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豹変少女  作者: 石本公也
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彼女の豹変への対策。3ページ

早速、お弁当を持って、美味しそうな卵焼きを食べたい所だが、俺の左腕は見事にギブスで固定されている。別に指は動かせるのだが、肘が動かないのでほとんど意味がない。そして、右手だけで、そして箸でこの弁当を平らげるのは無理がある。おかずはまだしも、ご飯は無理だ。せめてスプーンとかにしてくれれば良かったんだけどな。

そう思いつつも、俺は卵焼きに箸を伸ばした。良い感じに焼け目が付いた卵焼き。口に含めば、軽い塩味と、ゆっくり卵を加熱した時の甘さが広がった。やばい、美味い。

「所で、木陰君を読んだ理由なんだけどね」

俺がご飯を食べようと、少しばかり苦戦していると、白羽が話しかけて来た。ご飯を何とか一口サイズに箸で掴めた俺は、目線だけで「何だ?」と続きを促す。

「木陰君、二回暴走状態の優香を止めたでしょ?その時、どうやって止めたか覚えてる?」

真剣な眼つきで、俺に訪ねて来る白羽。その顔は、嘘でも何か答えたくなってしまう。

「わからない。一回目は気絶していたし、二回目なんか頬つねっただけだ」

再びご飯を一口サイズに分ける事に苦戦しながら、俺は答えた。昨日、橘さんが元に戻った理由も、暴走状態になった理由も、俺の中では謎だ。

「そっか……」

白羽は、静かに溜息をつく。そして、

「まぁ、別に期待してなかったんだけれど」

と、微笑んだ。


「なあ 、昨日言ってた負の感情。これって、ストレスみたいなものだろう?」

ふと、俺は二人に、もう食べる事を諦めて弁当を床に置きながら問い掛けた。二人は、キョトンとした表情で、顔を上げた。そのあと、同時に顔を見合わせる。

「ゆ、優香。彼はそう言っているけど、実際そうなの?」

白羽は、橘さんに確認する様に、ゆっくりと問い掛けた。

「わ、私だってそんな事よく分からないよ。あの状態になったって感覚も、いつも曖昧だし……」

話が自分に振られるとは思ってなかった様で、橘さんはうろたえた様子で声を出す。ただ、声が段々と小さくなってしまったが。

「で、朝道君。その…負の感情をストレスみたいに考えたとすると、どんな事があるの?」

黙ってしまった橘さんをチラリと気に掛ける様に見たあと、白羽は俺に、疑問をぶつけて来た。俺は別に大した考えじゃ無いんだが……と前置きして、二人に言った。

「いや、ストレスみたいな物だとしたら、気分転換って言うかリフレッシュって言うか……なんかそう言う風な事して、気分を落ち着かせればいいんじゃないかなって」

人の感情なんて一喜一憂。ちょっとした事で変わるんだ。それに、ストレスを溜め込むと身体にも、心にも影響が出るらしいし、精神的に落ち着いていれば、橘さんも暴走状態になる回数が減るかもしれない。

そう思って言った俺の言葉に、二人は顔を見合わせた。

「今まで、恐怖とか怒りとか、そんな感情的に考えすぎて、優香の暴走状態をまともに考えていなかったのかもしれない」

白羽は、嬉しいのか悔しいのか、とにかくじれったそうに言葉を発していく。

一方、橘さんは俺の方を見て、

「なんだか凄いね、朝道君。なんだか、お礼しないと悪いな……あっお弁当!朝道君は左腕折れてるから、お弁当食べさせてあげる」

と早口に言った。喋ったあと橘さんは、俺の食べかけの弁当と箸を手に取り、一口サイズに分けたご飯を箸で摘まむと、ゆっくりと俺の方に差し出した。

「はい」

一瞬、俺の思考は固まる。さっきの発言は、斬新な事を言った訳でも、関心する様なセリフを言った訳でも無い。なのに、いきなりのこの状況、シチュエーションだ。

「………………」

俺は黙ったまま口を開く。そのままご飯が俺の口に運ばれようとした時だった。


「木陰!お前何時になったら戻って来るんだよ!もうすぐ昼休み終わるだろうがっ!」


屋上の扉が開け放たれて、犬飼 健がやって来た。

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