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85. 暗転

今回、ちょっとショッキングです。ご注意ください。

 サラ達が住まうレダコート王国より西に遠く離れた所に、魔王が住まう旧アルバトロス王国がある。

 広大な砂漠の中に生まれたその国には、かつては数億人が生活していた。

 破竹の勢いで侵略を続け、建国から100年余りで世界最大と言われるまでになったが、とある魔族の誕生により一夜にして滅亡した。


 それから17年。

 未だに放置されたままの地方の廃城に、三人の高位魔族が集まっていた。


 元エルフ、ギー。

 元サキュバス、ニーチェ。

 元人間、レオナルド。


 魔王とガイアードを除き、数百ともいわれる魔族の頂点に立つ三名である。


 決して、仲良くお茶でもしよう、という趣旨で集まった訳ではない。


 魔王が誕生してから17年。

 古代龍の結界に閉じ込められて2年。


 魔王軍では、ヒューが一向に魔王として覚醒しないことで魔族達の焦りと不満が募っていた。

 まさか、魔王ではないのでは? という噂まで広まりつつある。


 ソフィアと出会うまでのヒューは順調に育っていた。純粋で、残酷で、狂気めいた美しさがあった。


 レオナルド達はヒューが覚醒しない原因がソフィアにあると考えていた。ソフィアと入れ替わった右腕を通して人間らしい感情がヒューの根幹に流れているのだろう、と推察している。


 そうなると、魔族の考えることは一つだ。


「ソフィアを排除する」


 低い声で話を切り出したレオナルドに対し、ニーチェは一瞬目を見開いた後、すぐに恍惚の笑みを浮かべた。喜びで体が芯から震えている。

「あはん……ああ、素晴らしいわ、レオナルド。まさか貴方の口がその言葉を紡ぐなんて!」

「貴様はあの娘を主と仰いでいたのではないのか?」

 ギーがエルフ特有の美貌に薄い笑みを浮かべている。面白い話を聞いた、と顔に書いてあるようだ。

 ギーはエルフの異端児だった。

 魔王を絶対悪と見なす南のエルフの王族として生まれながら、魔王に興味を持ち、自ら魔王になろうと思った男だ。それだけに、今のぬるま湯に浸かった様な状況を最も腹ただしく思っている人物である。魔王が弱い原因がソフィアにあると勘づいていても、常にガイアードとレオナルドが護っている状況では手出しができなかった。

 その守護者の一人が、夢の様な提案を持ちかけている。愉快、としか思えなかった。


「何か誤解があるようですが、私が主と仰ぐのは魔王とガイアード様のみです。ソフィアの面倒をみていたのは、お二人が大切になさっていたからです。ですが、その存在が魔王の覚醒を邪魔しているのであれば、私は、お二人のために手を汚すことを厭いません」


 感情のこもらぬ声で、レオナルドは告げた。

 かつての親友の娘であり、主が娘のように愛情を注ぐ少女。人間であったころのレオナルドであれば、命に代えても守りたいと思っただろう。

 だが、魔族となったレオナルドにとっては、悪しき存在でしかない。

 情が無いわけではない。生まれたての赤ん坊のころから見てきたのだ。おしめも代えたし、風呂にも入れた。絵本も読んでやったし、歌やダンスも教えた。健やかに大人になっていく姿には感慨深いものがあった。

 ……魔王の邪魔をしなければ、魔王の肉親として守るべき存在だと、今でも思っている。


 だが、彼女は魔族の敵だ。


 彼女の存在は、魔王の輝きを鈍らせ、主の心に隙を作り、魔を弱くする。


(申し訳なく存じます。我が王よ)


 謝る相手は、ソフィアではなくガイアードだ。


「ニーチェ。ギー。協力してください」

「あはん……! もちろんよ、レオナルド」

 妖艶に微笑みながら、ニーチェは紅い唇を舐めた。

「貴様が動かなければ、俺が先に動いていた。共闘は好みではないが、のってやる」

 残忍な笑みを浮かべながら、ギーが身を乗り出した。

「ガイアード様に恨まれることになりますが、いいのですか?」

「うふふ。魔王のためなら、どんな犠牲をも払うのが魔族よ? ……ああん! 覚醒した魔王様を想像しただけで体が火照るわ」

「俺もこんなに滾るのは久しぶりだ」

 二人の魔族が興奮に身を震わせている。並みの魔族であれば恐怖のあまり発狂するだろうな、と他人事のように考えながら、レオナルドは椅子から立ち上がった。

「……では、行きますか」

「ええ」

「ああ」



 ……この日。

 ポルカの街で痛ましい事件が起きた。


 トスカという老婆とその家族が盗賊によって惨殺され、その場に居合わせた若い娘達は誘拐された。


 翌朝、依頼を受けた冒険者によって盗賊は皆殺しにされたが、娘達は見るも無残な姿で発見された。


 後に、冒険者の一人がこう証言している。


「盗賊達は、何かに操られているようだった。切っても切っても襲い掛かってきやがった。首を刎ねても動いてるやつもいたぜ? ぞっとしたよ」

「俺達が見つけた時、娘は3人とも生きていたぜ? 二人はボロボロに汚れていたが、怪我も治癒魔法をかけられていて、身体は無事そうだった。まあ、心は壊れちまってたがよ」

「もう一人は……可哀そうに。あとの二人を必死に庇ったのだろうな。ひどい、怪我だった」

「……ああ、惨いことしやがる。あの娘、『赤ちゃんが……赤ちゃんが……』って、最期まで、ずっと自分の腹を擦っていたよ。……酒をくれ。あの()()()の姿が頭から離れねえんだ。しらふじゃ、眠れなくなっちまったよ」


 と。


 冒険者達の手によって、ポルカの街に運ばれた少女の遺体は、養父だという男が引き取っていった。

 美しい、美しい娘だった。


 しばらくして、世界が揺れた。


 古代龍の結界を破り、『魔』がポルカの街を襲う。

 一瞬にして、ポルカから人が消えた。


 ……人間に対し、激しい恨みを抱きながら……魔王、覚醒である。


ブックマーク、感想、評価等、ありがとうございます!

励みになりまってます!


さて、今回、大きく世界が動き始めました。

当初のプロットとだいぶズレてきたので、どうなっていくのか私にも分かりません!

最後は決めてるんですが、そこに上手く行きつけるか心配です(笑)


これからもよろしくお願いします!


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