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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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16:君とまた歩くための戦いへ

オヴィロ法務局———私は気絶状態で地下牢に入れられた為、こうしてまじまじと見るのは初めてだったりする。

私があの地下牢で魔法を使えなかったのは、この銀の柱に刻まれた術式にも原因があるらしい。

ちなみにこれが生えている広場こそ、決戦の地だったりする。

柱の術式は師匠があらかじめ、魔術無効化から虫除けにしてくれたけれど…もう一声欲しいんだよな。


「そういえば、師匠。この柱、擬似的に魔道具に改造できたりしません?」

「できるよ。でも、できるだけ形状が似たものに」


じゃあ「あれ」に魔改造できそう…。

とりあえず閃いた式を書き込んで、壁が破壊されたら同様に「あるもの」を出力するようにしておく。

師匠はそれを見て若干引いていた。人でなしの師匠からしても、これは少々ヤバい代物らしい。


「これでよし」

「…周囲に結界張って対策しないとな」

「それはお願いしますね。師匠!あそこに変な像ありますよ!」

「観光気分で歩かない。僕たちの目的を忘れたのかい?」

「へい!ハイド・イレイスに喧嘩を売りに来ました!」

「よろしい。と、いうわけだ」


和やかな空気はおしまい。

師匠は一瞬で空気を変え、近くにいた衛兵へ杖を向ける。


「ハイド・イレイスとルーメン・エイルシュタットは来ているね?」

「は、はい!」

「到着した連絡はしなくていいのかな?」

「ふ、不要です!ご案内をさせていただきますので、どうか…杖をお納めください」

「うん。怖がらせてごめんね」

「い、いえ…では、こちらです」


ビビりつつも仕事をこなしてくれる衛兵に案内をしてもらい、私たちは上層にある部屋へ案内される。


「こちらの部屋になります」

「ありがとう」

「それでは、失礼します!」


案内を終えた衛兵はそそくさと帰ってしまう。

気持ちはわかる。こんなおっかないのと一緒にいたくないもんな。

しかし…この禍々しい気配。

間違いないな。あいつも来ているらしい。

奴にとっては想定外を引き起こした存在だ。早めに対処をしておきたいらしい。

でも残念。この状況に持っていった師匠は相手すらしてくれないんだ。

私と遊ぼうぜ、グサル。牢屋一ヶ月の恨み、晴らしてあげるよ。


「ヴェル」

「ん。いるねぇ。同族」

「そうかい。通信を入れたから君は水との合流ポイントへ移動して。気をつけるんだよ」

「ん。じゃあ、ご主人は気をつけてね」

「うん」

「そっちのはさっさと死んで、どうぞ。お姉ちゃんをご主人に渡す遺言は忘れないでね?」

「君って奴は…」


最後までぶれないヴェルに指示をだし、一時的に行動を別にする。

師匠が「水に致死量ギリギリまで血を抜いて貰うように頼んでおくかな…」とぼやいていたのは聞かなかったことにしておこう。

大丈夫。うちの師匠甘いから。

そう言って脅しはするけれど、有言実行したことないから。


「さて、ノワ」

「はい。準備万端です。隠し種も既に用意しています。師匠の度肝、抜いて見せますぜ?」

「あれも要求してきたもんね。面白い使い方、期待しているよ」

「はい!」

「では、手はず通りに」

「始めましょう!」


ドアノブに手をかけることもなければ、ドアをノックすることもない。

私たちは今「怒っている」存在としてやってきているのだ。

普通に扉を開けることはしない。

だからといって、扉の先にいる存在を殺しにかかったりはしない。

あくまでパフォーマンスとして、私と師匠は大量の魔力を練る。

私がドアを破壊する程度の威力しか存在しない魔弾を打ち込み———師匠は大きな魔弾をぶち込んだと錯覚させるような爆風と、破裂音を担当する。

本当はたいしたことがない、練った魔力だけ多いハッタリ魔弾だけれども。

ここにいる存在は全員、騙すことができただろう。


「扉の修繕費…」


ただ一人、何も見ていなかった上に別のことを心配しているうちのお父さん以外は、だけれども。


「こんにちは、ハイド・イレイス。売られた喧嘩を買いに来てやりました」

「…」

「ノワ…椎名さんも」


『師匠、ハイドの後ろに「います」』

『うん。じゃあ、ミシェラも回収済だし、このまま戦闘に入るパターン2で行こう。戦えるね、ノワ』

『勿論です!』


私たちを見て、安心しつつもどこか不安げにしているアリアに軽く目配せをする。

大丈夫、大丈夫だよアリア。

私が、この状況を全部ひっくり返して終わらせる。

だから、見ていて。

私の、君ともう一度歩く為の戦いを!


