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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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18:第二段階:業火と舞う血晶

グサルの、茶髪に隠れた赤いメッシュが光り———禍々しい色をした業火が舞う。

狙ったとおり。第二段階を開始する前に発動してくれた。感情的で助かるよ。


「…」


散布機の調子は良好。グサル方面に飛んでいったものは無駄になってしまったが、いつでも、形成できる


「賢者、やはりお前は早めに処分した方がよさそうだな!」

「処分ねぇー…あ、一ついいかな?」

「遺言なら聞いてやろう。この俺さ」

「人間製の業火インフェルノは、いかがだったかな?」


あえてあいつの十八番の名を述べて、更に煽っておく。

端正な顔立ちをしているグサルの表情はみるみるうちに歪み、私への怒りを表面化させた。


「あれを…」

「…来るか」

「あれを、俺の業火と一緒にするなぁ!」

「正面からかかって来いよ!「俺の業火」とやらでさぁ!」


私に襲いかかる業火を避けていては、せっかく散布したあれが無駄になってしまう。

だから、私はここで業火をあえて受ける。

結界の一枚が業火で焼かれ消失する時間で、私はある魔法を練り上げる。

グサルが私を警戒したきっかけの一つ。

どちらが彼の警戒度を高めたのか、私にはわからないしどうでもいい。

けれど…どちらにせよ、私の選択は「これ」のみ。

今度は早口ではなく、きちんと詠唱をしよう。


「…豊穣を蝕む寒冷の精よ」

「我が身に降りかかる厄災を蝕み、創始の世界を生み出せ。凍土招来…!この場を凍てつかせろ!」


詠唱したと同時に、周囲の空気は冷え切り———周囲に漂っていた「ヴェルの血」まで凍り付く。

凍り付いたそれを魔法で操り、私はそれを全てグサルへと向かわせた。


・・


ノワの戦闘を眺めていても、何もわからない。

目は舞園さん達のおかげである程度はついて行けるようになったと思っているし、今も「何をしているか」まではわかるのだが…


「何にせよ、魔法の知識がないので…全くわかりません」

「奇遇だね。僕も何をしたのかさっぱりだよ」

「!?」


椎名さんはぼんやりした目をノワに向けつつ、彼女の様子を見守る。


「第一段階の細工は知っていた。ここに来る前、彼女はあの柱に「虫除けスプレー」としての役割を擬似的に与えていたからね」

「…そんなこと、できるんですか?」

「魔法にできないことはない。想像力次第でなんだってできる」

「…だから大爆発」

「そういうこと。本当はこういうこと、してほしくないけれど…」

「この世界にはないのでもう大丈夫では?」

「調べた限りだと、機械都市にはあるっぽいよ。スプレー缶」

「え」

「魔法で疑似スプレー缶も作り出せるし、まあ、なんだ。ノワに悪用されないようにね?しっかり手綱は握っておくんだよ?」

「あ、あはは…あはは…」


なんだろう。これから先も彼女と旅をする前提で考えると…これだけじゃ済まない気がする。

こういう転生もので「現代のものを使って〜」みたいな展開は結構あるけれど、流石にこれは勘弁してほしい。

作るなら…そうだな。定番のマヨネーズとかにしておいてほしい。

スプレー缶とか、使い方次第で武器になりそうなものはもう作らないでほしい。


「さて、問題は第二段階だけれど…」

「椎名さんがわからないというのは意外でした。なぜ、その考えに?」

「ノワが使った魔法は「凍結魔法」なんだけど、タクト型で周囲の空気を凍らせるような真似はできないんだ」

「それはどうして?」

「あの杖はね、今までノワが使用していた杖と違って「練り上げることができる魔力」が少ないんだ」

「では…二本あればどうですか?」

「二本?確かにあの杖は練習用と本番用で二本作って、今朝完成した本番用も彼女に…げぇ」


椎名さんもやっと見えたのだろう。露骨に引いた声を出していた。

ノワは今日、珍しく袖のボタンを外している。

スメイラワースでも長袖を解除しなかった彼女は、今日だけは腕を出している。

あの場は冷えるというのに、なぜあえて素肌を晒すような真似をしているのか引っかかったが…。

