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17話 姫様、再び

【フィフィー視点】


 今日は神殿騎士との合同訓練だ。


 一昨日、ビリーさん達が『神様の悪戯』にあい意識不明となったが、事態はなんも進展しなかったし、行動方針は変わらないし、別に命に別状もなかったので割愛する。

 エリーが『いや、みんな淡白過ぎない?』とオロオロしていたが、冒険者なんてこんなもんである。


 今日は神殿騎士の訓練場に来ている。

 イリスティナ様が、「皆さんにとっても良い顔繋ぎになるでしょうから」という事で冒険者たちと神殿騎士たちの合同訓練回が催されていた。

 確かに冒険者にとって顔繋ぎは大切だ。ギルドでの依頼発注だけでなく、個人からの依頼が舞い込んでくる場合もあるからだ。実際、お城のパーティーに呼ばれた時も貴族達から色々と依頼をお願いされたし、もっと言ったらこの『オブスマン』の調査依頼も王女個人からの依頼となっている。


 だから同じ武人で、しかも貴族の多い神殿騎士は良い商売相手かもしれない。もう既に同じ腐り仲間である神殿騎士のヴィオから何回か助っ人を頼まれて仕事をしたこともあるし。


「しっかし……、どうしてこうも、ギラギラゴテゴテしてんのかね?」


 クラッグさんがそう漏らした。

 確かに、ここは訓練場の筈である。なのに壁際は装飾品に溢れ、金や銀がふんだんに使用され絢爛豪華の様相を成している。訓練場の筈なのに観覧席があり、まるで見世物の舞台のようでもあった。


 というより、なんか、観覧席に座る観客が多い。

 今日ってただの訓練なんだよなぁ……?

 ……まぁ、神殿騎士には貴族が多い。この訓練場自体が貴族にとってのアピールの場だったりするのかもしれない?


「やあやあ、お待たせ致しました。私は公爵家アデル家の嫡男、騎士団大隊長ベルグワール・ド・ロムスクオット・ニール・アデルと申します。是非とも今日はよろしくお願い致します」

「丁寧にありがとうございます。私はS級冒険者リックと申します。本日の代表を務めさせて頂くので、どうかよろしくお願い致します」


 2人は握手を交わした。

 今日はファミリア様が来ていないのでリックが代表である。


 合同訓練が開始される。まずはお互いの練習方法で訓練するプログラムが組まれており、神殿騎士団のトレーニングを合同で行った。

 どうも、剣の型や魔術の型の練習が多く割り振られているようで、少し実践的とは言い難い気がした。神殿騎士の人たちはとても綺麗な型を使い、見ていて美しいのだが、なんとなくそれだけのような気もした。トレーニング自体も厳しくなく、物足りない。

