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(番外編) 夢のしずく ーパメラ救出作戦1ー

 一番の親友は誰かと聞かれたら、サラは迷わずパルマと答える。

 今のサラが会う訳にはいかないが、パルマのためなら何でもしようと心に決めていた。


 その一つが、パルマの母パメラ・エノ・クライス公爵夫人の救出である。


 彼女は以前、レダコート王家直属の魔術師団長を務めたほどの魔術師である。10代の頃、敵国に攫われたパルマの父をお姫様抱っこで救出した話は有名で、実力と華やかな美貌で広く国外にも名が知られた女傑だ。

 結婚を機に引退した後もその力は健在であり、国政にも大きな影響を持っている。

 そんな彼女はパルマが3歳の時……つまり今年、隣国ハノスで発生した中位魔族の討伐に駆り出され、死亡する。

 この事件により、レダコート王国は最強の魔術師と魔術師団一つを失うことになるのだが、全てがハノス王国の策略だったと分かるのは、数年後のことだ。詳細までは分からないが、怒ったパルマとその父により、ハノス王国は戦力の7割を失ったと聞いている。


「なるほど。クライス夫人と魔術師団を助け、味方にする計画じゃな」


 サラの説明を受け、グランが「ふむふむ」と頷いた。

 サラはアグロスとの戦いを抜きにしてもパルマの母を助ける予定だったが、その手立てがなかった。対アグロスの戦力確保のためと言えば、グランも動いてくれるに違いない。


「うん! グラン師匠が力を貸してくれたら、できると思うろ!」


 少しまともに話せるようになったサラが、元気よく片手を挙げた。


「ふむ。国同士のいざこざに首を突っ込むつもりはないが……アグロスはレダコート王国に隠れておるのじゃったな。ならば、その国の魔術師団を味方に付けるのは良策じゃろう。レティシアのためじゃ。一肌脱ごうぞ」

「やったあ! 師匠、最高!!」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。任せておけ」


 両手を挙げて飛び付いてきたサラの頭を撫でながら、グランが笑った。

 レティシアは、サルナーン子爵によって殺されることになるグランの孫娘だ。サラが経験した未来で孫を殺したサルナーンとアグロスを、グランは許すつもりはない。サラのおかげで彼女がアグロスに捕らわれることはないだろうが、アグロスを放置すれば第二、第三のレティシアが生まれることは想像に難くない。実際に、現時点でも多くの子供がサルナーンの餌食になっているはずだ。

 今すぐにでも助けに行きたい気持ちを必死に抑えているのは、グランも同じだった。


「どうやって助けるろ? 今のうちに、魔族やっつけちゃう?」

「いや、夫人らを仲間にするには、ここぞという時に助ける方が効果的じゃろ。今はハノスの様子を探り、どのような策略を練っておるのか知る必要がある。ワシは有名じゃから表立って動けんが……ちょうどいい。あの3人は頭が切れる。あいつらに任せよう」


 グランがニヤリとほくそ笑んだ。


 後日、グランから打診を受けた三人組は、異様なテンションになった。彼ら曰く「ミッションインポッシボーだぜ! Ha-Ha!」「異世界でスパイになるなんて……Cool!」「008(ダブルオーエイト)! 望遠鏡要る? 録音装置は!?」だそうだ。命懸けの大仕事だというのに、大盛り上がりだ。楽しそうで何よりである。


 1カ月後、グランやサラからハノス王国やレダコート王国、更には周辺諸国の関係性や国力、歴史などを叩き込まれた彼らは、万全を期してハノス王国へと旅立った。グランも彼らを転移で送るついでに、サポート役として変装して潜入することになっている。


 その間、診療所はサラとルカ、そして魔法を覚えたばかりのフロイアが運営することになった。フロイアは魔法初心者であるが、『ギャプ・ロスの精』の母体に選ばれるだけのことはあり、治癒魔法と闇魔法に特筆すべき才能をみせた。嬉しい発見である。


 ロイは以前エドワードから聞いていた通り、通常の子供の3倍のスピードで成長している。生後2カ月でハイハイを始め、7カ月を過ぎた今ではサラを追いかけて走り回り、舌足らずだがお喋りをするまでになった。周囲は驚いていたが、『魔術師夫婦の子供は普通じゃなくて当たり前』と勝手に解釈してくれ、ロイを大層可愛がっている。

 ちなみに、ルカとフロイアが『夫婦』などと、自分達から言ったことはない。サラがルカを「おとうしゃま」、フロイアを「おかあしゃま」と呼ぶので、皆が勘違いをしているのである。夫婦だと思わせておいた方が余計な詮索がないため、そのままにしている。

 一部屋しか使わせてもらえないのが誤算だったが、フロイアはサラを実の娘の様に可愛がっており、その父であるルカのことを信頼しているようで、同室を嫌がる素振りは見せなかった。ルカが中性的な超絶美青年であることも大きな理由だろう。


 ルドラス王国に残ったサラ達は、昼間はロイと病人の相手をし、夜はグランからの活動報告を聞く生活が続いた。

 サラの想像よりもハノス王国には不穏な空気が漂っているらしく、最初の1カ月はヒーローズのスパイ活動もかなり難航したようだった。しかし、スパイ映画を観て育った優秀な頭脳を持った彼らの活躍とグランのフォローもあり、2カ月が過ぎた頃、ついにハノス側の計画を突き止めることに成功した。

 あとは下準備をして時を待つだけである。


―――そうして、その日がやって来た。



ブックマーク、評価、感想、いいね、等、いつもありがとうございます。

励みになります!


今回は、話が長くなったので2話に分けました。

パルマ君のお母様、亡くなってたんですね。

パルマ君は間違いなく、お父様似です(笑)

お母様がご存命なら、地味には育たなかったかも……!?

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