを企んでいるんだ。私…というか、私がもっている「これ」が必要なのだろうから、渡しに行ってあげようじゃないか。


『まあ、そんな感じだね。使えるとしたら師匠だけさ』

『そういうこと〜』

『し、椎名さんはちゃんと使えるんですね』


『ところで師匠…エミリー、放心状態なんですけど』

『あはは「優等生」には刺激が強かったかな』

『あんたの存在も発言も、エミリーみたいな「いい子ちゃん」には劇物でしょうねぇ…』

『だろうね。でも、僕は優等生に、教本通りに魔法を扱う魔法使いに興味が無いんだ』

『ほんと、あんたは滅茶苦茶ですね…規格外すぎる』

『君もだろう?』


エミリーは良くも悪くも「この世界の規定内にある魔法使い」だ。

学校でも優等生だったし、なんなら学内で誰よりも賢者に近い魔法使いと言われた存在。

私という例外のせいで曖昧なものになってしまっているけれど、彼女は間違いなく実力者。普通に強い。

けれど彼女は私や師匠に追いつけない。最大の欠点を打ち破らない限り。


『…今後の為にも、エミリーさっmに僕の実力を見せておきたい』

『ああ。ついていくんでしたね。エミリーを懐柔したら後は楽勝ですもんね。了解です』


二人だけで話した後、先程まで周囲に聞こえるようにしていた会話の続きをする。

まずは後方で呆然としているエミリーをこちらにけしかけるところから。


『ええ。規格外。エミリーにはほど遠い高みにいるぜ!』

『あなたねぇ!』

『よし。エミリーさん確保!』

『にゃっ!?』


挑発にのって来たエミリーを確保し、彼女を動けないようしっかり抱きしめる。

設定上は同い年、実年齢は彼女の方が一つ上か。

こうして抱きしめるのは初めてだが、どうやらアリアと同程度の体格らしい。

それにまな板族と来た。いいね、かなりまな板だよ。これ。


『ど、どこを触っているんですか!?』

『ま・な・い・た』

『君たち。馬鹿なことをしていなくていいから。特別授業を始めるよ』

『と、とくべ…?』

『おねしゃーす』

『とりあえずノワ。今回は杖を返してね。大型で魔力操作が重要な代物。詠唱と流れをよく見せてあげるから。一回で覚えて』

『マジで!?師匠詠唱するんですか!』

『たまにはね』

『やったぁ…!了解です!詠唱ちゃんとしたのいつが最後でしたっけ?』

『そうだなぁ…十二歳の時。水を深水に宿らせた時かな〜』

『え、詠唱をちゃんと?何をそんな当たり前のことを言って…』


困惑するエミリーを抱きしめつつ、私は師匠へリュミエールを渡す。

一瞬、魔法が揺らいだ気がしたが…これっきりだ。今後は乱さない。


『けど、杖無しでは一時間程度しか魔法を保てないので。それ以内には終わらせてくださいね』

『杖無しでも魔法を保てていることがおかしいのですが!?貴方たち、なんなんですか!?』


『勿論だよ。さて、今日の授業は時間遡行魔法!ついでに蘇生魔法で時限式の生命を作り出してナッティーゾンビも作っちゃうぞ〜!』

『うぇええええええい!』

『はああああああああ!?』


エミリーが動揺している隙に、私はアリアへアイコンタクトを送る。

今のうちに、全員師匠の後ろに集合…と。

彼女は私の意志を理解してくれたらしく、四人を集めて師匠の近くに集まってくれていた。


『ついでに管理局の悪事も暴いちゃおうぜ!』

『な、なんなんですか。なんなんですかぁ!』

『『さあ!掟なんてクソ食らえ!行こうぜ!禁忌の先に!』』

『いやあああああああっ!』


エミリーの叫び声と共に、師匠は大型の魔法陣を展開する。

光が差さない湖でも十分に輝く紺碧の魔法陣。ここまで大々的に魔法陣を出すのも久しぶりのような気さえする。

禁忌魔法にズブズブの師匠がお送りする、禁忌魔法のオンパレード。

手始めに発動するのは、時間遡行魔法。


『流転する時を司りし星々。今一度、我へ時の摂理に触れる権能を与え、巡る時を逆巻き、記憶に刻まれし断片を再び現世に顕現せよ!』


時間遡行魔法を使用した後、流れるように蘇生魔法。この魔法は教えられているのでカット。

師匠は無詠唱でナッティーに蘇生魔法をかけて———彼の仕事は完了だ。

師匠の魔法で受肉し、再びこの世に命を与えられたナッティー———正確には「ナッティーゾンビ」は、師匠をじっと見つめる。

魔法をかけた彼を「主」として認識しているのだろう。師匠の前では巨大生物も従順に頭を下げていた。


「…ぎゅう」

『いいこだね。さあ、ナッティー。君を殺した相手に復讐しておいで。その時間は僕が授けよう。君の未練は、それで果たせそう?』

「…ぎゅぅああああああああああああああああっ!」


師匠に返事をするようにナッティーは勢いよく水上に飛び出し、その姿を再び地上へ現した。

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