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(番外編) 夢のしずく ー決戦 違和感ー

本日2話投稿しています。これが2話目です。

 フロイアがエドワードの元に辿り着く少し前、屋敷の周囲では激戦が繰り広げられていた。とは言っても、屋敷を囲むように配置された奴隷魔術師達の結界が思いのほか優秀で、小競り合いがほとんどである。

 激戦、と呼べるのは、サラ達一行がいる屋敷の正面だけだ。


「シャラ、頑張ります! スーパー・ドレイン! とりゃあ!」

「ピッチャー、オースティン・ハワード。行くぜ! おりゃあ!」


 サラがドレインで結界に小さな穴を空ける。

 その穴に目掛けてオースティンの一投がさく裂する。

 針の穴を通す様な精密なコントロールで投げられた『赤血球』は、結界内にいた魔術師を直撃した。

 真っ赤に染まった魔術師が、パタリと倒れた。


「ストラーイク!! バッター、アウッ!」

「「「イエーイ!!」」」


 サラとヒーローズがハイタッチを交わす。

 こんなに簡単なはずないんじゃが、とグランが頭を抱えている。パメラに至っては、目が点になっている。

 アメフトをやる前のオースティンは、少年ベースボールチームのピッチャーだった。肉体強化魔法による威力に加え、デュオンの重力魔法と風魔法による微調整により、ネイソン特製の『赤血球』が魔弾となって敵に命中する。敵に当たった『赤血球』は弾けて赤い色素をまき散らすだけだ。倒れた魔術師は、泥団子が命中した衝撃で気を失っているだけである。 


 医者と元聖女は、出来るだけ人を殺したくないのだ。


 ちなみに、ネイソン特製泥団子には様々な種類がある。『赤血球』は精神的に「何か嫌」だが、『好中球』は中に石が入っていて地味に痛い。『好酸球』は酢入りのカプセルが入っており傷に沁みる。『好塩基球』には花粉を詰め込んだカプセルが入っており、効く人には効く。『巨核球』は細かく砕けた後、なんだかベトベトする。

 どれも地味な嫌がらせ攻撃だ。地味なところがパルマと気が合いそうである。


「グラン師匠! アグロスの気配が近いよ!」

「分かっておる! 中に入るのは、ワシとパメラとシャラだけじゃ! おぬしらは外からの侵入を阻止しろ!」

「「「YES,SIR!」」」


 同じ要領で次々に屋敷前にいた魔術師数名を無力化し、屋敷前が完全に手薄になった。その隙を逃さず、グラン、パメラ、サラが屋敷内へと侵入した。


「あれがアグロスだよ!」


 サラが指さす先、ロビー奥の階段の上に、使用人達に囲まれたアグロスが待ち構えていた。

 使用人達の目は虚ろで、武器も持たず突っ立っている。完全に、人質である。


 侵入者を見たアグロスは、実に嬉しそうに笑った。


「素晴らしい! 大賢者に、レダコート一の高貴な魔術師、そして……ちんちくりんの小娘」

「うるさい! すぐ美少女になるもん!!」

「シャラ、ムキになるな」


 グランが腕の中で猛抗議するサラをたしなめると、アグロスは手を叩いて笑った。


「ははは。小娘、素晴らしい魔力容量だ。潜在能力だけでいえば、そこの二人と比べても段違いだろう。だが、まだ幼すぎる。仕方ない。『魔王の器』としては心もとないが、女、お前の体をもらおう」

「!」


 急に話題を振られて、パメラがさっと身構えた。刹那、『何か』がパメラを襲う。結界魔法で身を守りながら、グランとサラから距離を取った。


「グラン様! 私のことは構わず、アグロスを倒してください!」

「承知した! シャラ、手当たり次第ドレインしろ! お前の容量なら全部吸えるじゃろ!」

「無理だよ!? でも、やれるだけやってみる!」


 サラはグランの腕から飛び降りると、ケンタウロスのケンタロウを召喚した。機動力が高く、何より「サラを抱っこしながら走れる」ところが有能である。ちょっとイケメンなところもポイントが高い。


 サラは『何か』を追いかけるようにドレインしながらロビーを駆けまわる。

 『何か』の隙間を縫ってグランとパメラがアグロスを攻撃する。しかし、使用人達が盾となって思うように大魔法を仕掛けられない。

 サラの魔力容量が規格外とは言え、異界の穴から絶え間なく『何か』が這い出して来る。このままでは、サラの容量が先に限界を迎えてしまう。その前に、サラの幼い体が耐えられないだろう。


「仕方ない……! パメラ、使用人ごと焼き切るぞ!」

「分かりました!」


 業を煮やしたグランが杖を構え直した。パメラもボロボロになったマントを脱ぎ棄てた。一気に、片をつけるつもりだ。


「だ、だめだめ!!」


 サラは焦った。

 グランやパメラの言い分は分かるが、罪のない使用人達を死なせたくない。

 だが、人質を気にしていてはアグロスを倒せない。アグロスが魔王になれば、ここにいる全員が死んでしまう。大事の前の小事として使用人達を諦めるしかないことは、サラにでも分かっている。

 だが、そんなのは嫌だ。どんな大儀でも、人の命を奪う理由にはしたくない。


「師匠! 待っ」


 サラがグランと使用人の前に飛び出そうとしたその時、屋敷の扉がバーンと開いた。


「「「ヒーローズ、参上!!」」」

「ヒーローズゥゥゥゥ!!」


 思わず、涙声でサラが叫んだ。


 状況を瞬時に把握した三人は、得意の泥団子攻撃で正確に使用人達を無力化していく。その邪魔をさせまいと、三人に襲い掛かる『何か』をサラがドレインで消滅させる。

 その間に、グランとパメラが連携しながらアグロスとの距離を詰めていった。


 そしてついに、パメラの聖魔法と土魔法の合体魔術『聖なる牢獄』がアグロスを捕らえた。

 形勢逆転だ。


「観念するがいい! 『聖なる剣雨(セイントソードレイン)』!!」

「『聖なる鉄槌(プラチナハンマー)』!!」


 身動きの取れないアグロスに、二人の攻撃魔法が襲い掛かった。それぞれが高位魔族にも通用する大技だ。

 激しい衝撃が大地を揺るがす。猛烈な土煙が視界を遮った。


「やったか!?」


 気を失った使用人達を移動させていたオースティンが叫んだ。土煙の中心に、倒れる男の姿が見えた。ピクリとも動かない。


「Ha-Ha! くたばったか、悪党」

「!? 待って、何かおかしい」


 サラがオースティンの台詞を遮った。


 おかしい。

 あのアグロスが、あっさり死ぬわけがないのだ。

 かつてアグロスと戦ったことのあるサラだからこそ感じる違和感。

 そして、ルカの主人だからこそ感じる危機感。


「みんな、逃げて!!」


 サラが叫んだ瞬間。


 サルナーンの屋敷が崩壊した。 


ブックマーク、評価、感想、いいね! 等、いつもありがとうございます!


グラン爺ちゃんの技はいつも中二病っぽいです。心はいつも少年じゃ!


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