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戦闘機総評

 本作における各国の戦闘機、特に主役たる日独両陣営の最先端機たるジェット戦闘機に関しては、ゲーム的な架空機がほとんどとなっています。

 そもそも、第二次大戦当時に実戦配備できていたジェット戦闘機が、ドイツのMe262とイギリスのミーティア、それにやや遅れて合衆国のP80程度しかないのですから、敗戦国である日独の航空機開発が架空のものとなるのは仕方ありません。

 とはいえ、ゲームの登場機体にある程度の信憑性を持たせるためには、性能面で相応の説得力を持たせる必要がありました。

 そのため、ドイツのジェット戦闘機に関しては、Ta183に代表される史実中の開発機を設定の軸に置きました。

 幸いにして、Ta183を設計したクルト=タンク博士が戦後にいくつかの機体開発に参加しているので、おおむねの流れだけは把握できた次第です。

 そうした面から機体の性能を導き出したわけですが、やはり後退翼の採用が絡むことで、ドイツジェット戦闘機の先進性が他国のそれを圧倒するのは間違いないと判断しました。

 後退翼機の優位性は朝鮮戦争で明らかになっており、本作の世界線では日独ジェット戦闘機の対決は、ほぼほぼドイツ機の完勝になるでしょう。

 日本側最新鋭(ゲーム後半にならないと登場しない)である十式戦であっても空戦力が12なのですから、後退翼の採用に数年の後れをとった日米主力機は、Ta183(および改良形のTa383)の持つ空戦力14に対抗することはできません(もっとも日米のジェット戦闘機は、そのほとんどがFB=戦闘爆撃機なのですが……)。

 直線翼機に対するMiG15の優位性みたいな感じですね。

 実際の数値データも、Ta183はМiG15の、Ta383はМiG17のものを流用しています。

 なので、真っ向から戦えば、日本側の大損害は必至です。

 ただし、広大な印度の戦場において、ドイツ戦闘機の設計思想、つまり基本的には邀撃機であるというそれが大きく脚を引っ張るのも確実でしょう。

 誤解している層も多いのでしょうが、ドイツの戦闘機、というより日米以外の戦闘機はレシプロ機も含めて基本的には防御兵器です。

 その大概が、侵攻してくる敵爆撃機への迎撃を主目的として設計開発されてきました。

 従って、戦場における滞空時間および短時間で戦場に到達するための巡航速度が重視され、長躯戦場に向かうのに必要な航続距離はかなり妥協されてきたのが現実です。

 具体的に言うと、高い巡航速度が追求されたことで、比較的低速の爆撃機に同行した際、燃料消費率の悪化する機体がほとんどというわけなのです。

 史実におけるDB系のエンジンなんかが、その好例ですね。

 ゆえに、彗星艦爆や三式戦にあれだけの航続距離を持たせられた愛知や川崎の設計陣は、もっと評価されていいと思います。

 なので、Ta383を除くドイツのジェット戦闘機は、空戦力が丸数字な純インターセプターとしてデータ化しました。

 高い空戦力は敵戦闘機を空中戦で制圧するためのものではなく、攻撃機や爆撃機を守る敵護衛機を突破するためのものってわけです。

 そのため、いわゆる戦爆連合という思想は、少なくとも欧州では希薄でした。

 バトル・オブ・ブリテンにおけるドイツ空軍のていたらくを見れば、それは一目瞭然でしょう。

 ルーデルの著書でも、スツーカ隊に戦闘機の護衛が付いてきたという描写はほとんどありません。

 だから、ドイツ軍の爆撃隊もまた、日本側の戦闘機隊によって大損害を被ることになるでしょう。

 ただでさえジェット機の護衛を受けない爆撃機がジェット機によって迎撃されるのですから、これは当然の帰結です。

 あのB29ですら、朝鮮戦争では多数が撃墜されたのですから。

 例外は空母戦くらいでしょうか。

 洋上航空戦力に関して、ドイツの大型空母はジェット艦上爆撃機であるHs132(空戦力⑧)を搭載しているので、護衛機をともなわない攻撃隊であっても、目標が烈風(空戦力5)や陣風(空戦力7)しか搭載していない機動部隊であれば、対艦攻撃が成功する確率もあります。

