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迷貨のご利用は計画的に! ~幼女投資家の現代ダンジョン収益記~  作者: 旅籠文楽


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36/61

36. 階層への投資

 



 更に何戦かするも、特に危なげなく勝利。

 棍棒持ちゴブリン程度ではフミに傷ひとつ負わせることはできないし、投石ゴブリンはスミカにとって簡単に封殺できるカモに他ならない。

 相性が良すぎる魔物しか出てこないため、もはや負ける理由がなかった。


〔――あっ〕

〔おめでとうございます!〕


 2体で出現したゴブリンを討伐したあと、不意にスミカの身体が光り輝く。

 レベルアップの演出(エフェクト)だ。流石に3度目の経験ともなると、感動も驚きもそれほど大きくはなかった。


 簡単に倒してしまっているとはいえ、ゴブリンはレベルが『5』もある魔物。

 すっかり忘れかけていたけれど……スミカたちにとっては、レベル的にも格上の魔物なのだ。

 強い魔物であるぶん討伐時に得られる魔力も『35』と多い。

 ピティの35倍もの魔力を稼いでいれば、そりゃレベルも上がるわけだ。


〔正直、自分よりもスミカ姉様のレベルアップのほうが、面白そうで楽しみです。今回はどんな変わった能力が得られたんですか?〕

〔ええっと……。ちょっと待ってね、調べてみるから〕


 フミにそう答えつつ、スミカは自身のステータスカードを取り出す。




+----+

ホウリ・スミカ

 吸血姫(カルミラ)/19歳/女性


  〈投資家〉 - Lv.3 (1855/4120)


  [筋力]  8

  [強靱]  9

  [敏捷] 10


  [知恵] 12

  [魅力] 13

  [幸運] 15


-

異能(フィート)


 [真祖][吸血]

 《迷宮投資家》《投資口座》《鑑定》

 《人物投資》《階層投資》


◇スキル


 (なし)


+----+




 まず、今回成長した能力値は[魅力]と[幸運]の2つ。

 前回は[知恵]と[幸運]だった筈なので、今のところ[幸運]はレベルが上がるたびに増えているようだ。

 〈投資家〉をやっていくには運が必要、ってことなのかな?


