76. 願い ー二人だけの結婚式ー (挿絵あり)
本日2話(75、76)投稿しています。ご注意ください。
サラ達がサフラン大陸からエウロパ大陸に向けて旅を続けていた頃、カイトとソフィアは、仲間や家族の元を抜け出してはデートを重ねていた。
とはいえ、カイトは筋金入りのコミュ障であり、ソフィアも筋金入りの箱入り娘だ。
二人は、本来であれば、大人になる段階で書物や学園、友人達との会話から学んでいくような男女ことを何も知らぬまま成長した。
そんな二人とって、互いの気持ちをぶつけ合う方法はごく限られており、初めのうちは、手を握ったり、抱きしめ合ったり、唇を合わせたりするのが精一杯だった。
それでも十分満ち足りていたのだが、カイトはパーティの男仲間から、ソフィアは祖母のように慕うトスカから色々な事を学ぶようになると、互いを想い合う少年少女が知りえた知識を実践に移すまでに、時間は長くはかからなかった。
若い恋人達は、深く、深く愛し合う様になっていた。
「結婚しよう」
いつも通りの、秘密のデートの途中。
森の中で偶然見つけた古い教会で、カイトがプロポーズした。
屋根も、壁も朽ち果て、緑と黄色の蔦が絡み合うボロボロの教会だった。
勇者と魔王の妹。
誰からも祝福されない恋であることは分かっている。
それでも、ソフィアは「はい」と笑顔で頷いた。
カイトも笑い、ソフィアの細い腰を抱え上げた。
二人だけの教会で、二人だけの結婚式。
即席で作った花の冠を頭に載せて、ソフィアの歌に合わせて木漏れ日の中を踊る。
金色の木の葉が舞い上がり、キラキラと降り注ぐ。
小鳥のさえずりが、あたかも二人の門出を祝福しているようだった。
熱く、甘い誓いのキスに身も心も蕩けていく。
もうすぐ、夢は終わる。
この世界に、二人が手を繋いで生きていける場所はない。
どれ程愛し合おうと、二人は敵同士なのだから。
分かっている、とカイトは胸の内で呟く。
分かっているの、とソフィアは笑顔の裏で涙を流す。
だからどうか。
せめて今だけは、誰も邪魔をしないで……。
ブックマーク、評価、感想などありがとうございます。
今回は、カイトとソフィアのお話でした。
サラとロイとは対照的ですね。色々と。
この二人も大好きなのですが、どうなっていくことやら。
願わくは、二人に幸多からんことを。




