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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第3章:常夜都市「ミドガル」/蜜月にナイトメア

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40:誓約のネクタイ

部屋に戻った私たちは肩の力を抜いて、揃ってベッドの上に沈む。

まだやるべき事があるのに、身体が言うことを聞いてくれない。

それほどまでに疲れているのだろう。

再合流まで、しっかり休まなければ…。


「一咲ちゃん、どうしよう。目が痛い…」

「治癒魔法かけてあげるよ、永羽ちゃん。ほら、おててどかして。瞼は閉じていてね」

「ありがと〜…はふぅ」


目元に暖かな手が乗せられる。

その瞬間、目の疲労は徐々に解けて…普段通りに開けられるようになっていた。


「聞いてはいたけど、見るだけって言うのも大変そうだ」

「うん。一咲ちゃん達も大変だったね」

「まあね。でも、それが必要な材料だから」

「必要な材料って?」

「リラを生かす…かなぁ。あれ?どうして驚いているの?」

「…問答無用で殺すかと」

「無用な犠牲はできるだけ少なくしたいからね。あと、彼女を殺せばエミリーから恨みを買うことになる」

「事情を、説明しても?」

「それでも駄目だと思う」

「なんとなく?」

「うん。なんせリラは、彼女の親代わりなのだから」


私たちだって何らかの理由で「今まで親をしていた存在」を殺せと言われても、抵抗するだろう?

最後の言葉に対して静かに頷き返す。

家族というのは、いかなる形であっても失いたくない存在だから。

たとえ、殺さなければいけない状況でも…救う道を探してしまうだろう。


「ベリア」

「ああ」


声をかけられた協力者は、すすっと部屋に入り込んでくる。

帽子を脱いで一息はいた彼女は、首に触れて…椎名さんへ連絡を取ろうとしてくれているが…。


「ダメだあいつ連絡つかない」

「風邪を引いているのは確かだし、まだ寝ているんじゃない?」

「「肝心な所で役立たずだな」」

「二人揃ってそんなこと言わないの…」

「ベリア〜。しばらく通信待ちするんでしょ〜?」

「ああ」

「んじゃ師匠が出てくるまで雑談しておこうか」

「このタイミングで?」

「だって、リラ関係の話をするにしてもヴェル関係の話をするにしても時間が微妙じゃん。それに皆合流していた方が何度も話をせずに済むし…」

「まあ、もっともだけど…」

「それなら、私から二つほど気になっていたことがあるの。まずは一咲ちゃん」

「ん〜?」

「椎名さんが記憶を取り戻した時に巻いたネクタイって、なんなの?」

「ああ…詳しく説明していなかったもんね」

「誓約の証…とか、言っていたけど。その誓約ってなんなの?二ノ宮さんは魔法使いじゃないよね…?」


「ぴにゃ(順を追って説明しよう。あれはね、バカ葉が身につけていたネクタイ!)」

「ばか…?」

「ぴにゃっ(バカ葉はバカ葉。主が夜通しでテスト対策してカンニングまで幇助したのに赤点ギリギリの赤いバカ!)」

「雛鳥、なんて?」

「バカ葉のネクタイって言っているけど…」

「ああ。二ノ宮さんの事だよ。師匠がカンニング幇助したのに赤点ギリギリだった事が印象深いのかな…」

「カンニング…?」


なんだろう。すごく嫌な予感がする。

目にも私の考えが漏れていたのだろう。一咲ちゃんはゆっくりと目を伏せて…白状してくれた。


「ちなみに、それを参考に魔法学校でカンニング三昧を」

「やっぱり!」


その話を聞いて閃いたのが、賢者認定試験のカンニング。

つまり、ノワがとった手段は———椎名さんが二ノ宮さんに使った手法そのままというわけだ。


「あの話は正直笑い事じゃないんだけど、まさかこんなところで役に立つとは思わなくてね」

「同じ方法でカンニングしていたの?」

「師匠の場合はあくまでも試験者に対するカンニング幇助だね。私は自らカンニングする必要があったから、参考にした程度かな」

「探知妨害とか、そのあたり?」

「そうだね。それができないと計画すら実行できないから、ここは死ぬ気で習得したね…」

「そんなことに必死になるのは駄目だと思う」

「必死にならなきゃ「賢者」にはなれず、物語を始める事すら叶わず、君と出会うことも叶わないからねぇ。取れる手段は全部取ったつもりかな」


始まる前から、彼女は全ての事情を知った上で動いていた。

その性質で超えられないハードルも沢山あったと思う。

けれど彼女はノワとして、私と出会う道まで辿り着いてくれた。

そう思うと、私は彼女に申し訳なくなるほど「のほほん」と生きてきたのかもしれない。


「…なんかごめんね?」

「謝る要素どこにあった!?」

「あ、いや…そのね。私、一咲ちゃんに比べたら、普通の貴族令嬢っぽく生きてきたかもって考えちゃって」

「んー…いいと思うよ。永羽ちゃんは記憶を取り戻してから、自分なりにこの世界のことを調べたりしてくれていたりするじゃんか」

「先生から習った程度だけだよ」


「私は「ノワ」になる為に必死だったからさ。そのあたりは全然なんだよ。君が沢山調べて、学んでくれていてよかった。おかげで道中、知識不足で困ることはなかったじゃん?」

