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111. 城2階の戦い ー忠義の魔法騎士 3ー

 デュオン達がレオナルドと戦い始めた頃、サラ達聖女様御一行は、3階へと続く階段の前で足止めを喰らっていた。

 時間を節約するために、二手に分かれて攻略するつもりのサラ達だったが、レオナルドの強力な結界が2階全体に張られていて、先へ進むことが出来ないのだ。

 ゲームでは、1チームで順次攻略していくため、想定しなかった問題であった。

「ふむ。仕方ないな。一度、ロイ達と合流して共闘してレオナルドとやらを倒そう」

「うう。そうですね」

 ゾルターンの提案に、サラが残念そうに頷いて踵を返したその時、ぐらり、と世界が揺れた。

「え!?」

「何だ!?」

 あまりの衝撃に倒れそうになったサラの肩を、ゾルターンが支えてくれた。他のバンパイア達も動揺していることから、眩暈ではなく、本当に世界が揺れたらしい。

「あ」

 と、サラは思わず声が出た。

 何か、とてつもない気配がこの世に生まれた感覚があった。この感覚を知っている。

「勇者……勇者の力が復活したんだ!」

 これは、カイトの気配だ。リーンが封印を解いたのだろう。だとすれば、カイトも直ぐ近くまで来ているということだ。

 勇者と聖女が揃う。何と心強いことだろう。

「聖女殿! 結界に綻びが出来ている!」

「ええ!?」

 ゾルターンに言われて階段を見ると、僅かに結界が緩んでいる部分が見えた。サラは迷わず緩みに手を伸ばし、魔力を注いだ。すると、人ひとりが通れるほどの穴が開いた。

「今の内に!」

「「「おお!」」」

 この機を逃す手はない。

 サラ達は、結界を抜け、3階へと階段を駆け上がった。


 ◇◇◇◇


 デュオンは理性を失っていなかった。

 先程は体の変化に対応できず理性を失いかけたが、肩や胸を突かれた痛みで目が覚めた。

 狂戦士化の効果は予想以上だ。

 筋力だけではない、魔力も飛躍的に上がっている。まるで、生まれ変わったような気分だった。

 これでは、狂戦士どころか、むしろ魔族ではないか、とデュオンは思った。

 SSランクのデュオンが魔族化。当然、高位魔族相当だ。

 その魔力をありったけ込めて、重力魔法を放った。

 今、レオナルドの身体と剣には、いったいどれ程の重力がかかっているのだろう。

 レオナルドの足が、メキメキと魔術で強化されているはずの床に沈み込んでいく。

 自分だったら瞼すら開くまい、と、デュオンはほくそ笑んだ。


「貴様も魔法騎士か」

「凄いですね……口を開けるとは」


 デュオンは身を起こしながら、素直に驚嘆した。

 狂戦士化のせいか、肩と胸の傷に痛みはない。

 胸の傷は深い。人間であれば確実に死んでいる怪我だ。

(なるほど。理性はあるが、感覚はない、か。早々に仕留めなければ、私の身が持たない)

 デュオンはあくまでも客観的に自身の状況把握に努めた。


「はあっ!」

 デュオンは剣を構え直すと、美しい姿勢で突きを放った。


「うおおおおお!」

 レオナルドは魔力の出力を最大限に上げて、魔力の盾でそれを防いだ。

 バチッ! と火花が飛び散る。

 凄まじい衝撃がレオナルドを襲い、重力も合わさって膝を突きそうになる。

 が、レオナルドは耐えた。

 歯を食いしばりながら、レオナルドもデュオンに対し、感嘆の念を抱いていた。


 レオナルドは火・水・風・土・光・闇の魔法を使えるが、重力を操る魔法は使えない。

 重力魔法は、非常にレアなのだ。

 しかも、剣技も素晴らしい。部下を逃がす時間を稼ぐために、自ら格上の相手に挑む胆力もある。

(これほどまでに優秀な魔法騎士ならば、腹心としてスカウトしたいくらいだ)

 とレオナルドは心底思った。

 だが同時に、

(どれだけの好条件を並べても、この男はなびかないだろう)

 とも思う。

 話にしか聞いたことのない『狂戦士化』の魔術を、この男は躊躇いもなく自分に使った。

 術者であるからには、理性を失う可能性も、戻れなくなる可能性も把握しているはずなのに。

(それほどまでに、守りたい主人がいるのか)

