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第11話 ギルド職員の苦労


 座ったエブランドは鎧を見つめ、そして俺に視線を向ける。


「どうして戦闘になったんだ。聞かせてもらえるか?」


 その眼差しは真剣そのものだ。


「実はオークの群れと戦った時に――――」


 オークに襲われそうになっていた少女二人を救った後、兵士たちが現れ、越境しているのを隠すために殺されそうになったこと。

 その兵士たちを始末して全て次元収納(ストレージ)に保管してあることを伝えた。

 もちろんシャルとアルの二人を追ってきたとは言うつもりはない。

 エブランドはため息をつき背もたれに寄りかかる。

 

「……そうか、それなら仕方ないな」

「しかし、サブマスター、もしかしたら……」

「うむ、ギルドマスターと、領主様にも話をしておく必要はある。流石にこのまま惚ける訳にもいくまい」


 少しの間無言が続いたが、エブランドは諦めたように口を開く。

 

「すまんが、兵士の遺体は少しの間、預かっていてくれ。私の方から街の上層部に掛け合ってみよう。それと冒険者の遺体はすぐにでも引き取ろう」

「わかった。案内してくれればそこで出す」

 

 話が終わると、エブランドは席を外し、ミリアの案内で地下室に案内された。

 

「こちらに遺体をお願いします」

 

 ミリアの言葉に頷き、二人の遺体を出す。白いシーツで包んでいるが、染み出た血で赤く染まっていた。

 

「トーヤ様、ありがとうございます。ギルドカードがあるので、身内がいればギルドで引き渡しを行います。いない場合は共同墓地に埋葬をする事になります」

「わかった。それで……魔物の素材は? 結構な数があるんだが……」

「それは倉庫で……また怒られるかもしれませんが……」

 

 ミリアの言葉に思わず苦笑してしまう。以前も大量の素材を持ち込んで止められていたからな。

 同行して倉庫に行くと、そこまで素材は溜まっていなかった。

 しかし、倉庫にダロックが俺の顔を見ると引きつらせた。

 

「おい、ミリア……もしかして……」

 

 その言葉にミリアは大きく頷いた。

 

「おいっ! お前ら! 作業を一度やめてこっちに集まってくれ」

 

 ダロックの言葉に三人の職員が集まってくる。

 

「よし、トーヤ、出してもいいぞ。ギルド職員は基本的に口は堅い。気にしなくていい」

 

 俺は頷くと次元収納(ストレージ)から次々と魔物の素材を出していく。

 

 ……まずは今回の素材と。ついでに溜まっていた素材も出しちゃうか。

 そんな事を考えながら魔物を並べて行くと、小山が一つ出来たところで職員たちから「おお、すげぇ」と声が上がる。

 しかし、その山が三つ目になったところでダロックから声が掛かる。

 

「待ってくれ! そこまでだっ! これ以上は無理だっ!! どんだけの容量があるんだっ」

 

 職員たちも想像以上の多さに唖然としている。

 

「ミリア、今日はもうこれで限界だ。誰か、ギルドの魔法袋いくつか持ってこい! お前ら、当分残業だからな!」

 

 職員たちからは非難の声が上がるが、俺は聞かない振りをする。一人が魔法袋を取りに走っていく。


「あ、これだけは出させてくれ」

 

 そう言って、オークジェネラル、真っ二つにしたオークキングを取り出した」

 

「とりあえずこんなもんで」

 

 満足してダロップに視線を送ると、目元がピクピクと震えている。

 

「……キングにジェネラルじゃねーか……。 こ、これをトーヤ、お前一人で……」

 

 頷くと、ダロップは大きくため息をついた。

 

「ミリア、換金の書類は明日以降だ。これの処理をしちまわないとな。お前ら仕分けからやるぞっ」

「「おうっ」」

 

 作業に入った職員たちを見て、またミリアに個室に案内される。

 

「トーヤ様、流石にあの量とは……。換金には暫く時間をください」

「それは構わない。別に今は資金に困っていないからな」

「あと、例の件ですが、ギルドの対応が決まったら教えますので、たまには顔を出してくださいね」

「あぁ、暫く依頼は受けるのを控えるつもりだが、ギルドには顔を出すようにするよ」

「はい、よろしくお願いします」

 

 ミリアに挨拶し、ギルドを後にする。

 居候が増えたから食材でも買って行くか。と思いつつ市場に立ち寄り屋敷へと戻った。

 

「ただいま」

 

 屋敷に戻ると、まずはフェリスが迎えてくれる。

 

「……おかえり、トーヤ」

「ただいま、フェリス。二人はまだダイニング? それとも部屋に?」

 

 フェリスは無言でダイニングの方を指差す。

 

「ダイニングね、ありがとう」

 

 フェリスの言葉に頷き、ダイニングに入る。

 

「二人ともただいま」

「お帰りなさい、トーヤ様」

「トーヤ様、お帰りなさい!」

「……遅いぞ、トーヤ」

 

 ダイニングには帰ったはずのナタリーもいた。

 

「ナタリーも来てたのか。ギルドに報告に行ってた。一応、調査の依頼だったからな」

 

 皆は紅茶を飲んでいたので、俺も自分の分の紅茶を入れ席に座る。

 

「そうじゃったか、ギルドはどうじゃった?」

「一応報告はしてある。あくまで越境したジェネレート王国の兵士とかち合わせして、証拠隠滅のために襲われたから戦ったとな」

「……それなら問題はあるまい。それでな、トーヤ、わしもこの屋敷に住む事に決めたぞ」

 

 予想外のナタリーの言葉に、思わず口に含んだ紅茶を吹き出した。






いつもありがとうございます。

やっと文章量が10万文字超えました。

でも、まだ先は長いですよ。

これからもよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
な、なぜナタリーまで(二人の保護者枠なんでしょうね本人的には・・・見た目はおこちゃまww)
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