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(番外編) 夢のしずく ーカイトとソフィア。サラの懺悔ー

 魔王と聖女が奇跡の邂逅を果たしていたころ、もう一組の少年少女も運命の出会いを果たしていた。


 カイトとソフィアである。


 ソフィアは後の『魔王』となる少女であるが、マシロの記憶を持ったサラの世界では『聖女』となった。この世界ではどちらの運命になるのかは未知であるが、変わらない事が一つある。

 カイトは絶対に、ソフィアに一目惚れするのである。

 案の定、サラを探して転移したはずのカイトはソフィアの目の前に転移し、速攻で恋に落ちた。


 転移魔術は自分が明確に頭に思い浮かべた場所、あるいは人物の元にしか飛べないのが原則だ。しかし、例外的に原則を無視して転移できる存在もいる。その最たる者が『勇者カイト』だ。


 『聖女サラ』が失踪したと聞いた時、カイトはすぐに「僕が探すよ! いざ、サラちゃんのところへ!」と転移しようとしたのだが、近くにもう一人のサラが居たため上手く転移できなかった。

 そこで『聖女』というキーワードを念じて飛べばよかったのだろうが、カイトが発した言葉は「世界一の美少女の所に!」だった。誰一人止める間もなく、カイトはレダコート王国から姿を消した。


 そして転移した先が、ソフィアの寝室である。


「きゃあああああああああ!!」

「うわあああああああああ!! 可愛いっ!!」


 出会ったばかりの二人は、違う方向性を持った悲鳴を上げた。


 ソフィアとサラ。

 どちらがより美少女であるかどうかは好みの問題だが、少なくともカイトにとってはソフィアが上だ。初めて出会う南のエルフの姿に衝撃を受けたせいもある。


 カイトは一瞬でサラのことを忘れ、ソフィアに恋をした。


 そもそも、サラの事は「可愛くて、優しくて、大好き」ではあったが、サラの事を良く知っているのかといえば、そうでもない。サラが泣いていれば無条件で助けたいとは思うが、元気に走り回っている姿には、あまり惹かれない。サラと同じ顔のシャラにそれほど興味を示さなかったのは、そのせいである。

 しかし、ソフィアの類稀な美貌と「魔力で溢れる塔に捕らわれたお姫様」的な要素は、勇者の胸をズドンと撃ち抜き、穴だらけにした。


 ソフィアもまた、突然の訪問に驚きはしたものの、初めて出会う光のような存在に心を奪われた。子供の頃に憧れた『ひとりぼっちの姫と光の騎士』という絵本を思い出し、カイトが『運命の王子様』ではないかと錯覚した。


 世間知らずの二人は瞬く間に恋に落ち、その日のうちに駆け落ちを決めた。


 すぐにでもレダコート王国に戻ろうとするカイトに、ソフィアは「せめて双子の兄にお別れを言いたい」と懇願した。愛するソフィアの頼みを断るはずもなく、カイトは「もちろんだよ!」と快諾した。


 そうして二人は互いの素性を知らぬまま、手を握り転移する。

 ―――『魔王軍』と『対魔王軍』が睨み合う、『聖女の泉』へと。


 ◇◇◇◇


 レダコート王国では、すぐさま聖女捜索隊が結成された。

 捜索隊の指揮を任されたのはパルマである。

 しかし、パルマも即座に世界中に忍ばせている『梟』の隠密たちに探査を命じたが、発見には至らなかった。


「これだけ探していないとなると、何処か強力な結界内にいるか、ダンジョンみたいな特殊な場所に迷い込んだか、あるいは、すでに……」


 重々しいパルマの言葉に、再び『王の間』が静寂に包まれた。

 パルマにとって、サラは幼少期からの幼馴染だ。『シャラ』と出会ったことで恋心が冷めたとはいえ、情が消えたわけではない。指揮官として最悪の事態を考えることも必要だと分かってはいるが、どうしても「すでに」の後を続けることができなかった。


「お父様……」

「大丈夫だ、サラ」


 青ざめるゴルドの手をサラがギュッと握りしめる。


「サラ……!」


 ユーティスもまた、最悪の事態が頭をよぎり、体が震えて止まらなくなった。

 ゴルドやユーティスにとって、サラは『聖女』である以前に一人の可憐な少女だ。もし困難な状況にあるのなら、喜んで代わってあげたいと切に願う。


 皆がそれぞれの想いを抱えて気持ちが沈み切っていたその時、


「あ、見付けたかも」


 と、突然、場違いなほど軽い声が『王の間』に響いた。リーンである。


「本当!?」


 サラがパアッと顔を輝かせた。

 サラの明るい声に、場の雰囲気が一転する。

 ふふーん、と嬉しそうに、リーンは片目を瞑って人差し指を立てた。


「僕が世界中に張った結界の一つに、気配を感じる。たぶん、サラちゃんで間違いないよ」

「凄い! 良かった!」


 サラと同じく、皆が胸を撫でおろす。

 しかし、即座に「あ。良くないかも」とリーンは苦々しい表情で首を横に振った。


「怪我は無さそう。ただ、一緒にいる相手が……魔王だ」

「「「!?」」」


 一同が弾かれた様に目を見開いた。

 誰よりも魔王と戦うことを恐れていた少女が、魔王と一緒に居ると言うのだ。意味が分からない。


「まさか、魔王に攫われたのか!?」

「サラさんが一人で魔王と対峙しているのですか!?」


 ゴルドとパルマが同時に声を上げた。

 リーンは「ううん」と首を横に振った。


「詳しい事は分からない。でも、この王都にも僕の結界があるから、魔王軍に攫われたとは思えない。何らかの理由で、サラちゃんが転移した先がソコになったんだと思う。魔王と一緒だけど、まだ『魔王』も『聖女』も覚醒していない状態だし、下手したらお互いの正体に気付いていない可能性もある。同世代の異性、くらいにしか思ってないかも」

