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26話 妖艶な女性メルセデス

【エリー視点】


 酔っ払いに絡まれていた。


「まぁ、いいからわらわの酒に付き合え。おなごからの酒を断るとは、野暮にも程があるぞ?」


 夜の酒場の中、娼館へと遊びに行こうとする男共に対し、僕たち女共が騒ぎ立てていた時の話だった。それを陽気なバカ騒ぎと受け取ったのか、カウンターにいた女性の酔っ払いが横から急に話に混ざってきたのだ。


「ま……まぁ……奢ってくれるっていうなら、別に断る理由はねえけどさ……?」

「なにデレデレしてんだよ」


 クラッグが軽く陥落したその女性はとても妖艶な魅力を醸し出していた。

 紫色の長い髪はふわりと揺れ、お酒が入っているのだろう、頬は煽情的に紅色に染まっている。その瞳はまるで人を惑わすために出来ているかのように妖しく、それでいて美しい光が灯っている。

 女性でさえドキドキしてしまうような美女であった。


「そうか?それでは有り難く相席させてもらうとしようかのぅ?」


 彼女が席を持ってきて、このテーブルの前に座った。今、このテーブルは8人の人が囲っている。ちょっとぎゅうぎゅうである。


「わらわの名前はメルセデスという。とりあえず、そこのおなごよ。そろそろ彼氏の頭から手を離してやったらどうじゃ?」

「……リック、覚えておきなさい?」

「ボクは無実です!」


 実のところ、ずっとリックさんの頭に手を乗っけ生殺与奪権を握っていたフィフィーはやっとその手を離した。リックさんはやっと解放されたことに安堵し、大きなため息を吐いていた。

 僕たち冒険者も順に自己紹介をしていった。


「…………で?メルセデスさんは何で僕たちの話に聞き耳を立てていたんですか?」

「そりゃ、エロい話をしていたからじゃろう」

「うっ…………」


 余りにストレートな言い方に戸惑ってしまう。お酒で赤くなったメルセデスさんがニヤニヤと笑っている。


「わはは、お主、酔っ払いの行動にいちいち意味とか考えるのは意味なきことよ。もしかしてお主、生娘かの?」

「どうだっていいでしょ!そんなことっ!」


 くそ~~!ただ酔っ払いに絡まれただけじゃないかっ!なんかただ者じゃないような雰囲気を纏っていたけど、この人本当にただの酔っ払いだよっ!


「…………おい、否定しなかったぞ、エリーの奴……」

「しっ」


 その横では何故かクラッグとリックさんが声を潜めて何かを話していた。なんだろう?なんでそんな沈鬱な表情をしているのだろう?


「わははははっ!エリーとやら!男女の交わりをそう忌避するでないっ!男が女を追っかけ、女が男を求めるのは自然の摂理じゃ!一度体験してみれば、そう、大したものじゃないことが分かるもんじゃぞ!」

「う、うるさいっ!僕だって多少のセクハラ耐性は出来ているんだ!そう簡単には動揺しないぞっ…………!」

「どうじゃ?わらわと共に一緒に女性用の娼館にでも行かんか?ほれほれ、火照った体を夜な夜な1人で慰めるより、ずっと良い経験が出来るものぞ?なぁに、恐いのは最初だけじゃ。すぐに病み付きになる」

「うわああああああぁぁぁぁぁぁんんんんんんっ!フィフィーーーーーーっ!助けてええええええぇぇぇぇぇぇっ…………!」


 僕の首に手を回し、耳元でおかしなことを囁いてくる酔っ払いを払いのけ、僕はフィフィーの後ろに隠れた。

 一国の姫になんてことを提案してくるんだ!この酔っ払いの変態はっ!


「この変態っ!酔っ払いっ!あっち行け!この酔っ払いのおっさんめっ!」

「わはははっ!愉快、愉快じゃ!愛い奴よのぅ、お前さんは!ほれ、耳まで真っ赤じゃ!のぅ、エリー、お主とは長い付き合いをしていきたいものじゃのう」

「ガルルルルル…………」


 この人敵だ!僕の敵だよっ!