 ジェット艦上戦闘機であるHe500(空戦力⑪/迎撃力11。データはHe162のものを流用しています)も、旋風(空戦力11)が護衛に付いていない日本の攻撃隊に多大な損失を強いるでしょうしね。

 もっとも、こうした厳しい現実は本作の世界線におけるドイツ空軍も一応理解しており、対日戦に備えて急遽複合動力機であるHe535(空戦力9)を開発したのですが、日本側にジェット機が充実していない序盤を除けば焼け石に水だと思われます。

 なお、このジェットエンジンとレシプロエンジンを同時搭載した機体であるHe535は、一応史実における計画機です。

 普通に考えれば火葬機の一角に含まれるのでしょうけど、世の中というものはわからないものですね。

 また、ドイツのジェット戦闘機が持っているもうひとつの欠点は、カタログデータに重点を置きすぎたことで目に見えない信頼性や整備性に難を抱えていることです。

 これは史実のレシプロエンジンでも起こった出来事なのですが、ドイツ戦闘機の稼働率って案外高くないんですよ。

 ドイツ空軍パイロットの回想記で、主力戦闘機であるBf109の東部戦線での稼働率が7割程度だったという話を読んだこともあります。

 凝り性だったドイツ設計陣の悪癖だったのでしょうか。

 そんなわけなので、いまだ技術的に成熟していないジェットエンジンを搭載しているドイツ戦闘機は、整備値を平均より低く設定させていただきました。

 高性能の代替です。

 地味な弱点ではありますが、これは強力なドイツ空軍戦闘機隊の無視できない足枷になると思います。

 ゲーム内においても、日本側が損害を顧みず航空撃滅戦を繰り返せば、地上撃破されるドイツ戦闘機はかなりの数に及ぶでしょう。

 ラウンド毎に動けなくなる機体が増えていくのですから。

 この際、Ta152(空戦力8)を初めとする優秀なレシプロ戦闘機隊が奮戦するでしょうけど、やはり日本側のジェット戦闘機には苦戦を強いられること疑いなしです。

 この構図は夜間戦闘においても成立し、日本側の夜間爆撃隊は、モスキートや十式戦、ミーティアなど丸付きでない空戦力を有する夜間戦闘機を同行させてドイツ夜間戦闘機の制圧を図ってくる一方、ドイツ側には同種の機体が存在しません。

 He219やMe262は確かに強力な夜間戦闘機ですが、こうした流れの本質は阻止することができないと思われます。

 夜間爆撃は昼間爆撃と比較して効果が薄くなりますが、戦闘に参加できる戦闘機がNFのみとなる大きな利点も存在しています。

 これはドイツ側にとって、強力なTa183が使用できないことを意味します。

 もちろん、He219(空戦力⑤/迎撃力7)やMe262夜戦(空戦力⑦/迎撃力11)が奮戦するでしょうけど、モスキート(空戦力5)や十式戦(空戦力10)、ミーティア(空戦力9)などが爆撃隊に同行してくるようになれば、その活躍が大きく阻害されることは確実です。

 そうなれば、戦争後半における夜の空は、まず間違いなく日本側のもの。

 これもまた、ドイツ空軍にとって由々しき問題になると思われます。

 ドイツ空軍は、夜間爆撃で戦力を削られ消耗していく自軍の状況に頭を悩ませるでしょう。

 一方、そんなドイツ戦闘機(というより欧州一般)と異なる戦略環境を想定された日本の戦闘機ですが、こちらはイギリスの第一世代ジェット機を元に設定してあります。

 史実でまともなジェット戦闘機を開発できていなかったため、これはやむを得ない判断でした。

 ゲーム内史実としては、第二次日英同盟に際して三菱/ホーカーと中島/デハビランドの資本提携(後に合併)が行われ、シドニー=カムを初めとするイギリス技術陣が堀越二郎や小山悌ら日本側技術者にジェット機設計の指導を行うといった状況を想定しました。

