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迷貨のご利用は計画的に! ~幼女投資家の現代ダンジョン収益記~  作者: 旅籠文楽


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46. ドロップアイテムは貴重な収入源

今週末は多忙にしておりますため、本日ぶんは短めです。ゆるして。

 



 方針が決まれば、もうこの階層に用はない。

 金貨1枚を投資したことで、既に第2階層の地図は判明しているから。

 スミカは最短距離のルートを選択して、真っ直ぐに第3階層を目指す。


 讃美歌を歌っていれば魔物が近寄ってこないのは、第1階層での経験から既に判っている。

 実際に、定番とも言える有名な讃美歌を何曲か歌いながら移動してみると。

 ゾンビドッグにもゾンビにも一度として遭遇せず、スムーズに第3階層へと続く階段に到着することができた。


「そういえば、数千円で売れる『(とむら)いの御札(おふだ)』って、用途は何なの?」


 3人で階段を下りながら、ミサキにそう問いかける。

 階段を下りている最中に歌う必要はない。なぜなら階層と階層とを繋ぐ階段は、原則として魔物と遭遇することがない安全な場所だからだ。

 ……まあ、この先の階層から、魔物が溢れている場合は別だけれど。


 ドロップアイテムに数千円の値が付くってことは、その金額に相応しいだけの、何かしらの用途があるアイテムなんだろう。

 そう思い、スミカは訊ねたんだけれど……。どうやらそこまで調べていなかったらしく、ミサキは慌ててスマホで検索を始めた。


 階段を下りながらのスマホは危ないから、一旦ミサキの身体を引き止め、階段の途中で小休止する。

 何曲も歌い続けたことでちょっと疲れていたのか、階段に腰を下ろすと、自然とスミカの口から溜息が漏れ出た。


「えっと……。弔いの御札を亡くなった人に貼り付けると、大体10日程度の間、亡骸が全く腐らなくなるらしいっす。10日ごとに御札を貼り替えれば、それこそ1年でも2年でも、亡くなった当時の状態のまま保存できるとか」

「へー。じゃあもしかして、御札は葬儀業者とかが買い取ってるの?」

「はい、まさにその通りみたいっす。大体どこの葬儀業者でも買取を行っていて、金額は1枚あたり6000円から9000円ぐらい。場合によっては1万円以上の買取値が付くことも珍しくはないみたいっすね」

「その値段で買い集めても、エンバーミングよりは安く済みそうだもんねえ」


 エンバーミングとは遺体の腐敗を防ぐために施す処置のこと。

 少し前に祖母の葬儀をする前に、実際に葬儀業者にお願いして手配して貰ったので知っているけれど、これには大体20万円前後のお金が掛かる。


 高額ではあるけれど、処置を施せば確か1ヶ月半ぐらいまでなら、美しいままの状態を保つことができるって話だったかな。

 1ヶ月半と言えば相当な期間だから。それだけ高い効果があるならと、金額にも納得できたのを憶えている。


 葬儀業者からすれば弔いの御札を4~5枚集めて用いることで、エンバーミング施術のコストを代替できるわけだ。

 なので1枚あたり1万円以上で買い取っても、業者的にはボロ儲けなんだろう。


 それに、より多い枚数の御札を用いれば、エンバーミングを超える長期間の保存さえできるわけだから。

 もし御札を沢山買い集められれば、同業他社に対する強みにもなりそうだ。


 どこの葬儀業者からも、高い需要が見込める弔いの御札。

 だけど、ミサキが調べてくれたところによると、弔いの御札をドロップするのはアンデッドの魔物だけらしい。


 アンデッドを好んで狩りたがる掃討者がほぼいないため、弔いの御札は市場への供給が決して多くない。

 そのため、少ない供給量を葬儀業者各社で取り合う事態が不定期に発生し、そのたびに取引価格が一時的に高騰したりもするそうだ。


「なんで最近では、葬儀業者と関係ないのに買い集めて、高騰するまで溜め込んでおく人も居るらしいっすよ」

「投資家の遊び道具みたいになってるのねえ……」


 まあ、天職が〈投資家〉のスミカが言うことでもないんだけれど。


「ちなみに御札をダンジョンの窓口で買い取って貰うと、1枚あたり3000円になるらしいっす。なので、後で税金を計算して納めるのが面倒とかじゃなければ、窓口よりも葬儀業者に買い取って貰うほうが良いっすね」