「いやぁ、エリーをからかう事の良さを分かっているとは、お前中々いける口だな。ほら、吞め吞め。俺だってお前ほど直接的にはからかえないぞ」

「ふふん、クラッグとやら、お主も話の分かる奴よのぉ。あの娘とコンビを組んでいるそうじゃが、いやはや、なんとも羨ましいものじゃ」

「帰れっ!変態共っ!」


 こいつら最低だよっ!打ち首にしてやるっ!


「ふぅむ、エリーのような娘をからかえるなら、冒険者になるのも面白そうじゃの」

「おいおい、エリーは冒険者の中では絶滅危惧種だ。大体は奔放な奴だらけだぜ?」

「なんと!それならそれで男も女も食い放題ではないか!これは本当に検討してみるのもアリじゃな」

「絶対メルセデスを冒険者にはさせないっ!国中総出で邪魔してやるぅっ!」

「エリー、お前にそんな権限はねーよ」


 影からいくらでも妨害してやることは出来るんだからなっ!国家権力乱用してやんよっ!

 そんな話をしている中、楽しそうなメルセデスの顔色が少し変わり、思案顔になった。頬に手を当てテーブルに肘を付き、首を傾け何かを考えるような仕草をし出した。今後の計画を考えるような……それでいて、何か僕たちを探るような冷たい目の色も感じる…………気のせいかな?


「さて、冒険者になると決まったら、まずわらわは何をすれば良い?お主たちはあれじゃろ?最近噂の天罰系の冒険者じゃろ?一体この都市で何をやっておるのじゃ?」

「わはははっ!メルセデス!いくら酒に酔って気分がいいとはいえ、部外者にそう簡単に依頼内容は漏らせねえよ!ほら!冒険者ギルドでギルドカードでも貰ってきてから出直しなっ!」

「ほぅ、クラッグ!そんなことを言われると、本当にわらわはギルドカードを持ってきてしまうぞ?冒険者の窓口はとても開かれていると聞いたことがある。登録だけなら簡単じゃろう?」


 確かにメルセデスの言う通りではある。冒険者というのはやっすいお仕事であるため、ギルドでの登録も簡単だ。登録料だって安く、その安い代金だって立て替えておいて、報奨金から天引きという形をとることも可能だ。腕に覚えのある者と、働き口がない人用のお仕事なのだ、冒険者というのは。

 だが、私が出した今回の依頼に参加できるかといえば、そういう訳ではない。


「あー……メルセデスちゃん?今回の依頼はダメでアルよ。ここだけの話、今回の依頼に参加している冒険者はほぼ全てA級以上アル」

「そうどす。しかもそのA級でさえ、幾人か被害が出ている状態どす。昨日今日で登録した冒険者が依頼に参加できるはずがないどす」


 そうだ。フィフィーの禁断の書関係で緩んでしまっているため、忘れがちになるが、この任務はA級冒険者すら失敗し得る危険な任務なのだ。人死にがないため、ものすごく危険な感じはしていないのだが。


「ふぅむ……だがしかし、わらわはエリーと一緒に仕事がしたいのじゃ。お前たちの雇い主を紹介してはくれぬか?直接直談判がしたいのじゃが?」

「ぜーーーったい!ぜったいぜったい、ぜったい雇用主は君を雇わないんだからっ!」


 君は僕と一緒に仕事がしたいと言うが!私が君を雇う訳が無いっ!良かった!僕自身が雇い主で、ほんと良かった!


