巡洋艦(軽巡洋艦)総評
イギリスが1914年に竣工させたアリシューザ級に端を発する「軽(装甲)巡洋艦」という艦種。
その運命をねじ曲げたのは、「軍縮条約」の締結と「大型駆逐艦」の登場でした。
そもそも巡洋艦という艦種は「外洋において作戦行動の取れる戦闘艦艇」を意味するわけで、(巡洋戦艦=戦闘巡洋艦が装甲巡洋艦を駆逐した)第一次大戦の頃までは、補助艦艇と言えば彼女たち「軽巡洋艦」のことを指していました。
詰まるところ、外洋艦隊の内訳が戦艦/巡洋戦艦(装甲巡洋艦)/軽巡洋艦という組み合わせだったのです。
当時の駆逐艦は、外洋での作戦行動が困難でした。
せいぜいのところ、沿岸部や北海、バルト海、黒海、地中海のような内海での行動が主であったのです。
故に、外洋での作戦行動を当然のものとする日米仏といった新興の海軍は、競って軽巡洋艦の整備を開始します。
代表的なのが合衆国のオマハ級や日本の5500トン級ですね。
フランスもまた、デュゲイ=トルーアン級の建造を目論みます。
ぶっちゃけて言うと、これら三カ国は、この時点でブラウンウォーターネイビー=沿岸海軍からブルーウォーターネイビー=外洋海軍への脱皮を始めたわけです。
一方、すでに覇権国家であったイギリスは掃いて捨てるほど軽巡洋艦を保有していましたし、イタリアはヨーロッパ地中海、連合国はアメリカ地中海から外に出る意思を持っていなかったので軽巡洋艦の整備にさほどの意欲は示しませんでした。
そんなさなかに定まったのが「海軍軍縮条約(史実ではワシントン、こちらではホノルル)」です。
この条約締結によって「巡洋艦」の性能に天井が付いてしまいました。
そして登場するのが、先に紹介した8インチ砲を搭載した条約型巡洋艦、のちの「重巡洋艦」です。
この排水量1万トン、最大備砲8インチという制限は、各国の間に新たな建艦競争を呼び起こします。
当然ですね。
質の上限が決まっているなら、残るは量の問題になりますから。
そうなると困っちゃうのが、植民地防衛のために多数の巡洋艦を必要とするイギリス。
彼の国と彼の国の国家戦略にとって、重巡洋艦はオーバースペックなのです。
潜水艦を別にすれば、海上交通路を妨害してくるのは仮装巡洋艦に代表される敵の通商破壊艦です。
これらを追跡して撃破するのに8インチ砲艦ほどの戦闘力は必要ありません。
それに、スペックが高ければコストも高い。
とてもじゃないけど、必要な巡洋艦枠を全部8インチ砲艦にすることなんてできるわけない。
もちろん、それは他の国だって同じこと。
巡洋艦は馬車馬です。
艦隊のワークホースとして、いろいろなことをやらなくてはなりません。
偵察・哨戒・船団護衛などなど、敵艦と直接戦う以外の任務には事欠かないのです。
適当な性能を満たしてさえいれば、数はあるだけあったほうがいい。
もちろん、高性能ならそれに越したことはないです。
でも、その数をハイスペックな艦艇だけで占めるのは財政的に無理。
無理なんだけど、だからといって自分だけいち抜けしたら軍事バランスの均衡が取れません。
それは極めて好ましくない事態です。
だったら、新たな軍縮条約で巡洋艦の保有数にも制限を付けちゃおう。
本格的に困ったことが起きれば、巡洋戦艦派遣すればいいし。
そう考えたイギリス主導で、またしても軍縮条約が締結されます。
ロンドン条約です。
この条約において、明確に「重巡洋艦」「軽巡洋艦」のスペック的位置づけが定まり、日米英+南部連合(仏伊は批准せず)の艦艇保有数にもそれぞれ合計排水量において上限が設けられました。
いわゆる6インチ(正確には6.1インチ以下)砲艦という意味での「軽巡洋艦」は、ここに産声をあげるわけです。
ここで「なぜ6インチ砲なの?」を解説していきます。
6インチ砲というのは、この当時の常識として「装填を人力で行える上限の砲」と考えられていたからです。
ざっくり言うと、条約における軽巡洋艦とは主砲を人力で装填する艦であり、重巡洋艦とは主砲を機械で装填する艦であるってことです。
当然、機械装填を必須とする8インチ砲艦と比較すると、6インチ砲艦というのは、その分だけ安く付きます。
もちろん個艦の建造費で何倍もの差が付くわけではありませんが、それでも数を揃えるなら莫迦にできない違いが出ます。
イギリスからしたら、軽巡洋艦なんてどこの国が作っても似たようなスペックになるだろうって気持ちもあったんだと思います。
具体的に言うと、排水量5000~7000トン程度の6インチ砲6~9門装備の艦。
だから、戦闘力の高い8インチ砲艦さえ条約で制限すれば、ひとまず建艦競争は落ち着くはず。
なぜなら、その程度の艦では艦隊の準主力として頼りなさ過ぎるから。
