戦艦総評
各国の戦艦をデータ化してわかったのは、合衆国>日本>フランス>イギリス=イタリア>ドイツ(南部連合)という設計技術の優劣でした。
とにかく、合衆国の条約型戦艦が強い。
その大半は、16インチSHSによる大火力がもたらしたものなんですけど、排水量的に変わらないキング=ジョージ5世級とは比較にならない性能です。
フランスの条約型戦艦は、主砲塔の前部集中など設計上の工夫で高い速力と重防御とを両立させてるのが特徴なんですけど、砲塔防御に問題を残しています(丸数字じゃない事で表現)。
これは砲塔天蓋に使われた装甲板の材質が影響しています。
割れやすいんですよね。
メルセルケビルでダンケルクが被弾した際、そうした短所が現れています。
日本も改装戦艦の砲塔で同じ事をやらかしてるんですけど、こちらは(長門型以降ですが)厚み自体が尋常でない(230ミリ級)事が幸いして、十分な砲塔防御を構成していたりします。
日米の戦艦設計が優れていると判断した理由のほとんどは、このあたり。
つまり、火力の維持を最重視している点にあります。
本作品のシステムでは、耐久力が半分を割ると、丸数字でない対艦火力は半減します。
この為、対艦火力が丸数字の戦艦と殴り合いをしていた対艦火力が丸数字でない戦艦は、いずれ火力で押し負けるのが目に見えるわけであります。
防御力では敵艦を倒せない。
考えてみれば当たり前の話ですよね。
なので、基本「艦隊決戦指向」の日米戦艦は、火力と砲塔防御を優先した設計を行っています。
もちろん、そうした傾向が確立したのはユトランド沖海戦の戦訓がはっきりしてからなので、合衆国側は条約型以前、日本側は八八艦隊計画艦(改装済み)以前の艦については、その限りではありません。
条約型以前の米戦艦に関して対艦火力を丸数字としていないのは、砲塔天蓋装甲が薄いというのが決定的な理由です。
火力で上回るサウスダコタ級ならいざしらず、コロラド級では、改装済みの長門型と撃ち合ったら、ほぼ確実に削り負けするでしょう。
もっとも米海軍もそのあたりは理解していたようで、(史実における)大改装後のウエストヴァージニアは(速力の更なる低下と引き替えに)砲塔天蓋に対する十分な防御が追加されています。
ただ、本作の合衆国は大戦に参加していないこともあって旧式戦艦の大改装より新戦艦の建造を優先していますので、いわゆる3年計画戦艦に関しては大改装を行ってないを前提にデータ化してあります。
(余談ですが、レキシントン級巡洋戦艦は戦艦の計算式でデータを出していません。あれはあくまで、巨大な巡洋艦なので)
火力の維持を重視した日米艦、速度と重防御を両立させた仏艦と比較して、英独伊(+南部連合)の戦艦はちょっと中途半端な性能です。
それでもまだ、船体防御に見るべきものがあるイギリス艦はマシなほうで、独伊の戦艦は「防御空間が狭い」という弱点を有しています(丸数字じゃない事で表現)。
確かにヴァイタルパートの防御力自体は凄いんですよ、ビスマルクもヴェネトも。
でも、それ以外の部分に「壊れちゃいけない箇所」がたくさん設けてあったりするんですよね。
このあたりは技術的問題というより思想的問題と言ったほうが正しいのかも知れません。
要は「実際の戦闘力」をあまり重視していないんじゃないかということです。
「死ぬまで戦う」と闘志ガンギマリした日米艦や「沈まないギリギリまで粘る」と船体防御に徹した英仏艦と比べると、独伊の戦艦は「とにかくカタログ値を上げよう」という考えが透けて見えるんですよ。
詰まるところ、彼女らの戦場は「政治の場」だったんじゃないかと思うわけです。
スペックが高けりゃ、仮想敵国を「ビビらせる」ことはできますからね。
その「数字」に踊らされた仮想敵国が建艦計画をねじ曲げてくれたりしたら願ったり叶ったりです。
事実ドイツは、ポケット戦艦でそいつに成功しています。
複数の巡洋艦で対処できる程度の艦に対抗するため、フランスにダンケルク級の建造をさせてます。
まあそもそも論として、ビスマルクもヴェネトも、条約型戦艦とガチで殴り合うことを想定した戦艦じゃあないですし。
あれらの基本は「ダンケルク絶対殺すマン」なのですから、場合によっては15/16インチ砲艦との戦闘を覚悟しなくてはならなかった英仏艦とは、求められた前提条件が違ってるわけなんですな。
そう考えると、ドイツのポケット戦艦は余計な仕事してくれたと言えるかも知れません。
それでも16インチ砲艦に匹敵する火力を持ち速力で優れるヴェネトは、まだ現実を見ていたと言えます。
防御に多少の穴があろうとも、敵艦に火力で対抗できるなら勝ち目だって出てきます。
リプレイの長門を見てもらえばわかりますが、防御修正+丸数字=3までの艦であれば、対艦火力16のヴェネトなら追加損害を発生させる可能性がありますので。
加えて、速力で勝ればイニシアチブを取れるだけでなく、不利な状況から逃げることだって可能です。
でも、ビスマルクの対艦火力14ではダメです。
追加損害が発生しない以上、よほど耐久力に勝っていない限り、16インチ砲クラスの戦艦相手に殴り勝つことは不可能です。
その点で言うとリシュリュー級もそうなのですが、彼女の場合はヴェネトと同じくスピードレベルの優勢があるので、条約型戦艦クラスならイニシアチブで競り勝つことも考えられます。
もっとも、天城型やインヴィンシブル級みたいなガチの高速戦艦が相手だと、流石に厳しいものがありますけどね(アイオワ? 考えてはいけません)。
あ、そうそう。
速度の話が出てきたのでついでですが、ビスマルク級のスピードレベルは、あえて5に抑えてあります。
これは、彼女がカタログ値より大分抑えた速度しか出していなかった疑いを根拠にしてあります。
ビスマルク級って、実際のところ27~28ノットあたりが最高速度だったんじゃないかな、と推測されるのですよ。
何より、15万馬力を叩き出すリシュリューと同じ速度を13万馬力強で、しかも排水量と船体幅で上回る艦が発揮できるかというと、正直難しいと思います。
(ビスマルク級のティルピッツが公試で30ノット出した時、彼女の機関は過負荷で15万馬力以上出してたそうですし)
また、長門型と加賀型はカタログ値が25ノットであるにも関わらずスピードレベル5を与えてあります。
これは、レイテ海戦時に27ノットで動き回る大和に対して低速なはずの長門が落伍しなかった史実を元に設定しました。
この史実を顧みるに、現実の長門型(及び就役した場合の加賀型)は、なんだかんだ言って26~27ノットは出せてたんじゃないでしょうか。
このあたり、カタログ値を高く見せようとした独伊(の企業)と性能を秘匿するためにカタログ値を低く見せようとした日本(の御役所)というお国柄が伺えて、ちょっと興味深いですね。




