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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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28:ナティ湖のナッティー

「師匠さぁ。そういう大事なことは早く言おうよ…せめて時雨さんには伝えた方がいいのでは?」

「だって、心配させてついてこられると困るし…」

「幽霊でも死ぬリスクとかあるんです?」

「いや、死なないけれど…ほら、捕まったりしたら?時雨ちゃんだとどうしようもないから」

「あー」


確かに時雨さんは自分より強い相手に対して為す術がない。

シフォルを相手になったと仮定した時、彼女は間違いなく「ただの人間」状態になるだろう。

強者相手に自己防衛手段を持たない彼女が、これから先、旅を共にできるかと聞かれたら…無理だろうな。


「はぁ…マジでシフォルのことを考えると憂鬱だよ。こんなテンションで楽しめるかな」

「少しは目的を忘れて息抜きをするのも大事なことだよ」

「そりゃあわかっていますけど…」

「ほら、見えてきたよ。君の行きたがっていたナティ湖。今日は特別にナッティーを一緒に探してあげるから、ね?沢山遊ぼう?」

「ほんと?」

「本当本当。師匠、嘘つかない」

「わぁい!師匠と遊ぶの、夢だったんだよねぇ」


「こんなことが、君の夢でいいのかい?」

「「前世の私」のだからね。約束したじゃん。永羽ちゃんと三人で」

「ああ。元気になったら一緒に遊ぶ、だったね」

「そうだよ。ナッティー見つける前では帰さないから!」

「帰れないんだけどなぁ。まあ、少しはいつものテンションを取り戻しているようだし・・・いいよ。ナッティーを見つけるまで遊ぼうね」

「うん!」


不安が心を占める時間はおしまい。

馬車に揺られながら、次の楽しみを考える。

師匠と、アリアと———永羽ちゃんと遊ぶ。

前世で叶えられなかった時間を、叶えに行こう!


・・


馬車を降りてしばらく歩き、ナティ湖に到着。

…水着に着替えて、ナティ湖周辺の遊泳エリアに一足早く到着していた私はその看板を見て唖然としていた。


「なぁ…」

「どうしたんだい、ノワ」


なぜか麦わら帽子にポロシャツ、半ズボンにつっかけ…田舎の釣りスタイルでエリアにやってきた師匠は私に声をかけてくれる。


「どうしたもこうも、あんたはなんちゅう格好を…」

「僕の露出なんて誰得でしょ?これぐらいで十分だよ」

「これぐらいの威力が半端ない自覚を持てよ」


万年長ズボンとブーツなあんたが裸足で半ズボンになっていることを知られてみろ。

時雨さんどころか舞園も水さんも成仏するぞ。


「君こそなんだいその成金風アロハシャツは。どこで手に入れたんだ」

「そこの売店ですよ。下に水着は着ているので合法です」

「ラッシュガード扱い…」


「主と二番弟子は甘いですね!代わりに私が露出しておきました!」

「わざわざ人間体になってブーメラン履かなくていいんだよ。鳥に戻れ。お前の裸体なんて誰得なんだデブ鳥」

「僕もそう思うな。いつものピニャのままぷかぷか浮いている方がいいと思う」

「主がそう言うなら」


デブ鳥はデブ鳥で過剰露出ときた。師匠も流石にヤバいと思ったらしく、いつもの鳥形態に戻るよう促していた。


「そうそう、これ。釣り入場者特典のナッティーキャップを貰ってね。君こういうの好きだろう?」

「貰うけど…ううううう…!」

「なんだい、なんで泣くんだい…ん?」


師匠にそれを見せると、師匠も「あちゃー…」と言わんばかりの表情を浮かべる


「ナティ湖のアイドル「ナッティー」は○月×日にお空へ旅立ちました。長年のご声援、ありがとうございました。ナティ湖管理局…」

「ナッティー死んでるううううう!」

「あああ。ほら、泣かないの。ほら、ちり紙」

「ぷぴー!」


「どうしましたか、椎名さん」

「どうした?」

「もぐもぐ。ナッティーまんじゅう美味しい…ナッティーもこんな味なのかな」

「「それはない」」


「ああ、アリア…ベリアもヴェルも準備が」


師匠の声が一瞬で止まる。

まさか、アリア…私が勧めたものを何も考えずに着ているな!?

涙を拭い、視界の先に広がる光景を拝むために顔を上げた。

確かにそこには白ビキニ。他にもあったのに私が「アリアに合うサイズはこれしかないねぇ」と勧めた白ビキニを着用したアリアが立っていた!


