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33話 熱きダンスパーティー

「姫様!こちらでございますっ!」

「ありがとうございます!」


 イリスティナとその付き人達は必死に走っていた。

 石の壁に囲まれた狭い廊下を息を切らしながら駆け抜ける。松明の光が顔を照らし、汗が噴き出るのを助長する。イリスティナは走って逃げやすいように高価なドレスの裾を破っており、走る度に破けたドレスの隙間から姫様の白い足が見え隠れする。


 イリスティナたちは自分たちの身を守るため、懸命に走り、追手から逃げていた。


「いたぞっ……!こっちだっ……!」

「あいつらはもう逃げられないっ!冷静に追い詰めていけっ……!」


 怒号が飛び交い、イリスティナたちの居場所を敵が仲間内に伝えた。


 大神殿の地下で王女様達と神殿側の兵士達との追走劇が今まさに繰り広げられているのだった。

 オブスマンの死体に変化があったと言って、この神殿の司教バルドスが王女様を地下に誘導し、そこで大軍を待ち伏せさせ、王女様達を追い詰めていたのだった。


 応接間で大勢の敵に囲まれた際は正面の敵だけを集中して薙ぎ払って、イリスティナたちは地下のさらに奥深くへと進んでいっていた。

 戻るという選択が出来なかった。来た道は迷路のようになっていて、一度の案内で道を覚えきれるようなものではなかったからだ。

 先に進み、活路を見出すしか他に手はなかった。


「魔法!放てぇっ……!」


 敵の軍勢が逃げる姫たちの背後に魔法を浴びせかける。

 細い廊下は魔法で埋め尽くされ、避ける場など存在しない。護衛の者が剣や盾で敵の魔法を防ぐが、王女たちは少しずつ傷ついていく。

 もう既に護衛の一人の腕は傷つき、盾を持てない状態になっている。応接間を強引に突破する際に傷ついてしまった為についた傷だった。

 王女の執事も一緒に逃げているが、彼は戦闘においてあまり役に立てていない。仕方のない事ではある。


「皆様っ……!大丈夫ですか……!?」

「……はいっ!姫様っ!大丈夫ですっ!まだまだいけますっ……!」


 護衛は傷ついた腕を抑えながら、必死に走っていた。目の前の姫を守るために懸命に走っていた。

 後ろからは大勢の人間が自分たちに駆け寄ってくる猛烈な足音が聞こえてくる。追いつかれ、捕まってしまったら彼女たちはもう二度と日の目を見ることは出来ないだろう。


 応接間において、司教バルドスはイリスティナに対し「私たちのことを執拗に探るなんて」と言っていた。つまり、彼女が雇った冒険者たちが調査していた内容に、この教会、もしくはバルドスが不利になる情報が含まれていたという事になる。


「姫様っ!また階段がありますっ……!」

「分かりました!下りましょう……!」


 通路の先に延びている階段を何段も何段も飛ばして、彼女たちはまるで落ちるかのように階段を下っていった。もう既に先程の応接間よりも大分下った位置にいた。階段を下れば下る程、地上は遠くなっていく。


「なに……?姫たちがどんどん下層へと下っていくだと…………?」


 部下からの報告を聞いたバルドスはにやりと笑った。


「馬鹿共め」


 地下深くには決してバレてはいけない秘密が存在するが、それは姫たちがここを脱出してしまわない限り、バレても困る事ではない。ここで捕まえて、一生外に出さなければいいだけの話なのだ。

 姫たちが階段を次々と下っていくのは愚策であるとバルドスは考える。彼は今必死に苦しみもがいているだろう王女たちの姿を思い浮かべながら、彼女たちを嘲笑った。先に進むしか選択肢を持たないイリスティナたちにとっては仕方のない行動ではあるのだが。