 新たに増えている異能は――《投資口座》と《階層投資》の2つかな。

 一般的にはレベルが上がると、新しいスキルを修得したり、あるいは既に修得しているスキルのランクが成長することが多くて、異能が増えることは少ないらしいんだけれど。

 なぜかスミカの場合は、レベルが上がる度に異能ばかりが増えて、逆にスキルは現時点でまだ何ひとつ修得できていない。


 異能とスキルの、どっちが良いのかは判らないけれど。

 スキルは使い込むことでランクを伸ばすことができるらしいので、習熟の楽しみが得られないのは、ちょっと残念にも思う。




+----+

《投資口座》/異能


 迷宮貨幣や投資報酬を受け取るための口座。

 手持ちの迷宮貨幣を入金または出金することもできる。


 『投資対象』の解除が行えるようになる。

 解除完了までに72時間を要するが、時間経過後に

 対象へ投資していた全ての迷宮貨幣は口座に返還される。


-

《階層投資》/異能


 ダンジョンの階層を『投資対象』として登録可能になる。

 『迷貨』を投資して対象階層の状態を変更できる。


 対象階層から迷宮貨幣が産出されたとき

 あなたも一定割合の迷宮貨幣を得ることができる。


+----+




「………………???」


 心の中で(詳細を知りたい)と思うことで、ステータスカードに表示された2つの異能の詳細情報。

 それを見て――思わずスミカは、その場で首を傾げてしまった。


 《投資口座》のほうは、なんとなく理解できる。

 こちらは、いわゆる『証券口座』みたいなものだろう。

 今は投資を行うたびに、魔法の鞄から金貨を取り出して消費しているけれど。

 おそらく手持ちの迷宮貨幣を予め《投資口座》の中に入金しておけば、そこから直接投資が行えるようになったんだと思う。


 『投資対象』の解除が行えるようになった、というのもまあ判る。

 例えば、現在スミカはフミに合計で金貨『20枚』の投資を行っているけれど。

 フミを投資対象から解除するように手配して72時間待てば、投資した20枚の金貨がそのまま口座に返還されるわけだ。


 もちろん、そんなことをするつもりは更々ないけれどね。

 投資を解除していることがフミにばれたら、嫌われる……とまではいかないかもしれないけれど、流石に良い気はしないだろうし。


 投資対象の解除機能が今になって解禁されたのは、たぶん返還された金貨を受け取る先として《投資口座》が必要だからなんだと思う。

 とりあえずスミカは魔法の鞄に入っている全ての金貨と銀貨を取り出し、《投資口座》に入金を行ってみる。

 するとスミカの視界に投資口座のウィンドウが表示され、現在『金貨17枚』と『銀貨33枚』の残高があることが判った。


(うん、やっぱりこっちは、普通に『口座』って感じだね)


 もちろん口座に入れた金貨や銀貨を、再び手元に取り出すこともできる。

 この辺は魔法の鞄に出し入れするのと、感覚的にもほぼ同じだ。


 なんとなく理解できたので、こっちはもういいかな。

 さて――問題は、もうひとつの《階層投資》のほうだ。


(ダンジョンの階層を『投資対象』として登録可能になる、って……)


 一体どういう意味なんだろう、とスミカは困惑する。

 いや、もちろん言ってる意味は判るよ? 例えば今スミカたちが居る『東京都庁第一本庁舎ダンジョン』の『第1階層』に投資できるってことでしょ?


 うん、言葉の『意味』としては判るんだ。

 でも――それに一体、何の『意味』があるのかは、まるで見当もつかない。


 『人』に投資することで、その人の能力値が上がるのは理解しやすい。

 相棒のフミに投資して彼女の能力を強化すれば、同行するスミカはそれだけ楽ができる。だからこれは結果として自分にも利がある投資と言えるわけだ。


 ……じゃあ『ダンジョンの階層』に投資する場合なら?

 ダンジョンに投資しても、強化されるのは『魔物』ぐらいしか思いつかない。

 魔物が強くなっても、利どころか損しか生まれない気がするんだけど……。


〔スミカ姉様?〕

〔おっと……ごめん、試してみるからもう少し待っててね〕


 試しもしないうちに、無価値な異能と判断するのは流石に早計だろう。

 とりあえず、スミカは現在自分たちが居る場所を『投資対象』にしよう――と、そう頭の中で意識してみる。

 すると、初めてフミのことを投資対象にしようと考えた時と同じように、スミカの視界にゲーム画面を模したようなウィンドウが1つ表示された。




+----+

■投資対象 - 階層001

-

東京都庁第一本庁舎ダンジョン・第1階層


 【フロア】

  種別   :地下通路+小部屋(石造り/照明アリ)

  階層サイズ:100%

  上り階段 :1ヶ所(※固定)

  下り階段 :1ヶ所


 【特殊区画】

  (なし)


 【ゴブリン】

  基本棲息数: 300体

  増殖数  :+100体/日

  許容量  :6900体


 【採取オーブ】

  配置数  :3基

  再配置間隔:24時間毎


 【宝箱】

  配置数  :2個


-

◆投資総額:0 gita


 (配当なし)


