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第7話 やはりゲームのアイテムはチートでした。


 ――理解が出来ない。

 アルという少女から発せられた言葉に俺は理解が追いつかなかった。

 番い? 意味は確かにわかる。

 しかし、今出会ったばかりの見知らぬ相手、しかも助けただけの俺に求婚をする奴がどこにいるのだ。

 思わず苦笑しか出来ない。いや、美人ではあるんだけど……。


「……いや、いないが、それは今関係するのことなのか……?」

「すみませんっ、アルは、アルの種族は強い相手を求めてしまうのです。助けていただいたのに失礼しました」


 アルの代わりにシャルが説明してくれる。

 シャルも頬を染めてはいるが、問題はなさそうだった。

 シャルはアルの肩をゆすると、ハッと正気を取り戻した。

 そして俺に視線を送り、深々と頭を下げた。


「あわわ……、申し訳ございません……。どうしても獣人の血が疼いてしまって……」

「……その件についてはわかった。これから街に戻るが同行できそうか?」

「はい、勿論お願いいたし――」


 グゥゥ……と言葉を遮るようにお腹の音が響く。

 その音にシャルは頬を紅く染め視線を逸らした。


「……まずは、食事にするか。スープならあるからちょっと待ってろ」


 俺は次元収納(ストレージ)より鍋を取り出し、二つの器にスープを注いでいく。

 簡易的なテーブルと椅子も取り出して、その上にスープとパンをいくつか並べた。


「こんな場所だからな。これくらいしか用意できないが……」


 二人を誘導し、席に座らせた。アルはシャルに視線を送った後に、スープを見て生唾を飲み、スプーンで掬い流し込んでいく。


「うぅぅぅぅ……美味しいです……。あったかくて美味しいです……」

「本当に美味しいです……」


 彼女たちはパンを齧りながらあっという間に食事を平らげていく。


「もう満足ですぅ……」

「久しぶりにこんな暖かい料理をいただきました」


 満足そうにする二人に俺は笑みを浮かべる。

 

「よし、そろそろ戻ろうか。ここからだと街までは結構あるから」

「はい……」

「よろしくお願いします」


 荷物を次元収納(ストレージ)へ仕舞い、出発準備をする。と、言っても手ぶらなのだが。

 

「こっちだ。ついて来てれくれ」

 

 俺が先頭に立ち探査(サーチ)を使い、魔物の位置を探りながら街へと向かってゆっくりと歩いていく。

 最低限の魔物だけを倒し、なるべく魔物を避けながら進む。


 ――そして三時間後。

 

「やっと森を抜けたっ!」

 

 森を抜け広がる草原を見て思わず俺は声に出す。

 二人に気を使いゆっくり歩いたせいか、すでに日は傾き空は赤く染まっていた。

 振り返ると、シャルとアルの二人は涙を流している。

 

「シャル、やっと抜けれた……これでやっと……」

「えぇ、ナタリー様に会ってお父様を……」


 二人が小声で話し合うのを聞かないようにして俺は考える。

 ……この時間からだと、街に着く頃には門は閉まっている。どっちにしろ野宿だろう。

 街の近くで野宿をしてもいいが、あのテントはあまり人に見せたくない。

 

 ――ましてやコクヨウなんて出せない。


 でも、あの子達に外で寝ろとは流石に言えない。

 ……仕方ない。口止めだけしておくか。

 

「二人ともちょっといいか。今から街に戻っても門は閉まって入ることは出来ない。ここからちょっと離れたところで一晩明かして明日に街に入ろうと思う」

 

「……わかりました。トーヤ様にお任せいたします」

 

 頷いたのを確認し、俺は歩みを進める。そして森から少し離れた場所でキャンプをすると伝えた。

 

「それで、一つ約束して欲しい。俺の次元収納(ストレージ)についてや、中身について他言無用で頼む」

「……わかりました。お約束します」

「はい、わかりました」

 

 二人が頷いたのを確認し、俺は次元収納(ストレージ)からテントを取り出す。

 見た目は普通のテントになっている。

 

「二人はこの中で寝てくれ。俺は外で見張りをするから」

「そんな……助けていただいて、そこまでしてもらうわけには……」

 

 シャルの言葉に俺は首を横に降る。

 

「流石に一緒に中で寝る訳にもいかない。中は見てもらえればわかるが、十分に休憩できると思う」


 俺の言葉に興味が惹かれたのか、二人はテントの入り口を開け中へと入る。

 

「なんですかこれっ!!」

「すごーい!!」


 テントの中はソファとベッドがあり、見た目と違い中は広々としている。

 想定外の事に二人から驚きの声があがる。


「トーヤ様は……高名な冒険者なのですか……? こんなテント初めて見ました。まさか魔道具(マジックアイテム)とは……」

「私もこんなテントは初めてです……」


 驚く二人にその中で休むように伝え、夕食の準備を始める。

 薪すらも次元収納(ストレージ)から取り出し、組み上げると魔法で火をつける。

 テーブルや椅子を取り出し、配置すると鍋とパンを取り出し、器によそっていく。

 

「簡単な物ですまないが食べてくれ」

「いえ……こんな場所で暖かい食事をいただけるなんて、トーヤ様には感謝しかございません」


 二人は席に座ると、両手を組み祈りを捧げてから食事を始めた。

 何か聞こうとも思ったが、ナタリーに会うまでの付き合いになるだろうし、下手に深入りしないと決め詮索することはやめた。

 食事は済ませ早く休むように伝えると、申し訳なさそうな顔をしながらテントに入っていく。

 

 テントは魔物避けになっており、近づくことはない。

 俺は薪をさらに追加し、敷物を敷き横になる。

 

「明日は早く起きないとな……」

 

 そんなことを考えながら眠りへとついた。

 

 

 

 朝日の眩しさが瞼を通し思わず起きてしまう。

 この世界に来てから正しい生活リズムを送ってるな、と苦笑しながら身体を起こす。

 テントの中では二人ともまだ眠っていた。

 起き上がった俺は顔を洗い、まず二人が起きる前にやらないといけないことをする。

 

「コクヨウおいで」

 

 次元収納(ストレージ)からコクヨウを出し、一緒に――馬車も出す。

 アイコンであるのは知っていたが、今まで出すことはなかった。しかし二人の同行者がいる為今回初めて出してみた。

 馬車は御者台があり、中は六人乗りになっている。

 さすがゲームアイテムなのか、アブソーバもついており、車輪はタイヤとなっている。

 

「これ大丈夫かな……」


 貴族が乗ってもおかしくないと言えるほど豪華な馬車に俺は苦笑する。

 苦笑している俺の頭を、いつものように甘噛みしてくるコクヨウの首を撫でていると――。

 

「これは一体何なんですか!?」

 

 振り返ると唖然とした表情のシャルとアルがいた。






いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 餌付けフラグが立ってるんですね。
[気になる点] オークの集落で冒険者の惨状を目の当たりにし、追手の兵士も真っ二つになって錆びた鉄の匂いが充満し、更に主人公がゲロッた場所で死骸と一番縁遠い筈の王女の腹が鳴るとか、血で悲鳴あげてたのに王…
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