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魔術世界の非魔術師  作者: まこと
ソリアの女王と剣聖の四黒姫
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リル ――剣聖と銀月の出会い――

 私とアッシュの出会いの前にエルフについて話した方が良いかな?


 ルーフェリア出身だとヒューマン以外の種族に対する知識があんまりないし。


 エルフはヒューマンと違って髪の色が3種類しかないの。金、銀、黒ね。


 そしてその髪の色によって呼び名が違うの。


 金が普通のエルフで大体8割強を占めているかな。一般的に皆が思い描くのはこの色だね。


 銀がハイエルフって呼ばれてて一般的なエルフよりも魔力や身体能力が高いの。そしてエルフから崇拝に近い目で見られるんだよね。私は此処に含まれるね。


 最後の黒がダークエルフって呼ばれていて魔力が少ない代わりに何かしらに秀でているの。そしてエルフからは不吉の象徴とされて迫害されてる。クーちゃんが此処に分類されるね。


 まあ崇拝や迫害なんてするのは森の奥に引き籠っているエルフだけで外に出て冒険者とかしている人たちの間には無いけどね。


 それと私が冒険者になった理由なんだけど妹がダークエルフなの。


 元々私は森の奥深くにあるエルフの集落に住んでいたんだけど私が優遇される中、妹が酷い目にあってるのを見ていられなくなって2人で森を飛び出したの。


 当時後ろ盾もなく、まだ幼かった私がお金を稼ぐには冒険者になるしかなかったんだ。


 なった時はまだ11歳だったっけ……


 それから3年経って伸び悩んでた頃当時12歳のアッシュと会ったんだ……



*****



「あ~~もう、ついてこないでよーー!!」


 当時の私はBランク冒険者で、中々Aランクに上がることができず思い悩んでいた。


 そのせいで判断力が鈍ったのか難易度高めの討伐依頼を受けてしまい、達成するのにすごい手間が掛かった。


 そして最悪な事に倒す直前に放った魔術の流れ弾がワイヴァーンの巣に飛んで行ってしまい、今現在ワイヴァーンの群れに追いかけられるはめになった。


 チラリと後ろを見ると1体のワイヴァーンが今にもブレスを吐きそうだった。


「ちょっ、まずい【アイスウォール】!!」


 慌てて氷の壁を生み出す魔術を使い、難を逃れる。けど危機的状況はまだまだ終わりそうもない。


(ああ、此処で死ぬのかな……)


 残されることになる妹の事が脳裏をよぎる。


 妹には戦闘の才能は無かった。蓄えはそれなりにできているけど帰る家も無い現状で妹が私抜きで暮らしていけるかと聞かれたら無理だと思う。


(なら、死ぬ訳にはいかない!!)


 折れかけた心を奮い立たせ、私は走り続ける。


 そのまま数分間牽制しつつ逃げ続けていると目の前に人影が。大きさから考えて子供だと思う。


 真っ黒なコートを着てその背には身長と不釣り合いな大剣が。


「ちょっと、そこの子! 逃げて――!!」


 思わず大声を出す。それでその子供が振り向いた。フードを被っているせいで顔は見えない。


「…………は?」


 その子が呆けたように間抜けな声を漏らす。まあ振り向いたら30体ぐらいのワイヴァーンに追いかけられてる女の子がいたら呆気にとられるよね。


「ったく!?セ……あ…トカゲ……叩…落…せ」


 その子が何かブツブツ言いながら手をかざすと後ろから何かが落下したような激しい物音が次々と起こる。


「えっ!!?」


 その轟音に思わず振り返ると私を追いかけてきた全てのワイヴァーンが地面に落ちていた。落下の衝撃で何体かは死に、苦しんでいる個体も多い。


 その光景に訳が分からず呆気に取られていると私の隣を1迅の黒い風が通り過ぎていった。


「はあっ!!」


 その風は墜ちた飛龍を次々と斬り裂き、3分と経たないうちに私に襲いかかっていた脅威はいなくなった。


(なんて強さなの……!?)


 私はその時目の前の子供に恐怖を抱いた。逃げることしかできなかった脅威が1人の子供の手によってあっという間に消え失せたのだから当たり前だ。


「さて、お姉さん何したかは知らないけど面倒事を起こさないでくれよ」


 まだ声変わりしていない幼い声だった。言葉使いから考えると男の子かな?


「ありがと、助かったよ。 私はリルカーナ、リルカーナ・ウェイウッド。 Bランクの冒険者よ。 あなたは?」


 心の中の恐怖を隠しながらお礼と挨拶を言う。助けてもらったのに怯えを見せる程礼儀知らずじゃない。


「俺はアッシュ、アッシュ・ウィンド。 Aランク冒険者だ。助かってよかったな」


 その言葉に驚く。私より年下なのにもうAランクだなんて!!


 けど、さっきの強さを見れば納得だ。ワイヴァーンは単独でB、群れだとA~AAに指定される魔物。それを容易く殲滅したのだから。


「まあとりあえず俺は街まで行くんだけどリルカーナさんはどうする? なんなら送ってくけど?」


「それじゃあご一緒しようかな。 依頼はもう達成してるし。 それと私の事はリルでいいよ」


 そう言って微笑む。笑顔は大事だ。敵意を向けていないアピールに有効だからね。


 アッシュの強さに怖くはなったけれど、こっちに敵意は無いし街までの安全度が高くなる上に見返りを求めていない以上受けた方が提案を得策だ。


「了解。 それじゃあリル、このトカゲの素材を剥ぎ取ってから街に行くとしよう」


 そう言ってワイヴァーンの解体に取り掛かるアッシュ。手際が良い。


 その様子を見て私も手伝おうと歩み寄る。


 これが私とアッシュの初めての出会いだった……


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