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第6話 出立

9月25日 MFブックスより第1巻発売です。鬼のような改稿、そして書き下ろし頑張りました!

是非、手にとっていただけるとありがたいです。

特典はTUTAYA様、とらのあな様、メロンブックス様で購入していただけるとついています。


 二日ほどリアンで帝都について教えてもらうことになった。

 とはいえ、一人で出来ることは限られており、まずは帝都の情報を入手することを第一とし、隙あらば王城へと侵入するということになっている。

 シャルからは王城からの秘密通路について教えてもらった。


「これは緊急時に王城から脱出するためにあるもので、王族とその側近しか知らないので、何かの時に役立つかと」


 広げた羊皮紙に王城の間取りなどが簡易的に描かれており、その場所へマークをする。

 詳細な図面は、王城から持ち出せるはずもなく、シャルやアル、そしてガウロスの記憶から描き出されたものだ。

 まとめられたものを次元収納(ストレージ)へ仕舞い、リアンを出る準備をする。


「本当に一人で大丈夫なのか……?」


 ガウロスは俺のステータスを知らない。職業についても四人だけの秘密にしてある。

 だからこそ強いとはいえ一人で向かおうとする俺のことを心配していた。

 しかし心配なのは俺のことより三人だ。


「それよりも、三人で大丈夫か……? というだけ野暮だったな……」


 三人のレベルはリアンに来るまでにさらにレベルが上がっている。もしかしたら勇者にも勝てる可能性がある。それでも自分が一緒にいられないことに不安が残る。

 

「だ、大丈夫です。私たちも強くなりました! それに……帝都の両親も心配ですし……。トーヤ様に頼るしかないのが申し訳ないくらいです……」

「トーヤさんがいない間、このリアンをしっかり守りますから」

 

 二人の表情はしっかりと自信を持っていた。それに比べてナタリーは――――出された菓子をパクパクと食べていた。

 

「…………」

 

 思わずため息が漏れる。

 こいつは……。

 思わずその姿を眺めていると、ふとナタリーと視線が交差する。

 

「トーヤ、大丈夫じゃ。わしがここにおるのだからな……。帝都のことは任せたぞ」

 

 確かにナタリーはシャルとアルにレベルを抜かされたと知り、リアンまでの道中、鬼神の如くレベル上げに励んでいた。初日に二人のレベルを抜かしてからも、手を抜くことはなかった。

 

 まぁナタリーがいれば大丈夫か……。

 

「では、これから帝都に向かう」

 

 俺の言葉に皆が頷いた。

 屋敷を出ると、すでに兵士がコクヨウのと共に待っていた。

 俺の姿が見えると、近づきあいかわらず頭を甘噛みしてくる。

 

「こんな時くらいやめてくれよ……」

 

 俺はよだれを拭うが、ガウロスは感心した表情をしていた。

 

黒曜馬バトルホースにここまで好かれるとはな……」

 

 そんな言葉を聞きながらコクヨウに跨る。

 

「ここのことは頼んだよ。行ってくる」

「帝都を頼みました」

「気をつけて」

「任せたぞ」

 

 各々言葉を聞き、コクヨウをゆっくりと進ませる。

 リアンを守る門を抜け、それからスピードを上げていく。

 真っ直ぐに帝都に向かいたいが、そうするとリアンを攻めていた兵士に会う可能性もある。

 少し大回りをし、森沿いを駆け抜けていく。

 サランディール王国からきた冒険者として帝都に向かう必要があるからだ。

 

 ガウロスが予想した通り、ジェネレート王国の兵士と会うこともなくサランディール王国との通路まで辿りついた。

 ここからは歩きだ。

 流石に目立つわけにもいかず、コクヨウに乗って帝都に向かえばすぐに噂になってしまう。

 もしかしたら帝都を占領しているジェネレート王国の兵士に取り上げられる可能性もある。

 急ぎ気持ちもあるが、コクヨウに餌と水を与え、少し休憩してから次元収納(ストレージ)に入ってもらう。

 

「よし、これから向かうか……途中に村もあると言っていたしな……」

 

 俺はリアンでもらったルネット帝国の地図を確認しながら、少し早歩きで北上していく。

 

 ◇◇◇

 

