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魔術世界の非魔術師  作者: まこと
ソリアの女王と剣聖の四黒姫
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リル ――拒否と妹――

更新遅くなってすみません。脇役に掛かりきりでした。

「ねえ、アッシュ。 アッシュの種族って何? 獣人?」


 街へと向かう道すがらそんな事を尋ねる。フードを被っているせいで種族が分からないのだ。


 ワイヴァーンを倒した時に見せた速度は異常だった。身体能力が特に高い獣人でも出せるか疑問な程だ。だからちょっと気になる。


「いや、俺はヒューマンだ。 リルはハイエルフか」


「うん。 けどヒューマンかあ…… どうやったらあんな速度出せるの?」


 ヒューマンにあんな速く動くなんてできないはず。つまりなにか仕掛けがある。もし私にも同じ事が出来るならより上に行く事が出来るかもしれない。


「悪いけど教えられない。 大事なアドバンテージの1つだからな」


 まあ当然の様に回答を拒否された。けどアッシュの言い方だと私にも覚えればできる行為の様に聞こえる。習得不可能ならそう言うだろうし。


(なら、何が何でも聞きださないと!! あの身体能力があれば早急に強くなるし!!)


 妹はまだ9歳。せめて妹が1人で生活できるようになるまで私は死ぬ訳にはいかない。そのためにも力が必要だ。


 最近伸び悩んでいた私にはアッシュの力がすごく魅力的に見えた。何としても手に入れたいぐらいに……


「ねえ、もしよかったらパーティー組まない? お互いソロだし成人もしていないから舐められるし。 私役に立つよ」


 とりあえずパーティー勧誘をする。パーティーを組んで一緒に行動していればあの力の正体が分かるかもしれない。幸い私はハイエルフで、魔術はお手の物なのだからあの力の正体だって掴めるはず。


「ワイヴァーンの群れに追われて死にそうだったのに? 足手まといはごめんだよ。 俺が持ち切れなかったワイヴァーンの素材は渡したんだしそれで我慢してくれ」


 けどアッシュはそう冷たく言い放つ。


 確かにあれだけの実力者なら私なんか足手まといかもしれない。貰ったワイヴァーンの素材を全て売ればそれなりの金額になるから強気に出るなんてできない。


 だけど、なんとしてもあの力を手に入れないといけないと一種の強迫観念に襲われた私はとんでもない事を言ってしまった。


「そんなこと言わずにさ。 アッシュが望むのなら…その……私のこと……好きにしていいから………」


 口に出した瞬間、後悔した。私たちエルフはヒューマンから見て容姿の整った者が多い。そのせいでギルド非加盟国の奴隷商人に襲われたことが何回もある。こんな事を言ってしまったら……


 けれどアッシュは私を見て、はあ…、と呆れたように首を振ると


「12の餓鬼に何言ってんだあんた? 馬鹿なのか? そこまでして強くなる必要無いだろ。見た感じ俺より少し年上ってところだし、その年でBランクなんだから充分だろ?」


 と馬鹿にしたように言ってくる。


 私より年下でAランクの子がそれを言うのかと思ったけど、さっきの失言の事もあって口を開けない。


「もうすぐ街だ。 ギルドに着いたらおさらばだな」


 アッシュが言うように街が視界に入る距離まで近づいている。結局そこから気まずい空気が流れたせいで話すことができず、私は彼から力の秘密を聞き出す事が出来なかった……



*****



「ただいま……」


「お帰り、お姉ちゃん。 ……? どうしたの、元気ないよ?」


「うん、ちょっと依頼で疲れちゃって……」


「大丈夫? あんまり無理しないでね」


 宿に戻った私を妹のリリアが出迎えてくれる。断られたショックが抜けきらないせいで心配させちゃったな。もっとしっかりしないと!!


 考えようによっては今日は良い日なんだし。ワイヴァーンの群れに襲われたけど死なずに済んでその素材が手に入って沢山お金が稼げたんだもの。


 よしっ!!と気合を入れ直してリリアの頭を撫でる。妹に心配されてばかりじゃお姉ちゃん失格だもんね。


 9歳のリリアにはまだダークエルフ特有の秀でた能力が何なのか分からない。できる範囲で少しずつ色んな事を試しているんだけど……


 せめてリリアが自分の才能がなんなのか分かるまでは守ってあげたい。村で唯一私をハイエルフの色眼鏡で見なかった大切な妹だもの。


「今日はいっぱい稼いできたから少し夕飯を豪華にしよっか? 何が食べたい?」


「ほんと!? え~~とじゃあねえ――」


 その後、リリアと他愛もない会話をしながら夕食を食べに行くことにした。その中で思いついた事がある。


(そうだ、明日朝早くギルドに行こう。そこで待ってればアッシュに会えるはず。そしてもう1度頼みこもう)


 そう決めて意気揚々とリリアと宿を出る。目指すは美味しいと評判になっているレストランだ。


 神ならぬ私たちは知らなかった。そこが誰の手によって経営されているかなんて……


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