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(番外編) 夢のしずく ー天空の結界ー

「『異界の扉』は、あの辺りだよ……たぶん」


 サラは過去の記憶を総動員して、東の空を指した。


 ここは、『異界の扉』の最も近くにあるという『白龍の里』である。『白龍の里』は、ちょうど九州や四国ほどの大きさの島々から形成されており、数匹の白龍が勝手気ままに暮らせるだけの規模がある。

 サラ達一行はレダコート王国を出発した後、一度ここから近い大陸の拠点まで転移し、そこから従魔などに乗って空から上陸した。

 リーンの魔力なら皆まとめて直接転移させることも可能だったが、うかつに侵入すると『脳筋戦闘狂ババア』ことラエスローズに襲われる危険がある。そのため、事前にパルマが使者を送り、1日早めにリーンが出発してラエスローズを宥めることで、サラ達は無事に到着することができたのだ。


「……なんか、リーン……痩せた?」

「あ、うん。ラエスローズちゃんに、色んな意味で食べられちゃって……」

「? 大丈夫? 疲れてるなら、回復魔法かけようか? 治癒魔法の方がいい?」

「ありがとう、シャラちゃん。シャラちゃんがキスしてくれたら、回復す」

「父上! めっ!」

「ぅわああん。レダスが怒った」


 パチン、とパルマから額を叩かれて、リーンがいじけた。

 よく分からないが、リーンは大丈夫そうだ。


「ところでシャラさん。扉は、どこにあるんですか? 僕にはさっぱり気配が探れません」


 もう一度、リーンの額をペチッと叩いて、パルマがサラに向き直った。

 サラは「うーん」と唸って、記憶を探った。


「『異界の扉』は、あの辺りだよ……たぶん」


 サラが指すと、全員が一斉に首を傾げた。


 ちなみに、現在この場にいるのはサラ、ロイ、カイト、パルマ、リーンの5名である。

 万が一『異界の扉』が開いてしまった時に備えて、グランやパメラ、エルジア王国のエルフ達などには、近くの大陸で待機してもらっている。白龍たちも周辺の島に散って、有事に備えてくれている。

 しかし、肝心の『異界の扉』は天使族の特殊な結界に隠されており、全く場所が分からない。正確な場所が分からなければ、手あたり次第カイトを飛ばして結界にぶつかるのを待つしかない。そんな結界の壊し方をすれば、天使族との平和的な交渉など出来ずに、不法侵入者として排除されるだろう。

 余談だが、つい先程『天使の輪』と『ジョイスのスカーフ』の存在を思い出したサラが「うわあ! 便利アイテム忘れてた! もしもし、ジョイス中佐! こちらサラ大佐!」と、テンション高めに白い輪っかを頭に乗せ、スカーフに話しかけたが、何の反応も無かった。ただの不審者の独り言になってしまい、皆、見なかったことにしてくれた。皆の優しさが、痛い。


「んー。ぜんっぜん分かんないねぇ」

「父上が分からないなら、きっと誰にも探せませんね。白龍ですら、『この周辺のどこか』くらいしか感知できないって言ってましたし。……あ、ひょっとしてカイトなら何か感じます? 勇者って、魔力を感知するの得意でしょ?」