 例外は、亡命フランス人技術者であるマルセル=ダッソーを招聘した川崎で、こちらはフランスの第一世代ジェット戦闘機を元にデータ設定しています。

 具体的には、旋風がホーカー・シーホークの、六式戦がデハビランド・バンパイアの、九式戦がダッソー・ウーラガンの、十式戦がデハビランド・ベノムのデータを流用しています。

 完全な架空機は震電改/七式戦(と、その夜戦型である旭光)ぐらいのものでしょうか。

 先述したとおり、後退翼の導入がドイツと比べて数年遅れている関係上、それらの空戦力はTa183に及ぶものではありません。

 ただし日本の戦闘機は、レシプロ・ジェットを問わず、戦闘爆撃機として大きな能力を有しています。

 これは、イギリスから技術導入した対地ロケットの効果が大きいです。

 史実においても日本陸軍航空隊は、新鋭の四式戦「疾風」による対地攻撃を多用しました。

 ドイツ空軍がわざわざ戦闘爆撃機(Fw190F/Gなど)を開発したのとは、大きく異なります。

 また、当初から広いアジア戦域を想定して開発されたことで、日本軍戦闘機はドイツ側のそれと比較して長い航続距離を与えられています。

 主としてドロップタンクの標準装備がもたらした優位性ですね。

 これは日本軍の航空戦力に豊かな柔軟性を与え、ドイツ側防空戦力に厳しい負担を強いる結果をもたらすことと思われます。

 このあたりは合衆国のケースでも同様で、P80(空戦力10)やP84(空戦力11)、またはF9F(空戦力10)なんかは日本軍機よりも大きな航続距離を持った戦闘爆撃機として設定されています。

 しかも、より大きな搭載力を与えられたことで、日本軍機を上回る強力な対地攻撃力まで獲得しています。

 レシプロ戦闘爆撃機であるP47に至っては、対地攻撃力8という並の爆撃機を超える数値を叩き出す始末。

 まさにヤーボの脅威と言ったところですね。

 なお、本作の世界線においてP51は誕生していません。

 第二次大戦中のイギリスが合衆国に戦闘機の提供を要求しなかったことでノースアメリカン社がP51の開発に着手しなかったことが決め手です。

 従ってノースアメリカン社は勢力の拡大に成功せず、結果としてP86=F86やFJが制作されることもありません。

 仮に自社設計で同機を開発していたにせよ、イギリスからマーリンエンジンの提供が成されていない以上、史実の合衆国陸軍航空隊は同機に興味を示さなかったでしょう。

 ベルやカーチスといった従来の企業も、新鋭機の開発に失敗したことで衰退。

 結果として、ロッキードとリパブリックによる寡占状態が発生するものと予想しました。

 また対日戦が発生しなかったことで、陸軍航空隊の空軍化は遅れるものと判断しました。

 そのため、機体にはいわゆるFナンバーではなくPナンバーが与えられています。

 一方、海軍機のほうはF4Uの艦載機化が難航したことで、F4F→F6F→F8Fというグラマンの覇権が成立しており、順当にF9Fが主力ジェット艦載機として配備されることとしました。

 戦争がなかったことでマクダネル社の台頭はノースアメリカン社同様に発生せず、のちにヴォート社がグラマンの牙城に割って入ることになったとしても、それは随分あとの話になったでしょう。

 なのでF2Hはゲーム上に登場させませんでした。

 可能性としては採用の可能性は十分あったと思うんですけど、戦争がなければ冒険しないのが軍隊という官僚組織ですしね。

 で、こうした大国陣の影に隠れてしまってるのが、仏伊という二線級の列強陣です。

 戦争に敗れてドイツの属国と化したフランスは、自国の航空産業を抹殺され、ドイツの航空機を採用することを強いられています。

 ここで面倒くさいのがナチス政権下での勢力争いでして、Ta152~Ta383で我が世の春を謳歌するフォッケウルフ社とは裏腹にMe262以降ろくな機体を生み出せていないメッサーシュミット社は、フランス相手の輸出用戦闘機に活路を見出すようになりました。

 ロビー活動で同国の戦闘機市場を獲得したメッサーシュミットは、ドイツ空軍における戦闘機コンペで敗れた自社製品を、ほとんど無理矢理フランス空軍主力戦闘機の座に押し込むことに成功します。

