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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第3章:常夜都市「ミドガル」/蜜月にナイトメア

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37:私が「勇者」になるために、学ぶこと

ピニャ君達の案内で、私たちはその場所に辿り着いた。

墓がまだ立てられていない平地。

その場には、ベリアによく似た少女が水さんと舞園さんと対面していた。


「アリア、こっちだ」

「ベリア。なんでここに…」


二人の前に立つ少女とこれまたよく似た———というか、ベリア本人が物陰から私を手招いてくれる。

パシフィカが一瞬、ゴミを見たような目をしたような気がするが…気にしないようにしておこう。

蟠りはとりあえず、落ち着いたら解消…。

そうしないと、ベリアの身が非常に危ない…。


「ヴェルの足止めをしていたら、女が割り込んできた」

「水さんね。じゃあ、あの向かい合っている子がヴェル?」

「ああ」

「遠目だけど…そっくりね。髪の長さぐらい?」

「後は目元が若干違う。あたしはつり目。ヴェルは垂れ目」

「へぇ…双子でも違うのね」

「同日に産まれただけで、同じ腹から産まれたわけじゃ無いからな〜」

「…双子、よね?」

「ああ、双子だ。ん?もしかして…ああ、そうか」

「?」


ベリアと私の中でなぜか「双子」という概念に関して差があるように感じた。

同じ腹から産まれたわけじゃない…なんて、双子としてはおかしい情報が飛んできたけれど…今、答えに辿り着くことはない。

ベリア自身は椎名さんの記憶を参照して答えに辿り着いたみたい。


「長くなりそうだから、後で説明する。で、このあたしを害虫のように見下ろすこいつは?」

「この子はパシフィカ。太陽の精霊で私の友達」

「どうも。パシフィカ・グラウゴス。アリアの「友達」です!」


なんだか友達の語気が大きいような…。

威圧的な態度でベリアに接するパシフィカを宥めつつ、話を進めていく。


「パシフィカ。こちら、ベリア・ベリアル。悪魔だけど、私たちに協力してくれている子なの。だから」

「ああ、あの賢者の師匠にけちょんけちょんにされた悪魔ですか」

「けちょ…?」

「その言い方はやめろ。ま、事情は聞いているみたいだし、あたしが裏切れない立場にいることはわかってんだろ」

「ええ。だから「今」は信用しておきます。アリア、安心してください。何もしませんので」

「し、信じるからね?」

「ええ。信じてください」


にこやかな笑顔で告げる彼女に、若干の恐怖を抱いたのは言うまでも無い。

…この世界において「悪魔」がどれほど忌み嫌われているのか、私はまだ知らない。

少なくとも魔王を中心に、この世界を乗っとろうとしていることぐらい。

ベリアは「反抗した理由」を、パシフィカは「忌み嫌う理由」を、それぞれ知っているのだろう。

私もいつかは知らなければならない。

この物語の流れを、この世界に根付く問題を。


「そういやさ、アリア。あいつも「あれ」の仲間でいいんだろう?」


「あれ」と告げると共に、彼女は首に触れる。

それを指す人名は、パシフィカの前だから出さないのだろう。

本当に、気を遣われてばかり。


「ええ、ノワの師匠の仲間。守護霊をしているらしいわ」

「そうか。やっぱりあの人でなしの仲間なだけあるわ…」


ベリアが視線を向けた先は、三人の光景。

水さんがメインでアタッカーを務め、ヴェルに対して素早く切り込む。

彼女の攻撃はあまり当たっていないように見える。

ヴェルも悪魔———それなりの戦闘力も回避力も備えているというわけか。

しかし、ピニャ君の言うことが確かなら…。


「貴方の攻撃、かすり傷だけでも厄介。あの渦は———」

「「もう遅い」…なーんて、一度は言ってみたかったんだ!」


聖剣によく似た細剣の先に灯った青い光。

杖のように剣を振ることで、そこから水流が現れる。

それはヴェルの方へまっすぐ進み、彼女を一瞬にして水の檻へと閉じ込めた。


「渦だけじゃない…」

「私が宿る剣は「深水ふすい」手札は渦だけじゃない」

「ん。水なら操れるってわけか…本当に、厄介な幽霊…ふんっ!」


何かの術を使ったのか、その檻から抜け出したヴェルの方からは雷撃らしき光が現れた。

激しさを持つ光は水さんの元———手元の水流の方へ流れていく。

感電を狙っている?考えとしては妥当なところ。

———しかし、もう一人が黙っているわけがない。

光が水さんに到達する直前、その間に透明な壁が出現し、光を霧散させる。


「…感電狙いか。俺たちは死人だぞ。そんなものが効くと思うのか」

「じゃあ、なんで結界?効くから守っているんじゃないの?」

「愚問だな。水だからだ」

「…!」

「彼女と譲が傷つきそうな事象から守るのは、俺が「舞桜」に宿った日から続く義務。今度は、きちんと果たす」


水さんが「水流」と「もう一つ」の能力を持つように、舞園さんも同じらしい。

彼もまた、二つの能力を持ち合わせているのだろう。

そのうち一つが「結界」

それが本人由来の能力か、剣由来の能力かは不明だが…言い方からしておそらく後者だ。

広範囲能力と悪魔の攻撃も防ぎきる結界。

———この二人が揃えば、怖いものはないだろう。


「っ…こっちもこっちで面倒だな」

