45. 第2階層へ
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『階層地図』を頼りに階段の位置へと到着した一行は、そのまま錦糸公園ダンジョンの第2階層へと下りる。
この階層も魔物がだいぶ増殖している筈なので、とりあえず魔物と遭遇して忙しくなる前に、手早く現在の階層を『投資対象』として登録した。
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■投資対象 - 階層003
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錦糸公園ダンジョン・第2階層
【フロア】
種別 :地下通路+小部屋(石造り/照明アリ)
階層サイズ:100%
上り階段 :1ヶ所
下り階段 :1ヶ所
【特殊区画】
(なし)
【ゾンビドッグ】
基本棲息数: 150体
増殖数 :+ 75体/日
許容量 :7500体
【ゾンビ】
基本棲息数: 50体
増殖数 : +25体/日
最大数 :2500体
【採取オーブ】
配置数 :3基
再配置間隔:24時間毎
【宝箱】
配置数 :1個
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◆投資総額:0 gita
(配当なし)
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「あれ、ここって2種類の魔物が出るんだ?」
投資対象に登録したことで、表示された現在階層の情報。
そこに『ゾンビドッグ』と『ゾンビ』、2種類の魔物の名前が書かれていることに気づいたスミカは、2人にそう問いかける。
すぐにリゼが、頷きながら教えてくれた。
「必ずというわけではないのだが、第1階層に居る魔物は第2階層や第3階層のように、より深い階層にも出現することが多いな。もっとも、階層同士が問題なく接続されている場合に限るようだが」
「へー。普通のゾンビとはサヨナラできるかと思ったんだけどなあ……」
とはいえ階層の情報を見る限りだと、第2階層に棲息するゾンビの数は、ゾンビドッグの3分の1程度でしかなさそうだ。
やはり本来の棲息階層に較べると、個体数は少なくなるってことなんだろう。
なお、階層同士が接続されていない場合には、魔物がそれを超えて存在することはないそうだ。
例えば、魔物が侵入できない『安全階層』なんかが間に挟まっている場合には、それを超えた生息圏を持つことはないわけだね。
「ゾンビドッグはレベル『2』の魔物って話だけれど。この階層のゾンビのレベルは第1階層のままで『1』? それともゾンビドッグと同じ『2』になる?」
「それはどっちのパターンも有り得るので、なんとも言えない」
「あ、そうなんだね」
「もしゾンビと遭遇したら、ぜひ確認してみてくれ」
「ん、了解」
リゼの要請を、スミカはすぐに承諾する。
スミカは《鑑定》の異能を所持しているので、実際に遭遇すれば、相手のレベルを始めとした情報はすぐに看破が可能だ。
(……さて、地図を見れるようにするためにも、まずは何かに投資しなきゃ)
いつも通り宝箱の配置数を増やしても良いんだけれど。
今回は――試しに『採取オーブ』の配置数を『4基』に増やしてみた。
投資に必要な額は金貨1枚のようだ。これは宝箱を増やす時と同じだね。
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■投資対象 - 階層003
-
錦糸公園ダンジョン・第2階層
【採取オーブ】
配置数 :4基(+1)
再配置間隔:24時間毎
-
◆投資総額:1 gita
・迷貨配当(1%)
・階層地図
・位置把握(採取オーブ)
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すると、投資により『階層地図』が視れるようになったのは同じだけれど。
地図上で位置把握できる対象が、宝箱ではなく『採取オーブ』になっていた。
どうやら自分が投資した対象の位置把握が可能となるらしい。
ってことは多分、もう1枚金貨を投資して宝箱の配置数も1個増やせば、宝箱も併せて位置把握ができるようになりそうだ。
「かすかに唸り声が聞こえるっす」
「――おっと、了解」
ミサキの言葉に、慌ててスミカは投資のウィンドウを視界から消去する。
この階層もかなり魔物の数が増えているだけあって、やはり悠長に投資の情報を確認している暇は無さそうだ。
ゆっくり声が聞こえる方向に近づいていくと、遭遇したのはゾンビドッグ2体とゾンビ1体の群れ。
獣らしい鋭敏さが残っているのか、ゾンビドッグの1体がすぐにスミカたちの存在に気づく。
そして「ヲオォォォン……」と、吠えているのか唸っているのか、なんとも判別がつかない微妙な鳴き声を上げた。
「……おっそ」
「遅いな」
「ノロマっすねえ……」
ゾンビドッグということで、なんとなく『機動力が高めのゾンビ犬』を想像していたんだけれど。
スミカの予想に反し、ゾンビドッグは非常にゆっくりとした速度で、ゾンビたちと仲良く並びながらこちらへ向かって歩いてくる。
顔や身体が明らかに腐っている犬なので、見た目だけなら怖いんだけど。
逃げようと思えば簡単に逃げきれると思うと、恐怖感がだいぶ和らぐ気がした。
「とりあえず、頼む」
「はーい」
リゼに求められるまま、スミカは歌唱を始める。
曲目は『アメイジング・グレイス』。もはや説明が不要なぐらい、日本でも大変に有名な讃美歌のひとつだ。
……いや、逆に有名過ぎるせいで、日本人の中には普通の歌謡曲だと認識していて、讃美歌だと知らない人も多いかも?
