森林の悲劇
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「くっ!?」
いきなり突っ込んできた黒龍をレナたちは辛うじてかわすことに成功した。
そのまま後ろに下がり、距離を取ったレナはその姿をよく観察する。
片目、片腕が無く、全身に切り傷。はっきり言って満身創痍だ。
しかし残った片目は捕食者のそれであり、勝つどころか逃げることもままならないと思わせる圧力を感じる。
「グヲォォォォォッ!!」
叫び声と共に左前脚を横薙ぎに振るう黒龍。狙われたのはジョシュアだ。
その一撃をしゃがみこむことでなんとか回避したジョシュアはルーフェリアから持ってきた魔導具を取りだす。
目立つことを避けるために使用を禁止していたが、魔導具を使う以外に勝ち目はない。
アンクも同様に判断を下し、魔導具を構える。
右手に魔素剣、左手に魔銃をそれぞれ構え、銃を乱射しながら2人は接近する。
残りの4人も魔術で援護射撃をするが、黒龍に効いている様子はない。
「うおおおおっ!」
ジョシュアの陽動によって、爪牙を辛うじて掻い潜ったアンクが魔素剣で斬りかかる。
だが、
「ガハッ!?」
鱗1枚斬ることも、焦げ跡をつけることもできず、逆に反撃で体当たりを喰らい、吹き飛ばされる。
魔素剣は高密度の魔素によって刀身を生み出し、それによる高エネルギーで焼き切る武器である。
一方でガーベルグの鱗はとてつもない硬度を誇るとともに、魔術への耐性が極めて高い。
それこそがリルが仕留めきれなかった原因であり、Sランクでも全力の8割以上で無いとダメージを与えられないのだからその防御力は凄まじいと言える。
そんな防御力を最高性能のものとはいえ魔素剣のような個人で運用できる魔導具が貫けるはずもなく、それが傷1つ付けられなかった原因である。
当然、援護の魔術も一切ダメージを与えていない。
(勝てない、殺される……)
そんな考えが全員の胸に広がる。
「レナ様、アニス様お逃げください! 私たちが時間を稼ぎますので早く!!」
焦ったようにカーラが叫ぶ。
しかし目の前の龍が見逃すとは思えない。
背中を向けた瞬間殺れる。そんな確信がある。
それに……
「私たちだけ逃げるなんてできない……」
自分たちだけが生き残ることをどうしても心が拒否する。
アニスも同様で、逃げようとしない。
だが、そんなやり取りが隙となり、容赦なく黒龍の爪が振るわれる。狙いはレナだ。
「あっ!?」
とても避けられるタイミングではない。
爪がレナを斬り裂くその瞬間―――
「そんな……」
カーラに突き飛ばされ―――
レナの代わりに爪に斬り裂かれ―――
「カーラ!!!」
鮮血が舞った……




