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139話 VSバーハルヴァント(2)

【エリー視点】


 フィフィーの放つ封印の光が強く強く輝いていく。

 その色は封印の神杖に付く宝石と同じ虹色だった。七色の色とりどりの光が眩く弾け、バーハルヴァントを呑み込もうとする。


 フィフィーは封印の神器『ガンバンイオン』でバーハルヴァントそのものを封印しようとしていた。

 敵の防御を貫けないのなら、敵そのものを封印してしまう。

 それはこの戦いには無かったアプローチだった。


 ……しかし、本当に上手くいくのだろうか?

 フィフィーは世界最高のS級魔術師だ。でも相手は人の領域を超えてしまった化け物である。


 地力そのものが違うのだ。


「…………」


 封印の強い虹色の光が徐々に収まっていく。

 強い光に思わず目元を覆った腕をどかし、2人を見る。


「…………」

「…………」


 結果は駄目であった。

 バーハルヴァントの巨体が相も変わらずそこにあった。


 フィフィーの封印術に抵抗する為か、バーハルヴァントは全身を力ませ、強い魔力で体を覆い抵抗していた様子を見せている。

 その抵抗は成功した様で、彼女の封印術ではこの竜人を封じきることが出来なかった。


「くっ……!」


 思わず口から声が漏れる。

 この方法も駄目だった。攻撃も効かない、封印も効かない。

 だとすれば、次は何をすればいいのだろう……?


