64.と、思ったら事件発生
「よし! 王都中の人の好感度も上げてやる!」
王都中の人たちと仲良くなれば、それだけでルメルが私を見直してくれるに違いない。そしたら、ルメルの好感度も愛情度もうなぎ上りだ!
でも、見知らぬ人の好感度を上げるには一体何をすればいいんだろうか? 学校でやっている挨拶ラッシュは同じ学校の生徒だからこそ、出来る芸当。
見知らぬ人に挨拶をしまくるのは、不審者極まりない。きっと、何かを企んでいる子供に見られて、警戒されてしまうのがオチだ。
もっと、自然体に近づけることは出来るだろうか? 自然に……好感度を……そうだ! 困っている人を助けるって事をすれば、自然と近づけるし、成功すれば好感度が上がる!
ふっふっふっ、だったら困っている人を探し出そう。そのために、道行く人たちの心のウィンドウを開く!
意識をして心のウィンドウを開くと、沢山のウィンドウが出現した。
『あー、腹減ったな。早く、飯を食いに行こう』
『もう、また遅刻!? 今度という今度は許さないんだから!』
『えーっと、他の買い物は……』
うむうむ、色んな人の心が丸見えだ。相変わらず、この能力は怖いほど力を発揮してくれる。まぁ、悪いことに使ってないから、別にいいよね。
これから良いことに使うんだから、きっと、能力を授けた神様も喜んでくれるに違いない! あとで営業メールしとこ!
さて、さて。どこかに困っている人はいないかな……。
通りを行きかう人の心のウィンドウを開きながら、人選していく。すると、ひときわ険しい表情をした男性が歩いてくるのが見えた。
……あの人、何か様子がおかしい。困っている、というよりも落ち着きがなさすぎる。
よし、心のウィンドウを覗いてみよう。
『……とりあえず、誰にも見られていないよな? 後をつけてくる奴もいない。……よし、上手くいったか』
……うーん。少なくとも「困っている」感じではない。むしろ、妙に用心深い。
違和感を覚えたまま、もう少し意識を集中させる。
『子供は縛り上げて、動けなくした。あとは、そいつの家に身代金を請求するだけだ』
……え?
一瞬、言葉の意味が頭に入ってこなかった。子供を縛り上げる? 身代金を請求?
それって――。ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。
改めて男の顔を見ると、口元には薄い笑みが張りつき、目は落ち着きなく左右を泳いでいる。周囲を警戒する仕草も、どう見ても「善良な人」のそれじゃない。
……間違いない。こいつ、誘拐犯だ。
まさか、適当に覗いた人が犯罪者だったなんて。これはどうするべき? とりあえず、ばれないように後を付けよう。
少し距離を取って、その男性の後を付ける。
『とりあえず、あいつの親に連絡を取って、それから……。連絡は手紙でいいか。なら、手紙を買ってこないと……』
どうやら、子供を誘拐したばかりで、行動が後手後手になっているみたいだ。これなら、時間がかかる可能性が高い。それまでに、どうにかこの男性を捕まえる手段を考えなくっちゃ。
まず、成人男性を私一人で捕まえるのは無理だ。日常クエストで鍛えていたとしても、まだまだ子供程度の能力しかない。だから、一人で捕まえるのはなしだ。
だったら、ここは大人の力を借りた方がいい。だけど、この人が誘拐犯ですって言って信じてくれる人はいる? そう簡単に信じてくれる人はいない。
……いや、セリスさんだったら信じてくれるかもしれない。なんでも、真剣に聞いてくれる人だから、私の話を聞いてくれるかも。
じゃあ、セリスさんの所に……って、このまま行ったら犯人を見失う。マップ機能に何か便利な機能はないかな?
そう思って、ウィンドウのマップの項目を開く。すると、マップには近くにいる人が表示されているのに気づいた。この人にマーキングする機能があれば、見失わずに済むんだけど……。
機能がなければ、追加すればいい。私には神様っていう強い味方がいるんだ。
すぐに要望メールの項目を開き、マップにマーキング機能を追加してくれるように記入して送った。しばらく待っていると、通知音が響いた。
『マップにマーキング機能が追加されました』
「よし、来た! 神様、ありがとう!」
流石、神様! 仕事が早い!
すぐに、マップを開き、マーキング機能を確認する。どうやら、ボタンをタップした後にその人のアイコンをタップすればマーキングできるらしい。
試しにその通りにやってみると、その人のアイコン上に旗が立った。どうやら、分かりやすくなるように旗が立つみたいだ。
これで、この場を離れても、この人の居場所が分かる。すぐに対応してくれた、神様には後で感謝メールをしておかないとね!
「さて、次はセリスさんの居場所だけど……」
すぐに、セリスさんの居場所を探す。名前を選択して検索をすると、一瞬でセリスさんの居場所が分かった。どうやら、今は騎士団の詰所にいるみたいだ。
「早く、会いに行かないと!」
居場所を確認すると、私は走り出した。




