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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第1章【暁紅の侵攻】

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第63話「釣りの成果と解体の恩恵」

「うわ、レッジさんこんなところにいたんですか」


 小賢しい雑魚どもに悪戦苦闘していると、背中から声を掛けられた。

 振り向くとレティの赤い瞳と目が合う。

 彼女は狩りから帰ってきたばかりらしく、手にはファングハンマーを握っていた。


「帰ってきてたのか。連絡してくれれば戻ったのに」

「キャンプの機能は生きてたので近くには居るだろうと思いまして。……それより何してるんです?」


 彼女は俺の持つ釣り竿を怪訝な顔で眺め、首を傾げる。


「ふふふ、よくぞ聞いてくれた。これで今夜のメインディッシュを釣ろうと思ってな」


 メインディッシュならぬメインフィッシュ。

 なんてことを考えつつ、俺はインベントリに入れていた一匹の魚を取り出し、尾を掴んでレティに見せびらかした。


「おお、結構立派なのが釣れるんですね」


 それはおよそ三十センチほどもある川魚で、銀色の腹をうねらせて藻掻く。

 インベントリに入っている間どういう状態なのかは知らないが、こうして取り出してもしばらくは生きた状態なのだ。


「こいつは釣り餌12個は食べてるからな、さぞかし身が詰まってるだろうよ」

「ああ……。お疲れ様です」


 俺の言葉で察したらしく、彼女はうさ耳を畳んでいたわりの目を向けてくる。


「ありがとう。とりあえず三匹は釣れたから、みんなの分はあるぞ」


 俺が調理に失敗しなければ、の話だが。


「そうだ。ちょうどレティと同じタイミングでトーカさんたちも帰ってこられたんです。みんな合わせて30羽くらいの日向鳥がありますよ」

「また大量だな。分かった。とりあえずそっちから当たろう」


 釣りはあくまで彼女たちが帰ってくるまでの手慰み。

 俺はさっさと釣り竿を片付けて、キャンプの作業台へと戻った。


「レッジさん! 何をしていたんですか?」

「トーカ。裏手の沢で釣りをちょっとな。今夜は期待しててくれ」


 作業台の周りにはトーカとミカゲが立っていて、彼女たちのそばにはカルビかサーロインかハラミかが寄り添うように控えている。

 外見から名前が判別できない……。

 それぞれの機械牛の背には日向鳥が積み上げられていて、仕事量の膨大さに俺は思わず歩みを鈍らせた。


「また頑張ったな……」

「レティも、てっきりレティが一番狩ったと思ったんですけどね」


 全員10羽前後の日向鳥を狩猟したようだ。

 一応、日向鳥はレアポップの筈なんだが……。


「よしじゃあ捌くか」


 俺は簒奪者のナイフを取り出して腕を捲る。

 日向鳥の解体は、もはや手慣れたものである。


「ミカゲが欲しいのは日向鳥の銀翼だったよな?」


 ナイフを進めながら、側で見守るミカゲに確認する。

 彼はこくりと頷き何かを確認するように“鏡”を見た。


「……16個、必要」

「16個か。今いくつ持ってたかな」


 彼の要望する数は、わりと近かった気がする。

 手早く解体を終わらせ、インベントリに入っているアイテムを眺める。

 日向鳥の肉という食材アイテムが大量にあって、インベントリの殆どを占領している。

 他にも日向鳥の色羽根というアイテムもかなりの数だ。

 鳥の骨、鳥の羽根といういかにもレアリティの低いアイテムも多く、これは最悪捨ててもいいかもしれない。


「えっと、今14個あるな。今回で必要数は集まりそうだ」


 確認すると、十分今から捌く鳥から期待できる数で足りそうだった。

 そう言うとミカゲは覆面の隙間から見える目を細め、勢いよく頷いた。

 無口で物静かではあるが、目を見れば案外感情が豊かな少年じゃないか。


「それじゃあさっさと進めるから、三人は自由に過ごしててくれ」

「じゃあレティはレッジさん見てていいですか」

「なんでだよ」


 ぴっと手を挙げて進言するレティ。

 思わず突っ込むも、彼女は譲らない。


「レッジさんの解体作業、結構癖になるんですよね」

「どういうことだよ……」

「わ、わかりますっ」


 何故か目を輝かせて言うレティに呆れていると、突然横からトーカが同意する。


「トーカもか」

「はい。なんだか、工場見学みたいな」

「工場見学……」


 まあ殆ど流れ作業だから、言わんとしていることはなんとなく分からんでもない。

 でも彼女たちが言うほど面白いか? とも思う。


「僕も見てる」

「ミカゲまで」


 別に付き合わなくても良いんだぞ、と言っても三人は首を横に振る。

 まあいいかと俺が折れて、結局三人の視線の中で黙々と鳥を捌くこととなったのだった。

 ……微妙にやりづらい。


「よし、終わり。銀翼は……4つ出たから合計18個だな」

「ありがとう」


 ミカゲにトレードして、ぐりぐりと肩を回す。

 ドロップ率はだいたい13%くらいか? 