「雇い主は紹介できないね」

「ほぅ、何故じゃ?」

「そりゃ、秘密だからだよ」

「ほぅ!それもそうじゃな!リック!すまぬ、悪気があった訳ではないのじゃが探るようなことを聞いてしまった!もう一杯奢らせてくれ!」


 そう言ってメルセデスは店員を呼び、また酒を注文する。とても気前の良い人だなぁ。

 確かに探るような質問だったかもしれないけど、それはただの会話の流れからだから、全然気にしなくていいのに。ただ、何かにつけてお酒が飲みたいだけかもしれないけど。


 彼女は来た酒を一気にぐいと呷る。気持ちのいい呑みっぷりから、思わず皆からおぉ、という感嘆の声が漏れた。


「ぷはぁ!……しかし、あれじゃな。こんな面白い話をしてしまうと、わらわも早く遊びたくなってきてしもうた。どこかにエリーのように純粋無垢でわらわの遊び相手になってくれる女の子はおらんかのぅ?」

「お前なぁっ!いい加減にしろよぉ!?この女版クラッグめっ!」

「おい、人の名前を侮蔑用の言葉に使うんじゃねえよ」


 日頃の行いだよっ!


「んー……じゃあ、俺たちも行きますかね。いい感じに酔っぱらってきたとこだし」

「そうアルな。丁度いい時間帯でアルな」

「この、行く前のドキドキ感がたまらんどすよ」


 そう言って、男の野獣共は口角を少しだけ上げ、酒をちびちびと飲み始めた。このお酒を飲み終わったら席を立つつもりだ!


「ほ!ほんとに行くのか!?ど、どどど、どうしよう!フィフィー!僕、この都市から避難しといた方がいいかなっ!?相棒が野獣になって襲い掛かってきたらどうしようっ……!」

「どうどう、エリー。どうどう」

「お、おい……言っておくけど、前みたいに姿暗ますんじゃねーよ?今回の雇用主の依頼、意味なくすっぽかしたら流石に不味いぞ?」

「いやー……エリーなら大丈夫だと思うけどねぇ…………」

「……?…………フィフィー?」


 いや、だってさ!危ないじゃん!夜の野獣になってきたクラッグと一緒に仕事してさ!で、野獣が抜けきらなくて襲われでもしたら大変じゃん!私は万が一にも過ちなんてあっちゃいけない身なのだ!オオカミの匂いがする男からは逃れなきゃいけない立場なのだっ!


「しかして、エリーよ……」

「な、なんだい……メルセデス…………」


 何故かメルセデスが呆れ顔で僕の方を見ていた。


「そんなに嫌なら、お主も女じゃ、エリー。自分の体を使って引き止めれば良かろう?」

「な゛っ…………!?」


 に゛っ…………!?

 な゛、な゛な゛な゛、な゛何を言い出すんだっ…………!?この痴女はっ……!?ば、ばばっば、ばばば、ば、ばば、バカなことを言い出したぞっ!?ぼ、ぼぼ、僕が体を使って……!?アホかっ!?アホなのかっ!?そうか!アホなんだろっ!メルセデスってアホなんだろっ!


「お主も幸福な男じゃのう、クラッグ。娼館に行こうとしている男に怒ってくれる初心なおなごなぞ、そう滅多におるものじゃないぞ?のぅ?」

「……む?」


 クラッグの首に腕を回し、まるで頬にキスするかというような距離感で彼女はクラッグに囁いた。胸当たってないかっ!?あれ、胸当たってないかなっ!?

 しかし、一方のクラッグはデレデレするものだと思ったら、何故か怪訝そうに思案顔をしている。なんでだ?


「ち、ちちち、違うしっ!別に誰が娼館に行こうと構わないしっ!嫌じゃないしっ!でも、でもだ!それの余波で僕が襲われたらたまったもんじゃないんだ!僕は自分の身を案じているだけなんだっ!」

「ほぅほぅ…………」

「わ、笑うなーーーーーっ!」


 ダメに決まっているだろっ!?誰かとそういう事をしちゃダメだから警戒しているのに、そういうことをされないようにする為に、そういうことをしちゃ、本末転倒だろっ!?ダメだろっ!?