 進む進む進む。

 走る走る走る。

 追手がねちねちと仕掛けてくる攻撃を、何とかいなしながら王女たちは一生懸命走った。


 そして、ある場所へと至った。


「姫様っ!扉です……!」

「破って下さいっ!」


 護衛は扉に体当たりをして強引に突き破った。


「なっ…………!?」

「これはっ…………!?」


 その扉の向こうには異様な光景が広がっていた。


 先程の応接間とはうって変わり、薄暗いじめじめとした空間が広がっている。そこには絨毯も絵画もなにも無く、殺風景でごつごつとした石の肌がむき出しになっている。石は冷気を吐き出し、この部屋は凍てつくように寒かった。


 そんな中で、大勢の人間が鎖に繋がれ束縛されていた。

 鎖付きの首輪を付けられており、肌を最低限しか隠せていないボロ布を身に纏わされている。震え、凍え、顔色は青白い。イリスティナたちとここにいる人間の間にはまるで牢屋の様な鉄柵で区切られており、彼らが逃げられないようになっていた。


 奴隷……王女たちの頭の中にそんな言葉が過ぎった。


「貴方達……!?大丈夫ですかっ…………!?これはどういうことですかっ…………!?」

「………………」


 鉄柵の向こう側の人間はイリスティナの呼びかけに応じなかった。

 意識はある。しかし、返事をするのも億劫だという様に、ほんの少しだけ顔を上げイリスティナを見て、そのドレス姿に失望したかのようにまた顔を下げた。

 その目には何の希望も映っていなかった。


 鉄柵の王女側の方にこの教会のもっとも偉大な聖人、オステル・マルタの祈りの像があるのがとてももの悲しかった。


「姫様っ!追手が来ましたっ……!」

「…………っ!」


 後ろから追手がやってくる。しかし、イリスティナたちに逃げ場はなかった。この部屋には次の場所に続く道はなく、牢屋しかなかったのだ。

 イリスティナたちは追い詰められ、鉄柵に背を付けることしか出来なかった。護衛たちは王女様の前に身を出し、彼女を庇おうとしていた。


 追手の兵士たちがこの牢屋の部屋に雪崩れ込んでくる。

 警戒しているのか弄んでいるのか、一定距離を開け近づいて来ようとしない。その顔には厭らしい笑みが張り付いている。

 王女様達は牢屋の鉄柵に背を付けているが、そのままその鉄柵を体がすり抜け、その牢屋が自分たちの居場所になってしまうかのような雰囲気が漂っていた。


「いやいや、王女様……貴女がここまでお転婆だったとはねぇ…………」


 兵士達とのにらみ合いが続いていると、人を掻き分けバルドス司教が姿を現した。


「まさか、ここまで辿り着いてしまうとは思いませんでしたよ…………」

「司教……!これはどういうことですかっ……!」


 イリスティナは吠えた。

 バルドス司教は手に杖を持っている。身長の半分もある大きな杖であり、クラッグとリックの報告にあった『夜空に煌めく星々』という神器で間違いないと王女は判断した。


「ご覧の通り、奴隷ですが?」

「この人たちはどう見ても違法奴隷でしょうっ!?教会がこんなことをしていいと……いや、人としてこんなことをやっていていいと思っているのですかっ…………!」

「はははは…………」


 バルドスは姫を小馬鹿に笑いながら、自分の髭を擦った。


「これは、そうですねぇ……必要悪、というものでしょうか…………」

「……必要悪…………?」

「……もうお分かりだとは思いますが……『神隠し』の正体はこの奴隷たちです。人が忽然といなくなるのも、『悪戯』をされてしまうのも、全ては我が一族のバックアップによって為されている大きな事業です」

「…………事業?」


 この神殿都市には『神隠し』という伝説があり、神の住まう『聖域』に招かれ、そこで神の手伝いをするようになるのだという。それは古くから伝わるこの都市の伝説で、『聖域』に招かれることは名誉なことだとされていた。