 フィフィーがその場から大きく飛び退き、バーハルヴァントから距離を取る。

 封印術に抵抗して体を力ませていた為か、奴は即座に動けず、あっさりと離れる事に成功した。


「…………」

「…………」


 フィフィーとバーハルヴァントの目が合う。

 術を失敗した者と、抵抗に成功した者。


「……?」


 しかし、少し様子がおかしかった。

 フィフィーの方が不敵な笑みを見せ、バーハルヴァントが苦々しい表情を浮かべていた。


「……流石に体全体は無理だと思っていたけど」

「…………」

「あなたも完全無敵って訳じゃないみたいね」

「あぁっ……!」


 その会話の途中でようやく気付く。

 フィフィーの術は完全に失敗した訳ではなかった。


 バーハルヴァントの脇腹の部分を見る。フィフィーが封印の神杖を押し当てた部分だ。

 そこが他の体の部分とは違い、少し変色している。


 体の他の部分には薄黒い竜の鱗が貼られているのだが、その脇腹の部分が少し赤みがかっている。

 赤い何かが滲んでいる。


 血だ。

 絶対的な防御である黒い鱗が剥がれ、その部分に血が滲んでいた。


「封印っ! 封印が成功してるっ!」

「フィフィーがあいつの鱗を封印したっ……!」


 フィフィーはその封印の神杖で、敵の防御の要である竜の鱗だけを封印したのだ。

 背中のシータときゃっきゃ喜び合う。


 その穴はたった5cm四方の小さな穴だった。

 しかし、その穴は紛れもなく敵の防御が剥がれたことを意味していた。


 それは僕たちにとっての大事な大事な勝機だ。

 その部分にはもう理不尽な程の防御性能はなく、攻撃を入れたらダメージが通るだろう。


 よく見ると、バーハルヴァントの足元に黒いオーブが転がっているのが見て取れる。

 フィフィーの封印の技は封印した対象をオーブの中に閉じ込めてしまうのだ。


「……小癪な娘め」

「ふふん」


 竜人の鋭く恐ろしい視線を受け、フィフィーは得意げな表情を見せる。

 流石大物である。


「勝機が無いってことはないみたいね。これから何回もこの封印術ぶつけて、あなたの鱗剥がしきって見せるわ」

「…………」


 それは僕たちにとって遠い勝ち筋だ。

 バーハルヴァントの凄まじい攻撃を全て掻い潜り、策を弄し、隙を作り、フィフィーの封印術を何度も何度も当てる。

 そして敵の防御を抜き、鱗の穴に上手く攻撃を当てる。


 でも、僕達にとってはそれが大きな希望だ。

 さっきまで全く為す術が無かったのだ。そこに一筋の勝ち筋が見えた。


 そこに全力を向けなくてなんとするのだ。


「……傷を負わせることには成功した。勝ちはある」


 ヴェールが槍を構える。

 体に力が漲っている様に見える。次の衝突に備え始めている。


「鱗が無くなった部分を狙う……。そこから攻撃が入るかもしれない」

「はい」

「援護を頼む」


 皆の体に力が入る。

 闘志が高まり、気力が漲ってくる。

 目の前の竜人を討ち倒す為、これから起こるであろう死闘に立ち向かう覚悟を決めた。


 ……その時、


「癇に障るな……」

「ん……?」


 バーハルヴァントがぽつりと呟いた。


「調子に乗っている、と言うべきか。実力の差を理解していないのか……」

「ん……?」

「いや、それすら違う……。ここにあるのは生物としての格の違い。勝てそう、と思う事すら烏滸(おこ)がましい」

「何を言って……」

「……それをしっかりと分からせてやるのが強者としての務めか」


 バーハルヴァントはそうぼそぼそと小さな声で喋り、構えを見せる。

 槍を構えている訳ではない。


 その構えは、まるで力を溜める様な仕草で……、


「次の攻撃で決着を付けてやろう」

「……っ! 止めさせろっ……!」

「……!」


 ヴェールが叫び、前に出る。

 僕達もその意図をすぐに理解する。ぱっと飛び出し、バーハルヴァントに肉薄する。


 バーハルヴァントは魔力を溜め始めていた。

 次の一手で強力な攻撃を放つため、体に力を入れ、魔力を滾らせ、力を溜めている。


「ハアアアァァァァァッ……!」


 奴が気合のこもった息を吐く。


 目の前の敵は普通の攻撃ですら僕らを一撃で殺しかねない力を持っている。それが力を溜め、次の攻撃に全力以上の威力を込めてきたとしたらどうなるか。

 考えるだけでもぞっとする。


「うらぁっ!」

「やぁっ……!」


 だから全力で妨害に掛かる。

