表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
350/365

(番外編) 夢のしずく ー異界の扉ー

本日2話投稿します。(今回1話目です)

「それじゃ、行ってきます。もし、私がなかなか戻って来なかったら……ああ、やっぱ変な事考えるの止めとく! 行ってきます!」


 『異界の扉』の正面で、サラは元気よく右手を挙げた。

 サラは今からリーンと共に、扉の中に入らなければならない。


 カイトが「バァーン」と結界を破ったせいで修復が困難となり、マールを扉の外で呼び出せなくなってしまった。

 そのため、急遽サラが扉の中に入って召喚することになったのだ。


 予定外の出来事だが、想定していなかった訳ではない。

 そうなる可能性も視野に入れていたため、サラはすぐに決断した。


 ロイやパルマ、カイトも一緒に行くと言ったのだが、リーンが却下した。三人はまだ子供だ。潜在能力は優れているが、十分な実力が伴っておらず、SSS級の魔物がひしめく中では足手まといにしかならない。ましてや、魔物の天敵である『勇者』がいると、何が起きるか分からない。出来るだけ、不安要素は減らしたいというのがリーンの考えだった。


「いや、待てよ? 『勇者』を先にぶち込んどいて、囮にするって手もあるな」

「だ、駄目だよ!? 物騒な事言わないで、リーン!」

「冗談だよ、1割くらい。てへっ」


 それって、9割本気じゃん、と心でツッコミながら、サラは深呼吸を繰り返した。


「よしっ、頑張る!」

「大丈夫だよ、シャラちゃん。僕がしっかり守るから。それに、マールの召喚は大変だろうから、駄目だと思ったら、すぐ引き返そう。一度で成功させようと思わずに気楽に行こうね!」

「うん」


 ジョイスの先導で、リーンに手を引かれながら、サラは『異界の扉』に手が触れる位置まで進んだ。

 泣きそうな顔のロイと、心配そうに拳を握りしめるパルマ、「頑張って!」と両腕を振るカイトが遠くに見える。彼らに笑顔で腕を振って、サラは扉を見上げた。


「うっ……」


 真下から見上げると先が見えない程の大きな両開きの扉には、僅か20センチほどしか隙間が無い。

 だが、内側から漏れ出る禍々しい魔力は、かつて中に入った時とは比べ物にならないほど不愉快であり、気味が悪かった。

 ここまでは、リーンやジョイス達の結界のおかげでそれほど嫌悪感がなかったが、さすがにこの距離だとそうはいかない。恐怖の縄で全身が縛りつけられていくような感覚が襲ってくる。


「大丈夫だよ、シャラちゃん」

「ひゃあ!」


 サラが不安発作と戦っていることに気が付いたリーンが、サラを抱え上げた。


「君は、邪神エダムの使徒でしょう?」

「し、しと?」

「そ。エダムのお気に入りってこと。きっと、何があってもエダムが守ってくれるから、『くるなら来い』くらいの気持ちで、どーんと構えればいいよ」

「エダム……」


 そう言えば、前回はエダムの力を借りて中に転移し、エダムがくれた虹色の魔石に守ってもらった。あの時の魔石はノリアによって破壊され失ってしまったが、あの魔石の輝きと温かさは、今もサラの胸の中で感じることができる。


「……うん。何か、すっかり忘れてたけど、胸の奥にエダムの気配を感じる。神様が一緒なら、大丈夫。どーんと来い、だよ」

「そ! どーんと来い、だよ。……ちょっと妬けるね。僕が一緒なだけじゃ、不安そうだったのに。神様に負けた気分……」

「え!? 神様に嫉妬したの!?」

「ぜんっぜん! だって、神様はシャラちゃんにキスできないでしょ! 僕ちゃん、出来るもんね。ちゅっ」

「ひゃあ!」


 リーンから額にキスをされて、サラは再び変な声が出た。

 許可なく乙女にキスをする行為はどうかと思うが、サラの緊張を解くためなのは分かっている。それに、ここまで案内してくれたジョイスが、サラの代わりにリーンにデコピンしてくれたので許してやろう。


 エダムの存在を思い出したからか、不思議と心が落ち着いていた。

 きっかけをくれたリーンに、感謝だ。


「では、行ってきます」

「行ってくるね」

「ご武運を」


 ジョイスに見送られて、リーンに抱えられたまま、サラは扉の中へ消えた。


「!!」


 扉を潜る一瞬、変な感覚があった。リーンが魔法で瞬間的に体を小さくしたらしい。おかげですんなりと扉の中に入れた。

 もちろん、リーンの強力な結界が守ってくれているからだが、想像していたよりも簡単に侵入できた。拍子抜けだ。


「シャラちゃん、大丈夫?」

「大丈夫……でも、何か前と違う」


 扉の全体が見える位置まで進み、リーンが足を止めると、サラは恐る恐る辺りを見回した。


 前回は扉から出て行こうと沢山の魔物がひしめき合っていたが、今はほとんどいない。相変わらず上下左右の分からない変な空間だが、扉の場所だけはハッキリと認識できた。


「思ったより安全そうだね。じゃあ、マールとルカを召喚してみる?」

「うん」


 リーンに抱っこされたまま、サラは自分の中に小さな扉をイメージした。扉の向こうにいるマールやルカに呼びかけるつもりで、名前を呼ぶ。


「マール、ルカ。ここに来て……!」


 その瞬間、体内から清らかな水が溢れ出す感覚があった。水はキラキラと輝きながら球になり、球は直ぐに一匹の青龍へと変化した。


「呼ばれて飛び出てマールだゾ! ルカから話は聞いてるゾ。待ってたゾ、サラ!」

「マール……うっ」


 ぐらり、と視界が回る。

 やはり、古代龍の召喚には相当の魔力が必要だったようだ。燃費のよいルカでなければ、一緒に召喚するのは無理だったかもしれない。


「サラ、無理しないで。後は僕がマールと一緒に鍵をかけるから。準備が出来たらサラにも分かるように、僕の一部をサラの中にも入れておくね」

「うう、よろし……むぐっ」


 にっこり笑って、ルカは自分の指をサラの口に突っ込んだ。いつも仕事が丁寧なルカにしては珍しく荒い。

 ルカはサラが一口ゴクリと飲み込むのを確認すると、マールの体内に消えた。幼かったマールの顔に、一瞬で知性が宿る。


「早く行って。リーン」

「分かってる。あとは頼んだよ」

「はい」


 あ、とサラが言う間もなく、リーンが凄まじい勢いで扉に向かって飛行し始めた。なぜそんなに急ぐのかと、魔力切れでガンガンと痛む頭を上に向けた瞬間、サラは思わず悲鳴を上げた。


「ひっ……!」

「シャラちゃん、目を閉じてて」


 一瞬見えた扉の上部には、つい先程までは居なかったはずの魔物の群れが押し寄せていた。おそらく、マールを呼び寄せた際の強力な魔力の流れが刺激となったのだろう。


 ゾクッ、と、サラの全身に寒気が走る。


「い、いやあああああああああ!!」

「シャラちゃん、しっかり!」


 あの時の記憶が、音を立てて一気に蘇った。


ブックマーク、評価、感想、いいね! 等、いつもありがとうございます!


急に蘇る過去のトラウマ……

サラちゃんはいつも元気ですけど、

心に負った傷は誰よりも深い女の子です。

頑張れサラちゃん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