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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第2章【大瀑布と白き月】

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第87話「現れた二人と」

 ヤタガラスに飛び乗って帰還した俺たちが見たのは、蜂の巣を突いたような騒ぎの中央制御区域だった。

 端末の前には長蛇の列ができており、ホールでは盛んに歓声と議論が起こっている。


「流石の熱狂ぶりだな」

「待ちに待った新要素実装ですから。上位層はすでに動き出してるでしょうね」


 押しつぶされないように壁際に寄りながら、窮屈なホールから脱出する。

 町も騒がしいが、中よりは幾分ましだった。


「それで、レティはどうするんだ?」

「どうするとは?」

「昼飯食べに戻るんじゃなかったのか?」

「……あー」


 指摘を受けるまで忘れていたらしい。

 彼女はしばらく唸った後、苦渋の顔で口を開いた。



「お待たせしました!」

「おう、早かったな」


 もはや定番となった新天地の窓側ボックス席でコーヒーカップを傾けていると、対面の座席にレティが現れた。


「ふふふ。カロリーメルト食べてきましたよ」

「ちゃんとしたもん食べないといけないぞ」

「そんなこと言ってる場合ですか。ていうかレッジさんはそもそもお昼食べてないじゃないですか」

「俺は朝十時くらいにカップ麺食べたから腹減ってないんだ」

「どの口でちゃんとした物食べろって言ったんです!?」


 昼食は抜きたくないが、青天の霹靂のように現れたイベントには乗っかりたい。

 そんなわがままなレティが下した苦渋の決断は、一瞬ログアウトして急いで栄養食を食べ、すぐにログインするというものだった。


「それでレッジさん、ちゃんと情報集めてくれてました?」

「一応な。レティが予想以上に早く帰ってきたから、あんまり進んでないが」


 そう言いながら、俺はディスプレイをテーブルに広げる。

 総合雑談スレッドをはじめ、掲示板の各所はどこも活発に書き込まれていた。

 今も滝のように流れていくレスを見て、レティは思わず息をのんだ。


「これは……」

「率直な感想でいいぞ」

「憶測5割、虚偽2割、誇張2割5分ってとこですかね」

「まあまだ告知から1時間も経ってないしなぁ」


 やるせない、とぐったりテーブルに伏すレティ。

 玉石混淆の掲示板とはいえ、今はまだ混乱が大きすぎる。

 アストラたち攻略組も、今は情報収集中で掲示板に流す余裕もないらしい。


「大鷲の騎士団のホームページとかも、アクセスが集中してるのかめちゃくちゃ重いな」

「まあ、予想はしてましたよ。とりあえず公式からの告知を精査しますか」


 レティはすっぱりと思考を切り替えて、公式サイトのウェブページを開く。

 そこにはゲーム内でのアナウンスとその補足情報が記されていた。


「とりあえずメインに据えられるのは新フィールドの実装ですね。二次フィールドボスを討伐してるプレイヤーはそのまま奥に進めるらしいですよ」

「特別任務はいろはにの四種類。それぞれのフィールドボスの討伐が達成条件みたいだな」

「この重要資源地候補っていうワードがよく分かりませんね」

「現地に行ってみないとなんとも言えないか……」


 腕を組んで思わず唸る。

 新たに開放されたフィールドは四種。

 それぞれ任務の名前がそのまま地名になっているらしい。


「湖沼の先はなんてフィールドなんだ」

「ろ号の〈鎧魚の瀑布〉みたいですね。〈竜鳴の断崖〉は密林、〈角馬の丘陵〉は荒野、〈雪熊の霊峰〉は山麓の奥です」

「その辺の情報は揃ってるか。ありがたい」


 少し考え、レティに尋ねる。


「どこへ行きたい?」

「うぅん……。正直、二人だけだとどこも力不足じゃないかと思います。エイミーとラクトがいればどこでもいけると思うんですけど」