「のぅ、クラッグよ。案外この娘、押せばコロッといくかもしれんぞ?」

「……ッ!?きゃーーーーっ!?来るなっ!来るなよっ!?クラッグ!このエッチ!変態っ!ケダモノっ!スケベっ!スケベ魔人っ!ど変態スケベ魔人っ!」

「………………」


 な、なんだよ…………

 フィフィーの後ろに隠れる僕を、なんでクラッグはとても可哀想な子を見るような目で見てくるんだよ…………


「いや……本当にエリー……経験ないんだなぁ、って思うと……俺は手を出せねえよ…………悲しくてさ…………いや、悪いな、エリー……モテない子に、今までセクハラし続けてさ…………」

「うるさああああああぁぁぁぁぁぁいいいいいいいいっ!憐れむなあぁっ…………!」


 いいんだよっ!そういうもんなんだよっ!モテない訳じゃないんだよっ!


「こんな可哀想な子……俺、手を出せねえよ…………俺みたいな奴が、手を出したら……この絶滅危惧種がもっと可哀想だろ…………」

「なんじゃて?エリー?本当にモテないのか?今まで一度も彼氏がいたことないのかの……?それは、その……からかって悪かったのぉ…………」

「うるさいっ!うるさぁいっ!モテないモテない連呼するなっ!ぶっ殺してやるっ!」


 モテないんじゃないんだよっ!彼氏なんて作れる訳ないんだよっ!そうだよっ!私はモテない訳じゃないんだよっ!

 くっそーーーーーー!こいつら好き放題言いやがってぇっ!


「わっはっは!エリーが怒りおった!退散退散!」

「おっ!?ちょっと待て、逃げるな、メルセデス!俺が!俺だけが標的になっちまうだろうがっ!」

「わははははっ!それでは皆の衆、また会おうっ!」


 僕は酒を残して逃げられない貧乏性のクラッグを捕らえ、その首を絞めながら颯爽と酒場から去っていくメルセデスを逃がしてしまう。クラッグ直伝の絞め技をクラッグに使い、タップされても緩めることなんてしない。

 くっそーーーーー!覚えてろよっ!メルセデスっ……!


「彼女、なんだったんだろうね……?」

「…………さぁ?」


 リックさんとフィフィーのぼんやりとした疑問が、その場でぽつりと呟かれたのであった。




* * * * *


【クラッグ視点】


「わはははは、また会ったのぅ」

「……そりゃ、あんなもの渡されたら会う事にもなんだろ」


 暗い夜道の下で、今さっき別れた紫髪のメルセデスにまた出会った。


 あれから俺とサム、シム、スムの4人は酒場を出て、エリーに後ろ指をさされながら娼館を目指した。

 残りの3人とは酒場で別れた。リックはフィフィーに頭を優しく掴まれて、汗をだらだら流しながら連行されるように宿へと帰っていった。ありゃ、酷い脅しだと思う。


 んで、娼館へと向かう道の途中、今さっき別れた紫髪のメルセデスに出会ったという訳だ。


「なんであんな回りくどい事したんだ?」


 俺はポケットの中の娼館割引チケットを取り出した。これは先程、メルセデスが俺のポケットにねじ込んだものである。


「わはははは。それはわらわなりの気遣いというものである」


 そう言ってメルセデスはにこやかに笑った。

 この割引チケットはメルセデスが俺の首に腕を回し、俺と密着した時に皆から見えないようにポケットに押し込まれたものだ。『娼館に行こうとしている男に怒ってくれる初心なおなごなぞ、そう滅多におるものじゃないぞ?』と言われた辺りのことだった。


「あのエリーのような無垢な少女には、わらわが娼館の人間だと知られない方が良いじゃろう。考えてもみい。あそこでわらわが堂々と優待券を渡したら、お主たちはエリーやフィフィーから『あのメルセデスさんを抱いたんだね……』と個人名を挙げられながら白い眼を向けられることになろうて」

「まぁ……確かに、そうでアルな……」

「娼館というのは誰が相手だか知人には知られない、というのが良いのじゃ」


 確かになぁ。もしそうなったらエリーがしどろもどろになる姿が目に浮かぶ。


「さて、では行こうか。案内するぞ。我が店へ」


 メルセデスが陽気に歩き出し、俺たちはその背についていった。

 星があまり輝いていない夜であった。ひんやりと冷たい夜の空気を肌で感じながら、俺たちは人気のない道をゆっくりと歩いていた。


「次は右じゃよ」


 人のいない暗い道はより一層寒さを際立たせる。入り組んだ路地がただでさえ少ない星明りを遮って、より暗い闇を作り出している。なるほど、結構奥まった場所にある店なのだな。


