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魔術世界の非魔術師  作者: まこと
ソリアの女王と剣聖の四黒姫
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リル ――闘気術と精霊――

「来たな。 少し歩くぞ」


 昨日言われたとおりに南門に行くとちゃんとアッシュが待っていた。そのまま2人で町の外へ出る。


 ある程度町から離れ、周囲に人がいないのを確認していよいよ授業の開始だ。


「そうだな……とりあえず足に魔力を込めてみろ」


 言われた通り足に魔力を込めてみる。意外と難しい。


「そのまま前に一歩踏み込む」


「りょーかい。 よっと…うわきゃあ!!?」


 踏み込もうと軽く左足を蹴ったら信じられないぐらい勢いがあって思わず転んでしまった。痛い……


「それがお前が教わりたがった力の基礎だ。 とんでもなくマイナーで知ってる人がほとんどいない身体強化の魔術だな。 魔術と言っても魔力を放出したりしないけど」


 身体強化!!いきなり身体能力が上がったから振り回されちゃったのか。難しそうだけど使いこなせれば凄い役に立つかも。


「けどこれ魔力の消費が激し過ぎない? 30秒も使ってないのに1割ぐらい減ったんだけど……」


「身体強化が廃れてる理由の1つだな。 コストパフォーマンスが非常に悪い。 俺は常時回復する分だけ身体強化に回しているが必要な時は追加でさらに強化してる。 とりあえず踏み込む瞬間だけとか使用する時間を一瞬にするよう心掛けるんだな。 後はひたすら練習して錬度を上げろ」


 確かにデメリットがないとこんなに知られてないってことは無いか。けど鍛えればアッシュみたいな力が手に入るんだから頑張らないと!!


 けど結局その日は魔力を無駄に消費してばっかりで終わってしまった……



*****



「はあ…… 私って才能ないのかな?」


 身体強化……【闘気術】って名付けることにした力を教わってから早1週間、まだまだ全然使いこなせていない。


 足に掛ければ思いっきり転び、眼に掛ければ見え過ぎでくらくらする。とても実戦では使えない。


 アッシュが傍で色々とアドバイスしてくれるけど一向に上手くならない私に嫌気がさしたのか少し離れたところで先程からずっと独り言を呟いている。


「……ほんと……いい…か………しかた……分かった……なら………頼……ありが…………」


 一体何を言ってるんだろう?漏れ聞こえる声から会話してるようにも聞こえるけど他に誰もいないし……


 そんな事を考えてるとアッシュがこっちに近付いてきた。


「リル、精霊と契約する気はないか?」


「………へ?」


 思わず目が点になる。精霊ってあの?


「契約できるかどうかはお前次第だが魔力は十分あるし他の資格(・・)も有りそうだし多分大丈夫だろ。 どうする?」


「そりゃあ契約できるならしたいけど……」


 精霊と契約するだけでその人はとんでもなく強くなれる。精霊は人より上手く魔術を使えるんだから当たり前だけど。


「なんでそこまで私を強くしようとしてくれるの?」


 見ず知らずの人間に近い私に何でここまで良くしてくれるんだろう?


「……俺にも妹がいる、いや、いた……かな? 今となっては生きてるかも分からないし再会できるかも分からない。 その妹がどことなくリリアに似ているんだ。 俺は妹を守ることも救いだす事も出来なかった。 だからリルにはリリアを守れるだけの力をやりたいって思ったんだ」


 まあ代替行為なんだろうけどと自嘲するアッシュ。そっか、妹さんが……


 けどこれだけ良くして貰って返せる物がない。その事が悔しい。


 ……そうだ、1つだけあった。


「分かった。 ありがと、アッシュ。 これはそのお礼ね」


 未完成もいいところの【闘気術】で一気にアッシュに近付き押し倒す。そのはずみにアッシュのフードが取れた。私と同じ、綺麗な銀髪だ。


「つっ、いきなり何すんむ!!?」


 倒された拍子に頭を打ち、文句を言ってくるアッシュの口を自分の口で塞ぐ。


 たっぷり1分近く経った後アッシュから離れる。アッシュの顔が赤い。多分私もそうだろうけど……


「私のファーストキス。 足りないだろうけど一応お礼ってことで」


「なっなっなっ……」


 口を魚の様にパクパクさせて呆然としてるアッシュ。あれ?アッシュってオッドアイだったんだ。オッドアイって確か……


 そんな事を思っているとどこからともなく笑い声が聞こえてきた。


「はあ~~おもしろい。 アッシュが唇奪われるなんて! やるね、リル!!」


 笑い声の主を探しきょろきょろ首を動かしているといきなり目の前に女の子が現れた。それも2人。


「えっえっ!? 何で私の名前?」


「だって今までずっと側にいたもの。 私はセラフィード、セラって呼んで。 風の上位精霊でアッシュの契約精霊よ。 でこっちはシルヴィア、水の中位精霊。 リルの契約精霊になる子ね」


 そういえば精霊って他の精霊と簡単に会えるんだっけ、人間と違って。


 アッシュが精霊云々言ってたのはこれがあるからか~~。


「えっと、私と契約してくれるの?」


「はい、あなたには十分契約者としての資格があります。 よろしくお願いしますね、マスター」


 そう言って私とシルヴィア――シルとの間で契約が結ばれた。これで一気に強くなった訳だけど。


「けど、やっぱり闘気術も使えるようにならないとね」


 もっともっと強くなってリリアを守れるようにならないと。それに……


 笑った事に怒ってセラちゃんと言い争いしてる男の子に助けてもらった借りを返せるようになりたいしね!!


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