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17. フユキ カナの生涯

今回、短めです。

 フユキ カナは卒業を目前に控えた12月に、高校を中退した。

 今は自宅に引きこもり、好きなゲームをしながら優雅な日々を過ごしている。


 カナの描く人生設計では、高校卒業後、有名私立大学を出て、一流企業の社長秘書になり、御曹司に見初められ寿退社、子供は作らず、自由気ままなセレブ生活を送るはずだった。

 もしくは芸能界入りして、女優として波乱万丈な人生を送るか。

 あるいは海外旅行先でアラブの王子様にでも見初められ、王妃として生きるか。


 そんな都合の良い人生などおくれるはずはないと、普通に考えれば誰でも分かる。

 しかし、年商20億の社長令嬢として生まれ、誰もが振り返るほどの美貌を持ち、三人の美形の兄に甘やかされて育ったカナには、なんら馬鹿げた妄想ではなかったのだ。


 そんな計画が、一人の女のせいで狂ってしまった。


 あの女……ケイコは高校の担任だった。


 ケイコは、カナを特別扱いしなかった。

 そればかりか、事ある毎にカナを職員室に呼び出し、説教をする意地の悪い女だった。蝶よ花よと、『カナ教』の信者達から盲目的に愛されて育ったカナにとって、ケイコの存在は信じられないものだった。自分の意のままにならない、愚かな異教徒。


 当然、排除すべきだと考えた。


 カナは、ケイコが担任となった高3の春から、SNSを使ってケイコの悪行を世に広め続けた。ケイコが直に動かなくても、ほんの少し困った顔をして「あの先生が……ううん。なんでもないの」と瞳を潤ませるだけで、勝手に信者達が話を盛り上げてくれる。


 初めのうちは威勢の良かったケイコも、夏休みが開けた頃から学校に来なくなった。


 勝った、とカナはほくそ笑んだ。


 これで自分を蔑む者は消えた。

 やはり、この世は私を中心に回っている。

 私に逆らうなんて、馬鹿な女。


 高笑いしたい気持ちを抑えながら、ある朝学校へ行くと、自分の席が無くなっていた。


「……へ?」


 意味が分からず、きょとん、と豪華な巻き毛を揺らしながら見回すと、いつもなら満面の笑みで近寄ってくる従順な信者達が、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらカナを見ているのが目に入った。皆、手元で、忙しそうにスマホをいじっている。


 どういうこと?

 なぜ、私の席がないの?

 なぜ、あいつらは話しかけてこないの?

 なぜ……私の個人情報が、公開されているの……?


 信者の一人から送られてきたLINEに掲載されたアドレスを開くと、そこには、カナがケイコに対して行った嫌がらせの数々が、写真と共に載せられていた。


『カリスマ美少女JK。陰湿な教師イジメ』


 カナは、高校を中退させられた。


 カナの悪行は瞬く間に拡散し、世間の暴走した正義感によって、私刑が横行するようになった。

 鳴り止まない電話。

 SNSで拡散する誹謗中傷。

 車や家が、直接被害を受けることもあった。

 根も葉もない噂も加わり、会社の経営も傾いた。


 それでも、家族はカナを守り続けた。

 カナを自宅に軟禁しながら、欲しいものを与え、世間の攻撃から守り続けた。


 ……誰か一人でも、カナに現実を教えていれば、変わることが出来たのかもしれない。

 きちんと愛情をもって叱っていれば、カナは目を覚ましたかもしれない。


 だが、家族はカナを甘やかした。


 可哀想なカナ。

 可愛いカナ。

 お前は悪くない。

 父さんが、母さんが、兄さんが、守ってあげるからね。


 結局最期まで、カナが自分の過ちに気が付くことはなかった。


 卒業式を迎えるはずだったその日。

 カナの家は、放火により焼失した。


 燃え盛る炎の中で、父に胸を刺されながら、カナは既に事切れた母の残骸を見下ろしていた。

 父の顔も、母の顔も憔悴しきっていた。

 兄達はどうしただろうか。どうして、助けに来てくれないのだろう。


 痛い。

 熱い。

 苦しい。


 父は、カナを刺したサバイバルナイフで自分の喉を突いた。


 なぜ、私がこんな仕打ちにあうの?

 悪いのは、私に刃向かったあの女なのに。


 床を這いつくばるカナの指に、何か固い物が触れた。


 スマホだ。


 大好きなゲームのキャラクターが、いつも通りの甘い笑顔で語り掛けてくる。


「……は……ははは」

 カナの口から、乾いた笑いが洩れる。


 ああ、そうか。

 あの女は、悪役令嬢だったんだ。


 こんなエンディングは、許さない。

 ヒロインが、悪役令嬢なんかに負ける訳にはいかない。


 リセットよ。

 リセットして、私は全てを手に入れるの。


 今度はお前なんかに邪魔されない。

 覚えてなさい


 ……カシワギ ケイコ……!


 こうして、カナの意識は途絶えた。


 ―――そしてカナは目を覚ます。

 最期の瞬間まで愛してやまなかった乙女ゲーム、『聖女の行進』のヒロインとして。


ブックマーク、評価、感想等、ありがとうございます!


すみません。更新が遅くなってます!

GW、何ソレ? 美味しいの? です!


さて、今回は、第3章の重要キャラの登場でした。

嫌な女ですね……!是非、サラ様にぎゃふんと懲らしめていただきたいものです。


次回は、サラとロイの結婚後、すぐの話になります。

久々のグレ兄様の登場です。あれ?久々? マヨネーズ食べてた気が……??

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