表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/365

79. 凱旋パーティ ーユーティスー

「サラ。本当に『いい女』になっていて、驚いた」

「ふふ。ユーティスも、びっくりするくらい『いい男』になったね!」

 シャンデリアに照らされながら、二人はキラキラと輝きながら舞っていた。二人の姿は、お伽噺に出てくる王子とお姫様そのものだった。

「サラ、サフラン大陸攻略、おめでとう。本当にやってのけるとは、恐れ入ったよ」

「ユーティスこそ、色んな国と同盟を結んだって聞いたよ? 本当に、凄いね。おめでとう!」

 サラは1年前の夜のことを思い出し、胸の鼓動が早くなっていた。ユーティスはポーカーフェイスだが、いつもより視線に熱が籠っている気がして、サラはますます赤くなった。

 ゲームのユーティスは俺様系のドSキャラであり、正直あまり好きではなかったのだが、現実のユーティスは格段に男らしく、逞しく、素敵な殿方に成長している。きっと、サラのもたらした「良い変化」なのだろう。そう思うと、サラは少し嬉しくなった。

「どうした? 何か、おかしいかい?」

「ううん! 帰って来たんだなぁって、しみじみしてた」

「ふっ。やはり、サラの帰る場所は、俺の所で決まりだな!」

 ドヤ顔で微笑みを浮かべるユーティスの姿に、サラは罪悪感を覚えた。ずっと、ずっと、サラに真っ直ぐに愛を告げてくれるユーティスに、自分は今から酷いことを言おうとしている。

「……ユーティス……ちゃんと、言わないといけない事があるの」

 離れたり、寄り添ったり、サラは優雅に舞いながら、ユーティスに囁いた。ユーティスはほんの一瞬傷付いたような表情を見せ、僅かに目を伏せた。

「……今は、聞きたくない」

 絞り出す様な声と共に、サラの腰を抱く腕に力がこもる。

「ユーティス、聞いて? 大事な話なの」

 覗き込む様にして目を見つめてくるサラに、ユーティスは首を横に振った。


 ユーティスには、サラの言おうとしていることが分かっていた。

 サラは、公式に聖女と認められてしまった。責任感が強く優しいサラが、使命を忘れて誰かと付き合うことなど無いだろう。ずっと前から覚悟していたことだ。だからこそ、ずっと焦っていた。1年前のあの日、サラを見送ってしまったことをどれだけ後悔したことか。


(……言わなければならないことがあるのは、俺の方だ。今を逃せば、一生、後悔する)


「サラ。……俺は、18までに結婚しなければならない。これは王位継承権を持つ王子として、決められたことだ」

 自然に、サラを抱く腕に力が入る。周りの貴族達に分からぬように、ポーカーフェイスを決めているが、ユーティスの優雅な仮面の下では血を吐く様な想いが込み上げている。

 ユーティスはサラを引き寄せ、耳元で囁いた。

「サラ、俺と結婚してくれ」

「!」

 それはシンプルで率直なプロポーズだった。

 ユーティスの想いが痛いほど伝わってきて、サラは胸と目頭が熱くなった。

「……ごめんなさい。私、魔王を倒すまでは恋愛をしないと決めたの。だから……!」

「言わないでくれ!」

「!?」

 足が、止まった。


 突然、何かを言って聖女を抱きしめ、ダンスを止めた王子の姿に、ざわざわと会場がざわめき立つ。

 このままではまずいと、気が付かないユーティスではないはずだ。

 しかし、ユーティスは動こうとしなかった。

 胸の中にサラを抱いて、サラの髪に顔を埋めて、ユーティスは想いを伝える。

「頼む。10歳のあの日、市場で君を初めて会った時から、俺は君だけをみてきた。お願いだ。……俺を、切り捨てないでくれ……!」

 それは、もはや祈りだった。懇願、といってもよかった。

 みっともないことも、女々しいことも、本人が一番良く分かっているだろう。

 それでもユーティスは言わずにはいられなかった。


 ああ、とサラは呟き、抱きしめ返した。

「ユーティス。私を、好きでいてくれてありがとう」

 思わず、感謝の言葉が出てきた。

 サラの知る中で、最も努力家で、大事な者のためにプライドを捨てることの出来る気高い少年。

 いつもドキドキさせてくれる、誰よりもかっこいい男の子。

 サラの胸の奥が、キュン、と痛んだ。

「……でも、でも、私は直ぐには決められない……!」

 サラにはまだ、「恋」というものが何なのか分からない。

 ユーティスのことは好きだ。

 だがそれは、「恋」ではなく「友愛」だ、とサラは信じていた。パルマやロイに抱く想いと大差ないからだ。こんな中途半端な想いで、ユーティスの妻にはなれない。ティアナを不幸にはできない、とサラは唇を噛みしめた。


 会場のざわめきが一段と大きくなる。二人の会話は誰にも聞こえてはいないはずだが、明らかに異様な光景に映っているはずだ。


「それでも、構わない」

 さすがに限界を感じ、ユーティスはサラを解放した。

 再びステップを踏みながら、サラに微笑んでみせた。

「待つよ。ギリギリまで。確かに、魔王が目覚めるのは5年後かもしれない、10年後かもしれない。一生、目覚めないかもしれない。でも、1年後かもしれないし、明日かもしれない。18までに間に合う可能性は充分あるだろう? 俺は、サラをあきらめたくはないんだ」

「それでも私は、ユーティスを選べないかもしれないよ?」

「選ぶかもしれないだろう?」

 涙を堪えて酷な事を告げるサラに、ユーティスはニコリ、と笑った。その笑顔に、サラの胸が締め付けられる。

「……ユーティス、私……!」

「さあ、曲が終わった。サラ。俺の本心は伝えた。……また踊れる日を楽しみにしている」

 そう告げると、ユーティスはいつも通りの優雅な仕草で一礼し、サラに背を向けた。

 追いかけたい衝動をサラは抑え込んだ。ユーティスの肩越しに、ティアナの姿が見えたからだ。


 ……呆然とユーティスを見つめるティアナの目を、サラは見ることが出来なかった。


メリークリスマス!

いつもご覧くださり、ありがとうございます!


今回は、王子の回でした。王子……!(泣)

次回はもちろん、我らが良心パルマ君です。

パルマ君、フォローを頼む!

「え!? 僕がですか? ……いいですけど、僕だけサラさんとキスしてないんですけど、何か恨みでもあるんですか?」

ないです!全然ないです!そのうち、多分、メイビィ……

「させる気ないでしょ!? ……はあ。それでも引き受けちゃう僕がいます……はぁ」

ということで、パルマ君が頑張ってくれるそうです。では!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