ソリアへの到着
更新遅くなって申し訳ありません。
2章は主に過去編?です。
追伸:新作始めました。よかったらご一読ください。
カーラルタを出発してから半月、アッシュたちはソリア聖王国との関所にいた。
「さて、ようやくソリアに着いたな」
思わず溜息をつくアッシュ。
道中、補給やら魔物退治やらで予想より着くのに時間がかかってしまった。
「カーラルタ出た時にミアには連絡したんだろ? きっと首を長くして待ってるぜ?」
「連絡ってどうやって?」
「精霊は力の一部を結晶化できるんだけどそれを持っている相手に声を届けられるんだ。 俺達剣聖の四黒姫は全員結晶を持ってる。 つまりセラ姉は何時でも俺たちに話しかけることができるんだ。 話し返すことはできないしこっちから連絡する方法も無いけどな」
カンナが自分の言葉に疑問を抱いたアニスの質問に答える。
他にも精霊の契約者には得られる特典が多い。無論デメリットも存在するが……
関所をくぐると一人の獣人が近寄って来る。
背が低く黒髪に猫耳を生やした少女は近付くと、
「……にいに、迎えに来た……」
とアッシュに向け、声をかけた。起伏の無い声だが、どことなくうれしそうな雰囲気を纏っている。
「ミアちゃん久しぶり~!! 元気だった?」
「ん、元気…… 問題無い……」
アッシュが返事をするより先にリルが抱きつきテンションを上げるが淡々と答えるミア。
そんな様子にカンナは苦笑し、亡命組は目を白黒させる。
「リル、盛り上がるのはいいが此処だと邪魔になる。 それに早くケイトに会いたい。 続きは城に着いてからにしてくれ……」
そんな雰囲気の中でどこか疲れたようにアッシュがリルを止めに入り進むことを促す。
今彼らがいる場所は関所の出口付近で、確かに通行の邪魔になりかねない。
えへへと笑いながら恥ずかしそうに謝罪するリルに溜息をつき、アッシュは馬車を進ませた……
*****
「……初めまして…私はミア・ウィンド……剣聖の四黒姫が第2位………よろしく……」
「ミアは猫型の獣人で俺達4人の中で1番闘気術の扱いがうまいんだ。 元々ヒューマンより身体能力が高い獣人ってのも関係あるんだけどな」
馬車の中で改めて自己紹介が行われ、ミアで一通り終わる。
「獣人だとどう違うんですか? 後なんで兄さんと同じ家名なんですか?」
「………闘気術は…足し算じゃ無く……掛け算………元が高い方が…効果も高い………」
「魔力の消費量とかでも変わって来るんだけどやっぱり元の能力が高い方が強化倍率が良いんだとね~~」
ミアの説明にリルが補足を入れる。
「それと家名の事だけど弟子になると名乗ることが許されるんだ。 弟子は家族って扱いで。 ミアは家名を持ってないからウィンドの姓を普段から使ってるんだ。 俺も基本はカンナ・クサナギだけど場合によってはカンナ・ウィンドって名乗ることもあるぜ」
「ふ~ん、自分の家名を名乗る許可を与えるんだ…… 元貴族の私からしたら考えられないわね。 下手したら大きな傷がついちゃうんだし……」
「うん。 でもSランク冒険者の家名って下手な貴族以上に意味があるから使いようによっては絶対の守護にもなるし災厄を招くこともある…… だから私たちSランク冒険者はよほど気に行ったり信用した人で無いと弟子を取らないんだ。 もしかしたら貴族が結婚相手決めるより審査が厳しいかも?」
「確かに兄さんも4人しか弟子を取っていませんね。 リルさんは何人取っているんですか?」
「私は12人。 皆Aランク以上の実力者だよ~」
「それでも総力戦したら俺達剣聖の四黒姫には勝てないけどな」
「カルノワは少数精鋭すぎるんだよ~~!! 4人揃えばアッシュにだって勝てるじゃない!!」
カンナの茶化した物言いにリルが噛みつくが亡命組は今の発言に驚き、それどころではない。
「えっ!? ちょ、ちょっと待って。 勝てるの? アッシュに!?」
