鍛冶師の四黒姫
「此処みたいね……」
ギルドで依頼を受けた私たちは町はずれにある工房の前にいました。
アッシュさんから昨日受け取った地図に書かれた場所なのですが、特に看板なども出ていません。
「ごめんくださーい」
恐る恐る入ってみるとそこには一人の女性がいました。私より少し年上でしょうか?
「いらっしゃい。 あんたらがアッシュ兄が言ってた連中かい? 俺はカンナ・クサナギ。 『剣聖の四黒姫』の1人だ。 よろしく!」
とその女性が挨拶してきました。こちらの自己紹介も一通り終わった後、アニスが質問します。
「ところで『剣聖の四黒姫』って何? 二つ名ってやつなの?」
「ん、ああ。 アッシュ兄の弟子につけられる称号だよ。 俺を含めて全部で4人。 まあ、アッシュ兄に言わせれば弟子である前に家族だし、俺たち自身もそんな心境だな。 全員アッシュ兄に人生救われてるし」
「四黒姫ってことはもしかして……」
「ああ、全員女性。 それで黒髪。 ついでに言うとアッシュ兄より年下」
アニスたちがその言葉に変な表情になります。私も似たような表情になっているでしょう。
それにカンナさんが苦笑し、
「別にアッシュ兄は女たらしでもロリコンでもないよ。 傍から見るとハーレム築いてる様に感じるかもしれないけど、俺達からすれば頼りになる兄貴って感じだ。 そんなことより……」
と話を区切ります。
「あんたらに武器を渡すようアッシュ兄から言われてんだ。 得意な武器を言ってきな」
「えっ!? 別にいいっすよ、魔導具あるし」
「魔導具なんて使ったら目立ってしょうがねぇぞ? 少なくともB+ランク以上じゃないと買えないような代物だからな」
アンクの遠慮にカンナさんが的確に突っ込み、そういうことならと皆貰うことにしました。
「俺は剣だ」
「同じく」
「私とカーラは短剣ですね。 護身術ぐらいのレベルでしか使えませんが……」
「特にこれと言って使える武器はありません」
「私もレナと同じ」
「そうかい、ちょっと待ってな」
そう言ってカンナさんが奥に引っ込んでから数分後……
戻ってきたカンナさんは武器を抱えていました。
「とりあえずこの剣はお兄さん方に。 こっちの短剣はメイドさん?2人に。 で、あんたらにはこれだ」
そう言って渡された武器は素人目から見ても素晴らしい一品だということが分かるものでした。特に私とアニスが受け取った小太刀からは魔力を感じます。
「レナとアニスに渡した武器には精霊鉱が使われてる。 持ってるだけで魔術の威力や魔力の効率が上がるだろうさ」
「ありがとうございます。 大事に使わせてもらいます」
お礼を述べると、おう!という元気な返事が返ってきました。
「まあここら辺にはそこまで強い魔物はいないが気をつけてな。 油断してると痛い目見るし」
忠告に感謝しつつお礼を述べ、私たちは工房を後にしました。
いよいよ依頼開始です。素晴らしい武器を手に入れて浮かれているのでしょうか? 私たちは軽い足取りでバルダ山へと歩き始めました……