 普通に狩っているとどれくらい出るものなのかが分からないから、効率は知らないが。


「すごいですね。やはり〈解体〉スキルは今後必須級になりそうな気がします」

「そんなにか?」


 解体の結果を見て感激しているトーカに、いまいち実感が湧かず首を傾げる。

 彼女は頬を紅潮させ、俺の間近に迫ってきて言った。


「日向鳥の銀翼も幻影蝶の至極鱗粉も、ドロップ率は一桁パーセントです。こんなに沢山ドロップするのは衝撃的ですよ」

「そこまで言うか。なら今後はスキル持ちが増えてくれるといいな」

「絶対増えると思いますよ!」


 同志が増えるのは良いことだ。

 〈解体〉スキルはちょっとでも素材を集められればという貧乏根性で取ったスキルだが、塵も積もればなんとやらと言ったところか。


「もしよければ、掲示板にドロップアイテムの纏めを書き込んでくれませんか?」

「それくらいは別にいいぞ」


 トーカは嬉しそうに破顔して、ありがとうございますと謝意を述べる。

 俺としてもレアな素材の流通が増えるのは大歓迎だ。

 ネヴァみたいな生産者にも直接的にわかりやすい恩恵になるだろう。


「あの、レッジさん……」


 そんな時、レティが控えめに手を挙げて声をあげた。

「どうした?」


 振り向くと彼女は怪訝な顔をして、おずおずと口を開く。


「トリ肉が大量にあるのなら……魚を釣らなくてもよかったのでは?」

「……」


 もっともな指摘だった。

 いや、でも、腐るもんでもないし。

 それにキャンプで食べると言えばバーベキューかカレーか鮎の塩焼きって相場が決まっているし。


「と、トリ肉はスサノオに帰ってから調理しようと思ってな」

「なるほど、そうでしたか」

「ああ。トリ肉はやっぱり多少凝った料理にしたいからな」


 うん。

 これは我ながらいい判断だ。

 現在俺が持っている調味料はカレー用の各種スパイスと塩胡椒くらい。

 チキンカレーにリベンジという手もあるが、まあ二日連続はちょっとな。


「唐揚げとか、作れますかね?」


 レティが一転、わくわくと笑みを見せる。

 確かにトリ肉と言えば唐揚げか。


「大丈夫だろ。これだけあれば、山ほど作れるさ」


 インベントリの中を占有するトリ肉たちを一瞥していうと、彼女は小さく飛び跳ねる。

 唐揚げがどれくらいの難易度の料理かは知らないが、まあ今言って水を差すのも無粋というものだろう。


「レティ楽しみにしてますね!」

「わ、私も楽しみにしてていいでしょうか」

「おう。どうせなら今回の打ち上げってことにするか」


 そう言うとトーカとミカゲは顔を見合わせる。

 トーカは食の探求者を自称するだけあって、レティと同じように食べることはかなり好きらしい。

 仮想現実内だと好きなだけ食べても太らないとかも、彼女たちが健啖家になる理由の一端なのだろうか。


「もう日も暮れてきたな。篝火を点けるから、テントの中に入っててくれ」


 空を見上げると僅かにオレンジ色ににじみ始めていた。

 俺は三人をテントの中へと追い立て、周囲の篝火に火をつけていくのだった。

Tips

◇グラトニーフィッシュ

 清流に棲む大型の淡水魚。非常に食欲旺盛で、動くものはとりあえず食いつくため釣りの獲物としては初心者向け。銀色の細かい鱗が特徴で、ヒレは硬く尖っている。産卵期のメスは卵を抱えるため身が痩せるが、それ以外の時期やオスは通年むっちりと太り非常に脂の乗った美味しい魚としても知られている。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今更言っても仕方ないんですけど、どうしてドロップ率が既にわかっているのか。そこがわからない。 公式からドロップテーブル公開されてるんですかね。
[一言] 主人公は忘れていた 唐揚げの調理難易度以前にその鶏肉がレアエネミーからのドロップだということを...
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