スミカが歌い始めると、ゾンビドッグもゾンビも明らかに動きが鈍くなる。
そして30秒ほど歌った時点で完全に動かなくなり、1分半ほど歌い続けると、どちらの魔物もボロボロと崩れ落ちて光の粒子に変わった。
「ゾンビと何も変わらないじゃないか」
「そっすね。単に犬の姿をしてるだけっす」
呆れたような表情で、リゼとミサキがそう零す。
スミカとしても全く同じ気持ちだった。
「ゾンビで犬というと、厄介な敵というイメージがあったんだが……」
「あ、リゼも? やっぱり例のゲームの影響で、そう思っちゃうよねぇ」
「あー……。緑や赤のおハーブをキメて回復するアレっすよね」
「そうそう、よくヘリが落ちるアレ」
「矢鱈とクランクを回させたがるアレだな」
ちなみにスミカは、シリーズの5と6が好きだ。
なんか世間では不評らしいんだけれど……。あんまりゲームに慣れていない女の子と一緒に、楽しく2人で遊ぶにはちょうど良いんだよね。
「そう言えば、ゾンビのレベルは『1』だったよ」
「おっと、了解。報告ありがとう」
歌いながらも《鑑定》はしていたので、一応結果は伝えておく。
もちろんゾンビドッグのレベルは情報通り『2』だった。
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ゾンビ - Lv.1
[筋力] 10
[強靱] 12
[敏捷] 3
[知恵] 2
[魅力] 3
[幸運] 4
スキル:〈再生Ⅰ〉
属性無効:闇
属性弱点:聖、火
保有魔力:2×100
ドロップ:瑪瑙、オパール、スキルジェム〈再生〉
-
ゾンビドッグ - Lv.2
[筋力] 8
[強靱] 10
[敏捷] 4
[知恵] 3
[魅力] 4
[幸運] 5
スキル:〈再生Ⅰ〉〈毒付与Ⅰ〉
属性無効:闇
属性弱点:聖、火
保有魔力:5×100
ドロップ:アメシスト、ルビー、スキルジェム〈毒付与〉
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《鑑定》で視えた魔物の情報はこんな感じ。
どちらの魔物も[筋力]や[強靱]といった身体能力が高めのようだ。
リゼは生理的嫌悪を覚えつつも苦戦せず倒していたみたいだけれど、魔物と同じぐらいのレベルの掃討者が戦えば、結構苦戦するんじゃないだろうか。
あと、要注意な点としては、ゾンビドッグが〈毒付与Ⅰ〉というスキルを持っていることだろう。
ゾンビドッグに噛まれたりすれば、身体が毒に冒される可能性があるわけだ。
そう思うと、ますます初心者には難敵だと言えそうだ。
とはいえ――スミカたちにとっては別に脅威でもない。
『吸血姫』であるスミカは、もともと状態異常が効かない身体だし。
スミカが定期的に[吸血]しているリゼとミサキもまた、一時的に状態異常に対する完全耐性を有している。
もし噛まれたりしても、毒に冒される確率はゼロだろう。
……まあ、安全だからといって、不衛生な犬に噛まれたくはないけれどね。
「さっさと第3階層に下りてしまうか?」
「そっすね。いいと思うっす」
「私も構わないけれど……第3階層に出る魔物は何なの?」
「えっと――『グーラ』っすね。見た目も強さもほぼゾンビらしいっす」
情報サイトでも開いているのか、ミサキがスマホを見ながらそう教えてくれた。
「このダンジョンって、アンデッド系の魔物ばかりなんだねえ……。グーラのレベルは幾つなの?」
「レベルは……『3』らしいっすね。倒して得られる魔力が『12』、免税ポイントが1体あたり、普段だと『16』点だそうっす」
「おー、金銭効率もちょっと上がりそうだね」
3倍の恩恵が大きいので、付与される免税ポイントは多いほど嬉しい。
ついでに魔力もそこそこ稼げるなら、なおさら言う事無しだ。
「あ、グーラはドロップアイテムがかなり美味しいみたいなんで、お金の期待値は大幅に上がるかもしれないっすね」
「えっ、そうなの? 何を落とすの?」
「そこそこの確率で『弔いの御札』ってアイテムを落とすそうで、これが1枚あたり数千円の値が付くみたいっす」
「あら素敵」
魔物がアイテムを落とす確率には、掃討者パーティの[幸運]が影響する。
スミカはもともと[幸運]の値が『15』と非常に高く、リゼとミサキは投資の効果で、2人とも[幸運]が『+2』ずつ底上げされている。
パーティの[幸運]合計値が非常に高いので、アイテムドロップの期待は高い。
時給に大きく影響しそうなので、早く第3階層に向かうほうが良さそうだ。
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総合ランキング :日間83位、週間122位、月間226位
ローファンタジー:日間1位、週間2位、月間7位
に入っておりました。
……えっ? ローファン1位⁉
ぎゃー‼ ありがとうございます‼ヾ(゜ω゜)ノ゛




