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第5話 運命、いや、迷惑な出会い


 二人の悲鳴に俺は困惑する。

 何故、助けたはずなのに……?

 

 ――しかしその答えはすぐに出た。

 

 二人は身を震わせながら、俺を指差す。俺は自分の事を見下ろすと――。


 オークの返り血で血塗れであった。

 白いローブが真っ赤に染まり、両手も血塗れ、頬をなぞると付くのは血だけ。

 そう――全身真っ赤に染まっていた。

 

「あ、ごめん……」

 

 思わず少し距離を取り、ローブを脱ぎ水魔法で顔や手を洗っていく。年頃の女性が見ているが、背に腹はかえられない。

 上着を脱ぎ、確認した後、新しい服を取り出して着込んだ。

 自分の身なりを再度確認。よし、これで問題ないだろう。


 振り返ると、二人は頬を紅く染めていた。

 そんな二人に再度声を掛ける。


「――それで、大丈夫ですか……?」


 呆気に取られていた二人が顔を引き締めた。


「あっ、はいっ、助けてくれて……ありがとうございます」

「もう終わりだと……本当にありがとうございます」


 良く見ると一人は水色の髪を腰まで伸ばし、同じような青い瞳の少女、年は俺と同じ位であろうか。

 もう一人はボロボロになっているが鎧を着て、金髪を肩で切り揃え、羊のような角が頭から出ている。

 魔物は討伐したが、獣人の騎士はお礼を言うが、まだ警戒しているようだ。

 さりげなくもう一人の少女を庇う様にしている。

 俺はこの状況では仕方ないだろうと思い、少し距離を取りながら話しかける。


「それならよかった……ちょっと待っていて。やることがあるから……」


 数か月冒険者として生活をして、人の死に何度も向き合った。

 慣れたくはないが、冒険者をする以上、慣れるしかなかった。

 オークたちを次元収納(ストレージ)に仕舞いながら、遺体を弔っていく。

 遺体の前に座り、手を合わせ冥福を祈ったあと、道具袋などを漁ってギルドカードを確認する。

 そして白いシーツを広げ、そこに遺体を置き包んだ後に次元収納(ストレージ)に仕舞っていく。

 四肢がない遺体もあったが、吐き気を我慢しながらも包んでいく。

 三十分くらいであろうか、無言で作業をしているといつの間にかオークの死骸は全て仕舞い終わっていた。


「――よし、これで終わりっ」


 冒険者の遺体はギルドに引き渡し、身内がいれば引き渡してくれるだろう。いない場合は共同墓地に埋葬される。

 俺のように次元収納(ストレージ)がない場合は、遺品だけ取り、遺体はその場で埋めたりされていた。

 

 ここでの用事が終わり、振り返ると唖然としてる二人がまだ、同じ状態で座っていた。


「――それで、君たちは……? これから街に戻るけど……」

「はっ、これは申し訳ない。私はルネット帝国の近衛き――」

「アルっ!」

 

 騎士風の少女が自己紹介をしようとしたところで、後ろにいた少女が止めた。

 

「あっ……、私はアル、後ろにいるのはシャルです。訳あってサランディール王国へ向かう途中、ここに出くわしてしまって……」

 

 今、近衛騎士って言おうとしたよな……。

 どう考えても面倒くさい事に巻き込まれそうな気がする。後ろの女の子もどう見ても貴族にしか見えない。

 いや、近衛騎士がついているってことは……もしかして王族? 

 …………嫌な予感しかしない。

 

「そうか……俺の名前はトウヤ、サランディール王国のフェンディーの街で冒険者をしてる。依頼でこの森の調査にきてたんだが……」

 

「?! ……サランディール王国の……それではお願いです。どうか私たちを街まで、どうしてもナタリー様に――」

 

「おっ、こんなところまで逃げてやがったか。おーーい! 見つけたぞ!!」


 俺の後ろから声が掛かり、振り向くと森から数人の兵士と思われる男たちが出てきた。

 統一された鎧に片手剣を持ち、返り血で汚れ、いかにも戦時中としか言いようが無い。

 俺の事を気に留めず、兵士たちの視線は少女たち二人に向いていた。


「ここまで来るのは疲れたぜ。世話を焼かせやがって。――それでお前は誰だ? まぁ生きて返すつもりもないけどな」

「そりゃそうだ! もうサランディールに越境してるしな。国に報告されたら問題になっちまう」

 

 男たちは剣を抜き、俺に向けてくる。

 後から出てきた兵士を含めて俺の目の前には十人の兵士、生きて返すもりはないと……。

 俺は次元収納(ストレージ)から両手剣を取り出し身構える。

 正直、対人戦の経験はない。

 でも……殺らないと……きっと殺される。

 思わず剣を握る手に力が篭る。

 

「その人は関係ない! 私たち二人が目的だろう! お前は逃げるのだ!」


 俺の後ろから、アルと言っていた少女が、剣を持ちシャルを守る様に立ち上がる。

 しかし疲れから、とても力が残っているようには思えない。

 

「だから言っただろう……俺たちが目撃者を生かして返すと思ってるのかっ!」

 

 兵士が言葉と同時に俺に剣を振る。俺はそれを受け止め横に払った。

 

 ……やるしかない……。

 ゲームの時は対人戦はやった。しかし、あくまでゲームだ。この現実世界とは違う。

 心臓は破裂しそうなほどドキドキしている。

 しかしそれを表情に見せる訳にはいかない。

 深呼吸をし、両手剣を――兵士に向ける。

 

「ふんっ、ガキのくせに……。お前ら、まず、こいつから処理しちまうぞ」

 

 兵士の言葉に俺を囲むように広がっていく。

 

 ――そして初めての対人戦が始まった。

 

 

 

 

 

いつもありがとうございます。

さすがに毎週、週3飲み会で更新は辛い・・・。

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― 新着の感想 ―
嘘松!対人戦するためにゲームでバーサーカーになったって書いてたやないか!
あぁ~~蹂躙という名の対人戦開始・・・(;^ω^)
[気になる点] オーク達を蹂躙していた実力をあれだけ見て 「その人は関係ない! 私たち二人が目的だろう! お前は逃げるのだ!」 この発言?
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