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84. 第二回男子会議とギルドマスターからの報告

「はいはーい! 第二回男子会議を開催しまーす!」  

 パオーンと、わけの分からない楽器を鳴らしながらリーンが元気よく開催宣言を行った。  

 場所はレダコート王国の武器屋である。

 メンバーはリーン、ユーティス、パルマ、ロイそして強制参加させられたリュークだ。


「納得がいかない!」

 バン! と、ユーティスが机を叩いた。

「サラに興味がないと言っておきながら、何だあのダンスは! しかも、あのドレス……!」

 机に叩きつけた右手をそのまま握りしめて、ユーティスが忌々し気にリュークを睨んだ。残念なことに、リュークは涼しい顔のままだ。

「似合っていただろう?」

「似合っていた! それはもう、天使の愛らしさと女神の神々しさを合わせたような麗しさで、って、そうじゃない! 俺は武器屋に文句を言っているのだ!」

「まあ、まあ、王子君落ち着いて?」

「さては貴様も共犯だな!?」

「……てへ!」

「貴様ぁ!!」

 ユーティスがリーンに襲い掛かった。慌ててパルマが止めに入る。ちなみに、ロイは部屋の隅で膝を抱えている。昨夜のサラとリュークの光景がよほどショックだったようだ。

「王子! エロフの首を絞めないで!」

「パルマ! お前は悔しくないのか!? サラと散々公衆の面前でイチャイチャした挙句、『泣かすな』と言ったくせにサラを号泣させていたのだぞ!?」

「まあまあ、リュークおじさんに怒るだけ無駄ですよ? おじさん、天然鈍感ドラゴンなんで」

「そのへなちょこドラゴンにサラを取られてもいいのか!?」

「……へなちょこ?」

「おじさん、そこは気にしないで。それから、大丈夫ですよ、王子。おじさん、人間の女子には無頓着ですから。おじさんがドキドキする相手って、年上のドラゴン女子くらいですから」

「ほぼ存在しないではないか!」

 ユーティスの突っ込みは正しい。年上のドラゴン女子は、姉も含めて5匹しかいない。

「武器屋! 俺は人間としてサラの一生に責任を持つつもりだ! 貴様には渡さん! それだけは覚えておけ。今日はそれだけを言いに来た。帰るぞ! パルマ!」

 一方的に宣言して、ユーティスが席を立った。相変わらず言いたい放題だが、サラにフラれたショックから立ち直るのに、ユーティスなりに必死だった。昨夜、サラが誰を好きなのか分かってしまった。よりによって、サラを女性としてみることのない男だった。サラが不憫でならない。パルマやロイになら、負けても祝福できた。だが、この男だけは認められない……!

「俺は、諦めないからな!」

 そう言い放つと、ユーティスは武器屋を出て行った。

「はぁ。すみません、おじさん」

 パルマが申し訳なさそうに肩をすくめた。

「気にしてない……だが、何をあんなに怒っていたのだ?」

「この天然ドラゴン野郎! ……あ、こほん。すみません。僕も帰りますね。……ロイ? 床に寝ころんだら汚れますよ? ほら、元気出して。まだサラさんは誰のものでもありませんから。ね?」

「……うん」

 ロイの肩を叩いて、パルマはロイを起き上がらせた。服に付いた埃を、パンパンと払ってやる。

「あはは! 息子ちゃんはお母さんみたいだねぇ!」

 呑気な父の声に、イラっとした。誰のせいで、僕達が凹んでいると思っているんだ、と怒りが湧いた。

「はぜろ、エロフ……!」

「ええええ!?」

 物騒なことを言い残して、パルマもロイの手を引いて去っていった。

「パルマとロイは仲がいいな」

「……君ねぇ……」

 はあ、とため息をついてリーンがリュークの正面に座り直した。

「リューク。僕の仕業だったとはいえ、あの子達にしてみたら、好きな女の子が予定外の相手と仲良くしているのを見せつけられて、ショックだったんだよ? それは、分かる?」

「? 俺とサラが仲良しなのは昔からだ」

 きょとん、とリュークが目を丸くした。

「いや、そうなんだけどね? 子供と接する様に、大人の女性と接しちゃ駄目でしょう? サラちゃんはもう大人なんだから、誤解されるような言動には気を付けようね?」

「?」

 子供達だけでなく、何やらリーンからも叱られている。何故だ? と、リュークは首を捻った。

「昨夜はリーンが準備した服を着て、リーンに言われた通りの時間に、リーンが指示した場所に転移して、リーンに頼まれた通り踊っただけだぞ?」

「うわあ! 黒幕、完全に僕だった! でもさ、さすがの僕でも、君があの大事な鎧とドレスをサラちゃんに着せるとは思ってなかったよ? いままで、誰にも触らせたことすらなかったでしょ? どういう風の吹き回し?」

「サラは、『宝』だからな」

 リーンの質問に、リュークは何故かドヤ顔で腕を組んだ。

「宝?」

「ああ。昔、リーンがパルマのことを『僕の宝物』と言っていただろう? とても大切で、守るべきもの、という意味だと思った。だから、俺の『宝』はサラだ」

「………………へぇ………………」

 リーンの知る限り、リュークの『とても大切で守るべきもの』は母の形見と姪ドラゴンだけだったはずだ。じわじわと、リーンの胸に熱いものが込み上げてきた。

「そうか、そうなんだ! へえ! やっぱりサラちゃんは特別だねえ!」

「ちなみに、タマとコロも俺の宝で」

「あああ! 今のは聞かなかったことにするからね!? チュールとサラちゃんを一緒にしないでね!? さすがの僕も怒るからね!?」

「?」

 あははは! とリーンは笑った。こんなに楽しい気分は久しぶりだ、とリーンは目を細めた。リーンはリュークの養父だ。永遠に変わらないと思っていた息子の変化が、純粋に嬉しい。


(苦労するね、サラちゃん……!)