「え? 覚醒してない……?」


 リーンの言葉に、サラがキョトンと首を傾げた。


 向こうの世界でも、ヒューが『魔王』として覚醒したのは少し先のことだったので、そっちは問題ない。

 しかし、サラが元の世界で『聖女』としての力に目覚めたのは10歳の時だ。

 ゲームでは、12歳の夜会でロイと対峙した時に目覚める設定になっている。どちらも、ロイを救いたいという強い想いが引き金となった。

 当然、この世界のサラもそれくらいの歳に覚醒していると思っていたが……


「あ」

「どうしました? シャラさん」


 サアッと、血の気が引く音がした。

 もしかすると、この世界のサラはこれまで一度も『聖女』としての力に目覚める機会が無かったのかもしれない。そして、その全ての機会を潰したのは、他でもない『シャラ』だ。


 本来、聖女サラが救うはずのロイを『シャラ』が救った反動が、「サラが力に目覚めない」という結果に結びついてしまったのだ。

 皆を幸せにしたい、と願っていたのに、肝心の『サラ』を頭に入れていなかった。ゲームのサラは放っておいても誰かとハッピーエンドになっていたため、こんな弊害があるとは思ってもみなかった。


「ごめんなさい!! 私のせいです!!」

「どうした、サラ」


 急に勢いよく頭を下げた娘に、ゴルドが恐る恐る手を伸ばした。

 父に支えられながら顔を上げたサラに、一同がハッと目を見張る。サラはギュッと唇を噛みしめ、零れる涙を拭いもせず、ただ、真っ直ぐに前を見ていた。


 サラは時々声を詰まらせながら、顛末を語った。


 この世界のサラに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。力強く肩を抱いてくれる父の温もりが、辛い。


「ごめんなさい。お父様。あなたのサラを不幸にしていたのは、私です」

「何を言う、サラ!」


 ゴルドはギュッと眉間にシワを寄せ、泣きじゃくるサラと視線を合わせた。


「いいか、サラ。まだ、何も決まっていない。俺のサラは、俺達が必ず救い出す。ここには、大魔術師も、大賢者も、英雄も、父もいる。お前はここで、俺達の帰りを待て。この世界の俺達を、そして、お前自身を信じろ。『サラ』は、弱いだけの子供か?」

「!?」


 父の言葉に、サラはハッと目が覚めた。「サラが『聖女』の力に目覚めていない」という理由だけで、勝手にサラの人生を悲観し、不幸になると決めつけていた自分に愕然とする。それはとても失礼なことに思えた。


「ううん! サラは、ずっと、ずっと一人で耐えてきた、頑張り屋で優しい女の子だよ」

「そうだ。だから、あの子の未来を悲観せずに、どうすれば一番の選択ができるか考えてくれ。お前の笑顔で、俺達の背中を押してくれ」

「……っ!! はいっ!!」

「いい子だ」


 ゴルドが微笑み、クシャッとサラの頭を撫でた。

 ようやく見られたサラの笑顔に、皆もつられて笑顔になる。


「さてと」と前置きして、リーンがパンパンと手を叩いた。


「よーし! 兵の準備も整ったみたいだし、早速行こうか。『聖女の泉』に」


 リーンの言葉に、一同が頷いた。


 転移直後に魔王戦に突入する可能性もあるため、リーンに同行するのはゴルド、パメラ、グランに加え、レダコート王国とエルジア王国の精鋭部隊だ。更に、暴走女王アルシノエやグランの一族、そして白龍の一族も別ルートで向かっているらしい。

 パルマはノーリス王と共に各国への連絡と指示を出すために、ここに残る。

 ユーティスとロイは、本人の強い希望により参加することになった。まだ子供である二人の護衛として、ルカも同行を申し出てくれた。


「みんな、気を付けて……!」

「シャラ。こっちにも魔族が襲ってくるかもしれない。どうか、みんなを守ってね」

「うん! ロイ、絶対に無理しないでね? 絶対、絶対、帰って来てね?」

「大丈夫だよ。シャラを置いて死んだりしない」

「……」

「なんで信用ないの!?」

「だって前科があるもん! みんなも、怪我したら一旦戻って来てね? 私、全力で治癒するから……!」

「ありがとう、シャラちゃん! 心配しないで。戦力はこっちの方が上だから!」


 リーンの言う通り、魔王が覚醒しておらず、かつ、『魔素』の供給源である『異界の扉』が閉じている現状では、こちらの方が断然有利である。かと言って、油断する訳にはいかない。


「うん! リーンも死なないでね!? ここから、祈ってる! みんな……いってらっしゃい!!」

「「「いってきます!!」」」


 サラに見送られ、リーンを筆頭とする『対魔王軍』は一斉に旅立った。

 『聖女の泉』へと。


ブックマーク、評価、感想、いいね! 等、いつもありがとうございます!


更新が遅くなり申し訳ございません。

バイオハザード4ブームは終焉を迎えたのですが、

なかなか筆が進まず、苦戦しておりました!

次も苦戦しそうな予感です。

でも頑張ります。温かい目で見守っていただければ幸いです。

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