「次は左じゃよ」


 右へと左へと、背後から飛んでくるメルセデスの指示通りに道を歩く。これは案内が無かったら迷う自信がある。案外一つ道を抜けたら大通りがそこにある、とかいうこともあるのかもしれないが、石造りの高い建物で囲われた細い路地は俺達の方向感覚を奪い取っていく。


「ここじゃ」

「……?着いたどすか?」


 後ろから聞こえるメルセデスの声に対し、シムが疑問の声を上げる。店の看板らしきものは見当たらず、どこが店の入り口かも分からない。

 あれ……?


「そうじゃ」


 そう言えばなんでだ?最初、俺たちはメルセデスの背を追って道を歩いていたのに、いつの間にか彼女の声を後ろから聞き、その声に従って歩いていた。

 あれ?いつの間に、後ろに回られていた?


「ここが、今夜、わらわの狩場じゃ」


 その声とともに首筋に強い衝撃が走った。


「かっ…………!?」


 噛まれていた。メルセデスが後ろから俺の首筋に噛みついていた。


「なっ……!?」

「なんどすっ!?」


 戸惑いながらも、3人は一瞬で武器を抜き臨戦態勢に入る。腐ってもA級。手慣れたものである。

 A級3人に武器を向けられても、俺の首筋に噛みつくメルセデスは余裕の笑みを浮かべている。


 …………吸血鬼……なのか……?


 つーか、俺達油断しすぎだろ。娼館に行くからって浮かれ過ぎだ。こりゃ、帰ったら反省だな。

 血を吸われていく感覚がある。そして血と共に体力や魔力まで吸われていく。そうか。これを受けて他の冒険者たちは昏倒してしまったのか。それに、なんだ?この違和感?…………記憶まで吸われている?


 不味いな。……こりゃ、俺の神器(・・)を使わねぇといけねぇみたいだ。

 …………なにが悲しゅうて娼館寄ろうとしていた夜に、俺の切り札を切らないといけねぇんだ。

 ……仕方ねえ……いくぞ…………


「『一心に……』…………」

「………………っ!?」


 …………と、俺が切り札を切ろうとした、丁度その時だった。


「~~~~~~っ!?な、なんじゃあ、こりゃああぁぁっ!?」


 俺に噛みつき、絶対的優位を保っていたメルセデスが急に叫び声を上げながら、口に手を当てよろよろと俺から離れていった。


「か~~~~~っ!ぺっぺっ!か~~~~~っ!?なんじゃ、なんじゃあ!?これっ!?」

「…………え?……あれ?」


 まるで咽るかのように、メルセデスは苦い顔をしている。眉を顰め、口を歪め、折角の美人が台無しな顔をしている。

 …………俺、まだ切り札切ってないんだけど?……何が起こったよ?


「不味いっ!」


 メルセデスが叫んだ。


「クラッグぅ!……お前の血……とんでもなく不味いぞっ!」

「…………へ?」

「お前の血……不味くて不味くて、飲めたものではないわぁっ…………!」


 吸血鬼から予想外の指摘を受け、俺は困惑せざるを得なかった。

 …………え?不味いから、飲めなかったの?……っていうか……俺の血って、不味いの…………?


「なんじゃあ!?これっ!?か~~~~~っ!ぺっぺっ!口の中、苦っ!マズっ!ぺっぺっぺっ!後味悪っ…………!

 ……おい!クラッグゥッ…………!少しは自分を美味しくするよう、心掛けんかぁっ!」

「…………すんません」


 まさか吸血鬼にそんな事を言われるとは思わなくて、俺は思わず謝ってしまった。謝るしかなかった。

 …………少しは食生活を改善しようかな……?

 そう思う、吸血鬼と対峙した、暗い奇妙な夜であった。


なんか最近エロネタばっかだっ!?

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