コラム:1948年の資源状況
第三次大戦開戦時の主な資源地帯(というか、ぶっちゃけ油田)は、おおむね以下のとおりになります。
なお、右側に書かれた「資源ユニット×○○」というのはゲームで使う数字で、毎ターン該当ヘックスに湧き出てくる資源ユニット(×5を戦略都市=工業中心地で消費すれば兵站ユニット×1に化ける)の数です。
ハルビン(MAP外):資源ユニット×30
オハ(MAP外):資源ユニット×5
シンガポール:資源ユニット×25
ブルネイ:資源ユニット×10
バリクパパン:資源ユニット×15
キルクーク:資源ユニット×10
バスラ:資源ユニット×40
クウェート:資源ユニット×20
バクー:資源ユニット×150
プロエシュチ(MAP外):資源ユニット×35
ブダペスト(MAP外):資源ユニット×5
※以下ヘックス未定
コロンビア(MAP外):資源ユニット×15
アルゼンチン(MAP外):資源ユニット×15
メキシコ(MAP外):資源ユニット×30
ベネズエラ(MAP外):資源ユニット×130
テキサス(MAP外):資源ユニット×500
ケンタッキー(MAP外):資源ユニット×15
ニューヨーク(MAP外):資源ユニット×15
ウエストヴァージニア(MAP外):資源ユニット×15
オハイオ(MAP外):資源ユニット×15
ペンシルバニア(MAP外):資源ユニット×40
カリフォルニア(MAP外):資源ユニット×300
これらをゲーム内の勢力圏で纏めると
・日本陣営
ハルビン(MAP外):資源ユニット×30
オハ(MAP外):資源ユニット×5
シンガポール:資源ユニット×25
ブルネイ:資源ユニット×10
バリクパパン:資源ユニット×15
合計:85
・ドイツ陣営
キルクーク:資源ユニット×10
バスラ:資源ユニット×40
クウェート:資源ユニット×20
バクー:資源ユニット×150
プロエシュチ(MAP外):資源ユニット×35
ブダペスト(MAP外):資源ユニット×5
合計:260
・アメリカ連合国
テキサス(MAP外):資源ユニット×500
合計:500
・アメリカ合衆国
ケンタッキー(MAP外):資源ユニット×15
ニューヨーク(MAP外):資源ユニット×15
ウエストヴァージニア(MAP外):資源ユニット×15
オハイオ(MAP外):資源ユニット×15
ペンシルバニア(MAP外):資源ユニット×40
カリフォルニア(MAP外):資源ユニット×300
合計:400
・中立国
コロンビア(MAP外):資源ユニット×15
アルゼンチン(MAP外):資源ユニット×15
メキシコ(MAP外):資源ユニット×30
ベネズエラ(MAP外):資源ユニット×130
合計:190
日本陣営の(石油資源面での)劣勢は、数字の上でも明らかです。
ただし、ドイツ陣営の資源ユニットは鉄道輸送がメインなので、コスト面で2~4割ほど差し引いて考える必要があります(ルールでは、資源ユニット×5を戦略移動=鉄道輸送させるごとに資源ユニット×1を消費。兵站ユニット×1は資源ユニット×5として扱います。船舶輸送の場合、資源ユニットの消費はありません)。
もしナチス政権がモスクワやツァリツィン(旧スターリングラード)などソ連時代の戦略都市を依然として活用していたなら資源ユニットのバクーからの輸送コストは半分~三分の一になる(1ターンの戦略移動距離は20ヘックス=約2000キロを予定してます。輸送船だと1フェイズで2ヘックス。1ターンは6フェイズなので、合計して約1200キロ)のですが、それを許すヒトラーではないでしょう。
また、キルクーク、バスラ、クウェートが算出する合計70の資源ユニットも、合衆国や南部連合など中立国(と、その背後に隠れたイギリス・オランダ)に籍を置く国際石油資本が食い込んでるので、ドイツ陣営が好きに使えるわけではありません。
なんと言っても、現地にある産油施設や製油施設は「彼ら」のものなのですから。
いかにナチス政権が対外的に強硬であっても、それらの施設を国有化などの手段で一方的に接収するだけの度胸はないでしょう。
下手をすれば、合衆国&南部連合の双方と戦争になりかねません。
