63.ルメルとの帰り道
ルメルと肩を並べて歩きながら、賑やかな通りを進む。とりとめのない話をしつつ笑っていると、ルメルがふと、思い出したように口を開いた。
「今日のリオ、なんだかすごく楽しそうだったね。やっぱり、冒険者になってダンジョンに行ったから?」
ダンジョンに潜ったことは、ルメルにもクラスメイトにも、もう十分すぎるほど話してある。みんなから尊敬の眼差しを向けられるのは少しくすぐったかったけれど、今のこの楽しさは、それだけが理由じゃない。
「それもあるけどね。スキルのことでちょっと嬉しいことがあって」
「スキル?」
「突発的なクエストを二つもこなせたから、ポイントがたくさん入ったんだよ。正直、かなり嬉しい」
「もう……。あんまりそういう話、言いふらさないほうがいいよ。もし、私が悪い子だったらどうするの?」
少しだけ冗談めかした声音に、私は首を傾げて答える。
「ルメルが悪いことするようには見えないよ。だから安心してる。信頼してるし、何でも話せる」
「……もう。そういうこと、さらっと言わないでよ」
ルメルは頬を染めて、視線を逸らした。うん、やっぱり可愛い。照れているところまで含めて、大天使だ。
「それにしてもさ、リオって最近、クラスメイトとよく話すよね」
「そうかな?」
「うん。前よりずっと。なんていうか……リオを中心に、クラスの雰囲気が明るくなった気がする」
そう言われて、少しだけ考える。
確かに、最近は意識して話しかけることが増えた。好感度を上げたいとか、クエストが発生しないかな、とか、多少の打算があったのは否定しない。
でも。
「前より仲良くなったのは確かだね。私、結構無遠慮に絡みに行ってるし」
「それがいいんだと思うよ」
歩きながら、ふと教室の風景が頭に浮かぶ。
席を立てば、自然と声をかけてくれる子がいる。分からないところがあれば、一緒に考えてくれる子がいる。休み時間には、くだらない話で笑い合う輪が出来ている。
以前は、どこか一歩引いた場所から眺めていた日常。それが今は、ちゃんと輪の中にある。
……仲のいい子、増えたな。
クエストやスキルだけじゃない。こうして、少しずつ人との距離が縮まっていくのも、悪くない。
前世の記憶が戻る前の私は、積極的に絡みに行くような感じではなかった。用事がある時だけ、必要な時だけ話す感じの子。それで、突拍子もないことをいうから、周りには変な子って思われていたみたい。
だけど、良く話すようになってから、私をクラスメイトは私を理解してくれた。そのお陰で、分け隔てなく話してくれる子が増えた。沢山の会話が生まれるとそれだけで学校が楽しくなる。
「なんか、今のクラスが良い感じだと思うんだ。リオが一つにまとめているみたいでね」
「そうかな? 私は私のために話しかけているだけだけど……」
「ふふっ、リオって謙虚なところがあるんだね」
謙虚、か? いやいや、私は自分の好きなように振舞っているだけだから。そんな、誰かのためになるようなことはしてないな。
「リオのお陰でクラスが良くなったよ、ありがとう」
ピロン
『ルメル・エリアミル 愛情度1アップ』
何もしていないのに愛情度が上がった、だと? そういえば、前にもこんなことがあったな。それも、私がクラスメイトに関わっていた時だ。
私は一瞬だけ思考を巡らせてから、すぐに肩の力を抜いた。
ルメルに直接何かしたわけじゃない。甘い言葉をかけたわけでも、特別に構ったわけでもない。
それでも、愛情度が上がった。
前にも、あったなぁ……。
クラスメイトと話す機会が増えた時。誰かと誰かの会話に混ざった時。クラスの雰囲気が、ちょっとだけ良くなった時。
そういうタイミングで、なぜかルメルの好感度が上がっていた。
つまりルメルは、人と人との関係そのものが好きなんだ。誰かが仲良くしているのを見るのが嬉しいタイプ。
自分が中心じゃなくてもいい。みんなが楽しそうなら、それで満足。
だから、誰かと関係を良くしたり、場の空気を和らげたりすると、「いいなぁ」って思って、好感度が上がる。
うん、分かりやすい。ある意味、すごくルメルらしい。流石は王都一の美少女大天使。
じゃあ、もし私の交友が広まっていけば、自動的にルメルの好感度や愛情度も上がっていくのかな?
例えば、こうやって歩いている時に色んな人から挨拶をされたら、ルメルは私のことを見直すってこと?
……試してみるか?
「あっ、じゃあね、リオ」
「うん、またね」
考えているうちにルメルと別れてしまった。だが、これは好都合。この町の人たちの好感度も爆上げして、ルメルに見直されるようになろう!