「ダンジョン窓口以外に売ると『所得』扱いになっちゃうけど、所得税は最大でも45%までしか掛からないから、そっちのほうが利益になるわけだね」


 まあ、実際には住民税とかも所得に応じて金額が増えるけれど。

 とはいえ、よっぽど馬鹿みたいに稼いでいない限り、所得税が最大割合で掛かることなんてないわけだから。やっぱり業者に買い取って貰うほうが賢明だろう。

 免税ポイントを使って発行して貰う免税券だって、自分に課せられた税金に対して使うのが、一番効率は良いわけだしね。


「そういえば、『ここはお金が稼ぎやすい』ってダンジョンとかはあるの?」


 ふと、スミカは2人にそう訊ねてみる。

 スミカが掃討者を始めたのは、祖母の遺言に従って相続した自宅を問題なく維持するため。

 つまり、土地や家屋を持つことによって発生する各種税金や、維持修繕の費用を稼ぐためであり、紛うことなく『お金のため』だと言える。


 なので、もし『お金を稼ぎやすいダンジョン』みたいなのがあるなら、行かない道理はない。

 掃討者の先輩であるリゼとミサキにもし心当たりがあるなら、是非とも教えて欲しいと思ったのだ。


「やはり『日本銀行ダンジョン』かな」

「そっすね、あそこはかなり稼げるっすから」


 2人から全く同じ答えが返されたことに、スミカは驚かされる。

 訊いておいてなんだけれど、ダンジョンごとの稼ぎやすさなんてものに、それほど明確な差は生まれないと思っていたからだ。


 だって、もし明らかに『稼げるダンジョン』なんてものがあるとするなら、そのダンジョンを沢山の掃討者が利用してドロップアイテムが大量に産出された結果、アイテムの買取値はどんどん下がることになる筈。

 そうなれば当該ダンジョンでの稼ぎは日を追うごとに悪くなっていく筈なので、遠からず『稼げるダンジョン』の立場を失うことになると思うんだけど……。


「まあ、スミカが言いたいことは判るし、その考え自体は間違ってないと思うが」


 そのことを2人に伝えると、リゼが頷きながらそう答える。


「日本銀行ダンジョンはちょっと特殊でな。あそこのドロップアイテムは、どんなに沢山産出されても、その価値が変わることはないんだよ」

「……そんなものがあるの?」

「あるんだ。何しろ日本銀行ダンジョンでは、現金がドロップ(・・・・・・・)するからな」

「は?」


 思わず、即座にスミカはそう問い返してしまう。

 その反応を見たリゼとミサキが、可笑しそうにくすくすと笑った。


「まあ、そんな反応になるよなあ」

「私たちも最初に聞いた時は、きっとそんな反応をしてたっすよ」

「……え、マジで? 現金がそのままドロップするの?」

「うむ。魔物を倒すと、千円札とか一万円札とかがドロップする」

「何それ――超楽しいじゃん。今度フミがこっちに来たら絶対一緒に行く」


 お金が稼げるダンジョンには、フミもきっと興味があるだろうからね。

 今晩にでも早速、LINEで相談しておこうかな。





 

-

※メッセージでご意見を頂戴しましたので追記


 日本銀行ダンジョンに於いて日本銀行券をドロップすることについては、いずれ本作でも説明する機会があると思われますが。

 本作と同じ世界設定にて並列投稿しております、下記の小説では既に説明がされておりますので、興味があります方はよろしければ是非。

 スミカとフミも、ちらっと登場しております。

https://book1.adouzi.eu.org/n9768ka/



 簡単に要旨のみご説明申し上げますと、


・ドロップする日本銀行券には番号の記載がない

・よって、そのまま使うと法律違反になる(偽造通貨行使罪)

・ダンジョン窓口で同額分の本物のお札と交換して貰える


 という感じになっております。


 なお作中時点では、ドロップした現金の持ち出しは禁止されていません。

 もし番号記載なしのお札が世に出回るなどの問題が生じれば、その時点で規制が検討されることになるでしょう。


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総合ランキング :日間76位、週間114位、月間208位

ローファンタジー:日間1位、週間2位、月間6位

に入っておりました。


いつも応援してくださり、ありがとうございます!

お陰様で大変励みになっております。

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― 新着の感想 ―
ダンジョンが勝手に刷ったお金を政府が補償してまで日本銀行ダンジョンに行って貰わないとただの紙切れしかドロップしないダンジョンになるってのわかるけども、額面と同額での交換は流石にやらないと思う。
えぇ・・・交換されて信用が担保されたとしても、現金が世の中に増える以上インフレは避けられないんじゃないのかなぁ
えぇ…紙幣の信用担保できるんかそれ
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