したがって上記3箇所から産出する資源ユニットは原則として国際石油資本の管理下となり、ドイツ陣営だけでなく中華民国のような中立国や敵対する日本陣営にも、正規のルートを用いて「輸出」されることになります。
この場合、史実の合衆国が定めた中立法に似たルールが用いられる、とデザイナーは考えています。
要するに「どっちにも売ってやるが自国の船/輸送車両で買い付けに来い。あと支払いは現金でよろしく」ってアレですね。
たとえラシッド=アリのイラク政府(おそらく「政府」としては機能していないでしょうが……)が支配下の港湾に敵対勢力=日本陣営の寄航を許さなかったとしても、日本陣営の船舶は船籍のみを中立国のそれとすることで規制のすり抜けに成功するでしょう。
なお、ゲームにおいてこれら中東石油は、本国に輸送して兵站ユニットに変換するより、どちらの陣営でも海軍艦艇の燃料として使われることが多くなると思います。
特にアデン、ソコトラを根拠地とするドイツ海軍やジブチを根拠地とするイタリア海軍が、その恩恵を大きく受けるのではないでしょうか。
もっともいざ開戦となった場合、日本陣営が中東石油を獲得するためにはるばる船舶(輸送船&護衛艦)を派遣するだけの余裕があるとも思えません。
ほぼ確実に、強大なドイツ東方艦隊と潜水艦隊の歓迎を受けるからです(ある意味、それこそがドイツ東方艦隊の存在意義とも言えます)。
当然、無制限潜水艦戦を前にしては上記のような船籍変更の小細工など通用するはずもありませんし、名目上の船主である中立国も「自国の船舶」に対する損害を「見て見ぬ振り」する可能性が高いと思われます。
実質的な被害を受けているわけでもない(船も船員も所詮は他国のものなので……)のに他国の戦争になんかに巻き込まれたくない、が本音でしょうしね。
こんな環境における海上保険がいったいどんな感じになっているのかはなかなか興味深いところですが、さすがにそこまでルール化するつもりはありません。
結果として、日本陣営(日本帝国+自由イギリス)は中東から得られたはずの石油資源を中東以外のどこかから補填する必要に迫られます。
それは当然のことながら、合衆国と南部連合とになるでしょう。
史実と異なり大油田であるテキサスを南部連合に奪われた形のアメリカ合衆国は、カリフォルニア産の石油を日本帝国やオーストラリアなどの自由イギリス系コモンウェルス、および中華民国あたりに輸出しつつ、一方で中南米産の石油を輸入する体制を取ります。
パナマ運河が存在しない本作の世界線において、カリフォルニア産の石油を鉄道輸送で東海岸に運ぶより、ベネズエラ産の石油を海上輸送したほうが安上がるからです。
戦略的に見ても、そうすることで日本陣営や中南米諸国との経済関係を繋ぎつつ、ひいてはドイツ陣営や南部連合による両者への影響力浸透(日本陣営に対してのそれは確実に杞憂と言えるレベルですが、第一次大戦前の図上演習を見る限り、合衆国海軍は日独+南部連合海軍による東西からの挟撃を結構真剣に恐れるのではと考えます)を妨げる効果も期待できます。
そして、そうした合衆国の態度を面白く感じないのが、彼らの宿敵であるアメリカ連合国、つまり南部連合です。
第二次大戦によるイギリスの敗北は、彼らの戦略環境を激変させました。
最大貿易相手国であったイギリスが、正統政府と自由イギリスとに分かれてしまったからです。
強力な後ろ盾を失い単独で合衆国と対峙する現状に恐怖した連合国としては、どうしてもイギリスに代わる列強、つまり欧州を制したナチスドイツに接近する必要が出てきます。
パナマ運河がない以上、南部連合にとりアジア太平洋方面との貿易はいささか効率が悪すぎます。
だとすれば、ある程度ナチスドイツにすり寄りつつイギリス正統政府への輸出を継続しようとするのは、経済的な面でも南部連合の理に適います。
もちろん、だからといって自由イギリスとの関係悪化を望むわけでもありません。
したがって第二次大戦後の南部連合は、ブリテン島のイギリス正統政府への輸出とカナダの自由イギリス政府への輸出の双方を同時に行うことになると考えます。
ふたつの陣営を両天秤に掛けた形となって体裁自体は非常に悪いのですが、事実上、第二次大戦を継続しているような両陣営は「不愉快であるが、ひとまず黙認」という立場を取らざるを得ないでしょう。