「どうされました?」

「ああ、いや。ノワ!ガード!」

「ごめんよ、アリア。師匠は時雨さんと水さん以外の女に慣れていないんだ。露出も駄目でね。すぐこうなる」

「そうなんだ。じゃあ、上着を羽織ろうかな」

「駄目」

「どうして?このままじゃ椎名さんと会話がままならないし…」

「私はアリアの大人でセクシーな白ビキニ、拝んでいたいな」

「椎名さん、露出控えめの、可愛い感じの水着だせますか?私も恥ずかしいので、出来れば露出を軽減したく…」

「おやすいごようだよ…」


師匠は私の影で魔法を使用し、アリアにフリルが愛らしい白の水着を着せる。

ちっ…この師匠、余計な事を!


「これで普通に話せるね」

「露出、本当に駄目なんですね…」

「うん。ところでどうだい?」

「ええ。ぴったりです。でも、なぜサイズを…」

「そういう魔法です」

「そういう魔法ですか」


魔法は万能だが、衣服の類いを出す時は「その対象のサイズ」を知っている必要がある。

つまり、この男…女の肌を直視できない分際でアリアのスリーサイズを把握しているのである。

無論、私もこっそり把握している身だ。ここで追求したら私も痛い目を見るからね。ノーコメントとさせてもらおう。


「ノワはなんだよその格好」

「アロハシャツはいいぞ」

「なんでお前は水着じゃないんだ」

「下に着ている」

「脱げよ」

「ヤダよ恥ずかしい」

「アリアにはあんなに水着のみを強要していたのに…?」

「私の露出とか誰得だよ」

「僕の台詞真似しないで」


「てか、あたしにはなぜか探検服を勧めた理由は何なんだ…」

「似合いそうだから…事実似合っているよ」

「そ、そうか…」


ベリアは私が推したとおり、探検家風の衣装を身に纏っている。

この姉チョロいな。


「…ご主人の水着、私は見たかった」

「そういうヴェルは縞模様の全身つなぎ水着とかどこで見つけてきたわけ?」


なんていうか、子供向けならともかく大人向けで実在していたのかと思うような水着だ。

あれを着こなせる大人っていたんだな。ヴェルは滅茶苦茶着こなしていた。


「売店に売ってた。これしかなかったからこれにした…もぐ」

「そ、そう…」


「ところでノワ。一ついいかい?」

「なに、師匠」

「ナッティーは残念だけどさ、これ、ちょっと面白そうじゃない?」

「え?」


師匠が見せてくれた部分に記載されていた文言は、私たちの度肝を抜いてくる。

ナッティー訃報の立て看板の隣には、手配書が掲示されていた。


「…え」

「マジかよ。あの怪獣みたいな生き物を」

「もぐ」

「悪魔や魔法使い以外で殺せる奴がいるだなんて…」


ナッティーは天寿を全うした死に方ではなく、殺害されているらしい。

犯人は三人。うち二人は確保されているらしい。

犯人逮捕の暁には報酬金も支払われるらしい。

これはちょっと楽しくなってきたかも。

ナッティーを殺した人間を連れてきたらお金が貰える。何て素晴らしい仕事なのだろう。

犯人共は私の楽しみを奪ったんだ。せめてお金にはなって貰わないと…。


「ねえ。ノワ…これ」

「お、犯人の写真だ。まだ捕まっていないのは似顔絵らしい…ね…」


逮捕されている二人は写真付きで「捕獲済」と記述されている。

その写真に写っているのはミリアとエミリー。

まさかこんなところで再会するとは思わなかった。


「…ナッティー殺害で逮捕されたのが、ミリア・ウェルドとエミリー・エトワンスってことは」

「もぐ。この似顔絵はパシフィカ・グラウゴスに違いない。遂にやらかしちゃったか…」

「そのパシフィカは行方不明だし…」

「行方不明のパシフィカを探すのも重要だけれど、ナティ湖管理局に行けば、ミリアとエミリーには会えるのではないかな」

「とりあえず師匠、お父さんにミリアとエミリーが法務局へ拘束されていないか聞いてみる。そこから管理局に乗り込むよ」

「私達なら、面会とか出来るでしょうし!」

「頼むよ。とりあえず、僕はパシフィカを探しに行こうと思う、ベリアとヴェルは僕の方に」

「ぴにゃー」

「ピニャは浮いていていいよー!」

「へーい」


デブ鳥の一声を合図にし、私達はそれぞれ行動を開始する。

一時の楽しみだったが、こんな状態なのだ。呑気に遊んでいる場合ではない。

こんなところで見ることになるとは思っていなかった三人の顔。

気分転換の為にやってきたはずだったこの場所で、私たちはもう一つの厄介事へ巻き込まれるらしい。

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