世界中に広大な植民地を持つイギリスと違い、少なくとも日米+南部連合は海上交通線を警護するための「巡洋艦」をそれほど多数必要としてない。
であれば、連中だって国力を消耗するだけの性能レースは避けるに違いない。
少なくとも、彼らはそう考えていたはずです。
それはイギリスが最初に建造した軽巡が従来型の延長であるリアンダー級であり、その次に建造したのがリアンダー級を小型化したアリシューザ級だったって事実が雄弁に物語っています。
彼らは日米+南部連合が軽巡洋艦“ごとき"に個艦性能を求めるとは思ってなかったんです。
ですが、ここでとんでもない情報が飛び込んできます。
それは「日本が条約制限を目一杯使った大型軽巡を建造する」というものでした。
排水量1万トン、6インチ砲15門を搭載する砲戦用「軽巡洋艦」
これは、搭載砲の口径のみで重巡か軽巡かを判別しているという軍縮条約の穴を突いた(というより、なぜ誰も気付かなかった?)艦でありました。
史実の最上型ですね。
これを受けたイギリス、そして合衆国は焦ります。
この艦のスペックを前にすれば、従来型軽巡の延長では太刀打ちできそうもありません。
太刀打ちできなければ、同様の艦を自国でも整備するしかない。
そこで両国は、それぞれ同じような砲戦軽巡であるタウン級、ブルックリン級の整備を計画します。
合衆国はともかくイギリスにとって、これは想定外の負担です。
タウン級を6隻建造する予算で、リアンダー級なら8隻作れますから。
しかも、イギリスが本当に必要としているのはタウン級のような大型の砲戦軽巡ではなく、リアンダー級(というよりアリシューザ級)のような中型から小型の汎用軽巡なのです。
当時のイギリスが頭を抱えたのは間違いありません。
日本め、余計なことを、と言ったところでしょうか。
日本がそんな艦を計画しなければ合衆国も対抗艦を作らなかったでしょうし、そうすれば自国だって合衆国=仮想敵国の同種艦に対応する必要がなかったのです。
日英同盟がなくなっても、日本はイギリスの友好国であり続けていたのですから。
ところがです。
この「日本が条約制限を目一杯使った大型軽巡を建造する」という情報が、本作の世界線においてはまったくの誤報だったのですからたまりません。
史実においても「日本がポケット戦艦を建造する」という誤報を受けて合衆国がアラスカ級大型巡洋艦を建造したように、誤報によって建艦計画が影響を受けるというのはよくある話です。
建艦計画には、どうしてもこういった齟齬が発生しがちです。
それは、どこの国であっても変わりありません。
実はこの時、日本海軍には認められた軽巡枠の使い方にふたつの選択肢がありました。
ひとつは史実どおり「重巡に対抗できる大型軽巡」の建造。
もうひとつは、旧式化してきた5500トン型軽巡を代替する汎用(というよりは水雷戦隊用)軽巡の建造です。
史実と異なり、こちらの世界の日本海軍は、重巡における合衆国との戦力差をあまり深刻に考えてはいませんでした。
確かに自国の12隻に対して合衆国の保有枠は18隻。
この6隻という差は間違いなく大きい。
ですが、パナマ運河の不存在とアメリカ連合国の存在が、それを帳消しにしてしまうのです。
アメリカ連合国の重巡保有枠(対米3.5割)を考えれば合衆国が保有重巡のすべてを太平洋に配備できるわけもなく、パナマ運河がない以上、大西洋-太平洋間の移動は平時であっても大騒動です。
だとすれば、合衆国太平洋艦隊と自国海軍との隻数差はほとんど無くなるだろうってのが予想できます。
加えて日本には、既存の軽巡が旧式化により新型駆逐艦の性能に付いていけなくなってきているという由々しき問題もありました。
外洋での活動に支障がないという、それまでの常識を覆す吹雪型駆逐艦の登場が、水雷戦隊を指揮する軽巡洋艦に大きな進化を要求していたからです。
日本は決断しました。
大型軽巡6隻の建造より、5500トン型を置き換える汎用軽巡8隻を建造する、と。
そうした経緯で建造されたのが、基準排水量6500トンを公称する軽巡洋艦=最上型です。
日本海軍らしく、その性能は攻撃力と速力とが重視され、防御力は「敵巡洋艦の砲撃にある程度耐久できればそれでいい」レベルで設定されました。
砲撃力に関しては排水量の関係から無理をせず、三連装砲塔3基の搭載に収めることで、のちの改装による発展性を担保した設計が成されました。
この最上型の基本設計は艦隊側からも高評価を受けたため、第三次大戦までに最上型(4隻)、利根型(2隻)、大淀型(2隻)、阿賀野型(4隻)、筑後型(2隻)、十勝型(4隻)の計18隻という(日本軍にしては、ですが)大量産が行われることになります。