 歩き始めて半日ほどで麦畑が見えてきた。

 まだ収穫時期には早いので荒らされた様子もなかった。

 そしてすぐに村が見えてくる。

 日も傾いてきて空は茜色に染まっていた。

 

「泊まるとこがあるのかな……」

 

 俺は誰も守っていない門を潜る。

 村は賑やかではないが、人もそれなりにいた。家が数十軒程度集まって建っており、その一番大きな家へと向かう。

 村の中は若い男は誰もおらず、子供と老人ばかりであり、チラチラと視線が集まってくる。

 そんな視線を感じながら一番大きな家へとたどり着いた。

 扉を軽くノックし、声をかける。

 

「すみませんー」

 

 俺の言葉に奥から「はーい」と声が返ってきた。女性の声だった。

 そして扉が開かれ現れたのは、まだ十代後半であろうか、俺と変わらないほどのまだ若い女性であった。

 

「すみません。帝都に向かう途中ですが、この村で一晩泊まるとこは可能でしょうか……?」

 

 俺の言葉に、その若い女性は少し悩んだが、すぐに表情を明るくする。

 

「宿や空き家はないけど、この家に泊まっていかれますか? お爺ちゃん、いえ、村長に聞いてみますが」

「泊まらせていただけるなら、どこでも構いません」

「では、村長もおりますのでどうぞ」

 

 女性に案内されるまま、家の中へと入る。一番奥の部屋に行くと壮年の男性が机で書き物をしていた。

 

「お爺ちゃん、この人がこの村で一泊したいんだって……」

 

 女性の言葉に一度仕事を止めて顔を上げる。

 俺のことをじっくりと見てから口を開く。

 

「泊まるのは構わないが、戦争で大したもてなしもできないが……。若いのは兵士として村を出て……戻ってきておらん……もう帰ってくることもないだろう、が……」

 

 ルネット帝国はジェネレート王国に戦争で負けた。

 この村はサランディール王国に面しているから直接的な被害はないのだろうが、国を守るために若い者は兵士に志願し、村を出て行ったそうだ。

 戻ってこないということは言葉にしなくても理解している。

 これが戦争か……。

 少しだけ気持ちが暗くなる。 


「できれば世話になりたい。食事は、食材を提供するのでどうだろうか……? 魔物の肉なら提供できる」

 

 俺の言葉に村長は少しだけ笑みを浮かべる。

 

「それはありがたい。若い者がいなくなってから狩りにもいけず、野菜や麦ばかりだったからのぉ……。少しでも提供してもらえるなら助かる」

「それなら一体丸々提供するから、村の人にも配って欲しい。それくらいしかできないしな」

 

 丸々一体と聞いて少女も目を輝かせ笑みを浮かべる。

 

「お爺ちゃん、私、村の人を集めてくるね!」

「あぁ、そうだな。客人が肉を提供してくれることを伝えてくれ。解体道具はわしが出しておこう」

 

 村長とともに一度屋敷を出る。

 

「それで魔物の肉とは……」

 

 魔物の肉を提供するということで、馬車で来たと思ったのだろう。手ぶらでいる俺を見て首を傾げる。

 

「あ、ちょっとまってくださいね」

 

 俺は次元収納(ストレージ)から森で捕れた猪型の魔物を丸々一体出した。

 

「おぉ……」

 

 流石の村長もその大きさに驚きの声を上げた。

 取り出した魔物はフォレストボアと言い、冒険者ギルドでもCランクに分類される魔物だ。体長は三メートルほどあり、この村の住人程度なら全員に行き渡ってもまだ余るだろう。

 

「これほどまでの獲物を……感謝する……えっと……」

「あ、まだ名乗ってなかったですね。トウヤです。サランディール王国でBランクの冒険者です」


 魔物の前であたらめて自己紹介をした。






いつもありがとうございます。

2巻の原稿をぼちぼち書きながらWEB更新頑張ってます。

というか、WEB書かないと2巻分がぁぁぁぁぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 急ぎ気持ちもあるが、 →急ぐ気持ちも有るが、
[一言] サランディール王国との通路まで辿りついた。  →サランディール王国との街道まで辿りついた。
[一言] 兵士がコクヨウのと共に待っていた  →兵士がコクヨウと共に待っていた
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