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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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65.犯人を捕まえろ

 急いで中央地区の騎士団詰所に行く。受付でメダルを見せると、係の人がセリスさんを呼びに行った。どうやら、担当の騎士と一緒じゃないと特区の中は自由に出歩けないらしい。


 じれったい気持ちを押さえて黙って待っていると、係の人がセリスさんを連れてきてくれた。


「やぁ、リオ。今日はリオから来てくれるなんて、一体どうしたんだ?」

「ちょっと相談したいことがあって、いい?」

「もちろんだ。こっちにおいで」


 受付から離れた壁際に寄ると、セリスさんが切り出す。


「それで、相談したいことってなんだ?」

「実は、その……信じてもらえないかもしれないけれど。とある事件を目撃したんだよね」

「……事件?」


 信じてもらえるか不安だが、話さなかったら話しが進まない。思い切って話してみると、セリスさんは興味が引かれたように身を傾けた。


「子供が誘拐されたみたいなんだよね」

「誘拐、だと? それは、その現場を見たということか?」


 ピロン


 こんな時にウィンドウ?


『現場を見たと嘘を言う』


『スキルの力のお陰だと正直に言う』


 うっ……この選択肢は。嘘を言えば、スムーズに事が運ぶ。だけど、それだとセリスさんを信用してないことになる。きっと、それを知ったらセリスさんは悲しむだろう。


 かといって、スキルの事を話すと、自分の能力がばれてしまうことになる。心の声が分かるっていうことは、出来れば伏せておきたいことだ。もし、それを言ってしまえば、セリスさんと距離が出来てしまうかも。


 正直言って、嘘を言って凌ぎたい。だけど、それを知られてしまった時にセリスさんが傷つくかもしれない。ということは、選択肢は下しかないよね。


「えっとね……犯人が誘拐したっていう事実を知るようなスキルの能力があるの。それで、分かったんだよね」

「事実を知るような能力? リオにはそんな能力があるのか?」

「う、うん……。まだ、誰にも言ってないことだけど……」


 どこまで言っていいのか分からない。だから、少しずるいかもしれないけれど、言葉を濁してしまった。


 すると、セリスさんの顔がムッと顰められ――コツンと拳を頭にくっつけられた。


「コラ、あまりスキルのことは言わない方がいい。悪用されたらどうするんだ」


 ……怒られた?


「そういうのは、ちゃんと信用できる人じゃないと言ったらダメだぞ」


 どうやら、私がスキルのことを言ったことが許せないみたいだ。このままだと、勘違いされてしまう。


「セリスさんが信用出来るから、自分のスキルの事を言ったの」

「……そうなのか?」

「うん。セリスさんなら大丈夫だって思ってる。だって、すっごく優しくて頼りになるから」


 真っすぐに見つめて訴えた。本当はこの能力の事を言いたくなかったんだけど、セリスさんなら大丈夫だっていう自信があった。それは、きっとセリスさんがいつも誠実に対応してくれたお陰だ。


「逆にセリスさんじゃないと相談できなかった。セリスさんだけが頼りだったの」

「そ、そうか……」


 もう一度訴えると、セリスさんは戸惑ったように手で口元を覆った。


ピロン


『セリス・アルディア 好感度1アップ、愛情度1アップ』


 その反応は嬉しいけれど、今はそれどころじゃないんだって!


「だから、私の言うことを信じて」

「そこまで言われたのなら、信用するしかないだろう。それで、子供が誘拐されたっていう話だな」

「うん。場所も特定してあるから、あとは乗り込んで子供を救出するだけなの。だけど、私には力がないから、それは無理な話しで……」

「なるほど、それで私か。任せろ、どうにかしてやろう」


 セリスさんは自信満々に胸を叩いて見せた。すると、心の重荷がスッと軽くなったような気がした。やっぱり、セリスさんは頼りになる。


「じゃあ、案内してくれ」

「うん、こっちだよ」


 駆け出すと、後からセリスさんが追ってきてくれる。


 ◇


 ウィンドウにマップを表示したまま、私は通りを駆け抜けた。マーカーは動きを止め、同じ地点に留まっている。


 ……止まった?


 示されている場所へ近づくにつれ、周囲の景色は商業区から静かな住宅街へと変わっていく。そして、目的地の前で足を止めた。


 そこに建っていたのは、複数の住戸が並ぶ集合住宅だった。


「……犯人は、ここにいるみたい」

「なるほど。逃げ場のない家の中、ってわけか……」


 家の前に立って、マップ機能で中を探る。中には反応が二つ。一つは犯人で、もう一つが人質の子供だろう。


「セリスさん、どうするの?」

「犯人は何人いる?」

「一人だと思う」

「だったら、出てきたところを取り押さえればいい」

「出てきたところ?」

「こうするんだ」


 すると、セリスさんが遠慮なく扉をノックした。


「騎士団第二部隊所属、セリス・アルディアだ。少し聞きたいことがある、出てきてくれるか?」


 真向からいった! それで、本当に大丈夫なの!? めちゃくちゃ、不安なんだけど!


 一人でドキドキしていると、しばらくしてゆっくりと扉が開いた。出てきたのは、あの時見た男性だ。


「……何の用だ?」

「ちょっと、聞きたいことがあるんだ。少し、出てきてくれないか?」


 半ドアで顔だけ出す男性。疑っている様子だが、騎士に言われてはどうしようもないと思ったのだろう。ゆっくりとドアを全開にして、こちらに歩み寄った。


「ふっ」


 その時、セリスさんが目にも留まらぬ速さで動いた。男性の腕を掴むと、その体を背負い、思いっきり地面に叩きつけた。


「いっ!」


 痛みで顔を歪める男性。その隙に腕を後ろでに固めて、地面に押し付けた。


「リオ、今のうちに子供を救出してくれ」

「うん、分かった!」

「待、て……いででっ!」


 セリスさん、強引なんだ。そんなことを思いつつも、私は家の中に飛び込んでいった。マップを確認しながら家の中を捜索する。


 すると、扉の奥に反応があった。私はその扉を開けて、部屋の中に入ると――。


「あっ!」


 小さな子供が手足を縛られ、口を塞がれて、地面に転がっていた。すぐに駆け寄り、口の布を外す。


「大丈夫!? 助けにきたよ!」

「ほ、本当? 僕、助かったの?」

「うん、もう平気だから」


 その子は涙を流しながら、安心したような顔をした。私は急いで、手足を縛っている縄を外した。すると、手足が自由になったその子が私にしがみついてくる。


「こ、怖かったよー!」

「もう、大丈夫だからね」


 その子を安心させるように、背中を撫でてあげた。

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