 ヴェールは惜し気なく神器トラムの能力を全開にし、僕も力の限り攻撃に掛かる。フィフィーも最大級の攻撃魔法をバーハルヴァントにぶつける。


 普通、こんな露骨な力溜めは戦闘中には行われない。

 言うまでもなく、余りに隙が大き過ぎるからだ。通常だったら動き回りながら、それも短時間で小規模の力を溜めるのが普通である。


 現に、今目の前のバーハルヴァントは隙だらけである。

 攻撃し放題なのだ。


 普通だったらこれで死ぬ。

 次の攻撃に移る事など許されず、ここで殺されてしまう。


 しかし、


「攻撃が……通らないっ……!」

「くそっ……!」


 目の前の竜人はその隙を高防御力でカバーしていた。

 力溜めを妨害する為の攻撃も、硬い鱗が全てを弾いてしまう。


 先程フィフィーが空けた小さな穴は、律義に腕で覆い隠され守られてしまう。ヴェールがトラムでそこを突いても、腕の鱗に弾かれる。


 頭の悪い力技。

 しかし、僕達にとっては最も嫌な一手であった。


「ハアアアアァァァァァッ……!」


 バーハルヴァントの全身に力が漲る。

 魔力が高まり、気力が迸る。


 最悪だ。力溜めが完成してしまった。

 次の一手で強烈な一撃が飛んでくる。


「バアアアァァァァ……」


 バーハルヴァントが口から大きな息を吐く。

 竜の持つ強力な技、ドラゴンブレスだ。

 奴の口から出た吐息が黒い炎となり、轟々と音を立てる。


 ただ、そのドラゴンブレスは僕達に向けられたものでは無かった。

 黒炎は奴の持つ巨大な槍に纏わりつく。黒々とした炎がうねり、バーハルヴァントの槍を包む。


「うっ……」


 見ているだけで汗が吹き出しそうになる。その槍を包む禍々しい力に体が震えてくる。

 竜の吐息の力が付加された槍が完成した。


「塗装葬槍ッ……!」

「……っ!」


 バーハルヴァントはここでやっと動き出し、悍ましいまでの力が宿った槍をヴェールに向けて突き出した。


 周囲にはまだ僕の作り出した分身が多数残っている。ヴェールの姿に変身した僕の分身だ。

 しかし、バーハルヴァントに全力の攻撃をした直後だからだろう、流石に本物のヴェールの位置はバレており、奴は間違えることなく本物に向けて攻撃を仕掛けた。


 ただの槍の一突きで空気が震え、周囲が熱くなる。


「トラムっ……!」


 ヴェールは全力でそれに対応する。

 トラムの持つ十の刃を全てその黒炎の槍にぶつける。人の領域を超えた力の刺突が完全に同じタイミングで十も同時に打ち込まれる。


 それは見た目以上の威力となっているだろう。

 世界最高の刺突と言っても過言ではない。


 しかし、その黒炎の槍の前には無力だった。


「ハアアアァァッ!」

「があああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」


 バーハルヴァントの槍はトラムの十の刃をいとも容易く引き裂き、ヴェールの体にその刃を届かせた。


 ヴェールの左腕が千切られ、宙を舞う。

 槍に纏った黒炎がヴェールの体を焼いていく。


 ヴェールの苦しそうな雄たけびと、肉が焼ける音がこの場に響く。


「ヴェール……!」

「ヴェールっ!」


 僕達は声を上げる。しかし、返事は返ってこない。

 ヴェールが力なく両膝を床に付ける。表情から生気が抜け落ちていく。


 いとも容易く決着が付いてしまった。

 バーハルヴァントは予告通りたった一撃でヴェールを打ち倒してしまった。


「ヴェール!」


 僕は遠距離から回復魔法を放ち、ヴェールの体を癒す。シータは水魔法を使い、彼に纏わりつく黒炎を消そうとする。


 しかし、この黒炎の方が力強かった。

 僕の回復魔法よりも黒炎が体を蝕む勢いの方が強く、シータの水魔法でもこの黒炎は中々消えなかった。


 僕達の補助は気休めにしかならなかった。


「……まとめて消えろ」

「……っ!?」


 バーハルヴァントがまたぼそりと呟き、今度は殺意が僕達の方に向く。

 奴の持つ槍の炎が揺れる。


「フィフィー! ディーズ!」

「うんっ……!」


 奴が何をしようとしているのか、本能的に察知できた。

 だから奴が動き始める前に行動できた。


 僕らはヴェールが倒れている場所に固まり、身を寄せた。


「円神炎槍……」


 バーハルヴァントは一言そう言い、体を大きく一回転させながら槍を振るった。