「お、桜哉君…」

「どうした、水」

「ひゅ…ひゅう!くっさい台詞も格好良く言えるんですね!流石役者!」

「一言余計だぞ…。でも、これだけは言わせてくれ」

「うん」

「もう二度と、幻術に惑わされたりはしないから」

「信じているからね」

「ああ。それと、あれを頼めるか」

「勿論」


水さんと合図を交わすと同時、彼の手にはあるものが握られる。

相棒が持つ物とは異なる鞘。

そこから出たのは———日本刀。

水さんと同じ細剣ではない。


「護身霊刀「舞桜」と護身霊剣「深水」…椎名家に保管されていた家宝と聞いている」

「あれが家宝…」

「守護契約を結び、使役魔法をかけた幽霊を宿らせたそれに宿れるのは、主に全てを預けた存在だけだそうだ」

「…水さんも、舞園さんも」

「それ故に、宿る幽霊は生前よりも能力が強化されている。剣固有の能力だけじゃなく、本人達が持っていた能力の全てが向上している」

「へぇ…面白い剣ですね」

「ああ。それに加えて、使役魔法の効果で主側と魔力共有も可能と来た」

「じゃあ、実質二人は無限に能力を使えるも同然…」

「そういうこと。流石にヴェルに同情するよ。なんせ、水だけならまだしも…不意打ちができない舞園が出てくるんだ。あたしなら逃げるね」

「…彼、強いのですか?」

「まあ見てろ」


今度は彼が刀を構えて前に出る。

舞園さんの動きはゆったりとしていて、ヴェルの攻撃も避けるというよりは舞桜と呼ばれた刀で受け止めていた。


「貴方は、遅いね」

「遅くとも、その一太刀は重くなるように。水が速さなら」

「桜哉君は攻撃に、だね」

「「そして術は、主譲りの強度を!」」


水さんが剣先を向けた先には、舞園さん。

現れた水流は舞園さんの方へ向かい、彼を中心にして舞い踊る。


「俺たちは、君を殺すことはできない。だけれども、できることはある」

「何?言ってみなよ」

「———いつか、勇者が貴方の元へ来るから」

「———あの子が少しでも戦いやすいように、君の力量を見極め、布石を打つまで」

「…空気が、変わった?」

「リハーサルは完了したな。では、開演と行こう!水!」


水流が舞桜に纏いついた瞬間、舞園さんの姿が消える。

同時に、ヴェルの動きが傾いた気がするのだが…速すぎて目で追うことができない。


「…強いですね。動き、うっかりしていたら見落としそうです」

「幻術に惑わされていなきゃ、ここまで強かったとは…」

「二人には見えているの?」

「すまん。微妙だ。動きは追えるが…精霊、あんたは?」

「私も目で追うのがやっとです…何が起きているのかまでは流石に」


先程の動きと全然異なる光景を、私は目視することすら叶わない。

二人にも、目で追うのがやっとのようだ。


「そうなると、舞園じゃなくてヴェルを追った方が状況を理解できるな」

「こう言っては何ですが、まだ目で動きを追えますからね」


それも私には全然見えないんだよな。

けれど、落ち込むだけでは終われない。

少しでも見て、捉えられる努力をしなければ…。


「ヴェルの怪我、治癒が遅いってか…治ってないな。普段ならすぐに治るのに」

「阻害が入っているのでは?」

「なるほどな。あの人でなしなら覚えていそうだ。あの水流に秘密がある可能性もあるけれど」

「答え合わせは、終わってからですね」


なんだかんだで、同じ目線で話ができる相手だからか、この瞬間だけはパシフィカとベリアの関係は良好らしい。

って…そこに安心している場合ではない。


「…目線があっていない。なら、もう少し」

「…なんだあいつ、こっち見て」

「アリアに目配せをしているのでは?」

「私?」


それからしばらく、舞園さんの動きが規則性のあるものに変化する。

攻撃の後に何度か止まって、私の方に視線を向ける。

それを何度も繰り返す。何らかの意味があるようだが。


「でも、止まってくれるから舞園さんの現状だけは見られる」

「見て学べというのは今のところ難しいので、攻撃前と攻撃後の変化を見られるようにしているのでは?」

「あいつが止まってヴェルの攻撃を防ぐ。そうすることでヴェルの現状も把握できるようになったな。遊ぶ余裕まであんのかよ…」

「まあ、一瞬ですが…学べることはあります。アリア」

「え、ええ…」


遠くから、二人が止まった瞬間を凝視し続ける。

そんな中、背後から誰かがやってきた。

足音は一切無い。なんせ彼女は浮いているのだから。


「刀と剣、戦闘スタイルは大きく異なる代物だけれど、学べることは沢山あるよ」

「水さん」

「私の仕事はとりあえず終わったし、君たちの様子を見に来たって感じ。桜哉君の思惑、わかってくれた?」

「「「見えるようにするから、とりあえず観察眼と動体視力を養え」」」

「そういうこと!三人とも百点あげちゃう!」


水さんは私に背後から抱きついて、耳元でそっと小声であることを呟く。


「桜哉君、観察眼に関しては心配していなかったよ。とりあえず、情報を瞬時に取り込むのも戦いに大事なこと。目は大事だよ。しっかり鍛えようね」

「は、はい!」

「私のことはとりあえず置いておいてくれていいし、私も君たちのことは置いておくから、二人も思ったことばんばん言ってね!」

「は、はい…」

「おう。なんかこいつ、すっと入ってきたな…ちょっと怖いぞ」


耳元でそっと話す彼女は幽霊だけど、吐息は生きた人間と同じ。

くすぐったいし、なんだろう。

ノワや他の人とはなんか違う…!何かわかんないけど、なんか違う…?


