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第22話 逃避行

3月25日、本日より別投稿作品『転生貴族の異世界冒険録』のコミカライズスタートです。

……すみません。公開時間はわかりません。

 

 俺の言葉に震え上がっていた、ギルドマスターが叫ぶ。

 

「捕らえるのだっ! いや、生死は問わん! いけっ!」

 

 その言葉に、固まっていた兵士たちが剣を抜き身構えた。

 相手は一応、この街の兵士たちだ。殺すわけにもいかない。

 俺は身構えて、相手の反応を待つ。

 三人が同時に斬りかかってくるが、俺は身を交わし、一人は腹に一撃をいれ、一人は蹴り飛ばす。そしてもう一人は蹴り飛ばした兵士に巻き込まれ転がっていく。

 

「全員でいくんだっ!!」

 

 ギルドマスターは声をあげるが、誰も動こうとしない。実力差はわかっているのだろう。

 さらにコクヨウが二人を殴り飛ばしたところで、再度、火の弾を浮かばせる。

 

「これ以上は、手加減できない。死んでも文句はないよな」

 

 俺の言葉に、兵士たちは一歩ずつ下がっていく。

 

「くそっ。待っておれ。お前たち一回下がるぞ」

 

 ガランの言葉に、俺は心の中でホッとするが、表情には見せないようにする。

 

「そこに転がっている奴らも連れて行けよ。邪魔だと、コクヨウが踏み潰すぞ?」

 

 まだ残っている兵士が、転がっている兵士を引っ張り逃げるように去っていった。

 

「……流石にこれは早く逃げないとやばいな……」

 

 コクヨウの首を撫でて「助かったよ。ありがとうな」と伝えると、一鳴きし、尻尾を振りながら厩舎へと戻っていった。

 俺は扉を開け、屋敷の中に戻る。

 ホールでは、武器を身構えた三人が並んでいた。

 

「どうしたんだ? そんな顔して……」

「捕らえにきたのじゃろ? わしらも戦うぞ」

 

 ナタリーの言葉に俺は首を横に振る。

 

「もうお帰りになってもらった。まぁ力でだけどな。それよりも、すぐに逃げる準備をするぞ」

 

 荷物を持ってくれば、俺の次元収納(ストレージ)に仕舞うと伝え、各自部屋から荷物を持ってきてもらった。

 二人の荷物を仕舞い込む。ナタリーは自分で持っているから、あとは店の荷物だけとのことだ。

 

「フェリス、この屋敷を出るつもりだ。石に宿ってもらえるか?」

「うん……」

 

 フェリスは俺に近づき石に触れると、吸い込まれるように消えていった。

 

「よし、これで問題ない。そろそろ行くぞ」

 

 俺の言葉に頷き、屋敷を出る。コクヨウも察してか、厩舎から出てきた。

 

 ……それにしても、この屋敷もったいないよな。風呂もあるし、部屋もフェリスのお陰で綺麗なままだし。

 誰もいない屋敷の玄関の扉を触り、『持っていければいいのにな……」とふと思う。

 ……流石にこれはな。と、思って収納を念じるとーー。

 

 屋敷が消えた。

 

「「「えっ……」」」

 

 シャル達三人が唖然とした表情をする。

 目の前には、建物の基礎すら一緒に消えており、あるのは土の土台だけとなっていた。

 

 ……あれ? 次元収納(ストレージ)に入っちゃった……?

 脳裏に浮かぶ中身を探していくと……あった。『屋敷』と表記されたものが。

 

「トーヤ、お主……どんだけの容量があるのじゃ! あとでわしに聞かせるのじゃっ!」

 

 自分でも信じられないが、“モノ”と認識出来れば入れられるのであろう。現に家はあったくらいだからな。

 俺は馬車を次元収納(ストレージ)から取り出して、コクヨウに繋げていく。

 馬車を取り出したのを見てナタリーが呟く。

 

「……もしかしてその馬車も……」

 

 ナタリーの言葉を聞き流すように、俺は出発の準備を続けていく。

 

「よし、出るぞ。最初にナタリーの店にいくぞ」

 

 三人が馬車に乗り込み、俺は御者台に乗るとコクヨウは進み始める。

 俺は街中でも探査(サーチ)を使い、辺りを注意しながらナタリーの店へと辿り着いた。

 

「トーヤ、お主、まだ次元収納(ストレージ)に余裕があるじゃろ? 中にあるもの入れれるだけ収納するのじゃ」

 

 シャルとアルには馬車に残って周りの警戒をしてもらい、ナタリーと共に片っ端から次元収納(ストレージ)にしまい込んでいく。

 

「これで終わりじゃ。十年以上ここに住んだが、何もないと広く感じるのぉ」

「そんな感傷に浸ってる時間はないぞ。早く出ないと門が閉まる」

「そうじゃのぉ。では、行くか」

 

 俺とナタリーは馬車に乗り、コクヨウに合図を出す。

 日はすでに傾いて、夕刻近くとなっていた。

 街の出入り口の門は、夕刻には閉じられ、次の日の朝までは開くこともない。

 

「この時間から街を出るのか?」

「えぇ、ちょっと急ぎの用が出来ましてね」

「そうか……夜は魔物も出るし、気をつけるんだぞ」

「ありがとう、気をつけていくよ」

 

 門にいた衛兵に俺は手を振り、馬車を進ませ街を出た。

 まず目指す先は、西の街ダンブラーだ。本当は街でもっと食材を買いたかったが、代官たちが来た事で逃げるように街を出た。これから森を抜け、ルネット帝国に向かうには心許なかった。

 本当ならそのまま北上すれば、ルネット帝国へと向かえるが、関所があり兵士も詰めている。

 普通に抜けるのは難しいだろう。そこでダンブラーを経由して、食材などを確保し、必要な物を買い揃えてから森を抜けていけばなんとかなるかと考えた。


 魔法で明かりを確保し、馬車で出来る限り進み、街からある程度離れた場所で野営をすることにした。

 少しだけ森へと入り、木々がまばらな場所を見つけて、三人にはここで一泊すると伝えた。

 そしてシャルとアルの特訓の時に使った”家”を取り出す。


「とりあえずここで一晩寝るぞ」


 俺の言葉に二人は頷く。しかしナタリーは――。


「なんでこんなもんが入ってるのじゃぁぁぁ!!」


 暗い森の中でナタリーの声が響き渡ったのだった。


 

 


いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ・・・矢張り入ったか!そんな気はしていたよ! どうせ水下水トイレは魔法で処理してたのだろう? いっそ馬車も空間拡張をすれば良かったのに! そうすれば過眠ぐらいできたのに!
[一言] ナタリーの店も収納すれば良かったのに。
[気になる点] さらにコクヨウが二人を殴り飛ばしたところで、再度、火の弾を浮かばせる。 ⇒馬は蹴り飛ばす事は出来ても、殴る事は出来ない。 腕は無いからね。
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