 いや、止そう。人のとこの練習方法を非難して得なところなんて1つもない。反感を買うだけだ。


「では次は冒険者たちの訓練を紹介して下さい、リック様」


 そ し て 事 件 は 起 こ っ た 。


「お……お花、畑が……、見える……」

「死んだ……ばあちゃん、が……手を、振って……るよ……」

「もうダメ……」


 全滅した。

 神殿騎士も冒険者も全滅した。

 地に倒れ伏せながら息絶えてしまった……。いや、少しは息はしてるけど……。


 死屍累々。

 凄惨な光景が訓練場に広がっていた。


「このバカっ! あなたの訓練を皆にやらせたらこうなるに決まっているじゃないっ!」

「い、いや……、これでも量かなり減らしたんだけどなぁ……」


 リックは死体の山が積み重なる悲惨な現状に目を泳がせていた。


 そう、このおバカは自分の日課の訓練内容を公表したのだ。S級冒険者の訓練内容を皆でやろうという事になったのだ。

 そりゃ、確かにわたし達冒険者は統率された団体ではない。だから訓練内容も人それぞれであり、今回のような場合代表が訓練を考えるのは理解できる流れなのだが……。


 悲惨だった。

 ただ悲惨だった。


 皆が倒れ、全滅してしまった。

 次から次へと倒れ行く仲間達。志半ばで死に行く者たち。「タスケテ……」と呟きながら息絶えていく者たち……。いや、ほんとに死んではないけどさ……。


 冒険者も神殿騎士団の方々もほぼ全員が全員、倒れ込み動かなくなっていた。そりゃそうだ。練習内容が発表された時、みんな顔引き攣らせていたのを見てこうなることは予想するべきだった。観客席にいる司祭様や貴族の方たちもこの現状に顔を引き攣らせている。


 今ならはっきり言える。

 神殿騎士たちの訓練の方がずっとましだった。


 生き残っているのはこちらのS級冒険者3人、あと勝手に手抜きをしてそこに座って欠伸をしているクラッグさん。絶対実力隠したな、あの人。

 エリーは生き残れなかった。うつ伏せになりながら肩で息をして、し、死んでる……。

 大丈夫かな? わたし、エリーの正体は王女疑惑掛けてるんだけど……。リック打ち首になったりしない?


 ま、この程度で打ち首になるんだったら、クラッグさんは何回打ち首獄門市中引き回しの刑になっていることか……。


 あと、神殿騎士の中から1人。


「すみません。わたし達の代表が無茶なことをしてしまって……」

「いえ、いいのですよ。寧ろ私達の訓練は緩すぎであると日頃から思っていますから。いい訓練になりました」


 爽やかな短い金髪の男性が地獄の特訓の後でも爽やかな笑顔を崩していなかった。

 誰だろう、この人? 有名な人ではないと思うけど……?


「あなたの名前を教えて頂いても宜しいですか?」

「恐縮です。私はクリストフ・ヴァン・ヴァラッハ男爵です。D級騎士を務めております」

「……D級騎士?」


 ……いや、どう見ても彼、S級の実力なんだけど……?


「私は男爵家の者ですから」

「?」


 クリストフさんの説明は何の答えにもなっていなかったが、でも、この神殿騎士という団体の片鱗を見せられたような気がした。


「……ところで……これ、どうすんの?」


 死屍累々の山たちである。


「……皆回復するまで待とっか」

「…………」


 ……散々な合同訓練になりそうだった。いや、もうなっていた。


「やれやれじゃのう」


 ボーボスさんのため息のような一言が全てを物語っていた。




* * * * *


「全く! 冒険者というのは、野蛮人しかいないなっ!」

「あんなのは訓練ではない! 拷問である!」

「我々のような高貴な人間が怪我でもしたらどうするんだっ!」


 体力が回復した後、神殿騎士の方々は口を揃えて不満を口にした。耐えられなかったのは訓練の質が悪く、我々高貴な人間には野蛮な訓練は向いていないのだ、となんかなよなよしいことを皆さん口にしているのだが、これって騎士団として大丈夫なのだろうか?


 最近の騎士団というのは貴族たちが自分の箔の為に所属するお飾りの団体であると風の噂で聞いたことがある……。

 もしかしてその噂は本当なのか、と思っていたところ……。


「全く! あんなのシャレになんねーよっ!」

「クソだなっ! S級ってのは常識知らずのクソだなっ!」

「人間じゃねーよ! あんなの!」


 同じ冒険者仲間からも滅茶苦茶悪口を言われていた。

 特に騎士団だからどうとかじゃなく、あの訓練は誰からも不満を持たれるもののようだ。結論、リックが悪い。


「やぁっ!」

「ふっ!」

「てぇいやぁっ!」


 皆がまだ休憩モードで適当にお茶を濁しているところで、熱心に訓練を再開する人たちもいた。エリーとヴィオだ。模擬戦として木刀を交えている。皆、見習え。


 エリーは2刀の短刀を順手、逆手とくるくると持ち替えながら、様々な角度から素早い連続攻撃を行っている。一方、ヴィオは大きな盾を主軸とした戦い方であり、盾と剣でエリーの攻撃を捌き、虎視眈々とカウンターを狙っている。