 しかしその『神隠し』とは、ただの教会の者の手による人身売買であった。


「……なにが必要悪ですかっ!あなた達がただ人を弄んでいるだけではないですかっ!この悪行のどこに正当性があるのですかっ…………!?私はあなた達を許さないっ……!」

「ははは……許さない……王女様は違法奴隷がお嫌いのようだ…………

 しかし考えてみて下さい……この『神隠し』の伝説、この都市ではいつから噂されているのでしょうか…………」

「―――――」


 イリスティナは考える。この都市で調査を始めた初日、老夫婦が子供の頃から聞かされていると言っていた。また、その老夫婦の祖父でさえ、その話を当たり前のように話していると言っていた。

 バルドスは語る。


「ずばり400年程前。つまり我が一族は400年以上もこの人身売買を行ってきたのです。

 この意味が分かりますか?つまりこの事業は400年もの間、一部の貴族や商人、権力者たちの間で親しまれ続けていた裏の事業なのです!」


 バルドスは恍惚と両手を広げ、自分に酔いしれるように語った。


「私たちの事業はこの国……いや、この世界で必要とされているのです。400年も支持を受けてきたのですっ……!法に則った正規の奴隷では出来ないことが山ほどあるっ……!

 この奴隷事業は必要だ。必要悪だ。これが無くては世界は成り立たないっ……!世界は私を求めているのだっ……!」

「………………」


 目を剥きだし笑うバルドスを、イリスティナは汚物でも見るような目で見て蔑んだ。しかし、睨むだけで何も出来ないイリスティナを見て、バルドスはにやにやと笑った。


「攫ってしまえば後は簡単なものでしてね……この神器『夜空に煌めく星々』を使ってしまえば、皆従順な子猫になってしまうのですから」

「……洗脳系の神器ですね」

「その通り。貴女が今から身をもって体感する神器ですよぉ?」


 バルドスは王女に見せつける様に神器の杖をくるくると回した。ニヤニヤと楽しそうに、勝ち誇ったかのように杖を回していた。

 イリスティナは質問をする。


「……『アルバトロスの盗賊団』の神話にその名前がありますが、教会は『アルバトロスの盗賊団』と繋がりが…………?」

「んん?『アルバトロスの盗賊団』と繋がり……?いや、そんな訳ないでしょう。何か元となった歴史はあるのでしょうが、アレは結局のところ神話……つまり作り話です。

 それに神話では『夜空に煌めく星々』は『アルバトロスの盗賊団』に奪われなかった。そうでしょう?」

「………………」


 その通りである。『アルバトロスの盗賊団』は報酬として王に『夜空に煌めく星々』を要求したが、その報酬は支払われることは無かった。


「この神器は500年前、王から下賜(かし)されたものです。まぁ、こんな使い方をしているなんて今の王たちは夢にも思っていないでしょうが」

「………………」


 実際にイリスティナはその事実を知らなかった。恐らく彼女の父も知らないことであろう。


「…………この悪事は教会全体が関わっているのですか?」

「いえいえ、勤勉で節制な大司教様はなーんも預かり知らぬことです。この事業は我が一族が影で400年間行っているもの。我が一族とそれにくっついてきている者たちだけで行われてきた誇り高い事業なのです」

「………………」

「この教会のトップが光の部分だとすれば、我が一族は影の部分。一体どの家のおかげでこの教会が栄えて来れたのだと思っている?この都市がここまで広がっていけたのは誰のおかげだと思っている?

 全ては金。皆が求めるビジネスを行い続けてきた我が一族が、どれだけ教会のために金を使ってきたか。世界中で慕われている教会として、この国の国教として、大変で厳しい時期にどれだけ我が一族が金を出してきたか。

 全ては……全ては金であり、我が一族のおかげなのです!」


 バルドスはそう叫んだ。嬉しそうに叫んでいた。こんな悪事を働くことに、本当に誇りを持っているような様子であった。長い年月、この一族が人身売買をやっているとなると、彼はこの状況が当たり前のものとして育ってきたのだろう。