もっとも、公称した6500トンという排水量は当然のことながら達成できず、それぞれが9000トン(最上型~大淀型)~1万トン(阿賀野型~)に膨れあがったのは公然の秘密です。
数値的には優秀な砲撃力(2)と圧倒的な雷撃力(7~8)、条約型巡洋艦並みの耐久力(3~4)と卓越した速力(8)を持ちつつも、耐久力が丸数字でないという打たれ弱さを有する艦になっています。
重巡の総評でも述べましたが、日本軍にとっての巡洋艦とは大きくて強力な駆逐艦です。
戦艦相手に雷撃するのが目的だと言っても過言ではありません。
条約明けになって、その役割が大型駆逐艦に課せられるようになっても、軽巡洋艦には同様の働きが期待され続けていました。
ですので、戦闘力を維持するための防御力より、敵戦艦を撃破可能な攻撃力=雷撃力が重視されたんですね。
条約時代の重巡が持っていた任務をそのまま引き継いだと考えていいとさえ思います。
そうした新鋭軽巡に席を譲った5500トン型の旧式軽巡たちですが、貧乏な日本海軍は、彼女らを「まだ使える船」として活用法を模索します。
そこで計画されたのが、イギリス式の防空軽巡への改装と日本海軍らしい重雷装艦への改装です。
前者は貧弱ながら対空火力と対潜力を持ちつつ雷撃力も有する万能艦として設立したばかりの海上護衛総隊に回され、後者はその異常なまでの雷撃力(16!)を期待され、秘密兵器として第一線に配備されました。
前者は史実における改装後の五十鈴を例に、後者は実際の重雷装艦である大井/北上を例にしています。
なお、本作の世界線では対米戦における漸減作戦が立案されていないため、潜水艦隊用の旗艦軽巡、つまり史実における大淀型は艦艇の整備リストから弾かれています。
これは水雷戦隊旗艦に特化した史実の阿賀野型も同様です。
では、そんな日本海軍のライバルである合衆国海軍の軽巡はどうなのでしょう。
架空艦がメインとなった日本と比べ、合衆国の軽巡は史実どおりの性能を持っています。
合衆国の軽巡にとって特徴的なのは、水雷戦隊旗艦を求められたサンディエゴ級(史実のアトランタ級)を除いて、すべてが雷撃能力を持っていないことです。
要するに、彼女らは砲撃用の大型軽巡に特化しているってわけです。
合衆国の軽巡にそれだけ割り切った設計を許しているのは、合衆国もまた外洋で行動可能な大型駆逐艦の大量配備に成功したからです。
敵艦隊への襲撃任務はそれら駆逐艦に任せておけばよく、軽巡は艦隊に迫り来る敵駆逐艦や航空機に対抗する、いわば護衛艦的な役割を課せられたわけです。
そういったコンセプトのもと、最初に建造されたのがブルックリン級とその準同型艦であるセントルイス級です。
条約型巡洋艦以上の重防御(丸数字の対艦火力+丸数字の耐久力4。セントルイス級はスピードレベルも丸数字)を施された船体に6インチ砲15門を搭載した大型軽巡。
合衆国としては、噂されていた日本の新型軽巡のみならず8インチ砲巡洋艦まで本艦で対抗可能と自信満々でした。
ですが、いざシミュレートしてみると、15門艦であっても搭載砲が6インチでは8インチ砲艦に打ち勝てないという哀しい事実が判明します。
確かに、8インチ砲10門を搭載する日本の重巡が0.12(砲弾重量:トン)×10(同時発射数)×3(発射速度/分)=3.6トンの投射弾量を発揮するのに対し、6インチ砲15門を搭載するブルックリン級は0.06(砲弾重量:トン)×15(同時発射数)×8(発射速度/分)=7.2トンの投射弾量を発揮します。
この数字だけを見ると、ブルックリン級の優勢は動かないように思われます。
ですが、砲撃の命中数は発射弾数の平方根に比例します。
つまり、発射した砲弾がすべて命中しない限り、上記の数字は机上の空論に過ぎないということです。
これを前提に先の計算をもう一度やりますと、8インチ砲10門を搭載する日本の重巡が0.12(砲弾重量:トン)×(10(同時発射数)×3(発射速度/分))の平方根=0.66トンの命中弾量を期待できるのに対し、6インチ砲15門を搭載するブルックリン級は0.06(砲弾重量:トン)×(15(同時発射数)×8(発射速度/分))の平方根=0.65トンと、互角の命中弾量を期待できるに過ぎません。
実際は、この数値に1発の威力や有効射程の優劣(主に砲身長の関係による)などが加わるので、ブルックリン級が8インチ砲艦に優勢どころか、せいぜい五分か、やや劣勢が関の山という結論に辿り着くわけです。
本作においてもブルックリン級の砲撃力は2に留まっています。
同時期の条約型がおおむね砲撃力3を有していることを考慮すると、いかに防御力の優勢があろうとも、これら相手に有利な戦いを進められるかは正直疑問の残るところです。