「おっ……!」


 戦いの展開に思わず唸ってしまう。

 ヴィオはわざと盾を左の方に寄せ、右に隙が出来ているように見せかけ、右からの攻撃を誘った。エリーの意識を右側に偏らせ、完璧なカウンターを放ったのだが……、


「どりゃあああぁぁぁっ!」


 エリーは大きく体を沈ませ、そのカウンターを回避した。カウンターの後に逆に隙が出きたヴィオの盾の隙間を縫い、一気に距離を詰めてエリーは短刀をヴィオの首に当てた。


「……ッ!? 負けたぁぁぁっ……!」

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ……!」


 勝った方も負けた方も大きく息を付き、その場にへたり込んだ。


「お見事お見事! 2人共やるじゃないっ!」

「か~~~~っ! 最後のカウンターは決まったと思ったんだけどな~~~~っ!」

「僕、最近丁度こういう練習してるからね。なんていうの? 意識を偏らせて、隙を突いてくるタイプの攻撃の対応ってやつ?」

「へー……」


 クラッグさんの指導? エリーも凄いけど、クラッグさんも凄いな。一朝一夕で身に付くようなものじゃないだろうに……。


「いや~! やっぱ、私の事を尾行してた子とは一戦交えたいと思っていたけど……。思った通り、やるじゃん、エリー!」

「ははは……、その節はどうも……」

「今度一緒に店行くかい?」

「謹んで遠慮しますっ……!」


 なんだかこういうの、いいなって思った。

 ボッチではないんだけど、わたしは基本友達というのが少ない。自慢になってしまうかもしれないが、わたしの同年代にわたしぐらい強い人はまずいない。いや、世界を見渡してもそう多くいるものではない。大体は尊敬か畏怖の視線で見られてしまうので友達なんて出来ようがなかった。友達らしい友達と言えば腐り仲間達くらいである。


 ……なんか、自分で言ってて悲しくなってきた。別に不幸な訳じゃないし、ボッチじゃないし……。ボッチだからって悲惨な訳じゃないし……。


 しかし、そうなってくると困るのはエリーの存在だ。

 友達が出来たのは嬉しいのだけど、でもエリーの存在は怪しい。それまでの経緯を総合すると、エリーはもしかしてイリスティナ王女様なんじゃないか……、という疑惑がわたしの中である。


 いやまさかとは思う嘘のような事なのだが、そう考えると全てがしっくりくるのだから恐ろしい。イリスティナ王女様がやけにクラッグさんに親しくして彼を困らせていたのも、それならば納得できるのだ。


 もし違くても、エリーはかなりの地位にある貴族……、それもイリスティナ姫と親しい間柄にある大貴族であるのだと踏んでいるのだが……。


 大丈夫? これ? 気楽に接しても大丈夫なのだろうか? 友達のように接していて大丈夫なのだろうか?


 うーーーん……、疑問も悩みも尽きない……。

 これ大丈夫なのかなぁ……?


「おい、S級同士の模擬戦だってさ!」

「あぁ! リックと神殿騎士のベルグワールとの戦いだってさ」

「……ん?」


 エリーの事を考えていたらそんな声が聞こえてきた。


「リックが戦うの?」

「そうみたいだな。うちのベルグワール様との戦いか……」

「S級同士……?」


 ベルグワール様とは神殿騎士代表として一番初めにリックと握手したあの人である。公爵家アデル家の騎士団大隊長だったか。騎士団としてのランクはSランク。なるほど、かなりの肩書である。


 2人が闘技場の中央に歩み寄ると自然と注目が集まる。2人の戦いに皆が息を呑み、S級の実力者同士の戦いに皆が嵐を予感していた。

 S級同士の戦いというのは災害と同じなのだ。もちろん周りを配慮して力を抑えるとは思うが、油断していると見ているだけで意識を飛ばされかねない。


 リックとベルグワール様が武器を構えると、周りも一気に緊張した。


「でもさ、どうしてだろう……」

「ん? エリー?」

「だって、あのベルグワール様はリックさんの訓練についていけなかったんだよね? それでもS級なの……?」

「いや……、それは……」


 戦いというのは体力や筋力だけじゃ測れないものがあるけど……、でも、基本を疎かにして真の実力はつかないだろうし……。

 あれ……?