 イリスティナは嫌悪感で胸が一杯になりながら、それでも質問を続けた。聞かなければいけないことがたくさんあった。


「……あなたは……都市の人たちの事をどう思っているのですか…………」

「んん?」

「街の人たちは話しておりました。『神隠し』に合うことは名誉なことなのだと、神様に仕えられることは幸せなことなのだと…………そう思って、身近な人がいなくなる悲しみにも耐えてきたのです…………

 そんな人たちに……あなたは申し訳ないと思わないのですかっ……!?」

「どうでもいいです」


 彼は退屈な話を聞くかのように、首を傾けながら答えた。目の光はイリスティナを見下していた。


「なっ……!?」


 イリスティナはそれを聞き、絶句した。


「外からの人間も攫ってここで売り捌いていますしね。この街の者とか、外の者とか、奴隷になってしまえば皆同じです。どうでもいいですね」

「………………」


 バルドスは欠伸をしながら答えた。

 人の情など現実を何も変えないのだと、願いなどでは何も買えないのだと言うかのように、彼は何の罪悪感も覚えてはいない。人の心とか、祈りとか、愛とか、そういったものを馬鹿にしてここまでやってきた。


 イリスティナはそうした彼の感情を彼の態度から察した。

 怒りが彼女の中に込み上げて、血管が浮き出そうになるほど頭が熱くなっていく。歯を食いしばり、瞳には炎が灯っていく。

 400年……彼は400年と言った。こんなことが400年も続いていて、永く人を苦しめている。姫はそんな人たちの事を思い苦しくなり、目の前の男に憎しみを覚えた。


「…………そうですか」


 イリスティナは深呼吸をする。怒りを抑え冷静さを保ちつつ、彼を睨んだ。


「ならば私もあなたがどうなろうと知りません」

「……はぁ?何を強がりを?」


 王女は大勢の兵士に囲われている。そして後ろには脱出不能の牢獄が待ち構えている。彼女の護衛の1人は片腕を負傷していて、1人はただの執事である。

 後は王女を取り押さえ、その後ろの牢屋に放り込んでしまえばいいだけの話なのだ。


 『どうなろうと知ったことではない』とはバルドスの台詞である。


「貴女はバカなのですか?まだ助けが来るかもしれないと思っているのですか?それとも正義は最後に報われると本気で思っているのですか?このどうしようもない世の中で?