もっとも、当の合衆国海軍も密かにそのあたりは理解していたようで、条約明けに就役したクリーブランド級では、あえて砲塔数を減らし代わりに対空火力や生存性を増しています。
主砲門数が減少したことで砲撃力が低下したと思いきや、ゲーム上、対艦火力は維持されたまま耐久力と対空火力が向上しているので、純粋にブルックリン級/セントルイス級の上位互換となっています。
実際でも6インチ砲15門のブルックリン級が3.87の命中期待値(主砲門数の平方根)を持つことに対し、6インチ砲12門のクリーブランド級でも3.46の命中期待値を持つので、目くじら立てるほど両者の砲撃力に差はないんですよね。
このあたり、あえてカタログスペックを落としてでも総合力をアップさせようとする合衆国の設計思想は、なかなか日本人には真似できないことだと感心します。
合衆国の軽巡には、こうした砲戦用大型軽巡とは別の防空軽巡の流れがあります。
史実のアトランタ級に当たるサンディエゴ級と新時代の防空軽巡たるウースター級です。
前者は中型軽巡の船体に多数の両用砲を搭載した艦で、雷撃力も対潜力も併せ持った万能艦に近いものがあります。
その分、砲撃力は貧弱で(対艦火力0)防御力も並(耐久力3)ですが、対空火力は強力です。
もっとも、同級の役割はおおむねクリーブランド級か大型駆逐艦で代替できてしまうため、思いの外、存在価値の少ない艦になっているのが現状です。
本来の「軽巡洋艦」としてなら、こちらの方が本流のはずなんですけどね。
最後に語るウースター級は、条約型巡洋艦に匹敵する火力とそれ以上の防御力を有する艦(ザラ級並みと言えばわかるでしょうか)で、新型の6インチ両用砲と多数搭載した40ミリ機関砲(特攻を経験していない合衆国海軍が40ミリ機関砲を3インチ高射砲に置き換える可能性は少ないと考えました)の威力も相まって強力な対空火力(13。ちなみにサンディエゴ級で9)を発揮します。
ただ、同じ就役コストでより強力なボルチモア級/ロサンゼルス級が存在しているので、こちらもパッとしない価値でしかありません。
どちらも9の対空火力がありますしね。
そんな合衆国の軽巡ですが、発射速度を重視した反動からか、有効射程において短めな傾向があります(砲撃レンジ1)。
防御力には優れているので致命的な問題にはならないでしょうが、それでも砲撃レンジ2を持つ8インチ砲艦や他国の大型軽巡と撃ち合う際には先手を取られることが多くなるでしょう。
ただ、システムとしての「艦隊」を考慮すると合衆国の軽巡洋艦は総じて優秀な性能を持っており、それは個艦での優劣を打ち消すだけのものだと言っていいのではないでしょうか。
そうした合衆国海軍と対峙するもうひとつの海軍がアメリカ連合国の海軍です。
陸軍国らしく第一次大戦型の旧式軽巡(シャーロッツビル級)2隻を除けば骨董品のような装甲巡洋艦と防護巡洋艦を有していただけのアメリカ連合国ですが、条約明けになってから砲戦用大型軽巡の整備に走ります。
長砲身6インチ砲を搭載したチャールストン級と、その発展形であるニューオリンズ級です。
どちらも合衆国の大型軽巡を意識して設計され、ライバルたちを凌駕する有効射程(砲撃レンジ2)と平均的な雷撃力(2~3)を持っています。
個艦性能としては、どちらもブルックリン級やクリーブランド級に引けを取らない優秀艦ではあるのですが、いかんせんチャールストン級が5隻、ニューオリンズ級が未竣工を含めて14隻と建造数が少なすぎ、合衆国に対抗できるだけの戦力整備が追いついていないといった現状があります。
先行して建造した7インチ砲艦、アルバート=S=ジョンストン級~リチャード=S=ユーエル級の失敗、つまり重巡戦力がないという現実があるので、これは大きな問題です。
それまで後ろ楯となってくれていたイギリスは第二次大戦でドイツに敗れ、もはや当てにはできません。
こうした状況に恐怖した連合国は、欧州の覇者となったドイツに接近するとともに、新時代の水上打撃艦たる対艦ミサイル巡洋艦の開発に突き進むわけなのですが、それは本作とは別のお話しになります。
さて次は、そんなアメリカ連合国と同じ陸軍国であるドイツの軽巡です。
第一次大戦時、イギリスに続いて軽(装甲)巡洋艦の整備に成功したドイツですが、敗戦とヴェルサイユ条約による制限によって、その優位性も潰えてしまいました。
なかば練習艦として建造されたエムデン級に続いて竣工したケーニヒスベルク級ですが、その戦闘実力はともかく、第2第3砲塔をオフセット配置するという奇天烈な真似をしたことで船体が歪み、外洋航行に問題のある艦になってしまいました。
CLでありながらWが付く艦というのは、なかなか見られないものです。