「いやさ、ベルグワール様は公爵家だからさ」

「ん?」

「へ?」


 ヴィオが答えになっていない返答をした。


「いや……、強さに家柄は関係ないでしょ?ヴィオ?」

「……え? そりゃそうだけど、今はランクの話っしょ?」

「いや、だからさ……、強くなきゃ高いランクになれないでしょう……?」

「え? いやさ……、だって…………。あっ! そっか!」


 ヴィオはしまったと言わんばかりに目を大きく見開いて、勢いよく立ち上がった。

 同時にリックとベルグワールの模擬戦が始まった。熱戦を予感して、観客たちが息を呑んだ。


「始めっ……!」

「その試合……ちょっと待ったーーー……っ!」


 ヴィオは何故か慌てて制止を掛けるが、戦いの幕は切って落とされた。


 リックがまず先に仕掛け、牽制と小手調べの剣を振るうと……。


「うごぉ……っ!?」


 それが公爵様の体に深くめり込み、彼を吹き飛ばした。


「へ?」

「え?」

「あれ?」

「うそ?」


 公爵様は壁に激突しそのまま倒れ、動かなくなってしまった。周囲からは呆気にとられたため息のような声が漏れ、目に映る光景を疑うように静まり返ってしまった。


 え? いや? どういうこと? わたしも何が起きたか全然分からないんだけど?

 リックなんて剣を振るったまま固まって動かなくなっている。


「あちゃ~~~……」


 ただ1人、ヴィオだけは困ったように頭を抱えていた。


「ど……どういう事かっ!?」

「無礼者っ! なぜ公爵様に勝ちを譲らなかった!?」

「この下賤な冒険者如きがぁっ!」


 貴族達からブーイングが飛んだ。どういうこと? 勝ちを譲る? 下賤? え? なんでこの人たち怒ってんの?


「ヴィオ!? 説明お願い!」

「いやさ……うちの騎士団の中では常識中の常識で、説明し損ねてたんだけどさ……。うちの暗黙の了解で、家柄の低い者は高い者に勝ってはいけないって風習があんだよ……」

「なにそれっ……!?」

「マジでっ……!?」


 わたしとエリーは驚いた。


「マジで!? ……貴族マジで!?」

「マジマジ、エリー。結果、公爵のようなお偉い様はSランクを名乗って、うちは子爵だからCランク。ま、実力の方はA-はあると自負してっけどさ」

「やばくない!? 貴族やばくない!?」

「いやー……、子供の頃からこれだから、別に何とも……。むしろ、この騒ぎが新鮮だよ」

「僕、貴族舐めてたよっ!」


 エリーは自分で世間知らずを名乗ってるけど、これにはわたしもびっくりした!


「この下賤な輩共がぁっ! 公爵様の尊大さが分からぬとはぁっ……!」

「所詮、冒険者は冒険者! 卑劣なゴミ屑に変わりはなかったのだっ……!」

「卑しい勝ちにしがみ付く汚らしいドブネズミ共がーーーっ!」


 うおっ!? 汚い! 貴族達、言葉使い汚い! エリーもどん引いてる!