 360度全方向に槍の炎が撒き散らされる。

 竜の息吹の力を使った広範囲攻撃だ。一瞬で死の黒炎が周囲に広がっていく。


 黒炎が敷かれる速度が速過ぎて、避けられるようなものでは無い。

 僕達は一ヶ所に固まって、堅い防御を敷いた。


「マナバリア!」

「マナバリアぁっ!」

「……マナバリア!」

「マナバリアあああああぁぁぁぁっ……!」


 皆で力を合わせて4重の防御を築き上げる。


 先程ヴェールが受けた刺突と違い、この攻撃は広い範囲に散布されている。

 僕達を一纏めに殺してしまおうと考えた為だろう。だから、一ヶ所に威力を集中させた突きよりも攻撃力は低い。


 だから4人で力を合わせればこの攻撃を乗り越えられる。

 そう希望した。


「うぐぐ……」

「ぐぐぐぐ……」

「うがあああああぁぁぁぁぁぁっ……!」


 しかし、頭の中に過るイメージは死。


 黒い炎は1枚目の防御を破り、2枚目の防御を焼き切り、3枚目の防御に罅を入れている。


 炎の侵攻が止まらない。

 呑み込まれる。先程バーハルヴァントが言った通り、生物としての格の違いがここにある。


 僕が作ったたくさんの分身たちは黒炎に呑まれ、一瞬にして消えていった。

 バーハルヴァントはこの分身たちと同じように僕達を殺しきってしまおうと考えているのかもしれない。


 分身も本体の僕達も、奴にとっては有象無象。

 まるで多数の分身を一度に消してしまうかのように、一纏めに僕達は殺される。


 そして3枚目の防御も焼き切られた。


「くそおおおおおぉぉぉぉっ……!」


 残っているのは最後の僕の防御魔法だけだ。

 雄叫びを上げながら全ての力をここに注いだ。


「……最高の援護、感謝する」

「……え?」


 その時、ふと肩を叩かれた。

 誰だ、と思うと、それはヴェールであった。


 腕は千切れ、血が垂れ、体の半分が焼け焦げている。いかにも半死人といった様子で、目の焦点もあっていないように見える。


 なのに立ち上がり、槍を持って彼は前に出た。


「ハアアアアアアァァァァァァッ……!」

「ヴェール……さんっ……!」


 ヴェールさんは僕の魔力障壁よりも前に出て、残った片腕でその槍を力強く突き出した。


 槍の魔力と黒炎の魔力が打ち合わされ、力が減衰していく。

 それは僕たちにとっては最高の防御の壁であった。炎の勢いが目に見えて萎んでいく。


「ぐうううぅぅぅっ……!」

「……!」


 しかし彼は自分の体を守り切れていなかった。

 黒炎の全てを弾き飛ばす事が出来ておらず、彼の体が炎によって侵されていく。


 彼の体が焼け焦げていく。

 先程の刺突で焼け焦げた体が、更に一層ダメージを受けていく。


「ヴェールさんっ……!」


 僕は叫ぶ。

 しかし彼は力いっぱい槍を前に突き出し、一歩も引こうとしない。


 意地を通したい。やられっぱなしでは気が済まない。例え死ぬにしても、一矢を報いてから死にたい。

 そんな気概を彼の背中から感じた。


「ヴェールさんっ……!」


 やがて彼の体が黒炎に包まれていく。

 僕達の命は大丈夫だ。最後の僕の防御の壁は残り、なんとかこの攻撃を凌げそうである。


 そんな時、彼の口元がにやりと笑うのが見えた。


 それは、どうだざまあ見ろ、この攻防で全滅しなかったぞ。

 お前の言っている事は的外れだったぞ。


 彼の微笑みは、そう言っているかのようであった。


 そして、バーハルヴァントの黒炎が彼の体を呑み込む。

 彼の姿は炎の中に消え、見えなくなったのだった。










「……全く、相変わらずバカですね、あなたは」


 ――その時不意に、声がした。


「……え?」


 それは女性の声だった。

 フィフィーでも、シータでも、ディーズでもない。この場にいない筈の女性の声だった。


 一陣の風が吹き、黒い炎が飛ばされていく。

 ヴェールさんの決死の防御でその威力がかなり落ちていたとはいえ、いともあっさりと悪夢のような炎が晴れていく。


「……え?」

「あ……、え……?」


 黒炎が晴れ、視界がクリアになる。


 1人の女性が立っていた。

 僕達とヴェールさんを守る様にして、その前に立っている。


 ヴェールさんは何とか命を繋いでいた。

 火傷は先程よりも酷く、両ひざを床に付き、息も絶え絶えと言った様子であったが、確かにちゃんと生きていた。


 その女性が彼の命を守った。