そんなケーニヒスベルク級を改良したのがライプツィヒ級/ニュルンベルグ級ですが、こちらは艦種記号からWが取れたこと以外は、さほどの進歩はしていません(一応、雷撃力や対空火力は向上してますが)。
その実力もせいぜいが足の短いリアンダー級と言ったところで、同時期に多くが竣工した他国の新鋭軽巡に対抗できるスペックではありません。
確かに、ヴェルサイユ条約による建艦規定が絡んでくるので、こうなることもやむを得ない面はあります。
ですが同条約の破棄後、こと第二次大戦戦勝後に整備された新型軽巡までその流れにあるのは、やはり思想的に大きな問題があると思われます。
所謂Z計画における主力軽巡として整備されたミュンヘン級ですが、ライプツィヒ級/ニュルンベルグ級と比べて速度と航続距離こそ進歩させているものの、性能面では凡庸です。
アドミラル=ヒッパー級でも語ったとおり、「どう使うか」を真剣に模索した形跡がないんですよね。
一応、遊撃戦に使えるだけの航続力と艦隊の前衛を任せられる索敵力を与えられてはいますが、それにしたって中途半端は否めません。
これらを勘案するに、総じてドイツの建艦計画は大型艦偏重であり、軽巡洋艦や駆逐艦のような補助艦艇の整備にあまり興味を抱いていないように感じます。
というより、帝政ドイツ海軍以来、制海権の獲得と維持という思想が未発達のように思えるんですよ。
「ドイツ海軍の父」であるティルピッツ提督が提唱した戦略思想では、ドイツ海軍とはイギリス海軍に対する政治的な抑止力でした。
巨大な艦隊を保有していれば、イギリスから喧嘩を売られることはないだろう、と。
それがあっさり覆ったのは第一次大戦で明らかなわけなのですが、どうもこのドグマは以降のドイツ海軍、というよりドイツ海軍の高級士官に歪んだ形で受け継がれていたように思えます。
レーダー提督のZ計画なんてその好例で、まず大艦隊の建設があって、その大艦隊の政治的存在意義を捻出するために海軍の戦争計画が練られていたようにさえ伺えます。
見栄えのする巨大戦艦や見かけ倒しの装甲艦、軽巡並の主砲を搭載した駆逐艦などなど。
ナチスの政治宣伝には効果的だったのでしょうが、それが本当に軍事的意味を与えられて建造されたものかどうかは、はっきり言って疑問です。
「戦艦より弱く巡洋艦には捕捉される」程度の実力しかないポケット戦艦が、いつしか「巡洋艦より強く戦艦には捕捉されない」強力な通商破壊艦として周知されるようなったのが、その好例です。
第一、本気で通商破壊戦略に徹するなら水上艦より潜水艦のほうが圧倒的に有効かつ低コストです。
もっと言えば、自陣営の制海権確保と敵陣営の制海権確保阻止こそが水上艦隊の軍事的存在意義であるにもかかわらず、通商破壊戦略とは、まずもって敵陣営が制海権を握っていることを大前提としているのです。
そして軽巡や駆逐艦など補助艦艇の役割とは、自陣営の制海権確保を目的としたものです。
それをなかば無視したような大艦隊に、いったいどんな意味があるのでしょう?
ここまで戦略思想が歪んでいては、ドイツ海軍が彼らにとって中途半端な大型艦である軽巡洋艦に熱意を向けないのも、ある意味納得できる気がします。
有力な軽巡洋艦を建造するくらいなら、よりハイスペックな重巡洋艦(アドミラル=ヒッパー級)か高速装甲艦(ビュロー級)を作った方が国内外に「見栄を張れる」といったところでしょうか。
なお史実におけるSP1級偵察巡洋艦は、ディーゼル機関を搭載した大型外洋駆逐艦(1944年級)に差し替えられて建造計画が消滅しています。
竣工しなかったとはいえ、アリシューザ級と変わらない排水量を持つ「駆逐艦」をよく整備する気になったものです。
ドイツ人の考えることはよくわかりません。
と、ひとしきり持論を吐いたところで、次はフランス海軍の軽巡洋艦に目を向けます。
デュゲイ=トルーアン級はフランスが初めて建造した軽巡洋艦です。
戦利艦として入手したドイツやオーストリア=ハンガリーの軽巡洋艦を参考に設計されています。
習作としてみれば合格点を上げられますが、防御力が皆無なため、激しい戦闘には向きません。
このあたりは、条約型巡洋艦であるデュケーヌ級と同じですね。
ですが、続くラ=ガリソニエール級はそれとは一転、中型巡洋艦の船体に重防御を施した堅艦として建造されています。
耐久力3と全項目の丸数字は、8インチ巡洋艦に匹敵するレベルです。
搭載主砲こそ9門と平凡ですけど、最上型と同じく高性能な6インチ砲を選択することで、12門艦に匹敵する対艦攻撃力2を得ています。
この時期の軽巡としては十分すぎる優秀艦であると言えましょう。
艦砲の技術も建艦の技術も、なんだかんだ言って先進国なんですよね、フランスは。