「ん〜…耳かな」

「何が、でしょうか?」

「弱点?」

「き、聞こえにくいと思ったことはないですし、今も水さんの声、ちゃんと聞こえていますよ?」

「そういう意味ではなくて、敏感さの話かな。ふぅ…」

「あうっ!な、何をするんですか!?」

「張り詰めている様子だったから」

「そうでしたか…?」

「うん。「ちゃんとやらないといけない」…って」


心当たりがある分、彼女の言葉に反論は述べられなかった。

耳を押さえながら口をつぐむと、水さんは静かに私を抱きしめてくれる。

半透明だし、幽霊で死人になるのだけれど…そのぬくもりは確かに感じ取れた。


「君の役割って、この場にいる誰よりも大変なもので、重いもので、多くの責任がついてくるものだよね。なんせ、世界がかかっているんだから」

「…」

「だから、今も強くならないといけないって自分で考えているでしょう?でもね、考えすぎるのは、あまりよくないことだよ」

「どうして、ですか?私は、この役割をやり遂げないといけないんですから、少しの無茶ぐらい」


「無茶してなんになるんだ?」

「ベリア…」

「いや、これはさ「悪魔の甘言」とかそういうの抜きで聞いてほしいんだけど、あたしはあんまり責任を感じない方がいいと思うぞ・・・?」

「でも」

「私はあいつの記憶を読んだから、そいつが言いたいこともわかるからな」

「無茶をして、自分のことを疎かにして、最終的に余命宣告されたのが…私と桜哉君の大事なあの子」

「ぴにゃ…(主)」

「私はあの子と同じ道を、貴方に辿ってほしくない」


舞園さんは、私を椎名さんと似ていると表現した。

水さんも、言わないだけで彼と私の姿を重ねている。

何が似ているのか疑問だったが…取りそうな行動が、思考がよく似ていたということのようだ。

強さが、とか…才能がとかなら喜ばしい話だったかもしれないが、こんなところが似ていると言われるのは、複雑だ。


「…」

「勇者であることは忘れないでほしい。けれど、君が無理をすることはない。ここにはノワもいるでしょう?それに二人もいるし、私たちだっている」


ふと、パシフィカとベリアに目を向けると、二人は私に対して微笑んでくれる。


『大丈夫だぜ、アリア!私がいるからね!』


同時に、ここにはいないノワの声も聞こえる。

通信魔法ではないだろう。

これは、あくまでも私の幻想。

この世界にいる誰よりも信じているからこそ、こうして背中を押してくれる言葉が頭に響いてくれる。

彼女ならこう言ってくれるだろうという言葉が、しっかりと。


「貴方を支えて、一緒に歩いてくれる子は、周りに沢山いるからね。だから、一人で絶対に無茶をしないでね。水さんとのお約束」

「はい」


「よし。じゃあ、気を抜いていこうね。背後は私が守るから安心してね!」

「お、お願いします」

「はい。じゃあ、まずアリアは敵の方から動きを見よう。動きは桜哉君と比較してゆっくりめだし、これから待ち受けている相手の大半が彼女と同程度かそれ以上。まずは彼女の動きを取らえるところまで。大丈夫、できるまで桜哉君が粘ってくれるし、逃がさないから」

「それはそれで大丈夫なんですか!?」

「大丈夫。うちの桜哉君は持久戦、得意だからね!」


水さんがそういうのなら…信じるしかないか

