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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第4章:帝都「ナティア」/賢者様の追放回避三者面談

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6:師匠で友達

「まずは、本来のにょきにょき草の杖の未来がどうだったか思い出してくれる?」

「本来であればにょきにょき草の杖は破壊されることなく、賢者ノワの旅…その最後まで同行するはずだった、ですよね」

「そうだね。最終巻のプロットまで、にょきにょき草の杖は賢者ノワの手にあった」

「しかし、それがこんなところで破壊されてしまった。この世界の魔法使いは杖を使用して魔法を行使する。例外はない」

「魔法使いとして潰すため、杖を破壊したと考えるべきですね」


ノワが同じにょきにょき草で新たな杖を作り出し、杖を持ち替えた…なんて描写はなかった。

それにあのにょきにょき草にはきちんとエピソードが存在している。

魔法学校に入学する前、ルーメンが「高名な魔法使いとして、世界中に名を轟かせることができますように」と願いを込めて贈ってくれた種から作られたものだ。

他のにょきにょき草では対応できない、唯一無二の存在。


「破壊されてしまった今、一からにょきにょき草を育て直すには時間がかかるよね。ましてや、ルーメンが贈った種という条件付き。流石にもう手元に種は残していないだろう?」

「杖がどういう存在なのかは知っていたので、回収率を高めるためにも全ての種を埋めて…あの杖を作った。だから、その種はもう…」

「君の選択は正しい。あの杖がなければ賢者ノワではない。けれど想定外が起こった」

「物語から逸れたことによる、想定外」

「うん。元々ここでアリアが君を追放するだろう?しかしそれがハイドに置き換わった」


彼の追放宣言はアリアが言わなくなったことで、それに親しい立ち位置の人物が代弁したと考えるべきかな。


「ハイドの件はひとまず置いておいて、僕たちが考えなければいけないことは「君に関する情報をハイドが手に入れるまでの流れ」と「敵の目的」かな」

「まずはハイドがここに来るまでの流れですよね。これは全部私の冤罪に対して、娘のことが心配になったハイドが来たと考え…あれ?」


時系列を整理していると、おかしいことがわかる。

私たちを追い越して、ハイドがオヴィロに入るためにはあの手段しか存在しない。

でも私はハイドが使ったであろう「あの移動手段」に関する情報を得ていない。

せめて移動にかかった時間がわかれば…。


「君が求めているのはおそらく「メルクリア王国とオヴィロ帝国を繋ぐ列車の移動時間」だね?」

「はい。それがわかれば、ハイドがいつ動いたか推察できる」

「…今回、僕らは水の助言で列車旅をしたんだ。長くて大変だったけれど…そのおかげで、君に有益な情報を与えることができそうだね」


なんと。魔法で飛んできたかと思っていたから…でも、今回ばかりは助かったらしい。

おかげで私は「答え」に辿り着ける。水さんには後でお礼を言おう。


「とりあえず、欲しい情報が手に入ったみたいだし…時系列を振り返ろうか」

「はい…まずは、私が地下牢に入って一ヶ月」

「その一ヶ月前に、君たちは国境を越えて、ルーメンとハイドに捕まったね」

「その時点でハイドは私の罪を知っていなければならない」

「なおかつ、知った状態でメルクリア王国からオヴィロまで移動しなければならない」


ふと、師匠に顔を向けると彼は私が求めている情報を教えてくれる。


「僕のスタート地点はメルクリア王国の王都「メルクリッド」だ。君たちの旅路を列車という形で追いかけたことになる。ちなみにその列車は一週間に一本の頻度で運行しているようだね」