このあたり、枯れた技術を率先して採用することで道具としての信頼性を確保したがるイギリスなんかとは対称的な思想だと思います(日露戦争の頃と同じですね)。
ただ、日米の新鋭艦と比較すると「これは」といった点がないこともまた事実です。
確かに完成度は高いのですが、日本艦の持つ圧倒的な雷撃力や米艦の持つ対空火力のような「強み」が見られません。
これは艦隊戦をあまり重視していない欧州海軍国の特徴なのかも知れません。
なまじ「本当の巡洋艦」を運用してきた(つまり植民地経営をしてきた)歴史があるので、日米のような「艦隊決戦マンセー海軍」にはなれないのでしょう。
実際、通商破壊艦の追跡やシーレーンの哨戒任務なら、この程度で必要にして十分な性能ですし。
なお次級であるド=グラース級は、こんなラ=ガリソニエール級の改良形です。
シフト配置を廃した(スピードレベルが丸数字ではない)ことでバイタルパートを圧縮し、最大装甲圧を増やさないまま、よりタフな艦へと仕上げています(丸数字の耐久力4)。
こうして大型巡洋艦に比肩する能力を得た艦でありますが、運用思想的には、あくまで前級に準じるレベルに収まってます。
6インチ主砲が対空射撃可能な両用砲(リシュリュー級の副砲と同じ)になっているのは大進歩なんですが、ウースター級のような自動装填砲でないため、能力的には大したものではありません。
続くバヤール級は、そんなド=グラース級の船体を利用した防空巡洋艦です。
ダンケルク級で採用された13センチ両用砲を搭載した、サンディエゴ級とよく似たコンセプトの艦であります。
しかしながら、搭載した両用砲の能力があまり高くないので、肝心の対空火力に関しては、サンディエゴ級に及ばないものとなっています。
先にフランスは艦砲の技術に優れると書きましたが、ド=グラース級の主砲共々、両用砲に関しては「あくまでも対空砲」という割り切りが足りなかったようです。
イギリスの5.25インチ砲(ダイドー級の主砲)もそうなのですが、巡洋艦の主砲としての対艦火力を捨てきれず、対空砲としての能力が犠牲になってしまってます。
ただ、史実の戦後フランスが優秀な5インチ両用砲を設計しているので、彼の国に製造技術自体がないわけではないんですよ。
でも、驚異的な威力を持つようになってきた航空攻撃は航空攻撃として、従来型の水上戦闘も無視できないといった状況では、なかなか思い切ったことができなかったようです。
海軍というのは保守的で、常に過去の戦訓に従いつつ装備を調えるものですしね。
というわけで、次はそんなフランス海軍のライバルであるイタリア海軍の軽巡洋艦を語ります。
先にも述べましたが、ヨーロッパ地中海を出るつもりのないイタリア海軍は巡洋艦の整備に熱心ではありませんでした。
というより、8インチ砲を搭載した「軽巡洋艦」たるトレント級と8インチ砲を搭載した「装甲巡洋艦」たるザラ級で満足していました。
それが一変したのは、シャカル級を皮切りにフランス海軍が大型駆逐艦の整備を始めたからです。
イタリア海軍にとって、駆逐艦とは大型の水雷艇でした。
他国の同種艦よりも小型で、航洋能力も低いものが与えられました(艦種記号にW付き)。
財政的にも、高価な大型駆逐艦は避けられました。
こういった補助艦が質より量であることを、ある程度理解していたからです。
でも、ほぼ唯一の仮想敵であるフランス海軍が自国の駆逐艦では対抗できそうもない大型駆逐艦を整備するのなら、こちらもそれに応じる必要があります。
でも、そうした任務に就けるには8インチ砲艦は大げさすぎます。
そこでイタリア海軍は、小型巡洋艦の新規建造でこれに対応することとしました。
コンドッティエリ級の第一グループであるアルベルト=ディ=ジュッサーノ級です。
同級は、あくまでも「大型駆逐艦を駆逐する艦」でしかないため、高速ではありますが(スピードレベル8)装甲防御は駆逐艦に毛が生えた程度のものです(耐久力1)。
主砲も射程の長い(砲撃レンジ2)6インチ砲を8門搭載しているとはいえ、発射速度の遅い旧式砲だったので他国の軽巡と撃ち合うだけの実力はありません(対艦攻撃力0)。
ここだけの話、日本の特型駆逐艦複数と当たったら撃ち負けるんじゃないかと思うくらいです。
さすがにこれはまずいと思ったのか、イタリア海軍は次の級から主砲を新型に更新し、6インチ砲艦として相応しい火力を与えることにしました。
これがコンドッティエリ級の第二グループであるルイージ=カドルナ級です(対艦攻撃力1)。
ただ、装甲防御は相変わらず貧弱なままなので、他国のちゃんとした巡洋艦と遭遇したら撃ち負ける可能性は極めて高い艦であります。
それでも長射程を活かした戦い方をすれば、戦えないことはない実力を手に入れたと言えます。