私はヴェルを中心に視線を向かわせ、彼女の…今は全く見えない動きを追いかけた。

おまけ:100話ですってよ、ノワさん


ノワ「記念すべき100話なのに、私の台詞はアリアの想像だけ!?」

ノワ「あのさぁ…私をなんだと思ってるの?主人公ぞ?ダブル主人公の一人ぞ?」

ノワ「扱いが酷いとおもいまーーーす!一応存在している「雑すぎる話の流れ(笑)」を見るに、200話目も私がいない可能性が高くてつらいでーーーす!」

ピニャ「カンペ)流石に可哀想だと思ったので、おまけで出番を用意しました」

ノワ「扱いが日辻彰則みたいなものかぁ…」

ノワ「正直あれもどうかと思ったのに、これは流石に主人公にやっていい扱いじゃないと思うな。これは観測記録の一つも欲しいぐらい」

ピニャ「カンペ)100話記念の観測記録は日々音優梨さんです。投稿時期は未定ですが、必ずお送りします」

ノワ「師匠のストーカーに出番を奪われているんですけど!」

ノワ「しかしまあ、この一応存在している流れを見るに、永羽ちゃんのクs…げふげふ、ご両親と弟にもフォーカスを当てるらしいので、特別に存在を許してやろう」

ノワ「それに、あの人は永羽ちゃんに対しては優しいからな・・・師匠の事情もわかっているし、普通にしていたら格好いいからね。楽しみにしてくれたらうれし…」

ノワ「なぜ私が宣伝をしているんだ…!」

ピニャ「カンペ)挨拶入るから、ここでおしまい」

ノワ「待て。私はまだいい足りないんだ。少なくとももっと出番をだ」


・・


いつも賢者様をご覧頂き、ありがとうございます。

なんだかんだで100話に辿り着きました。

本作はほぼ毎日お送りすることができて、少し安心しています。

いつもはどこかで引っかかって、止まってしまう傾向があるので…。

そこはノリで書けるノワや、あらかじめ設定があった師匠組、別作品で精霊の設定が(いっちゃんのせいで)がっつりしていたパシフィカが引っ張ってくれた部分もあるかと思います。

そして何よりも、ご覧頂いている皆様に支えられた部分が大きいかと思います。


改めて、本作をご覧頂き、ありがとうございます。

本作はまだ1/3。これからも続いていきます。

また、恩返しや春待ち同様前半部分の「追加芸」も予定しています。

誤字や脱字の訂正、描写の強化等を予定していますので、こちらもよろしくして頂ければ幸いです。


また、宣伝みたいな形になりますが、賢者様関係でいくつか短編を出しております。

観測記録では夜雲編。師匠のお仕事ルーティーンを追っています。

予定している分では、上記の優梨編の他に桜哉編と千早編を予定しています。

休暇用レコードでは紫苑編。一咲の曾お婆ちゃんにスポットを当てています。

本作には関係がありませんが、少しでも彼らを知る要素として…よろしくお願いします。


今後とも、少しでも楽しむことができる作品になれるよう、尽力して参ります。

できるだけ毎日、無理をしないようにお送りするのが目標です。

今後とも、賢者様を含め、拙作をよろしくして頂ければ嬉しいです。

それではまた、お会いできるのを楽しみにしております。


2023年10月29日 鳥路

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