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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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13:こなすべき課題

師匠の手袋はどうやら魔道具らしい。

ぶかぶかだと思ったそれは、私の手に合わせて大きさを変え———瞬く間にぴったりに調整されていた。


「魔道具なのはわかったけれど、その効果は…ああ、あったあった」


魔道具は媒体に魔法陣を刻む。

布製に書き込むのは大変で、なおかつ洗濯とかで消える可能性が高いからあまりおすすめされない。


しかしこれはどうやらインクの上から焼いて定着させているらしい。

布製の魔道具に魔法陣を刻むのに使われている手法だ。魔道具自体を焼いてしまう可能性が高いので、滅多にお目にかかれない代物だな。

よくもまあこんなめんど…器用な真似を。


そういえば、師匠は魔導具の製作を行う魔具技師の免許を持っていなかっただろうか。

こういうことが出来るのも、その関係かな。


しかし、その手間を惜しんででも必要な魔道具とも言える。

師匠が身体の一部…必需品という代物だ。

何があるんだ。疲労回復効果か?

魔法陣に刻まれた文字を解読し、その効果を確認しておく。


「大きさ調整に、強化10倍…?なにこれ、産業廃棄物?」

「人の身体の一部って言った代物を早速ゴミ扱いか…」

「でも、事実師匠が身につける代物にしては、なんか拍子抜けするほど何もないっていうか…」

「これを見てもかい?」


師匠はその辺にあった小枝を選んで、利き手の左で掴もうとする。

しかし、掴めたはいいが———小枝を持つ左手は小刻みに震えていた。

師匠自身も、眉間にしわを寄せている。


「演技じゃ、ない…のか」

「桜哉ならともかく、僕にそこまでの演技力は求めないでくれると」

「握力十倍って、師匠の握力どうなっているんですか」

「両方3」

「さん」

「そう。3。手袋の術がないと生活もままならなくてね」

「だろうね!?初めて聞いたんだけど!?」

「そうかい?僕はよく聞くけど」


そりゃああんたの出身地が終末病棟だからだよ!

大社であんたにそういう報告する人間も手に後遺症が残った存在じゃないの!?

…なんてツッコみたいが、無駄な労力なので辞めておこう


「仕事中の事故ですか?」

「いいや。小さい頃の怪我」

「入院生活のくせに、なんでそんなことに…」

「七歳の秋から九歳の春まで、夜中に夢遊していた時期があってね。両親を探して壁を叩いて、起きたら粉砕骨折の繰り返しを…」

「そして3に至ると」

「そういうわけだね。さて、そろそろ無駄話も終わっていい頃だ。食事は摂り終えたね?」

「摂り終えましたけどぉ…まだまだ話したりないというか」

「話し足りてよ」

「もう少し、師匠のよわ、いえ過去を聞かせて頂けると。参考にしたいので」

「完全に弱みを握ろうとしている魂胆が見え透いているよ?」


手袋を外し、ちょちょっと嫌がらせをした後…師匠に手袋を返す。

師匠は受け取った手袋をさりげなく身につけるが、左手をそれに入れた瞬間…違和感を覚えた。


「…ねえ、ノワ?」

「なんですか?」

「これ、なぁんだ?」

「私が師匠の為に忍ばせたフクロモモンガちゃんです」

「どこから出した!?」

「…ふっ」


ここで師匠に、手袋を外してから隠していた左手を———「杖を持った」左手を出してあげる


「召喚魔法、成功したっぽいですね」

「こ、こいつ…魔弾を全然作れなかった分際で、高難度の魔法を…!」

「モモンガちゃん、師匠の手袋気に入っちゃいましたね?」

「ぐぬぬ…」


師匠はそっと手袋を置き、腰につけていたミニ鞄の中から予備の手袋を取り出す

ふむ。あの鞄も魔道具らしいな。

言うなれば無限の収納力を持つ「マジックポケット」というところか。ししょえもんは手袋以外にもまだ何か持っていそうだな。


「…何か使える道具とか持ってないあだぁ!?」

「君は油断も隙もないね!」

「…げんこつ痛い」

「そういう姑息な部分があるから、タクト型は君に最も適した杖だと心の底から思うよ…」

「誰が姑息ですか…って、師匠。私はロッドよりタクトの方が適していたりするんです?」

「魔力量や才能を考えるとロッド一択だけれど、君の性格上はタクトが確実に向いているよ」


なんだその言い草は。

まるで私が不意打ち大好き魔法使いみたいじゃないか。


「こっそり杖を忍ばせて、気づかれないように相手の意識をかき回した上で魔法を使うって言うのは意外と難しい」

「ふむ」

「けれど君はそれが可能。無駄に達者な口で意識をかき回しつつ、君は召喚魔法でいたずらを仕組んだ。からかう目的であったとしても、その成功は褒めるべき事象だ」

「…」

「いいかい、ノワ。それがタクト型の戦い方。君が一週間で組み立てる戦法の基礎だ」


私にとってタクト型というのは未知の存在だ。

けれど、今触れただけでも…大体の事は掴めた。


「つまり師匠は、手数と速さと隠しやすい長所を活かした戦いを…」

「足りないね。それに加えて君の知恵だ」

「…私、控えめに言っても、頭がいい部類ではないのですが」

「悪知恵が働くじゃないか。それで十分だよ」


それは褒められているのだろうか…まあ、いいか。


「ノワ。僕から一つ課題を出そう」

「慣れる以外で、です?」

「ああ。君ならやり遂げられると信じて、僕は君に課すよ」


師匠の課題というのは、今までもかなり厄介で正直聞かなかったフリをしたいぐらいだ。

まあ、今回は流石に「グサルを「無抵抗状態でトドメが刺せる」状態にしなさい」だろうアリアが聖剣を刺すだけでお手軽討伐できる状態。うん。そのはず!


「グサルは君が殺しておいで?」

「悪魔は聖剣でしか殺せない設定をお忘れで?」

「君こそ「ある事実」をお忘れで?ベリアとヴェルに協力して貰っていいからさ」

「…?」

「君は「悪魔の殺し方」に対する知識を拡張すべきだ。先入観を破壊しなさい」

「それは、確かにそうですけど…なぜ?敵は聖剣で倒す。その法則は破らない方がいいのでは?」

「別に「実在していない」ものではないのだから、暴いたって問題ない。聖剣以外で殺す方法を見つけるんだ。今後の為にもね」


課題に対する指示を出した後、師匠は休憩時間も終了と言うように…野営設備を消す。

私は修行を再開し、タクト型の杖に慣れる特訓を続ける。

二日目には、師匠が用意したナメクジ君を含んだ魔物を退治できるように。

三日、四日———と、日々を過ごし…。


気がつけば期限の一週間になる「六日目の夜」になっていた。

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