「やっぱりそうだよな」


 俺も彼女の意見と同じだった。

 レティは攻撃力が高いが、防御力の点で脆い。

 俺なんかはそもそも戦闘能力がない。

 キャンプを張れば二人とも死ぬことはないだろうが、攻略できる戦力とはとても言いがたい。


「やっぱり、二人と合流できるのを待つか」

「そうですね。その間に情報収集でも――」


 そう言ってレティが新天地のメニューに手を伸ばした時だった。


「何かお困りかしら? そこのお二人さん」

「わたしたちで良ければ相談に乗るよ」


 その声に俺とレティは弾かれたように顔を上げる。


「エイミー!」

「ラクト!?」


 驚く俺たちの顔を見て、二人は悪戯が成功したかのように笑う。

 いない筈の二人の登場に、俺とレティは狐につままれたような気持ちで顔を見合わせた。


「公式であんなアナウンスがあったって聞いて、ログインしちゃったよ」

「私なんか、まだお皿洗ってないのよ」


 二人は俺たちを奥に寄せて椅子に座る。

 彼女たちも公式の告知を知って居ても立ってもいられなかったらしい。


「レッジもレティも、お揃いの服なんか着ちゃって」

「いいなぁ。わたしも装備変えたいんだよね」


 二人はまず俺たちの新調したシャドウスケイル装備を見て羨ましそうに言う。

 二人の装備も変えないと、新しい土地に付いていけないだろうか。


「レッジさんは槍も新しくしたんですよ。午前中はそれの試運転もしてたんです」

「へぇ。それは早く見たいね」


 胸を張るレティに、ラクトが興味を向ける。


「じゃあお披露目も兼ねてどこか行きましょうよ。目的地は決めてるの?」


 うずうずとした様子のエイミーが話を急かす。

 彼女はまだ見ぬ強敵と早く拳を交えたいと息巻いている。


「特に決めてない。なんとなく、鎧魚の瀑布が良いかななんて思ってるが」

「レッジとレティって森方面好きよねぇ」

「ゲームの始まった場所だしな。それに湖沼はラクトと出会った場所でもあるし」


 なんだかんだで思い入れのある土地なのだ。

 ポッドの暴走で森の真ん中に落ちて、レティに出会って、色々あったもんだと少し回想する。


「それじゃあ瀑布に行きましょう。……瀑布ってなんでしたっけ?」

「おっきい滝の事だよ」

「ふむふむ。じゃあシャドウスケイル装備にぴったりですね!」


 ラクトの言葉に頷き、レティがぐっと拳を握る。

 シャドウスケイルは水に対する耐性が高く、水場での行動を助ける能力がある。

 瀑布というからには、水場であることは確実だろう。


「よし、じゃあ鎧魚の瀑布に行くか!」


 とんとん拍子に目的地が決まり、俺が机を叩く。

 レティ、ラクト、エイミーの三人もやる気十分。

 俺たちは中央制御区域の端末で〈ろ号特別任務;鎧魚の瀑布〉を受注して、意気揚々と東へ出発した。


 その十分後。


「オボッオボボボボッ!」

「れ、レッジさぁぁぁあああん!?」


 俺はゲームを始めて初の死に戻りを経験した。

Tips

◇ログアウト

 通常、フィールドなどの危険地域ではログアウトが制限されている。スサノオの町中などの安全地域内にてのみログアウトが可能。しかしその際にも30秒の猶予時間が設定されており、その間に一定以上の激しさで動いた場合はログアウトがキャンセルされる。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読み返して思ったが、「憶測5割、虚偽2割、誇張2割5分」で残りの5分はどこ行ったんだろ?真実かな? 最初に読んだときにも思った気もするが、久しぶりだと覚えてないもんだなぁ…
[気になる点] 11話 Tips ◇猛獣の森  スサノオの周辺を取り囲む〈始まりの草原〉の西方に広がる森。… >俺たちは中央制御区域の端末で〈ろ号特別任務;鎧魚の瀑布〉を受注して、意気揚々と東へ出発…
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