「師匠!師匠がいれば百人力ですぜ!やっちゃってください!」

「えぇ〜。君がやればいいじゃないかぁ」

「私はハイド・イレイスなんかに興味ないですも〜ん」

「じゃあ何に興味があるんだい?君を地下牢に入れたオヴィロの法務局?それだと、君のお父さんを攻撃することになるけれど…」

「ひゅっ…」


お父さんさぁ…いちいち反応しないでくれる?

こっちも必死なんだよ?この次なんだから、集中させてよ…。


「———そんなちゃっちいのじゃないですよ、なぁ、グサル・グザファンっ!」

「ノワ!」

「はいっ!」


師匠が魔弾で法務局の入口広場に繋がる道を作り出してくれる。

私は透明化していたグサルを拘束し、そのままその入口に向かって駆け込み———共に落下を仕掛けた。


「健闘を祈るよ」

「任せてくださいよ!」

「ノワっ!」

「大丈夫だよ〜アリアぁ〜」


地面に落下するタイミングでグサルを地面に叩きつける。

それと同時に透明化が解除される。しかしほぼ無傷。地面にクレーターができた程度だ。

骨も折れていないだろう。悪魔というのは本当に丈夫な存在らしい。


「柱周辺でも魔法が使える…?」

「まあね。もしかして悪魔の能力はこの銀の柱の対象外だった?だよねぇ「魔封」…魔法を封じることしかしていなかったもんね。魔法を封じられたら私が戦えないから、解除させて貰ったけどね」

「なぜ、俺がここにいることに気がついた」

「私賢者ぞ?お前程度の術者がやってくる隠密なんて、容赦なく見破れる」

「…」

「私に冤罪をふっかけた罪は、私が直々に清算してやる。ありがたく殺されてくれ」


師匠が作ってくれた仮の杖を構えて、私はグサルと対面する。

大丈夫だよ、アリア。

私は賢者。そして師匠の弟子。

そして、君の相棒なんだから。


・・


取り残された私たちは、あっけにとられていた。

ルーメンさんは「壁の修繕費…」と嘆いていたが、それどころじゃない。


「お父様!」

「あ、アリア…私は」

「いやぁ。助かりました。まさか本命がここに来ていたとは思わなくて」

「椎名さん、これは」


事情を知った上でここに残り、法務局を中心に結界を張る椎名さんに声をかける。

お父様もルーメンさんも、事情をまだ受け入れていない様子だったし…。

お父様は、杖を壊した負い目で話すことを渋っていたので…ここは代表して。


「僕らは「ハイドに付着した魔力反応を解析し、グサルを追う計画」と「グサルが実際に来ていた場合、彼と戦闘する」二つの作戦を用意していたんだ」

「これは、後者の作戦…」

「うん。ノワが実際にグサルと戦う方に転がってくれた」

「でも、悪魔は聖剣で」

「大丈夫。対策は済んでいるから。それよりも君は無事かい?」

「ええ…」


椎名さんがいうのなら、大丈夫なのだろう。


「君も気を張っていただろう。今回は休んでいて大丈夫だから、君はここにいるように」

「…はい。でも、対策って?」

「見ていたらわかるさ」


「…あ、あの」

「ハイド・イレイス。僕は別に怒ってはいない。君にも事情があったことは理解しているからね。無事で何よりだよ。怪我とかはしていないかい?」

「問題は、ない…すまない」

「杖を壊したことは気にしないでいい。君はやっと気が抜けるんだ。奥さんのことは心配しなくていい。僕らで既に保護をしている。まだ目覚めていないけれど、もうしばらくしたら目を覚ますさ」

「そうか…」

「よかった」


一番の不安だったお母様が無事なことに安堵して、私たちは大きく息を吐く。

でも、グサルからはお母様が連れ去られたなんて聞いていない。

…何が起きているのだろう。


「…魔法使いさん」

「なんだい、ルーメン・エイルシュタット」

「…娘は、大丈夫なのでしょうか」

「死ぬ心配はない。あの子は十分強いし、対策も用意した。だから、黙ってみていてください」

「…遠いから、近くで見たい」

「移動しますか?」

「私もお願いします!できるだけ、近くにいたいから!」

「…アリアがそういうのなら、私もついていこう」

「わかりました。では、移動を開始します。結界の外から決して出ないでくださいね」


ルーメンさんはノワの姿を心配そうに見つめつつ、椎名さんの指示を受けながら移動を開始する。

できるだけ近くで、貴方の戦いを見届ける為に。

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