自国の勢力圏内である程度の産油量を確保できているドイツ陣営はともかく、東部工業地帯を維持したいカナダにとって、南部連合からの石油輸入は死活問題に等しいからです。
東海岸の工業地帯をベネズエラその他の中南米産石油で支えている合衆国が、それまで「宿敵の友好国」だったコモンウェルス相手に易々と自国の石油を売ってくれるとも思えません。
実際、アメリカ第一主義委員会の誕生が象徴するように史実の合衆国世論では親ナチ・反ユダヤの主張が根強く、本作のように英仏&南部連合と感情的なしこりが消せない状況に合っては、そうした主張が強まることすらあれ、弱まることはなかったと思われます。
もちろん、ホワイトハウスの政治家たちは「合衆国の国益」を守るために日本陣営=自由イギリスを「支援する」のもやぶさかではなかったでしょうが、民主主義国家の建前上、世論を無視することもまた不可能です。
しかしながら、宿敵である南部連合がヨーロッパを制したナチスドイツ(と、親独感情の強いラテンアメリカ諸国)に接近を企てている以上、ドイツと敵対する自由イギリスの窮状を黙って見過ごすことはできません。
ナチスドイツが自由イギリスと日本を抑えて勢力を増せば、それは南部連合とラテンアメリカを通じて合衆国の安全を揺るがすに違いないからです。
なので合衆国政府は、有権者の関心が薄い上に自国からも遠いアジア太平洋方面に向けての「輸出」を増すことで、間接的に自由イギリスを支援する姿勢を取ります。
形としてはどうあれ、アジアへの経済進出は合衆国の「悲願」でもありますし、新しい市場を開拓できる民間企業も表立って反対はしないでしょう。
先に述べた中東原油の「輸出」に関しても、そうした戦略の一環だと考えてください。
当然ながら、満州油田の新規開発(史実の勝利油田でしょうか)にも、一枚以上、合衆国企業が噛むことになるでしょう。
できることなら大陸市場を独占したいと考えていた日本陣営も、最優先であるドイツとの戦争に勝ち抜くためなら、合衆国に相応の利権を譲り渡す選択を受け入れたはずです。
一方、合衆国と相対する南部連合としては、自国のドイツへの傾倒(建前としては「イギリス正統政府」との貿易ですが)が彼らと日本帝国との貿易拡大=親密化を招いている状況を憂慮しつつ、それに対抗する手段をカナダへの自国産石油の輸出と中東石油の日本陣営への輸出以外に持ち合わせていないのが現実でした。
少なくとも、アジア太平洋方面での合衆国の影響力拡大には、まったくもって「打つ手なし」が本音だったと思われます。
ところがです。
そこまでして選択肢に加えたドイツ陣営への接近ですが、こと経済面に関して言えば、南部連合にとってあまり旨味はありませんでした。
「イギリス正統政府」への輸出は、安全な北米大陸沿岸部を航行できるカナダ向け船舶と違い、公海上で自由イギリスの潜水艦や水上艦艇による襲撃を受ける可能性があるからです。
そうした通商破壊戦に対応して護送船団を編成すれば船舶の運行効率が悪くなって自国の船主たち(=民間企業)がいい顔をしませんし、そもそも有力な護衛を付けた船団は運行コストがよくありません。
さらに言うなら、ドイツ海軍は効果的な船団護衛を行える数の航洋護衛艦を保有していません。
もちろん、それは南部連合にしたって同様です。
たとえ自由イギリス海軍との遭遇機会が無視できる範囲に収まろうとも、矢面に立つ自国の船主たちは(主に心理面から)欧州との定期航路再開設に積極的とはならないでしょう。
彼らにとって大事なのは徹頭徹尾「金儲け」であり、国家の存亡などはそこに付随する「おまけ」に過ぎないのですから。
儲け自体はカナダやラテンアメリカとの交易で十分得られている。
なんでそこまでのリスク背負ってはるばるヨーロッパくんだりと貿易しなきゃならんのか、と彼らが言い出すのも理解できます。
第二次大戦の影響で世界一を誇ったイギリスの商船団はほぼ「壊滅状態(大半が自由イギリスに脱出したため)」に陥っており、イギリス正統政府としても南部連合への買い付けに大々的な船団を派遣する余裕はありませんでした。
加えて当時のドイツ陣営は日本海軍に対抗するための大規模な建艦計画(=改Z計画)を進行中で、失われた商船団の回復に費やせるだけの鉄鋼量を確保できる状況になかったのです。