ですが、6インチ砲にまったく耐えられない防御力は、巡洋艦としてやはり不安です。
というわけで、次に建造する軽巡洋艦は、船体を大型化して防御力を強化することとしました。
コンドッティエリ級の第三グループであるライモンド=モンテクッコリ級(耐久力2)です。
防御力の強化はなおも進み、第四グループであるエマヌエレ=フィリベルト=デュカ=ダオスタ級では、対6インチ砲防御としてはまず満足できるレベルにまで向上しました(2→3)。
このクラスまでは、なんだかんだ速度重視で、主敵はあくまでフランスの大型駆逐艦でした。
仮想敵であるフランス海軍の軽巡整備は遅れており、脅威度は低いと考えられていたのです。
しかしながら、彼の国が新たにラ=ガリソニエール級の整備を始めてしまうと、そればかりを見ているわけにはいかなくなってしまいました。
対6インチ砲防御として十分以上のものを持つラ=ガリソニエール級が相手では、エマヌエレ=フィリベルト=デュカ=ダオスタ級でもかなり厳しい。
もちろん、それ以前の軽巡は言うまでもありません。
なれば、ということでイタリア海軍は、さらに拡大した船体に新型砲塔を搭載した大型軽巡を対抗艦として計画します。
コンドッティエリ級の第五グループであるルイジ=ディ=サヴォイア=ドゥーカ=デッリ=アブルッツィ級と第六グループであるコスタンツォ=チアーノ級です。
同じコンドッティエリ級とはいえ、ここまでくると、もはや第一グループとは別物です。
排水量は2倍になり、設計思想自体も速度より防御力を優先するよう変化しています(スピードレベルが8→7に低下)。
そりゃまあ、対抗艦が駆逐艦から中型軽巡にグレードアップしたのですから、スペックの底上げも仕方ありません。
ルイジ=ディ=サヴォイア=ドゥーカ=デッリ=アブルッツィ級/コスタンツォ=チアーノ級は、防御力を重視しただけあって極めて良好な耐久力数値を持っています(丸数字の5)。
欧州海軍中、この数値はエディンバラ級と並ぶトップクラスの硬さです。
イタリア海軍設計局の技量が、はっきりわかる艦だと言えましょう。
ただ全体を通してみると、個艦性能の是非はともかく、海軍戦略の中でこれらの艦がどのような位置付けに置かれているのか不明瞭なのが気になります。
そもそもコンドッティエリ級の全艦が、徹頭徹尾、フランスの建艦計画に対応した形で設計されてきた艦であるのです。
ドイツの項目でも述べましたけど、海軍上層部で彼女らをどのように用いるかを真剣に検討した形跡がないんですよね。
日米英の場合、日本は「侵攻してくる敵海軍の撃破」であり、合衆国は「敵領海への渡洋侵攻」であり、イギリスは「自国シーレーンの防衛」が艦隊編成/艦艇整備の根幹にあります。
じゃあイタリアは?
これが見当たらないんですよ。
ただただフランスと性能競争してるばかりで、そうやって手に入れた艦艇をどんな風に用いるのかを海軍上層部でも決めかねていた、そんな感じに見えるわけです。
そして、イタリア海軍がそんなていたらくに陥ったのは、フランス海軍の責任も重大です。
フランスもまた、自分たちが整備した艦艇をどんな風に用いるのかを本気で考えていなかったように思えるのです。
一応、戦術レベルではフランス式機動部隊(ダンケルク級×1 ラ=ガリソニエール級×3 大型駆逐艦×6)を編成して大西洋上の通商破壊艦(この場合、ドイツのポケット戦艦)を捜索・追跡・撃破するという運用が想定されていました。
でもそれだって、しょせんはドイッチュラント級ありきの計画でしかなく、フランス式機動部隊をドイッチュラント級のいない戦場でどのように活用するかを考えていた節は見られません。
言ってしまえば、極めて場当たり的な建艦計画なんですよね。
だからこそ、そんなフランス海軍を見つめながら自国の艦艇を整備していたイタリアが同じような無定見さに蝕まれるのは、ある意味やむを得ないことだったのかもしれません。
個人的には、史実のイタリア海軍がイギリス海軍に押されまくっていた理由は、上層部の戦意や采配に依拠するものではなく、純粋に艦艇をどのように使ったらいいのか誰も研究していなかったからなのでは?と思っています。
さて最後に控えますは、軽巡洋艦の本家本元であるイギリス海軍です。
最初のほうで述べましたが、イギリス海軍が真に欲しがっていたのは、シーレーン防衛に必要な多数の小型/中型巡洋艦でした。
航続距離の大きなこれらを十分な数だけ整備することによって、大英帝国の海外植民地を守るつもりであったわけです。
そんな戦略目標に則って建造されたのがリアンダー級とその準同型艦であるパース級、そしてリアンダー級を小型化したアリシューザ級です。