腕にきつく結ばれた———否、腕に「埋め込まれている杖」を目視したら、理由も自ずと理解できてしまう。


「あいつ、杖を腕に埋め込んだな!?」

「うぇ!?」

「ピニャ!?」


椎名さんが珍しく大きな声を出す。

彼が驚くというのは、私も一咲ちゃんも…ピニャですら、見たことがない事象だった。


・・


「よっしゃあ!師匠の驚き、ゲットだぜ!」

「よそ見をするな!」


グサルが業火を飛ばしてくる。

まだ動けるらしい。少々凍結魔法のコントロールを間違えたか。

グサルの体内に血の結晶を入れ込んだのは確かだ。

しかし、溶けるまで———もっと言えば彼の身体を蝕むまで時間がかかるらしい。

第二段階は終わり。次は、毒が巡るまで耐え抜く。

それが、第三段階だ。


「いやぁ、まだまだ元気だねぇ」

「人間風情が悪魔を殺せると思っているのなら、見識を改めた方がいい」

「ふむ。それは君もだよ。君は私を殺せない。だって私に殺されるのだからっ!」


できるだけ早く氷を溶かすために今度は熱気を生み出す必要があるはずだ。

スメイラワース程度で倒れた私が灼熱地帯なんて耐えられるわけがないので、そこはグサルの自前に頼ろうと思う。

まさか彼も思わないだろう。自分が、自分の首を絞めているだなんて。

しかし・・・だ

ベリアとヴェルにも言えるけれど、どうして作中に登場しなかった人物がこうして表に出てくるのだろうか


グサルという存在は、双子と同じく賢者ノワには登場しない、

そもそも、賢者ノワの登場人物は基本的に「女」しかいないのだ。

グサルという「青年」は存在してはいない。


例外として、挙げられるのはルーメンのみ。存在だけ仄めかされていたのは、アリアの父としてハイドのみ。

私の養父をしてくれる男以外の男は全員シャットアウトを徹底していたからなぁ…。

余裕はある方だし…少しだけ、探りを入れてみるか。


「ところで君。どうして戦うんだい?大義?それとも娯楽?」

「愚問だな。魔王様の命は天上だ。従わない理由がない」

「…人質を取るような外道っぷりなのに、魔王の命令には忠実なのか」

「俺は自分の命が一番大事だ。強者に逆らう理由はないからな。それに、お前も同じだろう?」

「同じ…?」

「ああ。英雄が進む栄光の道を、共に歩きたいと願う」


「同じではない。私はお前らとは違う。私はアリアを英雄だなんて思っていない」

「ならば問おう。お前はなぜ勇者につく」

「彼女が私にとって、世界で一番大事な女の子だからだよ。守りたいから守る、一緒にいたいから一緒にいる。それだけさ」


ふと、アリアの方を見てみると———嬉しいけれど、照れていて。複雑そうな顔をしていた。


…その隣で般若の顔を浮かべている師匠とハイドからは目を逸らしておこう。

ハイドが怒る理由はわかる。流石に娘はまだ渡したくないらしい。


師匠は、杖の件だろうな…。

元々、師匠は一週間練習で使う杖と今回の戦いに使う杖を作成していた。

両方「仮」なのは変わりないが、杖の作り方———その正規手順を踏んでいる分、握りしめている杖は丈夫な作りをしている。


問題は私が左腕に埋め込んでいる練習用の杖だ。

落下防止の為に埋め込んでいるそれは、この一週間で私の相棒を務めてくれた存在だ。

完成したばかりの杖を受け取った後、この仮の杖は返却する予定だったのだが…。

凍結魔法を使うためにあえて返さなかった。

師匠も返してもらうことを忘れていたみたいだし、都合がいいなぁと思いつつ…腕に埋め込んだなぁ。


杖を埋め込む行為は危険が伴う「魔法使いの禁忌」

杖が周囲の魔力を吸い上げて、身体に排出して…身体が破裂する可能性があるそうだ。

その危険も受け入れて私は今、この場に立っている。

そうでもしなければ、勝機が見えないのだから。


しかし、度肝を抜けたとはいえ師匠の逆鱗には触れているようだ…。

終わった後が怖いな!


さて、時間稼ぎはこれぐらいで十分かな。


「さて、そろそろ時間かな」

「時間…?は?」


グサルの口から血が噴き出す。

ヴェルの血が効き始めた。

さあ、ここを乗り切れば終わりだ。最終段階にしゃれ込もうじゃないか。

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