 そんな、勝負っていうのは普通に強い方が勝つもので、そうだからこそ勝利は嬉しいし敗北は悔しい。そういうのを積み重ねていって人というのは強くなるものじゃ……。


 こんな狡い真似が横行しているぐらいだったら、貴族よりも冒険者の方が人としてよっぽど純粋なんじゃ……、


「お゛ぅ゛っ!? 言ってくれんじゃねーか!? この腐れち〇ぽ共がぁっ……!」

「今でも母ちゃんのおっ〇いしゃぶってる様なう〇こ垂れ貴族共に叱られる筋合いねーよっ!」

「負けたぐらいでびーびー言ってんじゃねえっ! ち〇ぽ付いてんのかぁっ!? この〇マ無しハナ垂れ小僧共がぁっ!」


 違った! ゲスイわっ! 言葉使い汚いやっ! やっぱ冒険者共の方がよっぽど下賤だやっ……!


 いや、でも、これどうしようっ! 今にも一触即発の空気が流れているっ! どうしようっ! どうしようっ! これ暴動騒ぎになるよっ!?

 睨み合ってるよ!? 冒険者たちと神殿騎士たちが睨み合ってるよ!? リックが間に入って、まぁまぁ、落ち着いてくださいとやっているけど、逆に火に油注いでるよ!?

 ボーボスさん! あぁっ!? ボーボスさんが我関せずとばかりに離れていって行くよっ!?


 あぁっ……! 罵り合いがどんどん激しく……! 乱闘になる……! 貴族達と乱闘になったら、ただの喧嘩じゃ済まされないよっ……!?


 あ゛ぁ゛っ……! もうダメだあああああぁぁぁぁぁっ……!


「大丈夫」

「……え?」

「大丈夫だよ、フィフィー」


 ……エリー?


「ほら、ちょうど来た」


 そう言って、エリーはこの訓練場の出入り口を指さした。

 その扉は今まさに開こうとしているところで、そこから1人の女性がこの場所に入って来ようとしているところで……、


「お待ちなさいっ……!」


 凛とした声がした。

 聞く者を惹きつけるような不思議な声で、いままさに爆発しようとしていた貴族も冒険者も、皆一斉にその女性の方向を振り向いた。


 女性は優雅に慎ましくその扉を潜る。

 純白の綺麗なドレスを身に纏い、美しい銀色の長い髪をなびかせ緩やかに歩いている。女性でさえもうっとりと見惚れてしまうような麗しい顔立ちをしていて、触れれば壊れてしまいそうな線の細い体つきは、彼女の奥ゆかしい雰囲気をより一層際立たせている。そして首には前にお会いした時には付けていなかった赤いペンダントを掛けていた。


「あ、あの人って……」


 そのお人は今まさに争いの中心となっている場所に足を運び、周囲の皆は呆気にとられ、黙りこくるしか無くなっている。

 わたしもまた呆然としており、ヴィオに至ってはがくがくと小刻みに震えている。


 予想外の方がここにいらっしゃった。


「皆さま、御機嫌よう。私はオーガス王国第四王女、イリスティナ・バウエル・ダム・オーガスと申します。以後、お見知りおきをお願いします。冒険者の方々はお久しぶりですね」


 そう言って嫋やかな笑みを浮かべるこの方は説明不要、この国の王女イリスティナ様である。


 なんでっ!?

 なんでこの方がこの場所にっ!?

 皆が冷汗を垂らしながら唖然とする中、わたしはエリーの方を振り返った。


 エリーは今、間違いなくここにいる。皆が驚き慄いている中、彼女はやれやれこれで騒動も終わりと言わんばかりに欠伸をしていた。

 わたしはエリーにある疑いをかけていた。それはエリーの正体はイリスティナ様であるという、突飛ではあるがいくつも状況証拠が残った推測だった。


 でも今、この場にエリーとイリスティナ様が両方いる。

 イリスティナ様のいる場所で欠伸の出来るエリーの反応も大概おかしいが、それよりも、え? あれ? これってどういう事……?


 ……あれ?


「皆さま、喧嘩はいけませんよ?」


 そう言ってほほ笑むお姫様の前に、誰も声を出せなくなっていた。


どんどん残念になっていく腐りボッチ、フィフィーさん……。

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