俺の人生の転機。7ページ
果たして、橘さんの暴走状態は、いつ解けたのだろうか。全くわからない。瞬きの一瞬か、意識が他に向いた一瞬か、とにかく『気が付いたら』橘さんは変わっていた。
「……………ほっふぇ」
「え?あ、あぁ、ゴメン」
俺は慌てて橘さんの頬から手を離す。橘さんは、何事も無かった様に立ち上がると、スカートを手でポンポンとはたきやや俯いて、
「えっと…さっきまで…私…」
と、消え入りそうな声で、呟く様にボソボソと喋る。彼女が何を考えているのか俺には解らないが、悪い事をしてしまった気になる。
「そう。優香は、さっきまであの状態だったよ」
俯いてしまった橘さんに声を掛けたのは、扉の所にいた白羽だった。ゆっくりと保健室に入りながら、白羽は橘さんに近づいていく。
俺は、左手に走る痛みをこらえながら、ゆっくりと立ち上がって二人を見る。
「じゃあ……私また……」
「優香。周り見てみて。優香ががあの状態になって暴れたっていうのに、何も壊れてないよ?朝道君が、どうしてなのかは分からないけど、優香を止めたの」
とても優しい口調で、子供をあやす様に橘さんに話していく白羽。その後、俺の方を向いて、
「朝道君。お守りって訳じゃないけど…この子と仲良くしてくれる?」
と言って来た。
なんだよ。さっきは、お守りをしてくれって言っていたのに、今度は仲良くして欲しいって。はっきり言ってしまえばいいのに。
「いや、俺からお願いする。橘さん。白羽。これから宜しく」
そう言いながら俺は右手を二人に向けて差し出す。白羽はすぐに笑顔になって、「宜しく」と手を握って来たが、橘さんは俺の事を不安そうな目で見つめている。
「橘さん。カラオケ行ったり買い物したり、色々と、楽しい事しようぜ」
俺はそんな橘さんに、笑って手を差し出した。
「で、でも……」
やっぱり、暴走状態の事で気が引けるのだろうか?橘さんは、なかなか手を出さない。しかし、俺が差し出した手をチラチラ見ている所、どうしようか迷っている様だ。
そして、しばらくすると、ゆっくり、ゆっくりと手を出して、俺の差し出したてを握って来た。
「宜しくな」
笑顔で俺がそう言うと、橘さんは僅かに微笑んで、
「こちらこそ」
と、少し小さい声で返した。
これでプロローグ的な物は終了です。物語の始まりはとっとと駆け足でサクサク進んでしまう自分としては、このプロローグ的な物に7ページ書けたのはびっくりです。
でも読み返して思います。急展開だ。と。
さぁて、次回は
変わる理由を、
お楽しみに!