 レオナルドは、目の前の男に自分と似たものを感じていた。

 こんな状況ではあるが、人であった頃に出会っていればよい友になれただろうに、と少し残念に思う。共に、我が王の下でこの世を黒く変えられたのに、と。


「はあっ!」

 デュオンの何度目かの突きが、レオナルドの盾を貫いた。

「ぐっ!」

 レオナルドの首に、深々と剣が刺さった。

 魔族は普通の剣で刺されたくらいでは死なない。それ故、この男は心臓や頭ではなく、一番細く切断しやすい首を狙ったのだろう。

 だが、惜しい。

 デュオンの剣は突きに特化するために、通常の剣よりも細い。レオナルドの首は切断されることはなく、剣に貫かれたまま微動だにしない。それどころか、レオナルドに刺さった剣が見る見るうちに溶解していく。

「ちっ!」

 思わず、デュオンは舌打ちした。剣が使えないことを悟ると、デュオンは潔く手を離し、首に巻いたターバンを拳に巻いてレオナルドに殴りかかった。ターバンを拳に巻いたのは、砕けた拳が飛散するのを防ぐためだ。

 ロイが名を呼んでくれているのが聞こえるが、振り向いて笑ってやる余裕はない。


「無駄だ。お前の魔力は尽きかけている。正直に言わせてもらうと、お前は殺すには惜しい。今すぐ狂戦士化を解いて、我が王に忠誠を誓え。命は助けてやる」

 レオナルドが、無表情のままデュオンに語りかけてきた。デュオンは一瞬、目を見開く。

「馬鹿な事を……!」

 二度、三度とレオナルドの盾に魔力を纏わせた拳を叩きつけながら、デュオンは苦笑した。

 無駄話には乗ってこないだろうとは思っていたが、まさか向こうから話しかけて来るとは予想外だった。時間稼ぎか本気なのかは判断しかねるが、話をしてもよい、という程度には、自分は認められたのだろう。

(……全く、嬉しくないですけど)

「ふんっ!」

 デュオンの拳が、レオナルドの顔面を捉えた。ボキッ、と嫌な音がしたのは、デュオンの拳か、レオナルドの鼻か。

「あなたの方こそ、我が王に仕えたらどうですか? 我が王は魔物にも寛容ですよ。……犬になるのなら」

 デュオンの拳から、血が噴き出した。あちこち、骨折したのだろう。

「……なるほど。人から言われると、自分がいかに馬鹿を言ったかが分かるな。取り消そう。貴様はここで殺す。私が、王を裏切ることはない」

 端正な顔に鼻血を垂らしながら、レオナルドが薄く笑った。

「貴様にとって、王とは何だ?」

「私にとって、キングは誇りです」

「そうか……私にとって、王は『全て』だ」

 その瞬間、ぞわ、と全身に鳥肌が立つ感覚に、デュオンは一歩足を引いた。

 突然、ドンッ! と鈍い音がして、デュオンの胸に拳大の穴が開いた。いや、正確には、胸に開いていた穴が拳大に広がったのだ。

「がっ……!?」

 口から血をまき散らしながら、デュオンが倒れた。胸から大量の血液が一気に流れ出る。

「ほう、時間切れか」

 レオナルドが剣を()()()()()()()、デュオンを見下ろした。レオナルドの言う通り、狂戦士化の時間が終わったのだ。急速にデュオンの意識が遠のいていく。


「貴様はよくやった。貴様の王には、貴様の最期を伝えてやろう」


 至極残念そうな顔で、レオナルドはデュオンの首めがけて剣を振り下ろした。


ブックマーク、評価、感想等、ありがとうございます!


今回は、レオ様VSデュオンさんでした。

どちらも魔法騎士ですね。デュオンさん、穴だらけで心配です。


さて、ジョジョ展に行ってきました!

女性客が多くてびっくりしました! 半々くらいでしょうか。

そして、書き下ろしのイラストのカッコよさに痺れたぜハート!


次回はレオ様編の最後です。たぶん! ご覧いただければ幸いです。

(ローファンタジーで『シノと白鬼』(旧題;教会の狩人)という連載も書いています。

こちらもご覧いただければ幸いです!)

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