とてもではありませんが、戦前と同レベルの輸入量を維持することはできませんでした。
そしてそのような環境は、必然的にふたつの流れを生み出します。
ひとつは、南部連合とカナダとの急接近です。
先にも書いたとおり、カナダにとって南部連合からの資源輸入は経済的に欠くことはできません。
経済力で合衆国に劣る南部連合にとっても、カナダからの重工業製品輸入は国力を維持するためにも必要不可欠な存在でした。
さらに言えば、自国から見て合衆国を南北に挟む位置にあるカナダは、防衛戦略上においても並ぶものなきパートナーです。
合衆国をほぼ唯一の仮想敵としながらイギリス本国からの増援を期待できなくなったカナダとしても、南部連合との握手は願ったり叶ったりの選択だったでしょう。
かくして両者は経済的・軍事的な結びつきを急速に強めていきます。
これは、自由イギリス政府を支持するコモンウェルスでありながら、日本帝国やアメリカ合衆国との関係を深めていたオーストラリアやニュージーランド、コリアらと異なる独自路線をカナダ自身が選択したことも意味します。
これに呼応したのがやはりコモンウェルスの一角であった南アフリカで、彼ら三カ国は豊富な地下資源を背景に旧ソ連ばりの五カ年計画を推し進め、第三次大戦後、疲弊した日独陣営を尻目に中南米諸国や宗主国が衰退したアフリカ植民地に対し政経両面での浸透を果たしていくことになります。
そしてもうひとつの変化は、ドイツが制覇したヨーロッパに訪れます。
戦争によってイギリス商船団の壊滅したヨーロッパでは、復興に必要とされる資源の輸入(主に食料関係)を賄うことが難しくなっていました。
戦前のようにカナダや南部連合からの自発的輸出に頼ることは叶いません。
前者は言うまでもなく、後者も自国の商船団を積極的に派遣してはくれないからです。
ヨーロッパに残された数少ない商船は、そのほとんどを沿岸輸送やアフリカ植民地からの資源輸送に投入せねばなりません。
とてもではありませんが、大西洋を越えた生活必需品輸入に回す余裕はありませんでした。
これは民衆、特に「カブラの冬」を経験したドイツ国民にとって由々しき問題です。
「国民には、二度とカブラの冬を経験させない」を主張してきたナチス政権としても、座視できる状況ではありません。
しかしながら、輸入量減少にともなう飢餓の足音はすぐそこまで来ています。
あたりまえですが、動員解除に呼応した農地拡大など間に合うわけもありません。
そこでナチス政権は、自陣営への食糧確保を占領地からの収奪によって賄うことを計画するわけです。
収奪自体は第二次大戦時においてすでに実行済みであったのですが、戦後のそれはより計画的で徹底したものとなりました。
特に旧ソ連地域やポーランドに対する収奪は現地で餓死者を出すほどで、ただでさえ敵意の強かった同地の民衆が占領者=ドイツに向けて激しい憎悪を惹起させるのも当然でありました。
1946年8月に勃発した大規模暴動、いわゆるポーランド国内軍によるワルシャワ蜂起は、それを象徴する出来事でした。
結果的にドイツ軍はこの大暴動を武力でもって鎮圧するわけですが、同時に占領地からの収奪が限界に達している事実を思い知ることになります。
このまま過酷な収奪を継続すれば、似たような暴動が各地で発生する可能性は高い。
そうなれば、せっかく版図に収めたこれら新領土が帝国にとっての癌細胞にすらなりかねない。
ただでさえ軍による治安維持活動が復興予算に対する重い足枷になっているというのに。
これでは、ナポレオンにとってのスペインと同じだ。
だが、融和路線に転じる政策も現時点では論外である。
被占領地域における反抗の芽を叩き潰さないまま融和路線に転じては、勝者の威信に傷が付く。
なによりも、英仏露を打倒した偉大なる総統とナチ党が間違いを認めるわけにはいかない。
熟慮の末、ヒトラーは決断します。
崇高なアーリア民族のため、新たな生存圏を獲得しなくてはならない、と。
総統命令が下され、ドイツ軍はインド侵攻作戦「フリードリヒの場合」を立案。
ここに至り、1948年4月の第三次大戦勃発に至る道筋が整うこととなるのです。