「そうかな…」

「そうだよ。だから気にしないで。私たちは互いに不足していたものを互いが得て、ちゃんと支え合って、今を過ごしているんだから」

「…」

「境遇の違いなんて当たり前だし、その環境の中で、各々自分にできる最善をしてきた。そして今がある。これでいいんだよ」

「そっか」

「うん。それでいい」


微笑んだ彼女は私の額から前髪を当てて、そのまま頭に手を持って行く。

軽く数回、頭をぽんぽんした彼女は、もう一度、安心させるように笑ってくれた。

それにつられて私も笑みが零れた。


「さて、話を戻すけど、結局このネクタイはなんなの?」

「私の記憶違いだと困るから、改めて教えてほしいな。これは椎名さんにとって、どういうもの?」

「ぴにゃあ(誓約の証!主と紅葉が結んだ約束の証!)」

「あのネクタイにはお守りみたいな術が組まれているんだけど…それは誓約の関係だね」

「時雨さんのお守り?」

「そうそう。あの人、触ったものが何でもかんでも浄化作用がある代物に変わる「呪術殺し」だからさぁ…お守りは意識して作ったものだから効果は強いんだけど、ネクタイは無意識だからそこまで効果はない。けれど、悪魔に投げれば浄化可能だよ。だって二ノ宮謹製だもの」

「二ノ宮謹製って、何が凄いの?」

「ええっと、どこから説明したら…」


「バカだけど大社の羽持ち、つまり霧雨永羽。生きていたらお前が辿り着いていた称号を持っていた男が作った浄化作用のある代物な訳だ」

「羽持ちって、凄いの?」

「ああ。大社の羽持ちっていうのは誰もがなれる存在じゃない。あの人でなしを含めて、全員、強さがぶっ飛んでいる。あの人でなしが浄化魔法を使用できないのはいいハンデだぞ。使えたら、この物語は一瞬で終わっているレベルだ」

「…魔王討伐も夢じゃない、とか?」

「そういうこった。ましてや、そのネクタイの持ち主は浄化が専売特許だった男。ネクタイを押し当てるだけであたし程度なら殺せると思う」


そこまでの効力があるのなら、まだ返さなければよかったな。

そんな顔を私も一咲ちゃんも浮かべていたらしい。


「…お前ら、割と利益重視だよな」

「そう?」

「そうかなぁ」


そんな私達を見て、ベリアが小さくため息を吐く。

その横で、ピニャ君達はお腹が空いたらしく…今まで大人しくしていたのだが、腹が減ったというように鳴き出した。


「ぴにゃー!」

「にゃにゃー!」

「あー…これ腹減ってる感じでしょ」

「ごめんね。声、聞こえなくて」

「本能で喋っているってことでしょ。ほら、師匠の魔石だよ。食って肥えて美味しいチキンになりな」

「ぴにゃ(お前がな)」

「ぴにゃにゃ(餌係の分際で我々に餌になることを求めるとは…)」

「ピニャ君…?」


やっぱりピニャ君達から不穏なワードが時折聞こえてくる。

二羽は真顔で魔石を受け取り、それをくちばしで挟み込んで魔力を吸い上げている様子。

その様子を見て…一人だけ反応が異なる存在がいた。


「これマジ間抜け面だよね」

「一咲ちゃん」

「…じゅる」


「ベリア、魔石に興味あるの?」

「あ、いや。なんでもないからな!てか、お前らは二人の時だと前世の名前で呼び合っているんだな」

「おかしい、かな?」

「別に。好きにしたらいいさ。ただ、人前では気をつけろよ?」

「うん」


「…あ、やっと通信に反応が。ノワ、そろそろ正気に戻れ」

「え〜…」

「お前の悪行、報告するぞ」

「それは勘弁してくれ」

「じゃあ正気に戻れ」

「おう」

「事情は聞いていると思う。今から報告始めるぞ」

「あいあいさー」

「アリアはどうする?今から通信を始めるけど…一緒にいるか?」

「うん」


ちょうど通信が入ったことで、話は中断し、連絡に突入する。

また、聞きそびれてしまった。

ベリアの両親の事。悪魔の双子のこと。

…今回の件に関わりそうな情報がありそうな気がするのだが、また機会はあるよね。

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