「ここに到着するまでに、何ヶ月かかりました?」

「一ヶ月半だね。今回の列車旅で事故はなかったから、スムーズに行けた方かと」

「今回の…?」

「僕たちが乗る列車の二週間前に出た列車、事故が起きたらしくてね。僕たちが乗った列車の先週分は運休したらしい」


そうなると、ハイドが乗った列車はどんなに遅くとも…師匠達が乗った列車の、二週間前に出発した列車になる。

その二週間前でも脱線事故が起きたから…到着はスムーズにはいかない。

さらに遅れが生じたはずだ。

考えれば考えるほど、頭がおかしくなってくる。

その考えが正しいのかわからなくなるほど、混乱してしまうのだ。


「それに加えてハイド達の場合は王都が起点じゃない。農耕都市リーテの、イレイス家から」

「そこから王都に移動するまで、何ヶ月かかる?」

「…馬車で一ヶ月、半」


この時点で全部がおかしいだろ…

あの時は狼狽えていたから、彼の登場に驚いていたから。

それよりも根本的な問題に気がついていなかった。


「ハイドに君の「ミドガルの冤罪」が伝わっている頃、君たちはまだスメイラワースあたりじゃないかな?」

「完全に私を嵌める気で…!アリアが危ない!早く迎えに!」

「はいはい。君が今特攻しても、アリアは逆に殺される可能性があるから落ち着きなさい」

「でも!」


「気持ちはわかる。けれど、僕らは敵の正体すら掴めていない。ハイドは利用されているだけの人間かもしれないし、はたまた化けた敵かもしれない」

「…断言が、できない」

「そう。今は断言ができない状態。きちんと情報を集めて、この一件を最善な形で終わらせなければ、君とアリアの関係にも亀裂が生じてしまう。君は無実の人間を殺すのかい?アリアの前で、彼女の父親を殺せるのかい?」

「…」

「感情にまかせてはいけない。君がアリアを、永羽さんを大事に思っていることは理解している。だからこそ僕は君たちの関係が良好であるように手を尽くす」

「師匠が、師匠だから?」


師匠としての役目にそういうのも含まれているのだろうか。

この人の場合は含まれていそうだな。

敵には容赦ないけれど…身内には甘い。


「それもある。言っただろう?君のコンディションを整えるのも僕の仕事だ。まあ、それを置いても僕は君たちの友達だからね。喧嘩しているところなんて見たくもないし、どちらかが恨み、恨まれる関係には絶対になってほしくない」

「気を遣ってくれてありがとう」

「お礼を言われることはしていないさ」


紅茶を口に含み、気持ちを切り替える。

心は落ち着いた。もう愚策には走らない。


「しかし師匠。それなら私は敵に…ウェクリア時点で排除しなければと認識されていたことになりますよね」

「そうだね。ウェクリアで「それ」はアリアより君の方を警戒した」


けれど、私はウェクリアで目立つような真似をほとんどしていない。

アリアの演説の方が人目は引くし、教会内部のことを知るのなら舞光の暴走に目が行く。

それでも私を警戒する「目立つ真似」は・・・。


「水流魔法と凍結魔法…」

「そう。その二つになるね」


もしかしたら、敵はその二つが滅茶苦茶苦手なのかもしれない。

悪魔ならそれらで弱った時に、アリアが聖剣を刺せば簡単に倒せる。

これなら、アリアと私を引き離した理由にもなるが…。


「ねえ、師匠。師匠のことだからもうアリアの方は調査を進めていると思うけど」

「その話は…」


不思議なタイミングで扉がノックされる。

こんな夜更けに来客なんて…もしや敵襲…?

私が立ち上がろうとすると、師匠が手で制止する。

彼は落ち着いたまま。どうやら想定外では無いらしい。


「ちょうどいいや。生麦、生米」

「…なまたまご」

「よし。入って、ベリア」

「おー…しかし、なんで早口言葉を暗号にするんだよ」

「もぐもぐ。パン美味しい。もぐもぐ」

「この世界の住民は早口言葉を知らないからね。こういう時「前世の知識」って役に立つよね」


部屋に入ってきたのは、ベリアとヴェル。

探偵とその助手みたいな装いの二人はおそらく師匠に命じられて、アリアの調査をしていたのだろう。


「あ、ご主人。無事だったんだ。よかったぁ」

「二人とも、無事に国境を越えられたんだ」

「まあな。そこはうちのご主人様が手を貸してくれたから。それよりも、大丈夫か?」

「うん。休んだし、回復はしているよ」

「そうか。それで、今は二人でこそこそ作戦会議中か?」

「状況を確認しているところさ。で、今はちょうどアリアに関する話をしていてね」

「私たちの帰り、ちょうどいいものだったみたい。お姉ちゃん、調査結果を報告しよう。ご主人も、こいつも勇者アリアのことを心配しているだろうから」

「そうだな」


ベリアとヴェルは師匠が用意した椅子に腰掛け、ここに到着してから見てきたことを話してくれる。

到着後、何があったのかを。

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