+----+




 ウィンドウに記されている、結構な量の情報を漠然と眺めていると。

 投資することで『記載されている各項目を増減できる』ということが、不思議と感覚的に理解できた。


 例えば『階層サイズ』。つまり、この階層の面積を拡大したり、あるいは逆に狭くしたり。

 設置されている『階段の数』を増やしたり、あるいは減らす――あ、階段の数は『1個』よりも減らすことはできないみたいだ。


 魔物の個体数や、採取オーブの配置数、宝箱の配置数なんかも、投資さえすれば自由に増やしたり減らしたりできるようだ。

 なるほど、ちゃんと自分に利益が出るような投資も行えるんだなと、内心でスミカは納得する。


〔……なんか、ダンジョンの『階層』に投資できるようになったみたい〕

〔へっ? 階層に……ですか?〕


 スミカが念話で伝えた言葉を聞いて、狐につままれたような顔になるフミ。

 その可愛らしい反応を見て、思わずスミカは笑顔になってしまう。


 投資によって『階層』のどんなことが変更できるようになったのかを、ひとつひとつフミに説明していく。

 長らく口をぽかんと開けていたフミも、やがて説明を聞いて納得してみせた。


〔なんだかスミカ姉様の能力が、ますますチートじみてきた気が……〕

〔反論したいけど、何も言い返せない……〕


 フミが漏らしたつぶやきには、当事者として心の底から同意しかない。


 掃討者ってのは、ダンジョンに『挑む』側である筈なのに。

 なんでこんな、ダンジョンの管理サイドからしか見えちゃいけないような情報が普通に閲覧できるようになって。

 しかも投資することで、それを変更できる立場になっちゃってるんだろう……。


〔とりあえず、お試しで宝箱でも増やしてみては?〕


 そう勧めてきたフミの言葉に従い、早速『投資』を行ってみる。

 《投資口座》の残高から金貨を1枚消費して、宝箱の配置数を増やしてみた。




+----+

■投資対象 - 階層001

-

東京都庁第一本庁舎ダンジョン・第1階層


 【フロア】

  種別   :地下通路+小部屋(石造り)

  階層サイズ:100%

  上り階段 :1基(※固定)

  下り階段 :1基


 【特殊区画】

  (なし)


 【ゴブリン】

  基本棲息数: 300体

  増殖数  :+100体/日

  許容量  :6900体


 【採取オーブ】

  配置数  :3基

  再配置間隔:24時間毎


 【宝箱】

  配置数  :3個(+1)


-

◆投資総額:1 gita


 ・迷貨配当(1%)

 ・階層地図

 ・位置把握(宝箱)


+----+




 それからウィンドウの下部を確認してみると、ちゃんと配置数が『3個』に増えていた。

 ダンジョンは1階層だけでも結構広いから。全体で2個しか配置されないなら、今まで全く宝箱を発見できなかったのも仕方ないなと思う。

 今後は3個に増えるわけだから、発見の可能性も少しは上がっただろう。


 金貨1枚を投資したことで、投資総額が『1gita』に変化。

 また、《人物投資》の時と同じように、投資したことで幾つかの特別な恩恵が追加されていることも判った。




+----+

◇迷貨配当(1%)


 階層から迷宮貨幣が産出されたとき

 投資総額に応じた迷宮貨幣の配当を得ることができる。


-

◇階層地図


 あなたは階層の全図をいつでも頭の中に展開できる。


-

◇位置把握(宝箱)


 階層の全図に宝箱の位置情報が追加される。


+----+




〔フミ。これ、想像以上にチートだわ……〕

〔とても面白そうなので、ぜひ今すぐ説明してください!〕


 新しく得た能力について、理解が深まるほどに困惑するスミカとは対象的に。

 フミはわくわくとした表情を隠しもせず、そう訊ねてくるのだった。





 

-

なぜかあの後に更に沢山のブックマークや評価を頂戴致しまして

日間総合121位や、日間ローファンタジー3位に入っておりました。


ありがとうございます。偏に皆様のお陰です。

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― 新着の感想 ―
元本の保証がされているのは、「投資」では無くて「融資」ですね。
これはすごすぎる効果が。 引き剥がしも時間制限だけで損をする要素がないから基本的に掛け得ですね。
投資しまくった階層で狩りまくったら増えるってことか 宝箱から出る分も増えそうだからとても美味しそう 過疎ってるとこで宝箱さらうか、混んでるとこで数稼いでもらうか悩ましいね
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