 突如現れた女性は槍を手に持っていた。

 先程黒炎を吹き飛ばした風は、彼女が槍を振り回して発生させた風だろう。そう推測するとこが出来た。


「…………」


 彼女は長く綺麗な青髪を揺らしていた。

 端正で整った顔立ちをしており、大人の女性らしい落ち着いた様子を見せている。20代前半のスタイルの良い女性だ。


 僕はこの女性を知っていた。


「シルトさんっ……!?」


 僕よりも先に、シータが叫んだ。

 そうだ。この女性は『ジャセスの百足』のメンバー、シルトさんだ。


 初めて会ったのは王都の地下のギャンブル場で、そこで彼女はディーラーをやっていた。

 そして次に会ったのはギルヴィアの宿場町の宿屋の地下、僕とフィフィーがリックさんに捕らわれた時に傍に付いていた人だった。


 これまで会った時と違い、髪を後ろで束ねポニーテールにしている。


 この部屋にいるシータやディーズと同じ組織の人間で、突然の彼女の出現に2人は目を丸くして驚いている。


「シルトさん!? なんでここにっ……!?」


 シータがそう叫ぶと、シルトさんはゆっくりとこちらに振り返り、にこりと柔らかに微笑んだ。

 もう心配は要らないと言っているかのような笑顔だった。


「シータ、ディーズ、お疲れ様です。あとエリー様もフィフィー様もご苦労様でした」

「…………」

「後はお任せください」

「お任せ、って言っても……」


 僕達は困惑する。援軍なのは分かるが、突然過ぎてよく状況を把握できない。


「シルトさんっ! あなたの団長……団長を呼んで来てくださいっ……! この黒竜は手に負えません!」


 僕は叫ぶ。

 今『ジャセスの百足』のメンバーが1人助けに来たからって、この状況がどうにかなるとは思えない。


 このバーハルヴァントをどうにか出来るのは最低でも『領域外』。恐らくジャセスの百足の団長、ローエンブランドンさんぐらいだろう。


 それでも戦力が足りるかどうか分からない。


「いえ、エリー様。私はその団長の命を受けてここに来たのです」

「え……?」

「今回の首謀者の首を取って来い。それが私の任務です」


 落ち着いた口調でシルトさんはそう語る。

 本当?


 つまりローエンブランドンさんは敵のトップを討ち取るだけの実力があると見込んで、シルトさんを送り出したって事か?

 領域外だらけのこの戦いの中で?

 マジで?


 取り敢えず、シルトさんはやる気満々の様だ。


「…………」


 ちょっと信じられなくて周りをきょろきょろと見渡す。

 同じ組織にいるシータとディーズは困惑した表情を見せている。強いという事は知っているけれど、本当に目の前の怪物をどうにか出来るのか?

 そんな様な表情だ。


 対して、フィフィーは目をぱちくりさせて状況が上手く呑み込めていない。

 僕と全く同じだ。多分僕と同じくらいの情報しか持っていない。


「あれ……?」


 そして気が付く。

 この場で一番困惑しているのは僕達ではなかった。完全に動揺しきり、おかしな雰囲気を漂わせている人がいた。


 ヴェールさんだ。


「な、なぜ……?」


 彼はシルトさんの事を凝視している。

 まるであり得ないものを見たかのように目は見開かれ、体を小さく震わしている。


 バーハルヴァントも驚愕の表情を浮かべているのだが、ヴェールさんが一番動揺を顕わにしている。


「ど、どうして君が……こんなところにいるんだ……?」

「…………」

「そ、そんなバカな事は無い……?」


 なんだ……?

 ヴェールさんはシルトさんの事を知っていたのか?


 彼の声は震えている。うわ言の様にか細い声を口から発している。

 シルトさんは困った様に頬をぽりぽり掻いている。


「どうして、君が、ここに……」

「…………」

「死んだ筈じゃ……?」


 冷たい風が屋敷の中に吹き込んでくる。


「ナディア……?」


 ヴェールさんはそうぽつりと呟いだ。

 シルトさんの方を見て、女性の名前を口にした。


「……え?」


 ヴェールさんの言葉に、ぽつりと疑問の声が漏れる。


 ナディア?

 ナディアって言ったら、この都市の……?


 シルトさん――ナディアと呼ばれた女性がにっと妖しく微笑んだ。


んんwww高火力、高耐久こそ正義ですぞwww


……この竜、サイクルしないけど。


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