双方とも航続距離と居住性(ゲームで表現されることは見たことないです)を重視した設計で、個艦戦闘力は凡庸です。
特に船体を小型化したアリシューザ級は耐久力が1(リアンダー級は2)と撃たれ弱く、史実でも比較的簡単に戦没しています。
そして、これらによって旧式化するC/D/E級を更新していこうと目論んでいたイギリス海軍を「日本が大型軽巡を建造中」という誤報が襲った経緯については、前述したとおりです。
そんな彼らの建造した大型軽巡が、6インチ砲を12門搭載したタウン級です。
タウン級には3つのサブクラスがありまして、基本となるのがサウサンプトン級、サウサンプトン級の砲塔防御を強化したのがグロスター級(対艦攻撃力が丸数字に)、船体を拡大し防御設計を改めたのがエディンバラ級となります(耐久力が4→5)。
なおエディンバラ級を除く2クラスは、どちらも改装により主砲塔を1基降ろして対空兵装の増設にともなうトップヘビーを解消しているため、対艦攻撃力は9門艦として計算してあります(対艦攻撃力1)。
このタウン級をベースに設計されたのが、クラウン=コロニー級とその改良形であるスウィフトシェア級/タイガー級です。
このクラスも6インチ砲12門艦として建造されましたが、やはり装備過多によるトップヘビーを解消するため、前期型は改装によって、後期型は竣工時より9門艦として配備されています。
重量軽減を目的として砲塔防御をふたたび簡略化したので対艦攻撃力が丸数字(グロスター級/エディンバラ級は丸数字)でなくなり、航続距離もタウン級から減少しています(9→7)。
建造コストを節約しようと船体を小型化した影響が、こうした面に出てきてるわけですね。
彼女たちイギリスの大型軽巡はエディンバラ級を除いて6インチ砲9門艦となっているので、他国の同格艦と比べると砲撃力で見劣りがします。
信頼性が高い反面、設計が古い主砲と、砲弾重量が1割程度他国の同種艦より軽いことも、打撃力不足に強く影響しています。
最上型やラ=ガリソニエール級が同じ門数で対艦攻撃力2を得ているのとは大きく違います。
ですが防御力自体は十分に強く(耐久力もスピードレベルも丸数字)巡洋艦同士の戦闘ではそうそう撃退される艦ではないので、イギリス海軍のドクトリン=海上交通線の警備という視点で見るなら、この性能はおおむね合格点(船団の盾になれる)を与えられるものと考えます。
一方、彼女らと同時期に建造された防空巡洋艦であるダイドー級には厳しい評価が与えられます。
というのも、ダイドー級が採用した5.25インチ両用砲は、対艦打撃力を求めて砲弾重量を増やした結果、対空砲としての発射速度に悪影響を抱え込んだからです。
このため、ダイドー級とその準同型艦であるベローナ級の対空火力は、わずか4という低い数字になっています。
防空巡洋艦の名が泣くというレベルです。
ただこれも、イギリス海軍のドクトリンからすれば及第点なのかもしれません。
なぜなら、ダイドー級/ベローナ級は、航続距離を除けばリアンダー級より1割以上少ない排水量でほぼ同格の実力を手に入れた艦なのです。
つまり、日米のように艦隊戦を前提においた艦ではなく本来の巡洋艦的運用──海上警備や船団護衛──を務めるのなら必要にして十分な性能であると言えるのです。
「戦略環境」が違うんですよね。
一応、合衆国を最大の仮想敵としているとはいえ、現実的にはイギリス海軍が相手取るのは欧州列強のいずれかです。
独仏伊といったそれらの国は、大規模な洋上航空兵力=空母部隊を保有していません。
となれば、イギリスのシーレーンを襲う航空機は少数の長距離爆撃機が精々であり、それを守る巡洋艦の対空火力はこの程度で十分と考えられていても不思議ではありません。
大規模な航空攻撃など想定していないのです。
イギリス海軍にとって、巡洋艦とは「量」です。
合衆国のように質も量も狙っていける金持ち海軍ならいざしらず、どこの海軍であっても、質と量の問題は常に建艦計画を振り回してきました。
そういった視点で眺める限り、個艦の性能を極端に追求せず、少しでも建造コスト・運用コストを削減しようとするイギリス的思考(ケチなだけ、とも言えますが)は一定の説得力を持ち合わせています。
ダイドー級の防空能力に当事者の側から不満が出ず、準同型艦であるベローナ級の建造が続けられたことから考えると、イギリス海軍は「防空巡洋艦はこの程度でいい」と捉えており、むしろ周囲がダイドー級/ベローナ級を高く評価しすぎていただけと考えるべきなのかもしれません。
総じて軽巡洋艦の整備については、日米英の三カ国が海軍戦略に合致した艦を設計しており、その他の海軍は仮想敵国の建艦計画に応じただけの泥縄式調達に終始していたように感じます。