 と、リーンは大聖堂の聖女に想いを馳せた。



 一方、大聖堂では、聖女サラが大きな瞳をこれでもかと言うほど見開いていた。

 サラの後ろにはアマネ、近くにはグランとシグレが控えている。そして正面には、レダコート王都の冒険者ギルドマスターがニヤニヤしながら立っていた。


「それは本当ですか!? ゴリラ男爵!」

「ラコラだ! お前と一緒にするな!」

「ひどい!」

「どっちがだよ! ったく、聖女だと聞いた時には驚いたが、あんまり変わらねえな」

 はぁ、とため息をついて、ダイ・ゴバール・ラコラは腹を叩いた。ここに来たのはサラ達『黒龍の爪』に大事な話があったからだ。ギルドマスターといえ、聖女となったサラに面会するまでにはかなりの手続きが必要であり、正直なところ「面倒くせえな!」と、ダイは思った。まあ、手続きのほとんどはギルド職員のエミリアが代行したのだが。


 あまり変わらない、と言われ、心外だと言わんばかりにサラは顔をしかめた。

「結構、真面目に頑張っているのに……」

「はいはい、可愛い、可愛い」

 半ば投げやりにダイはサラを褒めた。実際に、黙って座っていれば息を飲むほど美しい。……黙っていれば。

「さっきの話は本当だぜ? 『黒龍の爪』は正式にSSランクパーティとして認められた。おめでとう!」

 再度要件を伝えて、ダイは人懐っこい笑顔で祝福した。

「ふぉふぉふぉ! わずか1年でSSランクとは、過去にも数例しかないのぉ」

「え!? 前例があるの?」

「勇者のパーティなんかは、時々そうなるのぅ。なんにせよ、皆、よくやったな」

 グランが優しい眼差しで、若者たちを見回した。

「グラン殿が導いてくれたお陰です」

 シグレがグランに頭を下げた。アマネもグランに頭を下げた。

「グラン様。最初は、骨ばっかりのシワジジイだと思っててすみませんでした。……ぐふっ!」

「おいおい、グランをジジイ呼ばわりする女もどうかと思うが、女に腹パンチ食らわせる男もどうかと思うぞ!? ちょっと、浮いたし!」

「ご心配なく、手加減はしていますので」

「当たり前だ!」

「うぐぐ。お昼食べたやつが出てきますよ? 上と下から……うぎゃあ!」

「仰け反るほどのデコピンて……ま、まあいいか。話を続けるぜ?」

 オホン、とダイは咳ばらいをして気を取り直した。

「個人ランクでも、サラはSSランクだ。バンパイアの大量テイムが大きいな。グランとシグレはSランクのままだが、1年じゃ当たり前だ。アマネはAランクだが、まあ、妥当だろ。そんな顔するな! 脱ぐな! 俺の一存でランクは上げれねえよ!? あと、ロイはSランクに昇格だ。ヒュドラを仕留めた功績がでかいな……って、ロイはどうした? 聖女の側にいなくていいのか?」

「リーンに呼ばれたそうなの。大事な話があるからって」

「リーン? ああ、大魔術師か。じゃあ、しょうがねえな。とにかく、そういう事だから、落ち着いたらギルドに顔を出してくれや。カードを更新するからよ」

「「「「はい」」」」

 じゃあな、と言って、ダイは帰って行った。『黒龍の爪』が事実上解散したことは伝えていないが、察してはいるだろう。


「「「「……」」」」

 ダイが居なくなると、四人だけになった部屋に沈黙が訪れた。

「……まあ、なんじゃな」

 気まずさを取り払うかのように、グランが盃を4つ取り出し、それぞれに配った。

 ちょうどその時ロイも戻って来たため、ロイにも盃を渡し、グランは酒を注いだ。サラのものだけ、ジュースだ。

「何はともあれ、お疲れ様、じゃ。形は変われど、『黒龍の爪』は不滅じゃ。これからもよろしく頼むぞ」

 そう言って、グランが盃を掲げた。

「これからは旅の仲間ではなく、『鬼』としてサラ様を守ります」

 シグレも盃を掲げた。

「サラ様は、私がいないとダメですからね! 侍女としてお世話いたします」

 アマネも掲げた。

「俺は、残りの人生を恩返しのために使いたい。サラや父上だけじゃなくて、皆のことも恩人だと思ってるから」

 ロイも掲げた。

「皆が居てくれて、本当に心強いわ。魔王のこと、正直、まだ迷ってるけど……皆となら乗り越えられるって、信じてる。これからも、よろしくお願いします!」

 サラも、高々と掲げた。


「「「「「乾杯!」」」」」

 『黒龍の爪』に、穏やかな笑顔が戻っていた。




 『黒龍の爪』が改めて絆を確かめ合ったこの日から1か月後。

 遠く離れた旧アルバトロス王国で。


 魔王が、覚醒する。


ブックマーク、評価、感想等、いつもありがとうございます。


さて、次回は登場人物のおさらいですが、

それが終わると遂に魔王戦に突入します。

はあ、しばらくギャグがなくなる……!

ひょっとしたら、笑いを求めて違う作品を書き始めるかもです。

その時はよろしくお願いします(笑)!

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