「やってみる! うん、全然分かんない!」

「期待した僕の馬鹿野郎」

「ごめんね、みんな。近くまでくれば、もっとはっきり分かると思ったの……」

「「「シャラちゃん(さん)は悪くないよ(ありません)!」」」


 リーンとパルマとカイトが声を揃えてサラを擁護した時、おずおずと、ずっと後ろを向いていたロイが左を挙げた。


「あの……僕、分かる……みたい」

「「「「!?」」」」


 一斉に、全員が振り返った。


 ロイは手のひらを開いた状態で左手を上に伸ばし、空中に『8』を書くように腕を動かした。


「……うん。やっぱり、他と光の透け方が違う。『異界の扉』は、あそこだよ」

「「「「真逆じゃん!」」」」


 ロイが指したのは、サラとは真逆の方角だった。

 ロイ曰く、闇の精霊達を薄く、広く空に放ち、僅かに生じる光の屈折具合から判断したのだという。


「ロイ、かっこいい!」

「ロイ、凄いです!」

「ロイッチ、最高!」

「チッ」


 3名からの歓声と1名からの舌打ちを受けながら、ロイに導かれ一同は結界の縁まで辿り着いた。リーンは直接浮遊しているが、後の4人はそれぞれ飛行型の従魔に乗っている。


「ここか……なるほど。ギリギリまで来ると、確かに違和感に気付くね。……『ギャプ・ロスの精』にこんな特技があったとは……ちっ」

「なにブツブツ言ってるんですか? 父上」

「なんでもないよ! てへっ」

「カイト。出番だよ。手順覚えてる?」

「手順? ……結界バーン! みたいな?」

「……バーン! じゃなくて、半目で『すぅっ』ね」

「分かった、シャラちゃん!」


 何度も「結界を破る時は、人ひとりが通れるくらいの穴を空けるつもりで、丁寧に剣を刺す」と説明していたのだが、どうやら無駄骨だったらしい。

 カイトに難しいことを言っても無駄なので、サラは感覚に訴える作戦に出た。


 カイトがうっかり触らないように、リーンがギリギリまで壁の役割を果たしながらカイトを結界に近付けた。

 ある意味、ここが一番の山場かもしれない。


 緊張が走る中、「半目で『すぅっ』……半目で『すぅっ』……」とイメージトレーニングをしているカイトを残し、リーンがそっと結界から離れた。


 カイトがゆっくりと剣を構える。


「半目で『すぅっ』……」

「カイト、頑張って!」

「あ、シャラさん! 余計な事をっ」

「半目で……バァーン!!」


 サラの声援に応えるように、カイトは盛大に、結界を貫いた。


「ほらぁあああああああ!!」

「ごめえええええええん!!」


 パリーンッと甲高い音を立てて、結界が砕け散る。


「どう!? 上手くできた!?」

「上手くないよ!?」

「この状況で褒めてもらえると思えるメンタル、羨ましいです!」

「あわわわわ」

「勇者君、すごいよ! すごいポンコツ!」


 サラ達がギャアギャアと騒いでいると、あっと言う間に、武装した天使族と古代馬に囲まれた。


「ひぃぃぃぃ」とサラが震えていると、天使族の囲みを越えて、一人の美青年が目の前に舞い降りた。


 天使族族長、ジョイスである。


 ジョイスが無表情のまま「すっ」と右手を挙げると、天使族達が一斉に武器を下ろした。

 ジョイスは優雅に羽を動かし、ゆっくりとサラ達に近付いた。3メートルほどの距離を残して止まると、ジョイスは「はぁ」と悩まし気にため息をついた。


「久しぶりだね、リーン」

「ジョイピッピ!」


 旧友に再会し、嬉しさを前面に出すリーンと対照的に、ジョイスの表情は暗い。無理もない。渾身の結界を「すぅっ」ではなく「バァーン」と破壊されたのだから。


「先程、『天使の輪』とスカーフで私を呼んだお嬢さんですね?」

「はい! サラだけどシャラとお呼びください! 実は……」

「話は結構です。……全て、視させていただきました」


 事情を説明しようとしたサラをジョイスは右手で制し、再び「はぁ」とため息を吐いた。


 ジョイスが言うには、ここ数年、『聖女サラ』の周りが『予知』とは違う動きをしていることに気が付き、注意深く『視て』いたらしい。

 ジョイス達の『予知』は『聖女サラ』を起点にしているため、別世界から来たサラの存在は知らなかったそうだ。しかし、先日、『聖女サラ』がロイに逃走を持ち掛けた。

 そんな未来は存在しないはずだ、何があったのだ、と天使族一同が混乱に陥っていた最中の「ジョイス中佐」事件である。


 この世界に、『天使の輪』を手にした人物はいない。

 ましてや、ジョイスの羽と髪で織られたスカーフを持っているなど、有り得ない話なのだ。


 そこでジョイス達は手分けして、急ピッチで『サラがこの世界に生まれてから今まで』を『視た』のである。

 そのおかげでサラ達の目的を知り、ついに『異界の扉』が閉じられるのだと興奮していたのだそうだ。


 さすが天使族だ。仕事と理解が早い。

 ……派手に結界を壊されるとは予知できなかったみたいだが。


「事情を『視て』いなければ、今頃あなた方は死んでますよ?」

「「「「「ごめんなさい」」」」」


 にっこりと笑顔が怖いジョイスに、全員で土下座した。


ブックマーク、評価、感想、いいね! 等、いつもありがとうございます!

今日、『夢のしずく』編のプロットを練り直したのですが、あと15話くらいになりそうです。

おかしいな、全部で15話くらいの予定だったのに。

誰のせいだ? 聖女か? リーンか?(いいえ、私です。すみません)


もういっそのこと、第4章にすれば良かったと絶賛後悔中です(笑)

最後までお付き合いいただけると幸いです!

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