 ……だとしたら、貴女はどうしようもない世間知らずの愚か者だ」

「………………」

「王女様はここから出られない。私の事業がバレることは絶対にない。

 貴女は一生、私に飼われて生きていくことになるのです!」


 バルドスは持っていた神器の杖をイリスティナの方に向けた。強力な洗脳の神器、これにかかってしまえばあらゆる作戦も抵抗も無意味なものとなる。

 ただ目の前の男の言いなりになる奴隷となってしまう。


「これで終わりです、姫様。貴女も可愛いお人形になる」

「………………」


 そうして、ニヤけた口のまま声を発した。


「『夜空に煌めくほ』…………」




 術を発動しようとした、その時だった。




 銀色の影が走った。


 イリスティナのいた場所からバルドスに向って一直線、目にも止まらぬ速さで何かの影が彼に迫った。

 まるで鉄砲が放たれたかのような軽く弾ける様な音が響き、風が裂かれる。それは床の石を勢いよく蹴る音だった。


「え?」


 風よりも疾く、炎よりも速く、残像すら残さぬ勢いで、銀の髪を(なび)かせる女性は走り、銀色の短刀を振りぬいた。

 誰の目にも止まらない。

 周囲の者は何も分からないまま、全ては終わっていた。


 鉄柵の前にいた嫋やかなイリスティナ王女の姿が突如として消えている。

 皆に見えたのはそれだけで、何者かがバルドスの目の前に現れては何処からともなく剣を振るったのだと理解できたのは、全ての行動が終わった後だった。


 バルドスの手から神器『夜空に煌めく星々』の杖が弾かれる。

 それはくるくると宙を舞い、後方にいたイリスティナの執事の元へと落ちていった。


 イリスティナ王女が深く身を沈め大きく足を踏み込んだ状態で、バルドスの目の前にいた。

 周りの兵士は何が起こっているのかまるで理解できなかった。バルドスは鋭い殺気を放ち高速で迫ってきた王女様の姿を認め、驚愕に目を見開かせていた。


「なっ……!?」


 バルドスが驚愕の声を発するよりも早く、イリスティナは腰の入った蹴りを彼の腹に入れ、バルドスは兵士の群れへと吹き飛ばされた。彼の肋骨がメキメキと軋む音がした。


「ふん…………」


 吹き飛ぶバルドスの姿を見て、イリスティナは小さなため息をついた。


 周りの者たちは今起きた現象に目を疑うことしか出来なかったが、しかし、なんのトリックもありはしない。

 彼女とバルドスの間の15m程の距離、イリスティナは目にも止まらぬ速さで走っただけだった。足に括り付けていたいつも使っている双剣を取り出し、それを振るっただけである。


 でも誰も納得できない。この国有数の美人と言われ、嫋やかで弱々しいイメージがもたれるイリスティナ姫があんなに高速で動いたことが……いやそれ以前に力強く人を蹴る姿も、鋭く剣を振るう姿も納得しがたいものだった。


 銀の双剣を握り、鋭い目で殺気を振りまくお姫様の姿に皆がたじろいだ。

 それまで牢屋の中で絶望の表情をしていた者たちも、その姫様の変貌に頭を上げ、顔に赤みがさした。


「…………人に必要とされたから犯罪しました……って、通用するわけないだろ」


 姫から力強い声が響いた。


「もしそれが正しいと……必要なのだと言い張るなら…………」


 イリスティナの長い綺麗な銀色の髪が短くなっていく。変身魔法をかけたのか、それとも解いたのか区別はつかないが、ほんの少しだけ背が縮む。

 イリスティナだった彼女は短くなった髪を横で小さく結ぶ。


「僕はそれを否定する。全部全部、僕がぶっ潰す」


 そして、冒険者エリーのトレードマークである帽子をドレスの裾の中から取り出し、被った。


「ひゃっはー!解禁アルーッ!」

「暴れるどすー!」

「かたっ苦しい執事服ともお別れだぜだぜぇーッ!」


 後ろにいた護衛や執事の姿が変わる。凛とした黒髪のオールバックがぼさぼさの青髪、緑髪に変化していった。その荒々しい容姿は冒険者のそれだった。

 彼らはサム、シム、スム。A級冒険者が護衛や執事の姿に化けていたのだった。


「ま、まさか……偽物…………!?」

「お、お姫様の……身代わりだったのか…………!?」

「この罠が、ば、ばれていたのか…………!?」


 追い詰めていた筈の兵士たちが一気に狼狽していく。数の利に全くの変化はない。しかし、いつだって強者の立場にいて奴隷を扱っていた兵士たちは、突然のA級実力者を前にして動揺を隠せなかった。

 バルドスはがくがくと顎を震わせている。


「嘘だ……!」

「このお姫様は……偽物…………!?」

「本物じゃないのかっ…………!?」


 皆がイリスティナの方を見る。

 しかし、そこにいたのは報告で聞いていた活発な女性冒険者だった。A級以上の素早さを持つD級冒険者。美しいドレスに身を包んでいても、その身から漂わせる覇気は聞いていた話以上だった。


「ダンスはお好きですか?」


 エリーは不敵な笑みを浮かべ、言った。


「全員お縄につけ。ここからが、本当の、パーティーだっ……!」


 熱き夜は今まさに始まったばかりだった。






 戦いは始まった。

 そして唐突に……いや、ずっと思っていたことをエリーは内心で大きく叫んだ。


(この変装って意味あったのかなぁっ……?!)


 彼女の疑問を他所に、パーティーはどんどんと盛り上がっていった。


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