 速さだけが取り柄で機動性ではBf109に劣ると評されたMe309(空戦力6)。

 どう考えても欠陥品でしかない、ロケット戦闘機Me263(空戦力⑫/迎撃力9)。

 戦闘機コンペでTa183に敗れた、いわゆるP1101であるMe362(空戦力⑬/迎撃力11)。

 どれもこれもドイツ空軍の基準では二線機なのですが、日米の戦闘機と比較した場合、決して劣ったスペックではありません。

 航続距離0(つまり同一ヘックスのみが行動範囲)というMe263を別にすれば、日本軍の爆撃隊にとっては十分以上の脅威になること疑いなしです。

 ただ、夜間戦闘機が旧式のDo217(空戦力②/迎撃力5)しかないのは問題で、夜間爆撃に対する脆弱さはドイツ空軍以上になるでしょう。

 こうした面でフランス以下なのがイタリアです。

 彼の国はなまじドイツの属国化を逃れたため、下手なプライドが災いして新鋭戦闘機の自国開発にこだわってしまいました。

 その根底には、ムッソリーニによるヒトラーへの対抗心もあったでしょう。

 そのため、レシプロ戦闘機こそG.56(空戦力7)を主力とする一線級の機体を揃えられたものの、ジェット戦闘機に関しては日米の基準としても劣悪なG.70(空戦力⑨/迎撃力9)を実戦配備するのがやっとという状態を設定しました。

 ドイツ製液冷エンジンを無理なく生産している事実から工業レベルが高いと評価されてるイタリアですけど、実際はエンジンの設計レベルでは日本に劣るものでしかありませんでした。

 史実においても、上で上げたレシプロ戦闘機もドイツ製エンジンあってのものですし、日本でさえ達成できた1500馬力級エンジンの自国生産にも辿り着くことができていません。

 従って自国製ジェットエンジンのレベルも相当低いものになるだろうと予想して、G.70の性能(数値はSu-9のそれを流用しました)は決めさせてもらいました。

 夜間戦闘機に関してもCa.331(空戦力④/迎撃力5)の性能では力不足で、日本側の夜間爆撃隊にとって大きな脅威にはなり得ないでしょう。

 最後に正統イギリス・自由イギリスの解説で締めさせていただきます。

 正統イギリスは、ドイツによる占領政策と自由イギリスへの技術者や各種データの脱出によって航空機産業が壊滅し、旧式の航空機を再整備する形でしか航空戦力を維持できなくなっています。

 レシプロ戦闘機としてみればスピットファイア(空戦力7)はなかなか強力ですが、やはりジェット機を相手取るには非力に過ぎます。

 夜間戦闘機であるボーファイター(空戦力2/迎撃力4)も力不足で、戦力としてはないよりマシなレベルに留まってる始末です。

 その一方、最先端のエンジン設計図やスタッフを確保できた自由イギリスは、日本帝国との密接な連携をもって相応の航空機開発を行うことができました。

 ミーティア(空戦力11)の存在がその好例です。

 ただし、日本と共通の採用機体であるバンパイアやベノムでななく独自機体の採用にこだわったことで補給面において負担が増えただろうことは否めなかったでしょう(ルール上でペナルティがあるわけではないのですが)。

 また、地味な存在ながらモスキート夜戦(空戦力5/迎撃力6)の存在は、Me262夜戦が登場するまでのドイツ側夜間戦闘機にとって、大きな脅威となり得ます。

 総じて、この時代はレシプロからジェットへの過渡期であり、ジェット戦闘機がいかにレシプロ機を圧倒する戦闘実力であっても、主に戦闘行動半径の問題から、作戦上はレシプロ戦闘機の存在を無視することができません。

 特に四式戦やP47のような長距離を飛べる戦闘爆撃機に対応するのは、短い航続距離しか持たないジェット戦闘機にはなかなかつらいと予想します。

 こと飛行場密度の低い印度戦線では、ドイツ側は強力なジェット戦闘機部隊の配置に頭を悩ますこととなるでしょう。

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