「うん………私たちカルノワは……集団戦が得意…。 4対1なら……にいににも………負けない…………」
あっさりと肯定され呆然とする。
マナイーターやガーベルグとの戦いに加えこれまでの道中何度もアッシュの戦いを見てきた。
その中でレナ達が思ったのはアッシュの力が尋常ではないということだ。そんなアッシュに4対1とはいえ勝てるとは……
「すごいですね……」
レナが思わず口からこぼした言葉。それが亡命組の総意だった……
*****
関所からさらに3日、一同はようやくソリア聖王国首都グランソリアに到着した。
「それじゃあ城に行くぞ。 ケイトに挨拶しないとな」
アッシュが促すまま城に向かう。
以前ジョゼフからソリアの現女王を救ったという話を聞いていたのでコネがあるのだろうと納得する亡命組。
この情報を聞いていなければ顔パスで城門をくぐるアッシュにパニックになったかもしれない。
「よく来たわねアッシュ!! そっちの新顔さんは?」
「やっほ~お兄ちゃん!! いい素材無い~~?」
謁見の間らしき部屋に通された彼らを出迎えたのは20代半ばぐらいの勝気そうな美女と黒髪の幼女(?)だった。
「ああ、ケイト。 こっちはルーフェリアから亡命してきたやつらで俺の妹も混じってる。 クーにはほら、名付きの龍の素材がある」
ケイトと呼ばれた女性に軽い紹介をしながらガーベルグの素材が入った袋をクーに投げるアッシュ。
「ええっと、兄さん。 こちらの方たちは?」
「私はアルケイティア・セイクッド・ソリア。 この国の女王よ。 ケイトでいいから」
「私は剣聖の四黒姫第4位、クー・クール・ウィンドだよ~ 種族はエルフで得意なのは魔導具作成!!」
「ちなみにクーはこんななりで俺と同い年だ……」
クーの自己紹介にカンナが補足する。
ちなみにカンナは現在16歳であり、クーの容姿は10代になったばかりかといった感じだ。
この事実は女王がやけに軽いことと合わせ、亡命組を絶句させるには十分だった。
その様子を見て忍び笑いをするカルノワとSランク冒険者の2人。
「ケイト、悪いんだが亡命組の面倒を見てくれないか? とりあえず冒険者登録はしているがもっとちゃんとした生活基盤が欲しいからな」
「分かった、任せときなさい!! そんなことで少しでも借りが返せるんなら御の字よ」
未だにショックから回復しない亡命組を放置して話を進めることにしたアッシュとケイト。
話はあれよあれよという間に進み、亡命組が気づいた時には一先ず全員客間に通されるながれになっていた。
ソリア王城にある客間の1つに亡命組、リル、カンナ、ミアが集まっている。
亡命組とリル用に3部屋用意されたが夕食まで暇なので一度集まることにしたのだ。
ちなみにアッシュと剣聖の四黒姫の面々は城の中にそれぞれ私室を持っており、アッシュは夕食まで自室で休むらしく、クーはアッシュが渡した素材を持って自分の研究室へと走って行った。
カンナとミアがいるのはアッシュからお目付け役を頼まれたからだ。
「それで夕食までどうする? まだ結構時間あるけど?」
リルの言葉にレナが反応する。
「それでしたら皆さんの兄さんとの出会いを聞かせてもらえませんか? ビックリするほど兄さんを信頼しているから気になっていたんです」
城までの道のりで3人のアッシュへの信頼がかなりのレベルにあることは分かっている。
妹としてはどうしてそうなったのかなんとなく気になる。
「ん~~、別に話してもいいけど順番はどうする? 出会った順だと私、ミアちゃん、カンナちゃんになるよ?」
「それよりもハードからとソフトからどっちがいいって聞いた方が良いんじゃないか? ちなみにハード順だとミア、俺、リル姉の順だな」
「ハード順でお願いするわ。 夕食間近に重い話なんて聞きたくないもの」
結局アニスの意見が通り、ミア、カンナ、リルの順に話すことが決定した。
そしてミアが口を開く……




